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紅の海

1961年、東宝、国弘威雄脚本、谷口千吉監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

海上保安庁の高梨(佐藤允)が、逮捕者を三人連行して下関港に帰港した時、親友の矢藤(稲垣茂正)とその妹妙子(星由里子)に声をかけられる。

近づくと、妙子が「兄さん、止めて!」と頼んでいる。

何の事かと海に目をやると、高梨や矢藤とは高校時代からの悪友である竜進丸船長岩佐竜造(加山雄三)と春鷹丸船長村井辰朗(夏木陽介)が、出発前の互いの船の上で罵倒しあっている。

いつもの仲良し同士のじゃれ会いのようなもので、高梨もバカバカしいだけ。

互いの船に乗っている両者の父親もあきれ顔。

ようやく二隻が出航すると、見送る高梨と矢藤は、そろって「バカヤロー!」と送りだし、妙子を呆れさすのだった。

タイトル

春鷹丸のマスト上では、歌を唄いながら村井がペンキを塗っている。

併走する竜進丸の甲板上で、同じく唄いながら猟銃の手入れをしていた岩佐は、その猟銃で、春鷹丸のマストの上の村井の側に吊り下げてあったペンキ缶を撃ち抜いてみせ得意がるが、村井は激怒し、又しても、両者の口げんかが勃発する。

やがて、操舵室に乗り込んだ二人は、スピード競争を始める。

そんな岩佐の元に、船員の金沢(中丸忠雄)が慌てた様子でやって来て、矢藤が乗っている玄秀丸からSOSを受けたと伝える。

海賊船から襲撃されたので救援を頼むと打電し続けていると言う。

しかし、岩佐の父親太一郎(小杉義男)は、その対処は海上保安庁に任せろと、すぐにでも救援に向おうとしていた岩佐をたしなめる。

しかし、高校以来の友達を見捨てておかれるかと、岩佐はそのまま救援に向う。

春鷹丸も、海上保安庁の船も同じ海上を目指していた。

玄秀丸に到着した所、矢藤はすでに死亡しており、海の中から、賊の一人と思われる男のからだが引き上げられる。

玄秀丸に乗り込み、その賊の身体を調べていた岩佐は、服の中から札束が見つかったと村井に伝える。

高梨が言っていた、海賊の仲間なのかも知れない。

しかし、その男は何も言わないまま息絶える。

下関と対馬間の連絡船玄秀丸が海賊に襲撃されたと言うニュースは、ただちに新聞紙上に載る。

矢藤の葬式に出かけた岩佐と村井は、嘆き哀しむ妙子や母親の姿、さらに、矢藤の制服や自分達と一緒に撮った記念写真を見ている内に、何とか独力で海賊を捕まえようと決意する。

海上保安庁の森山課長(田崎潤)は、部下である高梨に、この港にはいくつ漁業会社があると思うと尋ねる。

262あり、港に係留された1050隻あまりの手ぐり船の中に、海賊がいないとは限らないと警告するのだった。

春鷹丸に戻った村井の元に、船員の梅木(加藤春哉)が、玄秀丸で見つけた海賊の服の中から、札束だけではなく、タバコとマッチも出て来たはずだが、その事は岩佐から聞いているかと聞いて来る。

岩佐は、そのマッチに書かれた店の名前「いその」「かえで」を頼りに、一人飲み屋に乗り込んでいた。

相手をしにやって来た恵美子(水野久美)に、新聞に乗った海賊の写真を見せ、この男がここに来たはずだがと聞く。

恵美子が口を開きそうにもないのを見ると、岩佐は金を出して見せる。

その金を見た恵美子は、その男は一週間前に来たが、相手をしたのは自分ではなく、今は高崎町に立っているチィちゃんだと洩らすが、気がつくと、もう岩佐の姿も札束も消えていた。

チィちゃんなる女性を求め繁華街の高崎町をうろつく岩佐を、無気味なチンピラ風の男佐々木(田中邦衛)が尾行しはじめる。

一方、村井も、単独行動をしている事を知った岩佐の姿を探し求めていた。

やがて、繁華街で岩佐の姿を発見するが、その後を尾行している佐々木の姿にも気付き、こっそりその後をついて行く。

やがて、岩佐は、とあるキャバレーに入っていく。

チンピラも、そのキャバレーに入った事を確認した村井は、自分も客として乗り込んでみる。

客席から岩佐の行動を監視してみると、ホステスと踊る振りをしながら、チィちゃんの情報を強引に聞き出そうとしている。

岩佐は、怯えるホステスの口から、チィちゃんの組の人は恐ろしいと聞き、背後に組関係が絡んでいる事に気付く。

村井の方は、階段口に現れた佐々木と見知らぬ男の姿に気付き、相席のホステスに誰かと聞くと、佐々木は知らないが、見知らぬ男の方(平田昭彦)は、この店の支配人だと聞かされる。

