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実録三億円事件 時効成立

1975年、東映東京、清水一行原作、小野竜之助脚本、石井輝男脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

現実の三億円事件を実際に捜査した刑事、平塚八兵衛(本人)に対するインタビュー映像

平塚氏は、捜査方針のミスを指摘する。

武藤三男捜査課長(本人)に対するインタビュー映像

裏で手助けした人物もいると思うが、基本的には単独での犯行だと思うと述べる。

この映画に関してどう思うかと言う問いに対しては、こんなに金遣いが荒いのだったら、すぐに判明すると課長は言う。

犯人像に関して、平塚氏は、定職についてはいないだろうと想像を語る。

タイトル

ギャンブルとのかかわりについても指摘する平塚氏。

昭和43年9月 競馬場に来ていた西原房夫(岡田裕介)は、借金をしていた大島に見つかり、なけなしの金を取られてしまう。

しかし大島は、そんな西原を自分の車に乗せて帰ってやる。

一方、その西原とアパートで同棲生活を送っていた向田孝子(小川真由美)は、借金のカタとして、家財を一切、業者に持ち去られている所だった。

もぬけの殻となったアパートの室内で、残されていたアルバムや小学生用の国語のノートなどを呆然と眺めていたが、そのノートに、西原が書いたらしき犯罪を連想させる簡単な文章に目をとめる。

そこへ、子犬を抱えた西原が帰って来る。

その姿を見た孝子は、何もかもなくなったと言いながら、急に泣き出すのだった。

西原は、腹が減ったと台所でカレーを飯にかけて食べながら、俺がその内喜ばせてやると言うが、孝子はそんな西原に、先ほど見つけた国語ノートを突き付けて、これは何だと問いつめる。

西原は、実は八ヶ月前から計画通りやっており、ノートに記していた農協を脅かして400万円要求するのは、その大きな計画の目くらましに過ぎないと教える。

何億円も狙っているので、協力して欲しいと持ちかけ、二人は熱烈なキスを交す。

西原は、孝子を抱擁しながら、引っ越し先を探しておいてくれと頼む。

とある山の中、車の中で待機していた西原は、籍を入れておこうと助手席の孝子に打ち明け、それを聞いた孝子は一生離れないよと西原に飛びつく。

夏頃から、そんあ二人は多摩地区を中心に様々なものを盗んで収集を始める。

それらは全て、来るべき計画に必要な品物だった。

12月5日、二人は、新しいアパートの中で、週刊誌の文字などを切貼りして脅迫状作りをする。

6日早朝、多摩農協に対し、巣鴨の家を爆破すると言う脅迫電話を入れる。

ダイナマイトはまだ、8本残っているとも

その頃、計画に必要な道具はほとんど揃っていた。

8日には、スバルを覆っていたシートを盗む。

9日、盗んだバイクを白バイに偽装する作業が完了する。

10日早朝、雨の中、西原は白バイ警官に変装を終えていた。

そんな西原に孝子はキスをして計画の成功を祈った後、自分も車に乗り込んで出発する。

その頃、東芝の給与を輸送する現金輸送車が日本信託銀行国分寺支店を出発をしていた。

9時20分、西原はバイクに乗り出発するが、その際、バイクを覆っていたシートを引きずりながら走りはじめた事に西原は気付かなかった。

9時21分、西原は、走っていた現金輸送車を制止する。

会社が今、爆破されたので、この車も爆発物が仕掛けられている危険性があるので、調べたいと、警官に化けた西原は、助手席の男に話し掛ける。

そして、車に乗っていた4人の男たちが、雨の中降りると、西原は車の下に潜り込み、こっそり発煙筒を焚くと、爆発するぞ!と叫びながら、男たちをさらに遠ざけると、自分は運転席に乗り込むと、どうにか車を発車させる。

