TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

きかんしゃやえもん
D51の大冒険

1974年、東映、阿川弘之原作、山本英明+松本功脚本、田宮武監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

(実写)夢の超特急「ひかり」が、富士山の裾野を走り抜ける。

色々な電車が日本中を走っている。

そんな中D51の機関車も走っている。

窯を開き、石炭をくべ、汽笛を鳴らす。

タイトル(タイトルバックは実写映像)

(アニメ)ネズミの親子が、機関車やえもんの運転室に揃っている。

父親ネズミのチュー兵衛(声-富田耕生)が、母親ネズミのチュー子(声-高橋和枝)と力を会わせて、窯焚きをする。5匹の子供達がそれを応戦する。

一方、線路の側にあるとある小学校では、正くん(声-里見京子)が、友達と校庭で遊んでいたが、体の大きな苛めっ子から、木の上にある蜂の巣を落として、蜂蜜を取るから、お前一番下になれと命じられていた。

正君は、仕方なく、自分が一番下になり、他のクラスメイトたちが、その背中に登って組んで行く。

その一番上に登ったガキ大将は、竹の先で蜂の巣をたたき落とそうとするが、その時、線路の向こうから近づいて来る機関車やえもんの汽笛の音が聞こえたので、機関車好きの正はそれに気が付き体を動かしたので、上の連中は皆落ちて、怒った蜂に追われる事になる。

機関車やえもんを見に行こうと駆け出した正の後を、犬のキング(声-滝口順平)も追って行くが、空腹のあまり、道に落ちていたがま口を食べようとする始末。

やえもん(声-熊倉一雄)の車内では、チュー兵衛親子が協力して、ガタが来ているやえもんの異常箇所がないか捜すため、トンカチであちこちを叩いて廻る。

しかし、さすがに年を重ねたやえもんはバテ気味で、とある踏切に差し掛かったところでストップしてしまう。

力んで走ろうとするが、どうしても力が出ない。

ネズミ親子は、ピストンが神経痛かと心配する。

踏切内で立ち往生したやえもんのため、ダンプや車の列が通過できなくなり、一斉に文句を言いはじめる。

先頭にダンプに乗っていた、がらの悪いネコ、ドラ(声-八奈見乗児)が、やえもんに飛びかかって来たので、チュ−子は煙突の中に逃げ込む。

そこに駆け付けて来たのが正で、すぐさま、やえもんの運転席に乗り込むと、窯焚きを始める。

先ほどのネコは、ハリケーンドラだと名乗ると、ボクサー姿になり、犬のキングを殴りつける。

ネズミの子供達は、すぐさまミルクのビンを持って来て、空腹で力が出ないキングに飲ませる。

すると、ホウレン草を食べたポパイのように、急にキングは力がみなぎり、ドラを叩きのめすのだった。

正は、やえもんに「出発!頑張るんだ!」と声をかける。

(実写)走り去る機関車

(アニメ)夜の操作場

大ボスの電気機関車・ゴン太(声-柴田秀勝)、ジーゼル機関車・ハイハイ(声-山下啓介)、軽薄な現代娘の電車・ハナウタ(声-つかせのりこ)、気取りやの新幹線・マッハ(声-千々松幸子)たちは、疲れて寝入っていたやえもんの悪口を言っていたが、当のやえもんは楽しい夢を見ていた。

(実写)雪の中走る機関車

(アニメ)幼児時代の正が、近所の子供達から虐められ、泣きながら「やえも〜ん」と叫ぶ。

すると、やえもんは、正を手に取り、「泣くな、なくなったお父さんが悲しむぞ」と勇気づけるのだった。

そして正は小学校に入学する。

そんなやえもんは、他の電車たちから起こされる。

今日の踏切でのぶざまな出来事を聞いたと言うのだ。

お前は時代遅れだし、自分達の平均時速が落ちてしまうので、山二つ向こうの機関区に行ってもらうと言われたやえもんは、自分も昔は、鈴生りの客を乗せたものだと反論するが、他の電車たちの「出て行け!」コールはやまなかった。