村井は、自分もホステスと踊りがら、フロアの岩佐に近づき、尾行されているとこっそり知らせるのだった。

外に出た岩佐を又追跡し始めた佐々木を、先回りして待ち受けていた村井が捕まえ、正体を聞こうとするが、チンピラの仲間たちに取り囲まれてしまう。

岩佐と村井は、いつものように協力しあい、チンピラどもを叩きのめす。

それを見ていた佐々木は、ドスを拳銃に替え、二人を狙おうとするが、そこにサイレンの音が近づいて来たので引き上げる事にする。

二人きりになった村井は、岩佐の単独行動を止めるように忠告するが、岩佐は、友達の矢藤が殺されたんだ、自分で何とかする!警察や保安庁など信用できないといきり立つ。

さらに、村井が妙子に気がある事をからかって来たので、村井もかっとなり、自分の方が先に海賊を見つけてやると言い出す。

そんな二人は、矢藤の葬式にも顔を見せていた澤井水産会社の社長(松村達雄)に呼出され、何故、最近漁に出なくなったのかと聞かれる。

それに対し、岩佐と村井は、やる事がある…とだけしか答えない。

これには澤井社長も困惑し、この前の海賊船騒ぎの時も、救援しに行って漁はできなかったため100万円欠損していると打ち明ける。

今後も、漁に出ず、損害が膨らめば、担保にしている竜進丸と春鷹丸をもらわねばならないと説得するが、若い二人は頑として言う事を聞かない。

そこに、妙子が先日の香典返しにやって来る。

その妙子は、一緒に澤井水産を後にした岩佐と村井に、兄の遺品として受取ってくれと、矢藤が愛用していた万年筆とシャープペンを渡す。

岩佐と村井は、明日から東シナ海に漁に出ると打ち明けるのだった。

その東シナ海での出来事、深夜、網を手繰っていた岩佐の船は、何者かに銃撃を受ける。

海賊船の襲撃だった。

岩佐はとっさに、操舵室にいる父親から猟銃を投げてもらい、応戦を始める。

近くで漁をしていた村井は、竜進丸に、網を切って逃げろと電話で知らせて来る。

あじさばで満杯になった網を引いたままでは、竜進丸はすぐに海賊船に追い付かれてしまうからだ。

しかし、折角捕った魚を捨てる気にはなれない岩佐は、金沢から伝え聞いたその忠告を無視しようとする。

しかし、その直後、金沢が銃弾に倒れたのを見た岩佐は、網を切るよう船員たちに命ずる。

逃げる竜進丸の上から、悔しさを噛み締めながら、岩佐は海賊船に向けて発砲を続けていた。

下関に着いた岩佐と村井は、海上保安庁に呼出され、森山課長と高梨から、何故、岩佐の船が海賊襲撃されたのか尋問を受ける事になる。

どうやら、保安庁の方では、二人が秘密裏に調査をしていた事を知っていたらしい。

屋上に二人を呼出した高梨は、この事件から手を引くよう忠告するが、岩佐は、今回の事件で、自分は500万の欠損になったと対立する。

しかし、村井に方は、もし、高梨たちの方に、犯人を掴む確証があるのなら手を引いても良いと言う。

高梨は、少し躊躇した後、確証はあるが、それは職務上言えんとはぐらかすので、村井の方も、それでは俺も手を引く事は出来ないと言い返す。

そんな高梨を、事務員の優子(桜井浩子)が呼びに来る。

警備一課長(上原謙)が報告を求めていたのだった。

優子から、待合室で待つように指示された村井と岩佐だったが、同じ部屋にいた保安庁への情報屋から、同じ密告者仲間と間違えられ、死んだ海賊の生前の動きの情報を聞き出す事に成功する。

高梨は、いつの間にか二人の姿が消えている事に気付くが、情報屋から、その二人なら、死んだ海賊が神戸から横須賀、そして下関にたどり着いたと言う自分の情報を聞くと先に帰って行ったと聞かされ悔しがる。

情報屋の密告情報に関しては、保安庁でもすでに知っていたネタながら、それをあの二人に知られてしまったからだ。

保安庁を後にした村井が、一人でどこかに向おうとするのを認めた岩佐は、妙子の所に行くのだろうと当て擦る。

そして、妙子は自分も狙っているのだと宣言するのだった。

プレゼントを持って観光バスの発着場にやって来た村井はガイド役の妙子に話し掛けるが、ちょうどバスの出発間際だと言うので、それでは、途中休憩する火の山ロープウェイのところで待っていると告げる。