9時24分の事だった。

雨の中、取り残された事を知った社員たちは、会社に連絡を取ろうとするが、電話をかけた男が日本信託銀行国分寺支店長代理(中田博久)に伝えた内容は、今、警察の検問を受けていると言う何とも的外れなものだった。

まだ、現金を強奪された事に気付いていなかったのだ。

その間、待ち構えていた孝子の車と合流した西原は、現金輸送車の中のトランクを、孝子の乗って来た車に詰め替えていた。

孝子は、西原も乗せると、車を発車させるが、雨でぬかるんだ地面に車輪を取られて、なかなか進めない。

その頃、ようやく警視庁は、現金輸送車が強奪されたらしい事を確認していた。9時40分の事だった。

ただちに捜査が開始されるが、初動捜査に遅れがあった事は否めない。

西原と孝子は、山梨県大月市にある西原の実家の墓に到着し、その墓の遺骨入れに、ジュラルミンケースから黒いビニール袋に入れ直した札束を隠す。

子供達が近づいて来る声に焦りながら、セメントを混ぜ、ふたの周囲を固め終える。

そこへ、偶然、西原の母親が墓参りに来たのと遭遇するが、何とか、隠ぺいを終えていた二人は、そ知らぬ顔で迎える。

捜査本部では、盗まれた札束の内、番号を控えているものは500円札だけでしかないとの報告がなされている最中だった。

そこへのっそり入って来たのが、ベテラン刑事の葛木正雄(金子信雄)、大勢の刑事が居並ぶ中で、彼は不敵にも居眠りを始める。

慌てて注意する新人刑事に、君も今の内に眠っていた方が良い。この捜査は長引きそうだからと逆にアドバイスをする葛木。

葛木は、初動捜査の遅れのため、この事件のホシがあげられる可能性は少ないし、自分達刑事は、靴の7、8足も履き潰す可能性があると読んでいたのだった。

一方、無事計画を終了した西原と孝子は、ニュースを報ずるテレビを見ていた。

それから4ヶ月後、犯行に使われた濃紺のカローラと、ジュラルミンケースが発見されるが、そこからは、何も発見できなかった。

布団の中で西原と孝子がいちゃついている時、ローラー作戦でやって来た刑事の訪問を受ける。

孝子が応対し、西原房夫の職業を聞かれると「畜犬業」と答える。

その頃、捜査本部では、容疑者の一人としていた本田と言う18才の青年が、青酸カリで自殺したと言う事を報告していたが、葛木はそいつはホシではないと直感していた。

葛木は、独自の判断で捜査をはじめていた。

事件当日、偽装警官に会い、モンタージュの作成に協力した信託銀行の行員に、再度この写真の信憑性を尋ねた葛木だったが、行員は、本当は相手の顔など、ほとんど分からなかったと吐露する。

葛木は間違ったモンタージュの印象が、さらに捜査の邪魔になる危険性を察知、ただちにその写真の撤去を本部に願い出るが、実際に撤去されたのは、それから何年も経った昭和49年12月の事だった。

