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新諸国物語 七つの誓い
凱旋歌の巻

1957年、東映京都、北村寿夫原作、佐々木康脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

「はぐれ島」を脱出したオンゴ(吉田義夫)とその一行は、海外使節として都にやって来ていた。

それを見物する群集の中に、高山伊織(坂東蓑助)、夕月丸(大川橋蔵)、カピ(伏見扇太郎)らの姿があった。

一文字入道(山形勲)、加賀爪丹波(月形龍之介)らが列席する中、時の将軍足利義晴(明石潮)に謁見を許されたオンゴは、黒水仙をかたどった十字形を持った高山伊織ら七人はカラコジアの敵なので、その逮捕に協力して欲しいと願い出る。

それを聞いた義晴は、丹波に任せる事にする。

その後、カラコジアの敵である高山伊織たちを見つけたものには恩賞を遣わすと言う、幕府問註所からのお達しが書かれた立て札が都のあちこちに立てられる。

そんな中、群集の中にいた黒覆面(東千代之介)に、鞍馬山への道を尋ねる一人の青年がいた。

「はぐれ島」から無事脱出して、憧れの日本にやって来た五郎(中村錦之助)だった。

その五郎に道を教えた黒覆面は、何者かにつけられている事に気付いていた。

それは、変装した桜子(千原しのぶ)だった。

黒覆面に対峙した桜子は、自分の指輪を奪った相手と思い込み、黒覆面に短刀を突き付ける。

しかし、あっさりそれを交わした黒覆面は、あの指輪は偽物だと明かし、鞍馬山の宿坊へ行くよう伝えたかと思うと、建物の中に姿を消してしまう。

その鞍馬山を登っていた五郎は、空を飛ぶ鳩を見つけ、弓で射抜く。

落ちた鳩を見て、慌てて飛んで来たのが夕月丸で、何故、大切な鳩を落としたと五郎に詰め寄る。

五郎は、そんな夕月丸が背負っているカラコジア独特の弓の羽と、その胸に下がった十字形を見て仲間の一人だと気付く。

オランダの商船に救出されたのだと来日の経緯を説明する五郎の正体を知った夕月丸の方も驚き、喜ぶと共に、父トルハンたちは山寺にすでに待っている事を教える。

五郎は鳩の羽を巧みに射抜いただけだったので、鳩は無事で、二人は鳩に付いた手紙を一緒に読む。

そこには、オンゴの最近の動静を記した楓(三笠博子)からの伝言がしたためられていた。

寺に集結した五郎は、父トルハンから、七人の勇士がついに集結した事を教えられる。

五郎、夕月丸、トカチ(片岡栄二郎)、ゲンジ(波島進)、杢助(伊東亮英)、高山伊織、カピは、各々が持っていた十字形を見ながら、残る指輪を持っている桜子の行方を案じていた。

そんな話を、宿坊の外で盗み聞いていたのが梟丸(徳大寺伸)で、戻ろうと山を降りかけたところで、偶然、山を登って来る桜子を見つける。

すぐさま桜子を襲い連れ誘うとした梟丸だったが、桜子に声を出され、それを聞いた五郎たち一行が、宿坊から飛び出して来て後を追って来る。

先に梟丸を見つけた五郎は、桜子を助けようと戦い始めるが、他の仲間が駆け付ける寸前、崖から足を滑らせ落ちてしまう。

幸い崖は低く、五郎は無事で、梟丸だけ逃れて行く。

その後、隠れ家を南禅寺に移したとの伝言が、伝書鳩によって加賀爪丹波の館に仕えていた楓の元に知らせられる。

その頃、その屋敷の中では、梟丸からカラコジアの面々の報告を受けた一文字入道が、指輪を奪い取らんと黒比丘らと共に相談していたが、見知らぬ鳩が入り込んで来たのを不審に思い、庭先で鳩を捕まえている楓を見かけると、ただちに捕まえてしまう。

南禅寺の二階では、桜子と五郎が眠れぬ夜を明かしていた。

寝ている他の仲間に気付かれぬよう、そっと起き出した桜子は、同じように起きて来た五郎に、愛の王国を再建するためと言いながら、敵と殺し合いを続けている事に疑問を感じていると打ち明ける。

