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最後の脱走

1957年、東宝、楳本捨三「黒い風の中を」原作、八住利雄+木村武脚本、谷口千吉監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

第二次世界大戦集結後、中国大陸に送られていた満蒙開発団の日本人たちは、軍部に見捨てられ、全く逃げ場を失っていた。

そんな中、変装して逃走を計っていた日本人グループに、匪賊が近づいて来る。

荷車に銃弾が浴びせられるが、日本人たちは側の窪地に身を隠していた。

その中には、顔を汚し、男に化けた女学生たちも混ざっていた。

看護婦として中国に送られていた「百蘭部隊女子挺身隊」だった。

荷車に近づいて来た匪賊たちは、持主は逃げたと判断、車に積まれた荷物を略奪しはじめるが、その時、隠れていた日本人が一斉に銃撃をはじめたので、匪賊は慌てて逃げ出して行く。

最後の一人が、馬に乗ろうとした時、渥美集団長(山田圭介)の放った弾が命中し、匪賊は馬から転げ落ちる。

日本人たちは、敵を追い払ったと大喜びしながら荷車の所に集まって来る。

渥美の娘で、百蘭部隊の一員だったたか子(団令子)は、父親の胸に「金賜勲章よ!」と冗談を言いながら、ハンケチを飾ろうとする。

百蘭部隊の教師とみ子(原節子)は、出発しようと言い出す。

しかし、彼女らの一行は、その後、中国の八路軍のトラックから銃撃を受け、停止を命ぜられる。

トラックから降り立って来た孫(平田昭彦)は、流暢な日本語で、自分達は、現在中国で唯一の正式な軍隊、人民解放軍であるが、先ほど匪賊の人間を撃ち殺したのは誰かと聞いて来る。

戦争に負けた国が戦勝国の人間に向って、武器を向ける事自体が許しがたいと言うのだ。

女学生たちは、必死に背後で拳銃を隠しあう。

犯人がただちに名乗り出なければ、全員射殺すると言われ、渥美集団長は、自ら名乗り出る。

武器を捜査中の八路軍は、後ろの方で隠れていた一団が、全員女である事に初めて気付く。

ここに至って、とみ子は、自分が教師である事を白状するのだった。

女学生を含む日本人は、全員荷台のトラックに便乗させられ、とある街にやって来るが、街の中に入ったのは、女学生と渥美集団長を乗せたトラックだけで、残りの男性や子供を乗せたトラックは別の場所に向う。

街の中の第九病院の前で、トラックを降ろされた一行は、自分達が今後どうされるのか不安に苛まれる。

連れて来られた日本人の一人、橋本(堺左千夫)は、この状況を見て逃げられないと悟り、もうこうなったら、奴らの言う通りにしようと言い出す。

病院の中から院長(笠智衆)と共に日本人の前に進み出た孫は、これから君たちを第九病院の看護婦として徴兵すると伝える。

橋本は、その孫に、自分はトラックの運転も修理もできるので、自分に共産主義を教えてくれと、恥ずかしげもなくへつらって見せる。

そんな女学生たちの前に、病院の中から、一人の日本人らしき男宗方(鶴田浩二)が現れる。

院長は、世界が落ち着くまでここにいなさいと、こちらも流暢な日本語で、女学生たちに話し掛ける。

捕虜ではない。立派な看護婦として扱う。八路軍は人道を重んじるとも付け加える。

しかし、その直後、孫波、女学生たちに整列をさせると、三班に分け、1班はこの病院に残るが、のこりの2、3班は前線に行ってもらうと言うではないか。

その言葉に従順に違うに従う振りをして、トラックの運転席に乗り込んだ橋本に宗方が近づいて来て、逃げるつもりかと問いつめる。

驚いて否定する橋本だったが、運転席の奥には荷物がいつの間にか詰め込まれていた。

そんな宗方が日本人らしいと気付いたとみ子は、女学生をバラバラにしないでくれと頼み込むが、宗方は、自分も捕虜でしかなく、たまたま外科手術の腕を買われて。ここで働かされているだけの人間だと打ち明けるのだった。

