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新諸国物語 七つの誓い
奴隷船の巻

1957年、東映京都、北村寿夫原作、佐々木康脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

オンゴ(吉田義夫)の奴隷船シャーラック号は、日本海に浮かぶ「はぐれ島」に向っていた。

その船底では、捕えられ再び奴隷となった五郎、トルハン、ゲンジ、杢助らが櫂を漕がされていた。

大陸を発ってすでに半年になるのにまだ目的地に到達しない事に苛立ったオンゴは、奴隷たちの櫂を漕ぐ速度を二倍にするよう命ずる。

その頃、近江の国、堅田の満月寺に桜子(千原しのぶ)は匿われていた。

窮地を救ってくれた謎の黒頭巾(東千代之介)に連れて来られたのである。

黒頭巾は桜子に対し、ここままカラコジアの者たちが日本に滞在し続ければ、ただでさえ戦乱が控えている日本でも、何かと無益な争いの火種になりかねないので、帰国してもらえないかと申し出るが、桜子は拒絶する。

一方、桜子を見失った夕月丸とカピは、都を毎日探し歩いていたが、手がかりさえつかめず、病を得た高山伊織が寝込んでいる宿に戻って来る。

三人が、桜子の行方を案じて相談している時、外から矢文が打ち込まれ、急いで窓を開けた夕月丸は、白馬に乗って走り去る黒頭巾の姿を確認する。

矢に結び付けられた手紙には、「桜子は満月寺にあり」と記されてあった。

急ぎ、満月寺に向い馬を走らせる夕月丸とカピだったが、その満月寺では、物売りに化けて訪ねて来た黒比尼から、飛騨の豪族を都で見かけたと嘘をつかれた桜子が、その言葉を信じ、一緒に寺を後にして都に旅立っていた。

日本海の「はぐれ島」に到着したオンゴ一行は、その島にある、一文字入道の配下、木田内髭丸(山口勇)の館で歓迎されていた。

女たちによる琉球風の踊りを観ていたオンゴの横に座った髭丸の妻浜路(浦里はるみ)は、船から降り立った奴隷の中の五郎が気に入ったと口にするが、オンゴは、あの男は島に着いた時抵抗したので地下牢に閉じ込めておいたと答える。

髭丸は、自分の部下である梶原右藤太(月形哲之介)とオンゴの家臣トカチ(片岡栄二郎)を、日本への使者として派遣する。

その後、浜路は、こっそりパイナップルを持って、五郎が閉じ込められている地下牢を訪ねる。

パイナップルを食べろと、牢の中に放り込んだ浜路だったが、五郎が見向きもしないので、腹を立て、懐から取り出した銃で、パイナップルを撃ち砕いてしまう。

日本の一文字入道(山形勲)の所に到着したトカチと右刀太は、「はぐれ島」で密造した銃を披露してみせる。

トルハンや杢助ら奴隷は、「はぐれ島」の地底で銃の製造をやらされていた。

加賀爪丹波(月形龍之介)の屋敷では、カラコジアの財宝が見つかったら、その半分と「はぐれ島」を交換して欲しいと言うトカチの伝言を側で一緒に聞いていた梟丸(徳大寺伸)が、密談を立ち聞きしていたらしき怪しい女中を発見、後を追うが、奥方から、それは自分が用を頼んだ楓(三笠博子)の事を見誤ったのであろうと言われる。