出発した観光バスの中、妙子が下関港の説明をし始めると、客の中から、船舶数の間違いを指摘する声がある。

見ると、後部座席に、ちゃっかり岩佐が座っているではないか。

赤間神宮を紹介した後、進行中、又しても岩佐が声をかけて来る。

トイレに行きたいのでバスを止めてくれと言うのである。

さすがにこの迷惑行為にはお冠の妙子だったが、火の山ロープウェイの休憩所で話している内に。互いに笑いあってしまう。

妙子は、兄が独身のまま死んでしまったので、母親は私に早く…と言いかけて、出発時間に気付きバスに戻りかけながらも、その先を聞きたがる岩佐に、今度の日曜日に遊びに来てと誘う。

それを聞いた岩佐は、求婚されたと有頂天になり飛び上がる。

そして帰りしな、たまたま階段を登って来た村井に出会うと、その手にしていたアイスクリームを一つ失敬して、上機嫌のまま帰るのだった。

その様子を見た村井は、岩佐に遅れを取った事を悟り、持っていた土産のアイスを通りかかりの他人に押し付けると、自分もさっさと港に帰る事にする。

船に戻った村井に、梅木が、さっきまで保安庁の高梨が来て待っていたと伝える。

父親の村井六之助(田島義文)からは、澤井社長から一緒にやらないかと誘われたと伝言を聞く。

すでに12隻もの船を持つ澤井水産の下で働く事ができれば、今まで以上に良い仕事ができるはずだと六之助が嬉しそう。

しかし、村井はそれには返事をせず、自分は今から、阿蘇に行くと言って船を降りる。

言葉とは裏腹に、横須賀行きの列車に乗り込んだ村井の隣に、突如岩佐が乗り込んで来る。

心配した六之助から電話をもらったと言うのだ。

一方、高梨は一人恵美子の店に来ていた。

恵美子に、森崎組から脱出させてやるから、組の内情について、知ってる事を洗いざらい教えて欲しいと迫っていたのだ。

横須賀にやって来た村井と岩佐は、百円宿に転がり込んでいた。

女将さえ(中北千枝子)は、二人の手を見て船員だとすぐに見抜くと、自分の亭主も船員だったと馴れ馴れしく話し掛けて来る。

それを聞いていた乗客の一人銀太(沢村いき雄)は、亭主は岡に上がって、女を作って逃げたとまぜっ返す。

その日から、二人は、横須賀の街を当てもなく彷徨い歩くが、杳として海賊との接点はつかめない。

イライラした二人は、又しても、自分は絶対に諦めないと意地の張り合いをしてしまうのだった。

その頃、高梨は恵美子の情報を元に、怪しい船の動静を記録し続けていた。

一緒に行動していた恵美子には、何とか、ボスの正体を知りたいと迫るが、森崎組のボスが、キャバレーの支配人である事までしか、恵美子は知らないようだった。

ある日、いつものように安宿で起きた村井と岩佐は、自分達の財布を盗まれている事に気付く。

銀太や同じく常連客の房江(北あけみ)は、その犯人は三郎だろうと見当をつけるが、もう盗まれた金が戻る事はないと二人を嘲笑するのだった。

無一文になり、もはや下関に帰る金もなくなった二人は公園で呆然としていたが、そこにアイス売りのおばさんが、ボロい商売を探しているのはあんたたちか?下関に行くか?と声をかけて来る。