とみ子は、別離を悲しがる女学生たちに、いつか必ず帰れるから、その日まで頑張るように励ますしかなかった。

第九病院に残る事になった女学生たちは、とみ子と共に一室をあてがわれるが、そこに食事を運んで来たのは、意外な事に、多山(沢村いき雄)、堀(太刀川洋一)と言う二人の日本兵だった。

多山が言うには、ここで駐留していた時、あっという間に捕虜になってしまったそうなのである。

多山は、院長や孫が日本語が巧いのは、長い間、日本に留学していたからとも教えてくれた。

その頃、卑怯な真似を見破られた橋本は、宗方にこき使われていた。

堀は、宗方の身の上話をとみ子たちに教えていた。

今では、アル中になっているが、それは、奥さんが上司に無理矢理乱暴され、その後自殺してしまったからだそうである。

皆が、嬉しそうに食事を始める中、一人、共産党のご飯なんて食べないと言う学生がいた。

父親をどこかに連れて行かれた渥美たか子だった。

一方、一仕事終えた宗方は、自分の部屋に戻ると、薬用アルコールを飲み出す。

そこへとみ子がやって来て、渥美集団長の措置は決まったのかと聞くと、宗方は冷静に、まず銃殺だろうと答える。

例え、殺されたのが匪賊であろうと、今、蒋介石たちと戦っている八路軍にとっては、武器を持っている者は皆仲間なのだと言う。

その点自分は、手術の腕を買われて生かされているので、この病院にいる限り、安泰なのだと嘯く。

そんな宗方の他人事のような態度に腹を立てたとみ子は、あなたと同じ国の人間である事を、とても恥ずかしく思いますと言い残して帰って行く。

しかし、その直後、孫の部屋にやって来た宗方は、渥美はどうなると尋ねるが、その直後、二発の銃声が聞こえ、たった今、銃殺を行った所だと言う事を知る。

孫は、今の事を娘に言うなと口止めをする。

女学生たちの待機室にやって来た宗方は、孫政治局員からの伝言として、一人歩きするな、この病院から逃げ出そうとするな、今まで、三人逃げ出した例があるが、全員、死体になって帰って来たと伝える。