そんな事は知らない正は、友達のハル子ちゃんと土手で雲を眺めていた。

正には、雲がやえもんの姿に見えていた。

正は、自分のお父さんは、昔、やえもんに乗っていたのだが、事故に会って亡くなったのだと教え、自分は将来、やえもんの運転手になりたいと夢を語る。

すると、ハル子も、自分は将来、スチュワーデスになりたいと夢を語り、二人は一緒に歌を唄いはじめる。

(実写)ジャンボジェット機と新幹線

(アニメ)二人で唄っていた正とハル子の近くにやって来たバスから、ボーイスカウト姿になった苛めっ子たちが声をかける。

ガールスカウトのユニフォームを着ていたハル子は、正に申し訳なさそうにバスに乗り込む。

これから、ボーイスカウトの集会があると言うのだ。

苛めっ子は、窓から正に、食べかけのリンゴを投付けて来る。

それまできれいに澄んでいた青空の色い雲が、黒い雲に食べられて行く。

そこに駆け付けて来たキングが、やえもんが遠い田舎に連れて行かれると、正に知らせる。

(アニメ)鎖に縛られるやえもんと(実写)機関車

(アニメ)やえもんは、まだまだここで働ける!と抵抗する。

正はキング、チュ兵衛の子ネズミ、リンリン(声-平井道子)とタンタン(声-丸山祐子)と共に、やえもんに会いたくて後を追う事にする。

しかし、その途中、あのドラに出会い、リンリンとタンタンは逃げ出す。

スクラップ場に逃げ込んだリンリンとタンタンは、落ちていた空き缶の中に入る。

ドラは追い詰めたと、その空き缶を取り上げるが中身は空っぽ。

その下の地面に穴が空いており、リンリンとタンタンは、そこから逃げおうせたのだった。

その頃、やえもんは、田舎の駅に連れて行かれる事になった我が身を悔やみ、「しゃくだ!こんな事なら、一目でも正君に会いたかった…」と呟く。

正やキングと合流して又歩き始めたリンリンが、しくしく泣き出したので、正は「頑張れば、行けるよ」と勇気づけながら唄いはじめる。

皆も、その歌を唄いながら、又元気に歩き始める。

川を渡り、山道に差し掛かった一行だったが、タンタンは足にマメを作ってしまい、松葉づえをついていた。

キングは、そんなタンタンを自分の肩に乗せてやるが、やがて、雨が降り始める。

やえもんと一緒に田舎の駅に来ていたチュ−兵衛、チュ−子夫婦は、姿が見えなくなったリンリンとタンタンの事を心配していた。

その頃、正たち一行は、とある納屋の中の、藁にくるまって雨宿りをしていた。

外では雷が鳴っている。

正は、この雨で、やえもんが神経痛に鳴っているんじゃないかと心配しながら、いつしか眠っていた。

正は、父親が事故になった時の事を夢に見ていた。

(実写)雪の中、脱線転覆する機関車

(アニメ)やがて目覚めた正たちは、小降りになった雨の中、又、元気に駆け出して行く。

田舎の機関区、やえもんがかゆがるので、チュ−兵衛たちは一家総出でやえもんの体を掃除してやる。

そこに、正とキング、そしてリンリンとタンタンが到着する。

キングは、やえもんと再会出来た感激で泣きはじめる。

しかし、正の姿を見たやえもんは、お母さんが心配しているよと叱りつける。

チュー兵衛一家は、その後も、やえもんの掃除を、歌を唄いながら楽しそうに続ける。

歌のイメージシーン

(実写)走る機関車

(アニメ)正を乗せたやえもんは、早くお母さんが待つ町へ連れて帰ってやろうと線路を走っていたが、山道の途中で馬力がなくなり苦しんでいた。

その横を、ディーゼル・ハイハイが楽々追い抜いて行く。

それを見た正は、窯を開け、石炭を足すと、チュ−兵衛一家は、線路に滑り止めの砂を撒きはじめる。

ようやく力を得たやえもんは、張り切って煙をはき、ハイハイを追いこすが、その際、煙突から出た火の粉を浴びせてしまい、ハイハイは大火傷を顔面に負ってしまう。

それを操作場で聞いたマッハは、「スクラップだ!」と怒鳴り付ける。

すっかり気落ちしたやえもんは、張り切ってハッスルし過ぎたんだと言い訳をしながら小さくなっている。

それを横で聞いていた正は、悪いのはハイハイの方じゃないかと弁護する。

チュ−兵衛一家もキングも、やえもんをかばおうとするが、やえもんはそんな正に、家に帰るように促す。

しかし正は、自分が生まれる時、産気づいた母さんを、国鉄病院のある町までやえもんが運んでくれたと、母さんから聞いたと打ち明ける。

それを聞いたやえもんは、自分もまだまだ働けるんだ!と元気を取り戻すが、他の電車たちは「スクラップだ!」の合唱を止めようとしなかった。

その頃、駅長室では、三人の職員たちが、やえもんを明日にでもスクラップにしようと相談していた。

そこに突然、三人組のギャングが乱入して来て、金庫の鍵を出せと迫る。