その楓は、こっそり庭から伝書鳩を飛ばしていた。

その鳩がたどり着いた先は、兄の夕月丸の手元だった。

鳩の足に結び付けられた手紙には、「はぐれ島」にトルハンたちがいるらしい事、鉄砲と言うものはとても恐ろしい武器である事などが記されていた。

さっそく、夕月丸は、まだ寝込んだままの高山伊織とカピとで善後策を相談する。

都では、梟丸の動きを監視する一団があった。

その都の近くの一軒家に宿泊していた桜子は、同行して来た黒比丘(初音麗子)から一風呂浴びろと勧められる。

桜子がそれに従うと、すぐさま、黒比尼の手下の万里(北村曙美)が、桜子が脱いだ着物を改めるが、探し求める指輪は見つからない。

姉の黒比丘と合流した梟丸は、業を煮やし、桜子が持っていた蛇味線の胴の部分を切り裂くが、そこからも見つからなかった。

風呂から上がって来た桜子は、蛇味線が切り裂かれている事に気付き驚くが、婆の粗相で…と、黒比丘が詫びるのを聞くと責める事も出来ず、そっと隣の部屋に逃げ込むと、バチの中を確認して、その中にまだ指輪が入っている事を確認するのだが、その様子をこっそり襖の隙間から覗いていた黒比丘がいきなり襲いかかる。

しかし、そこに現れたのが謎の黒覆面で、梟丸とも戦い始める。

黒比丘は、数珠に付いた水晶の珠を取り出して黒頭巾に向けると、その珠から発せられた光が黒頭巾の目をくらまし、やがて、空はかき曇り、雷や突風が起こり始める。

近くの大木に落雷し、木が裂けるが、黒頭巾は怯まず、黒比丘の数珠を刃で断ち切ってしまう。

そのまま桜子を連れ、黒頭巾は立ち去るが、がっくりした黒比丘は、地面に落ちていた指輪を発見し、梟丸に見せる。

どうやら、桜子が落として行ったものらしい。

二人は目指す指輪が手に入り狂喜するが、次の瞬間、梟丸を付けて来た一文字入道の配下たちが奪ってしまう。

又しても窮地を助けられ礼を言う桜子に、黒覆面はバチを渡して立ち去って行く。

それを見送っていた桜子だったが、バチの中を確かめた瞬間、中がもぬけの殻なのに気付き、黒覆面が指輪を抜き取ったのではないかと疑い始める。

一文字入道は、とうとうカラコジアの財宝の在り処を記した指輪を手に入れ大満足の様子。

加賀爪丹波には、間もなく「はぐれ島」で鉄砲二万丁が完成すると報告する。

丹波は、黒比丘と梟丸を人質にするよう命じた後、「はぐれ島」に向う入道に、髭丸への手土産があるとほのめかす。

その手土産とは、ゴーレム(羅生門)と言う大男であった。

「はぐれ島」で、その土産を観た髭丸は、奴隷とその大男と戦わせてみようと言い出し、賓客オンゴも面白がる。

右籐太に連れて来られた奴隷の中には、トルハンや五郎もいた。

それを見た浜路は、いつかのお返しとばかり、五郎と巨人を戦わせてみたいと言い出す。

まずは二人の奴隷が引き出され、巨人と戦わされるが、あっけなく叩きのめされてしまう。

三人目に引きずり出された男は、怯えて、髭丸やオンゴ、入道たちに、命乞いの土下座をするばかり。

仕方がないので、五郎が巨人と戦うよう前に出されるが、五郎が拒むと、勝てば国に帰してやると、入道が条件を出す。

それでも、頑として五郎が言う事を聞きそうにもないので、一文字入道は都で入手した指輪を見せ、勝てばこれを返してやると言い出す。

さすがにそれを聞くと、五郎も承知するしかなかった。

巨人ゴーレムに挑みかかった五郎は、力では叶わないと悟るや巧みに相手の動きを交わし、ゴーレムは壁に頭をぶつけてしまう。

ふらついたゴーレムに、空手チョップをお見舞いすると、あっけなく巨人は気絶してしまう。

約束通り指輪をもらうと五郎は入道に詰め寄るが、入道はそれを無視し、隣に座っていたオンゴに、指輪の謎を解き、財宝の在り処を探してもらおうと言い出す。

しかし、その指輪を見つめていたオンゴの顔色は徐々に青ざめて来る。

それを見たトルハンは、謎が解けるはずがない、それは偽物だからだと言う。

事実、入道が持って来た指輪には何も書かれていなかった。

その夜、奴隷小屋に戻って来たトルハンは、指輪と我々が持っている黒水仙をかたどった七つの十字形が揃わないと、財宝の在り処は分からないのだとゲンジや杢助に教えていたが、そこに現れたカラチも、自分が幼い頃から身に付けていた十字形を見せる。