何故、逃亡者が捕まるかと言うと、蒋介石軍に捕まったら、こちらの情報がもれる事を恐れるためだとも。

渥美集団長の事を聞かれた宗方は、人民裁判の結果、陣地構築に連れて行かれたと嘘をつく。

喜ぶたか子と女学生たちが、あまりにしつこく帰りかける宗方に念を押すので、耐えきれなくなった宗方は、本当はもう銃殺されたと言い放ってしまう。

次の瞬間、ショックを受けたたか子は、自らの左手の手のひらに、右手で鉛筆を突き刺して昏倒する。

宗方を追い掛けて部屋を出たとみ子は、どうせ分かる事だから、早く知らせた方が良かったのだと冷めたように言う相手の頬を、思わず叩いてしまう。

部屋に戻って来て、又、アルコールを飲みだした宗方のそばに置いてある救急箱を取りに来た堀の目も、憎々しげに宗方を睨み付けていた。

やがて、第九病院に残っていた女学生も、旧正月が来た事を表の様子で知る。

女学生たちは、外で遊ぶいたいけな子供の表情を見ながら、子供って良いなと呟くのだった。

一緒に薬剤分包の手伝いをしていた多山は、一人の女学生から、自分の父親に似ていると言われ、嬉し泣きし出す。

そんな薬局に勝手に入り込んで来たのが橋本で、モルヒネはないかと聞いて来る。

モルヒネを闇で売れば、高く売れると言うのである。

しかし、 皆が嫌っている橋本だけに、誰も相手をしない。

そこへ、温厚な院長がやって来たので、皆は大喜びする。

女学生たちは、この院長の人柄が大好きだったのだ。

やがて、孫が薬局の中に入って来ると、それを見た渥美たか子が、わざと机の上にあった薬剤を床に払い落としてしまう。

その音に気付いて振り向いた孫は、誰がやったと聞く。

たまたまたか子の側に立っていた堀が怪しまれるが、自ら名乗り出ようとするたか子を押しとどめ、堀が自分がやったと名乗り出たので、そのまま連れて行かれる。

孫の部屋に連れて来られた堀は、査問委員会にかけると言われる。

それを横で聞いていた宗方は、思わず、堀の頬を殴りつけるのだった。

その後、戻って来た堀に心配して声をかけたたか子だったが、宗方からビンタを受けたお陰で解放された。君の父親の墓に花を置いておいたと聞かされ感激する。

その後、とみ子は、宗方に又抗議に行くが、黙って聞いていた宗方は、君が銃殺されるかも知れない。冗談だと思っているのかと反論する。

その頃、薬局からモルヒネを盗みだした橋本は、街の料理屋の厨房に売りに出かける。

金を受取る前に、酒を勧められたので、橋本はいい気になって老酒を飲みはじめる。

一方、薬局の薬棚の方でも、薬を盗み出そうとしている女学生がいた。

左手に包帯を巻いた渥美たか子だった。

その時、部屋の灯がつき、宗方が入って来る。

たか子をとみ子に預けた宗方は、厨房で泥酔している橋本を発見し、殴りつける。

部屋の中に隠れ、とみ子から訳を聞かれたたか子は、八路軍が憎いんですと毅然と答える。

そんな部屋に入って来た堀は、たか子を殴りつけ、宗方中尉が孫の所に連れて行かれたと言う。

そして、とみ子に対し、堀は、僕たち二人逃げますと告げる。

その後、とみ子は渥美たか子の身替わりになるべく、孫の部屋の前まで来る。

堀とたか子は、二人きりの部屋の中で熱い口づけを交わしていた。

堀は、何とかして日本まで逃げ、結婚しようと言いながら、この日のために隠し持っていた拳銃を出して見せる。

孫の部屋では、老酒に酔った宗方が、ヘロインを盗み出したのは自分がやった事だと言っていた。

それを信じた孫は、すぐさま宗方の捕縛を命ずるが、宗方は平然と、俺を殺せば、あんたの部下が何千人も死ぬぞと言いながら、窓のカーテンをあける。

そこには、前線から多数の負傷兵を乗せたトラックが到着した所だった。

許されて部屋の外に出た宗方に、待っていた橋本が、泣きながら礼を言う。

その後、部屋に戻ってベッドに横たわった宗方を待っていたとみ子は、宗方の口についた血を拭いてやりながら、私はバカだった。宗方さんって本当は良い人だったのねと声をかける。