しかし、そんな桜子の迷いを五郎は慰め、力付けるのだった。

そんな五郎が、ふと寺の下を眺めやると、大勢の敵に連れられた楓の姿を発見する。

南禅寺は、伝書鳩の手紙を読んだ入道一味にすっかり取り囲まれてしまっていたのだ。

他の仲間たちも異変に気付き、寺の二階欄干部分に集結していた。

兄である夕月丸も楓も、死は覚悟していた。

それを見上げたオンゴは、捕まえた楓を鞭で嬲り殺しにせよと命じる。

五郎は、振り上げられた鞭を弓で射落とす。

見かねたゲンジが、真先に寺の外に飛び出して行く。

一文字入道は、連れて来た鉄砲隊に発砲を命ずる。

夕月丸たちも、欄干部分から弓矢で応戦する。

寺の外では、敵味方入り乱れての大乱戦が始まるが、トルハンは、桜子を五郎に預けると、自らは敵に捕まってしまう。

一文字入道の城に戻って来たオンゴたちは、捕まえて来たトルハンから指輪の秘密を聞くために、梟丸にトルハンに石を抱かせるよう拷問を命ずるが、トルハンは頑として口を割らなかった。

高山伊織も、都で敵に見つかってしまう。

大掛かりな山狩りが始まり、桜子を連れた五郎たちは必死に逃れていた。

追っ手が間近に迫った事に気付いた五郎は、山の中の沼に身を沈める事を決断する。

桜子もそれに従い、何とか、追っ手の目をくらます事が出来た。

翌朝、濡れた桜子の着物を乾かそうと、あばら家に入り込んだ五郎は、自分は朝食を調達して来るので、その間に囲炉裏で着物を乾かすように勧めて立ち去る。

やがて、近くの農家から食べ物を調達して来た五郎は、あばら家の中で見つけた古着に着替えると、姫をそこに残し、自らは父親らを救出するため出かけて行く。

そんな桜子と五郎を探し回っていた梟丸は、見知らぬ若者に食べ物を売ったと言う農家を探し出し、近くに誰も近寄らぬ化物屋敷があるとの情報を得る。

その頃、何とか敵の目を逃れていたゲンジ、楓、杢助の三人は、楽しく歌を唄いながら、仲間の待つ小屋を目指して山道を急いでいた。

杢助は、いつの間にか、楓がゲンジの事を好きになっている事をからかうのだった。

そんな杢助は足を紐に引っ掛け、鳴子が鳴ってしまう。

そこに弓を引いて現れたのはカピだった。

鳴子は、カピが敵をいち早く発見するために仕掛けておいた罠だったのだ。

カピは、近づいたのが生き延びた味方と知り、再会を喜ぶ。

夕月丸やトカチ、高山伊織も揃っていると、隠れ家に三人を案内するが、楓の兄、夕月丸の姿はいつの間にか消えていた。

その夕月丸は、単身、足利義晴の城に忍び込んでいた。

義晴の寝所に潜入した夕月丸だったが、起きていたらしき義晴から誰何されると、正直に名乗り、自分達はカラコジア再建を誓いあった仲間であり、決して敵ではないと誤解を解こうとするのだが、すぐさま家臣たちに発見され、城を逃げ出す事になる。

翌日、足利義晴と加賀爪丹波の元を訪れた一文字入道は、化物屋敷に潜んでいた桜子を捕まえたので、ただちにトルハンと共に処刑をするとお触れを出せば、それを救い出しに仲間たちが集まるのではないかと提案する。