数時間後、二人は、黒めがねの怪しい男(天本英世)に連れられ、下関に向う列車に乗っていた。

下関駅に着いた二人に、黒めがねの男は、午前6時に、火のついてないタバコを加えた男が竹崎渡船場にいるから、そいつと合流しろと命じて金を渡す。

その夜、近くの展望台で時間を潰す事にした村井は岩佐に、そろそろこの事件は高梨に任せた方が良いのではないかと言い出す。

しかし、相変わらず、自分一人でもやると頑固な岩佐の態度にキレ、二人は又殴り合いの喧嘩をする事に。

翌朝、岩佐は別の仲間を連れて竹崎渡船場に向う。

一方、村井の方は、その岩佐の動きを追尾しようと春鷹丸で待機していたが、そこに、金沢ら竜進丸の船員がやって来て、二隻で追尾すると目立つから合流させてくれと言う。

それを村井が歓迎したのは言う間でもない。

岩佐と仲間は、指令通り、くわえタバコの男(八色賢典)を見つけ、その男に言われるまま謎の島に連れて行かれる。

その島に集められた船員たちは、やがてやって来た船に乗せられる。

その船には、別の船員たちが乗っており、その船員たちの交代要員と言う事らしい。

10ノットと言う速力と方向を指示された岩佐らは、その言うなりに船を進めるが、船員の中には、途中でビビって、帰った方が良いと言い出す始末。

しかし、岩佐は、そのまま対馬に向う。

陸地に降り立った岩佐らは、とある倉庫に連れて来られると、そこに積んであった荷物を運び出せと命じられる。

岩佐がその荷物に手をかけ、進路は?と尋ねると、「地獄行きさ!」との声が響く。


そこに立っていたのは、佐々木とキャバレーの支配人、つまり森崎組のボスだった。

二人に銃口を向けられた岩佐の前に、階段を降りて来る足音が響く。

岩佐に向き合ったその男は、何と、澤井社長だった。

彼こそが、海賊の真のボスだったのだ。

澤位は、私を知っているものは易化しておかない主義だ。保安庁も動き始めたようだから、この仕事を最後に海外に渡ろうと思うと呟く。

次の瞬間、岩佐は、持っていた荷袋を、天井から下がった電燈にぶつけ、照明を消して逃げ出す。

岩佐と仲間は海岸ベりまで逃げて来るが、海賊一味は銃を撃ちながら追って来る。

窮地に追い込まれた岩佐らだったが、その時、海の向こうから海岸に近づいて来る春鷹丸を発見、迷う事なく海に飛び込む。

海賊は、その海に向って発砲して来るだけではなく、船に乗り込んで、執拗に春鷹丸を追って来る。

春鷹丸から繋がった浮き輪に捕まった岩佐と仲間は、銃撃の間隙をぬって、何とか船の甲板に登る。

それでも、夜の海での追跡劇では、春鷹丸に不利だった。

村井が甲板で応戦する中、操舵室に飛び込んだ岩佐は、春鷹丸の進行方向を反転させ、海賊船の側面にぶつける。

海賊船に飛び乗った村井と岩佐は、海賊たちと戦いはじめる。

キャバレーの支配人と佐々木を倒した岩佐と村井は、澤井に迫る。

すると、急にしおらしくなった澤井は、二人に命乞いを始める。

しかし、その時、気絶していた佐々木が、落ちていた猟銃を拾い上げ、二人の前に立ち上がると、澤井も本性を現し、再び、二人に銃口を向ける。

その時、突如、澤位と佐々木に照明が当る。

高梨らが乗った海上保安庁の巡視船「くろかみ」が近づいて来たのだ。

怯んだ佐々木の猟銃を、岩佐は奪う。

事件解決後、下関の海上保安庁に戻った高梨は、岩佐と村井には、いつも自分の仲間を尾行させており、逐一、二人の行動は把握していたのだと明かす。

そして、二人を銃器不法所持で摘発すると息巻くと、それを側で聞いていた森山課長は、だいぶん手厳しいなとからかうのだった。

そうした高梨らの様子を遠目で見ていた恵美子も又、ヤクザとの縁が切れ、嬉しそうに帰って行く。

岩佐と村井は、出迎えに来ていた妙子とその母親に出会い、互いに満足そうに微笑む。

しかし、嬉しそうな妙子が二人に手渡したのは、自分の結婚式への招待状だった。

二人とも、見事にふられたのだった。

唖然とする二人。

しかし、後日、いつものように、喧嘩をしながら、スピード競争をする竜進丸と春鷹丸の姿が海上にあった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「大学の若大将」(1961年7月)が封切られた直後(8月)に公開された青春海洋アクションものだが、加山雄三、星由里子、田中邦衛と言う「若大将トリオ」が揃って出演している。

若大将(加山雄三)とすみちゃん(星由里子)の関係は、「若大将」シリーズにかなり近いが、田中邦衛が演じている無気味なチンピラ役は、青大将とは全く違っている。

「悪い奴ほどよく眠る」(1960)で演じた殺し屋に近い凄みがある。

星由里子は笑顔が愛らしいの一言。

加山の実父である上原謙まで出演しておりサービス満点。

上原謙は、「若大将シリーズ」の初期作品にも登場しており、自分の息子の作品をきちんとバックアップしている。

夏木陽介や佐藤允も若々しいし、水野久美もきれいな盛り。

真犯人探しとしては、やや凡庸な展開で、敵の大ボスの正体は、勘の良い人間なら、最初に登場した段階から何となく分かるレベル。

ただ、全編に渡り、下関のロケや本物の船を使った海の上のシーンなどが登場し、地方色にも富み、なかなか見ごたえがある海洋ものになっている。

夜間の海面シーンだけは、「モスラ」と同時期の円谷英二の手になるミニチュア特撮である。

元気な盛りの加山と夏木の、身体をはったアクションが心地よい痛快娯楽になっている。

惜しむらくは、ちょっとしか出番がない天本英世が、後半全く活躍しない事くらいか…