女学生たちを全員、日本に帰してあげたい…と話し続けていたとみ子は、すでに寝息を立てている宗方に気付く。

やがて、女学生が一人いなくなっている事が露見し、日本人は全員一室に集合させられる。

堀とたか子は、必死に逃亡を続けていた。

翌朝、川の水を飲んでいた二人は、思い掛けなくも近い所に、八路軍の兵士の姿を見つけ、自分達が一晩中、八路軍の水稲地帯をぐるぐる廻っていただけだった事を知る。

やがて、二人は、八路軍に発見され銃撃を受けるも、堀は持参して来た銃で応戦する。

しかし、その残弾が二発になった事を確認した堀は、頷くたか子を抱きしめ、熱い口づけを交わした後、その胸を撃ち、その後、自分の頭を撃ち抜くのだった。

穴の空いた堀の帽子と、たか子のリボンが病院の日本人たちの元に戻って来る。

不祥事を起こし怒り心頭の孫は院長に、女学生たちを再教育するよう命ずる。

院長はつらそうに、今の日本には食べ物も何もないのだと解きはじめるが、女学生たちは全員、帰りたいと泣き出すのだった。

その頃、宗方は、一人の日本人投降兵の治療をしていた。

その兵隊本田(山本廉)が虫の息の中で言うには、慶長山に日本の部隊が残っており、そこには加藤中将がいるのだと言う。

宗方は、田山と橋本に、その本田を優先して手術室に運ぶよう命ずる。

しかし、その手術に気付いた孫波、横のベッドに寝かされていた陳中尉(田島義文)の手術を先にしろと命ずる。

それでも宗方は、人間の命に大切でないものなどない。陳中尉はもう少し後でも大丈夫だが、この日本兵は、今すぐに手術をしないと死んでしまうと、手術を続行しようとする。

その抵抗を見た孫は、銃を抜き、宗方の額に突き付けながら命令を聞けないならいなくても良い。生きて帰りたいのなら俺の命令を聞けと言い切る。

すると、宗方はアルコール瓶の中身をグイと飲み、再びm日本兵の方の手術に取りかかる。

それを見ていたとみ子も、思わず、宗方の手伝いを始める。

そんな姿を見た孫は、さすがに諦め、部屋を出て行くのだった。

ある日、前線から戻って来た兵隊たちの姿を見た院長は、前線から帰って来た連中は気が荒いから、女学生たちに注意するよう伝達を出す。

その頃、とみ子は女学生たちを、集団長も眠ってい屡墓の前に集め、これから卒業式を始めると言い出す。

女学生たちは仰げば貴しを唄いはじめるが、そんな彼女たちの背後から、帰還兵三人が襲いかかる。

女学生たちが襲われた事を伝え聞いた宗方は、連れ去られたと言うとみ子を助けるため、単身、飲み屋に乗り込んで行く。

階段を登ると、そこに銃を突き付ける見張りの兵がいたので、素早くその銃を奪い取ると、閉っている部屋の扉を開く。

そこでは、今正に、兵隊(佐藤允)が、とみ子をベッドに押し付けている所だった。

宗方の気配に気付いた兵隊は、日本兵も同じ事をやったじゃないかと銃を突き付けて来るが、宗方の後ろから、孫がやって来た事を知り、軍規違反としてそのまま捕縛されてしまう。

とみ子を病院の部屋に連れ戻した宗方は、弾を抜いた拳銃を枕元に置いて置いて帰る。

すると、その銃に気がついたとみ子は、それを握って頭に当て、引き金を弾く。

しかし、弾が入っていないので、何度引き金を弾いても死ねなかった。

そこに戻って来た宗方は、やはりあなたも死を選ぶのか。私のつまも死んだと呟く。

こんな事は何でもないんだから、生きていてくれと頼むが、ベッドを降りたとみ子は、メスを取り上げ、それで自らの咽を突こうとする。

それを羽交い締めして阻止した宗方は、汚いと叫ぶとみ子に、何故汚いんだ!俺のために生きてくれと哀願する。

これ以上、俺を苦しめないでくれ!君と会った時から君の事が好きになったのだと抱き締めると、とみ子は力を抜き、熱い口づけを交わすのだった。

後日、院長が宗方に、蒋介石の軍が近づいて来たので、この場所を移転するので、引っ越しの準備をしてくれと伝える。

準備には四時間かかると答えた宗方はすぐにとみ子に会いに行き、今こそ、ここを脱出する絶好の機会だと打ち明ける。

俺がいつから酒を止めたか知っているかと言いながら、宗方は床下に隠していた脱出用具を見せる。

あの子たちは?と聞くとみ子に、あの子たちを置いて、君が幸せになれるかと答える宗方。

多山と橋本には、トラックで切り通しの場所まで先行して、後から来る女学生たちを乗せ、撤退が始まる午後2時に出発しろと命ずる。

手術を受け、何とか一命を取り留めた本田は、自分は足手纏いになるので残して行ってくれと言い出すが、慶長山への道を知っているのはお前だけなんだから、置いて行く訳には行かないと宗方は言う。