丹波もそのアイデアに乗り、いつも通り義晴も丹波に任せると言う。

何も知らずその化物屋敷に戻って来た五郎は、囲炉裏の前で待っていた姫が、面をかぶっている姿を見て笑い出す。

冗談だと思ったのだが、面を取らぬ姫が酒を勧めると、さすがに怪しみ、目の前にいる女が偽者だと気付く。

面を取った女の正体は、黒比丘であった。

黒比丘は、口から火を吐いて、五郎を追い詰める。

そこに、万里と梟丸も現れ、共に五郎に迫るが、五郎は万里を斬り、黒比丘の背後から身を絡めて、梟丸と対峙する。

梟丸は、構わず斬り掛かって来るが、その刃に倒れたのは、姉の黒比丘だった。

しかし、瀕死の黒比丘が吹いた呼子で、役人たちが集結して来る。

役人たちに追い詰められた五郎は、崖から足を滑らせ、川に転落してしまう。

翌日、トルハンと桜子は、足利義晴、加賀爪丹波、一文字入道、オンゴたちが居並ぶ処刑場で、十字架にかけられていた。

それを見つめる民衆たち。

一文字入道は、十字架の下に積まれた薪に火を放つよう命ずる。

火を放たれ、苦しみながらもトルハンは、民衆たちに向って、オンゴこそただの山賊なのだと叫ぶ。

その時、夕月丸ら六人の仲間が、民衆の中から処刑場になだれ込んで来る。

計略が見事に当った一文字入道とオンゴはほくそ笑み、指輪を出せと迫る。

その時、別の場所から、一人の若者が飛び込んで来る。

川に落ちて死んだはずの五郎だった。

その五郎に、怒り狂った梟丸が襲いかかると、民衆の中から、あの黒覆面も飛び出て参戦する。

五郎は、桜子の十字架に登ると、その紐を斬り救い出す。

さらに、父親トルハンも救い出した五郎は、オンゴと梟丸と対峙する。

その時、義晴の側に寄った黒覆面が自らの覆面を取り去って素顔を現し名乗る。

彼こそ、足利義晴の弟、鈴之助信之だったのだ。

城に忍び込んだ夕月丸の応対をしていたのも実は彼で、かねてより、加賀爪丹波の動静を、兄の依頼により秘密裏に探っていたのだった。

その事を知った丹波は、もはやこれまでと覚悟し、その場で、腹かっさばいて果てる。

それを見た一文字入道は、義晴に飛びかかろうとするが、信之から斬られてしまう。

五郎は、夕月丸と共に、オンゴを斬り捨てる。

ここに至って、信之は、まだ争っている家臣たちに鎮まるよう命ずる。

足利義晴は、刀を納めたカラコジアの勇士と桜子に、今回の恩賞としてこれを渡すと指輪を差し出してみせる。

信之の老婆心で、今まで預かっていたのだと言う。

ここに、七つの十字形と指輪が揃い、カラコジアの財宝は、26あるカラコジアの山の13番目の峠にある、五色の岩の下に眠っている事が判明する。

晴れ渡る空の下、足利義晴の城を出立し、国に戻るために都を凱旋する五郎、桜子、トルハンらの行列があった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「新諸国物語 七つの誓い」の完結編に当る。

このシリーズ全般に渡って言える事だが、長いストーリーを映画版としてまとめるに当り、要所要所ではしょっている箇所があるようで、所々、不自然な部分に出くわす。

例えば本編でも、山を逃げる五郎と桜子には、杢助も同行していたはずなのだが、いつの間にか、杢助の姿は消えてしまい、次に杢助が登場するシーンでは、呑気に、ゲンジや楓と共に、歌を唄いながら歩いていたりする。

逃げる途中で、桜子たちとはぐれた杢助が、その後、ゲンジたちと合流したと言う事なのだろうが、桜子の安否など無関心風に見える杢助の態度には、やや不自然なものを感じる。

バチの中から指輪が消えているのを知った桜子が、すぐに黒頭巾を疑い、その後、一人で襲撃すると言う短絡的な行動も、桜子の姫としてのキャラクターとしては似つかわしくないようにも思える。

そうした細部の粗探しはさておいて、本作は最終編と言う事もあり、南禅寺での戦いやラストの大立ち回りなど、見ごたえたっぷり。

特に、若き美剣士大川橋蔵の活躍には、胸踊らせるものがある。

この作品で、主役中村錦之助に継ぐスターとして育てようとする配慮があったのかも知れない。

ラスト、王子様のような扮装で馬に乗る錦之助の姿は珍しい。