敵の一味と思われた彼こそが、探し求めていた最後の一人だったのだ。

しかし、その密談を外で盗み聞いている女がいた。

浜路だった。

彼女は、その足で五郎が捕えられている地下牢へ向うと、今聞いて来た事を髭丸に話そうかと脅す。

その頃、一文字入道は髭丸に、都に船で出発する準備を命じていたが、その髭丸の元に、浜路の行動を見張っていた右籐太が報告に来る。

その右籐太に鉄砲を渡し、これで五郎を始末して来いと命じた髭丸は、何喰わぬ顔で浜路が寝室に戻って来ると、扉に鍵をかけて妻の不貞の事を責め始める。

そんな寝室に忍び込んでいたカラチは、夫婦喧嘩をしている髭丸に刃を突き付ける。

一方、地下牢にやって来た右藤太は、牢の中に五郎の姿が見えないので慌てて中に入るが、天井に潜んでいた五郎は上から飛びかかり、揉み合っている内に銃が暴発する。

寝室では、カラチと髭丸が争っていたが、騒ぎを聞き付け駆け付けて来た入道たちは、扉に鍵がかかっているため中に入れない。

鍵を破壊しようと、外から鉄砲隊が扉越しに発砲するが、その弾が、寝室の中にいた浜路を貫く。

入道たちが寝室に入り込んだ瞬間、カラチは窓から脱出する。

右藤太を倒した五郎の方も、地下の火薬庫から火薬樽を一つ持ち出すと、それを導火線のように地面に撒き始める。

カラチは髭丸の部屋から奪って来た鍵を奴隷小屋の中に投げ込み、トルハンら奴隷たちは小屋を脱出するが、外では入道たちが待ち受けていた。

たちまち、奴隷たちと入道一味との戦いが始まるが、そこへ地下から火薬を撒いて地上へ出て来た五郎が遭遇する。

五郎は、地面に撒いてきた火薬に比をつけようと、側にあったたいまつに手を伸ばしかけるが、それを入道一味に邪魔され、五郎も大乱闘に巻き込まれる。

やがて、やっとたいまつを手にした五郎は、すかさず火薬に火を点ずる。

そして、地下への扉を固く閉ざしてしまったのを見た入道一味も奴隷たちと一緒に、島を脱出しようと逃げ出す。

地下の火薬庫には、日本を全滅させるほどの火薬が埋蔵されていたからだった。

やがて、「はぐれ島」は大爆発を起こす。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「新諸国物語 七つの誓い」の第二部に当る。

一部が、ネパール高原を舞台にした異国ものだったのに対し、本作からは完全に日本を舞台にした時代劇になっている。

日本海にあると言う「はぐれ島」が、どう見ても沖縄風である事など奇妙な点もあるが、その辺は、子供向けの異国情緒演出と言う事なのだろう。

五郎が閉じ込められている地下牢は、海の底にあると言う設定らしく、移動する途中の描写では、画面上方に、魚が泳ぐ水族館のような映像が合成されている。

そこで、天下を取るため鉄砲を大量生産していると言うのだから、さながら「007」の秘密基地である。

本作でも見所は、何と言っても、巨人ゴーレムを演じる羅生門と中村錦之助の一騎討ち。

錦之助は素手で立ち向かうため、空手チョップなどプロレス技のような戦い方をしているのが愉快。

基本的に、この「新諸国物語」シリーズの主人公は、戦後すぐに登場したヒーローだけに、無益な争いはしないのが基本だが、本作での錦之助はそれなりに戦ってみせている。

やはり、そうしないと子供達も納得しなくなって来ていたのだろう。