その言葉に、自分も死なせはしないと言う意味を汲取った本田は、涙を流す。

女学生たちには、万一、誰かが倒れても、構わずに前進しろと忠告する。

多山は、堀の穴の空いた帽子をかぶり、一緒に連れて行ってやろうと言う。

たか子のリボンも、女学生の髪に結ばれた。

そこへ、前線に送られていた2、3班の女学生も戻って来たと連絡がある。

その夜、橋本は病院の裏の塀にロープを投げ、自分が登って梯子をたらす。

女学生の一人が、その梯子を登りかけた時、見張りをしていた多山の懐中電灯が異常を知らせる。

八路軍の見張りが二人近づいて来たのだ。

下で待っていた女学生たちは一斉に身を隠し、梯子を登りかけていた女学生は急いで上に登ると、塀の後ろに隠れようとするが、そこに張られた鉄条網に髪のお下げが引っ掛かってしまう。

二人の見張りが、塀の側に近づいて来る。

このままでは、自分の姿を発見されてしまうと判断した塀の上の女学生は、持っていたハサミで、お下げごと切取ってしまう。

その頃、最後に部屋を出ようとしていた宗方の部屋に院長が入って来てしまう。

宗方はやむなく、院長に銃を突き付ける。

院長は驚愕するが、そこにノックの音が聞こえ、八路軍の兵士がドアを開ける。

院長は、その兵士の報告に耳を傾け、ドラの陰で銃を突き付けている宗方に対し、前線で、孫が負傷したそうだ。行ってくれるねと伝える。

宗方は、何も言わず、手術用具の入った箱を肩に下げるのだった。

トラックを調達していた橋本は、修理をしている振りをしながら時間稼ぎをし、目的の時間が来ると、兵隊を運ぶ他のトラックの後について、一緒に門を出る事に成功する。

切り通しにやって来たトラックは、道から脱輪しかけるが、何とか脱出していた女学生と合流し、彼女たちを荷台に乗せると、宗方は前線に廻されたと多山が教える。

前線で、宗方は孫の手術を終えていたが、それに付き添っていた院長は、宗方の側によると、感謝すると共に、帰るのかと小声で尋ねるが、その声はベッドに横たわっていた孫の耳にも届いていた。