鍵を受取り、部屋の隅にあった金庫を開けると、そこには切符の山が積んであった。

それを見たギャングたちは大喜びして、これでこれからずっとタダで電車に乗れると、切符を全部奪い取って、逃亡を始める。

彼らが逃亡に使ったのは、操作場にいたジーゼル機関車・ハイハイだった。

驚いた他の電車たちだったが、その後を負う勇気は誰独り持っていなかった。

そんな中、やえもんだけが、レールジャックの犯人たちの後を追い掛けはじめる。

りんりんは、「空を飛ぼう!」と言い出し、「へんし〜ん」と叫ぶ。

そして、乗り込んだ正たちは、自分たちを勇気づけるために、全員歌を唄いはじめる。

その頃、山道に差し掛かっていたハイハイは、馬力不足で登れないばかりか、逆にずるずると後退をはじめていた。

それを、追い付いたやえもんが伸ばした手で、後ろから支える。

その間に、正やキング、ネズミたちは、前のハイハイに乗り移る。

しかし、支えているやえもんの体力は限界に近づいていた。

ネズミたちは、ギャングたちを、ハイハイの屋根の上から落とそうとする。

キングは、又、空腹で力がなかったので、急いでリンリンとハイハイが、ミルクを持って来て飲ませる。

またまた、力がみなぎったキングは、ギャングたちをのしてしまうのだった。

(実写)走る機関車

その内、ハイハイと、それを押すやえもんの車体は、トンネルの中に差し掛かる。

ギャングたちは、ハイハイの運転席に入り込み、自分達の操縦でやえもんを振り切ろうとするが、トンネルを抜け、見えて来た視界の向こうに横たわる線路のすごいカーブの連続に怯え出す。

それに気付いた正は、ここままでは脱線すると気付く。

そこにようやく、一旦は距離を離されていたやえもんが追い付いて来る。

ハイハイの車体に手を伸ばし受け止めると、必死にブレーキをかけ止める。

これには、運転席のギャングたちも大喜び。

しかし、捕まっては大変と、ギャングのボス(声-八奈見乗児)は正たちに銃を向けて来る。

それを素早くキングが奪い取って、逆にギャング目掛けて発砲するが、中から出て来たのはただの水、銃は玩具の水鉄砲だったのだ。

さらに、怒ったやえもんが鳴らした大きな汽笛の音で、ギャングたちは気絶してしまう。

やえもんは、ハイハイの車体を押して、元の駅に戻る事にする。

「発車〜1でっぱつ!」とやえもんが叫ぶと、運転席にいたキングが警笛を鳴らす。

こうして無事、ギャングを捕まえて駅に戻って来たやえもんや正たち。

駅長たちは、正に感謝状を贈る事にする。

そして、欲しいものがあったら言ってごらんと言われた正は、迷わず、やえもんをスクラップにしないで下さいと願い出る。

それを聞いた駅長は、嬉しそうに頷いて、「良いとも。鉄道公園で働いてもらう事にしよう」と約束する。

それを聞いた正は、「友達も、やえもんに乗せてもらいたい」と頼む。

駅に招待された苛めっ子たちは、仲直りしてくれるかい?と、照れくさそうに正に謝るのだった。

操作場では、ハイハイもやえもんに「さすが先輩!」と感謝しており、新幹線のマッハも「40年も働いて来ただけの事はある」と言い、他の電車たちも、素直にこれまでのいじめを謝るのだった。

そんな仲間の電車に見送られながら、正や、その友達を乗せたやえもんは、嬉しそうに駅を出発する。

「でっぱ〜つ!」

童画風アニメ

(実写)新幹線と機関車

(アニメ)新幹線とやえもんが、互いに手を振り合う。

やえもんには、あのドラも乗り込んでいた。

(実写)走る機関車に(アニメの)飛ぶ白鳥の群れが重なる…

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「キューティーハニー」「マジンガ−Z対ドクターヘル」「ミラクル少女 リミットちゃん」「飛び出す立体映画 イナズマン」「仮面ライダーX」などと一緒に公開された「東映まんがまつり」の一本。

実写とアニメを混合させた珍しい形式で作られており、東映動画の歴史の中でも異色作の一本なのではないだろうか?

SLブームを背景にした便乗企画と言えるだろう。

アニメとして、取り立てて面白いと言うほどではないが、幼児向けとしては無難な内容と言えよう。

特筆すべきは、劇中、正の父親が事故に会って亡くなる回想シーンに使われている実写フイルム。

もちろん、この映画のためにわざわざ撮られたはずもなく、加工して使われているが、元々は「大いなる鉄路」(1960)の一部。

脱線転覆した列車に駆け降りて来る人影は、おそらく三國連太郎の姿だと思う。

水木一郎が浪々と歌い上げる「♪ガタコンガタコン ゴ、ゴ〜ゴ〜!」と言う主題歌や、「♪頑張るんだ!ガタコンガタコン」と言う挿入歌は、すぐに口ずさめる楽しい曲である。

やえもんの声を演じている熊倉一雄も適役。