そこへ陳が入って来て、撤退が中止になったと報告すると同時に、女学生たちが脱走したと言いながら、宗方に銃を突き付けて来る。

その頃、まだ撤退中止の命令が届いていなかった八路軍の一部は、蒋介石軍に追われないように、橋に爆薬をしかけていた。

意識朦朧状態の孫は、宗方の名を呼ぶと、もっと自分を大切にしろ。君に事は私が引き受けると呟きかける。

院長も、君は病院にいてくれ。女学生たちの事は運を天に任せると慰めるが、次の瞬間、宗方は陳を襲い、病因を飛び出すと、停めてあったトラックに飛び乗る。

拳銃を宗方に向け、後を追って来た院長だったが、トラックが走り出しても、とうとう引き金は引かれなかった。

しかし、陳たちは、別のトラックで、宗方を追跡し始める。

橋本らのトラックは、午後2時になったので、切り通しを出発する。

そして、爆薬が仕掛けられているとも知らない橋を渡ろうと近づく。

しかし、橋を守っていた八路軍の監視小屋から銃撃を受ける。

女学生が乗ったトラックと言う事は連絡済みのようで、降りて来いと拡声器の声が響く。

多山は、機関銃を抱え、運転席を降りると、応戦しはじめる。

女学生たちは、その隙に荷台から全員降りる。

その頃、宗方の乗ったトラックは、陳らが乗った八路軍のトラック二台に追い掛けられていた。

宗方は、途中でトラックを止めると、運転席の上に据えられていた機銃を後ろに向け、陳たちのトラックを撃ちはじめる。

多山の機銃は弾がつきかけていた。

そんな多山の横から、八路軍が近づいて来た事に気付いた女学生の一人は、持っていた手榴弾を投げて爆破させる。

そのお陰で、多山は難を逃れたかに見えたが、次の瞬間、銃撃を受け、倒れる。

とも子は、女学生を守ろうと励ます。

女学生も必死に手榴弾を投げて応戦する。

多山の死体の側にやって来た本田は、落ちていた機関銃を拾い上げ、発砲しはじめる。

そんな所に、宗方のトラックが近づいて来て、八路軍の監視小屋を銃撃すると、中にあった火薬が引火して爆破する。

八路軍の監視部隊は全滅したと思った宗方は、女学生たちと合流するが、とみ子は多山が死んだと伝える。

全員が、宗方が乗って来たトラックに乗換え、恐る恐る木の橋を渡りはじめるが、その時、全滅したと思っていた八路軍の生き残りの一人が、爆破装置ににじり寄っている姿を発見する。

橋に爆薬が仕掛けられている事を悟った宗方は武器をかせと言うが、もはや、弾の入った拳銃も手榴弾も残っていない事を知る。

しかし、爆破装置に手をかけた八路軍兵士はそこで息絶えてしまう。

助かったと思ったトラックは橋を渡り切るが、対岸から陳たちのトラックが近づいて来た事を見た宗方は、自分があれを止めに行くと、独りトタラックを降りようとするので、とみ子は自分も一緒に下りようとするが、宗方はそんなとみ子を振払って、一人橋を後戻りしはじめる、

陳たちは一斉に宗方を狙って撃ちはじめ、宗方は数発の銃弾を足に受けてしまう。

しかし、何とか爆破装置の所まで走って来た宗方は、爆破装置のスイッチを入れ橋を爆破する。

宗方は、さらに川を自力で渡ろうと川べりに近づくが、そこでも又、数弾の銃撃を受けてしまう。

対岸に停まっいたトラックの運転席でハンドルを握っていた橋本は、もはやこれまでと発車する。

しかし、横に乗っていた本田は、スパナで橋本の頭を殴り、車を停める。

運転席、皆が必死にそれを押さえ付ける。

満身創痍の状態ながら、何とか川を渡り切った宗方は、トラックの荷台にたどり着き、女学生やとみ子から引き上げられはじめる。

それを確認した本田は、自分がハンドルを握りトラックを発車させるが、次の瞬間、荷台に登りかけた宗方の背中に銃弾が命中し、宗方は路上に落ちてしまう。

とみ子や女学生の悲鳴で、後ろを確認した本田は、一瞬、ブレーキを踏もうとするが、停めるな!走れ!と言う宗方の声を心に感じ、そのままアクセルを強く踏み続ける。

道に倒れた宗方は、最後の力を振り絞るかのように顔を上げかけるが、ついに息絶える。

トラックは、慶長山に向ってひた走っていた。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

敗戦後、大陸に取り残された女学生たちの悲劇と脱走劇を描いた戦争映画。

主人公は、一見、原節子が演じている女教師のようにも思えるが、実は意外に平凡な教師像にしか見えず、あまり印象に残らない。

この時期の原節子はかなり年長に見え、鶴田浩二との恋愛劇も、バランスが悪いように感じたりする。

むしろ鶴田浩二、そして平田昭彦の敵味方間の奇妙な友情関係、ずる賢く卑怯な男を演ずる堺左千夫、父親を殺されひたすら中国兵たちに憎しみを持ち続ける女学生役の団令子の方が印象的。

太刀川洋一、沢村いき雄などのような脇役にも、きちんと見せ場が用意してあったりする。

中国の町並みのオープンセットなども良く出来ており、なかなか見ごたえのある作品になっている。