これと言った材料も得られないまま、捜査本部は、年々縮小されて行った。

昭和46年2月には45名、昭和47年にはFBI方式と言う事で18名…

昭和50年11月、不良退職者を調べ続けていた葛木は、西原房夫と言う証券会社元運転手の名前に注目する。

彼は、株券400万使い込んで辞めたと言うのだ。

その頃、盗んだ金には手をつけず、孝子が働いて得た金で生活し、鬱々とした毎日を送っていた西原は、酔って帰って来た孝子に嫌味を言う。

しかし、好んで働いている訳ではないと、孝子も反論する。

葛木は、目をつけた西原の実家に出向いてみる。

そして、その墓を暴こうとするが、同行していた若い刑事は、捜査礼状もないのに、そんな事をするのはまずいと制止しようとする。

しかし、勝手に、墓の遺骨入れを開いた葛木は、中を覗き込むが、そこは何も入っていなかった。

その時、側の道を走り抜ける一台の車があった。

西原が運転している車だった。

西原は、現金を隠している墓に、見知らぬ男が二人手を合わせている様子をバックミラーで確認して、慌ててアパートに帰る。

出迎えた孝子は慌てず、部屋の奥に隠していた段ボール箱を出してみせる。

不安を感じた孝子が、一人で、墓の中から現金を出しておいたと言うのである。

一応、一安心した西原だったが、警察の手が近づいている事を感じた孝子は、番号が警察に知られている500円札と賞与袋は、全部燃やした方が良いと提案する。

その晩、西原は近くの焼却炉で、500円札と賞与袋を燃やしていた。

翌日、西原のアパートを訪れて来た葛木だったが、もう二人は引っ越したと言う。

不審に思った葛木は、近所の公園で、奥さん連中への聞き込みを行っている最中、焼却炉付近で怪しい男の姿を夕方見たと言う主婦の言葉に注目する。

ただし、暗がりで後ろ姿だけだったので、顔は分からないのだと言う。

すぐさまその焼却炉を確認した葛木は、灰だけが残っていた中の様子を確認しながら、同僚の刑事に、自分は西原が本ボシに違いないと思うと打ち明ける。

西原と孝子は、荻窪のアパートに引っ越していた。

孝子は、残った金を銀行に入れたいが、一挙に大金を預けると怪しまれるので、西原が昔付き合っていた金持ちの夫人たちから名義を借りられないかと相談する。

その頃、犬から競走馬に興味の対象を変えていた西原は、孝子には無断で、さっそく昔付き合っていた一人久住みどり(絵沢萌子)の屋敷に裕福な身なりに変装し借金していた100万円を返しに行くと、今、優秀な馬がいるのだが、その馬主として名義を拝借できるような御夫人方を紹介してもらえないかと持ちかける。

馬だと、犬の交配料の40倍もの利益が得られる上に、名義を貸して頂いた方には、利益の5%を還元するとも解説する。

みどりは、その言葉に誘われる。

その後、みどりから紹介してもらった三人の夫人の前に、競馬評論家の遠山(田中邦衛)と言う男がやって来て、西原の見ている前で、契約書に実印を押させるのだった。

ある日、競馬場に聞き込みに来ていた葛木は、ペガサスクラブと言う馬を買うために2億8000万も出した人がいるらしいとのうわさ話を聞き、興味を持つ。

さっそく、遠山の所に事情を聞きに行った葛木は、三人の婦人の後ろには久住経済朋友会未亡人のみどりがいる事を聞き出す。

さらに、同席していた男の名前が西原だったと聞き、葛木の目が光る。

葛木はみどりに、西原の所在を聞きに行く。

刑事の訪問を受けたみどりは、急に西原を疑い、屋敷に来て説明するように電話を入れる。

西原は自分が勝手にやった事の結果を孝子に相談するが、孝子は、その時はじめて、段ボール箱に隠していた現金が消え失せている事に気付き呆然とする。

西原は、一生に一度だけ、馬を買ってみたかったんだと言い訳をする。

孝子は悔し泣きするが、みどりには自分が説明して来ると出かけて行く。

葛木は、そんな様子を、みどりの屋敷を外から張っていた。

葛木は、課長に西原が怪しいと進言するが、証拠がないと突っぱねられる。

葛木は、その後も、若い刑事と友に孝子の動静を監視続ける。

孝子は用心のため、西原との連絡も、銭湯の女風呂の中の公衆電話からかけるようにするが、その後、デパートで落合った西原は、みどりをつけていた葛木によって任意で引っ張られる事になる。

取調室に座らされた西原は、馬を購入した2億8000万の出所を葛木から追求される。

畜犬業で、どうやればこれだけの金が儲かるんだとも。

しかし、西原は一切口を割らないまま、拘留期限は切れかける。

課長は、拘留は今日までだと葛木に迫るが、葛木は、地方検察局に直接掛け合いに出向き、拘留期限を延長してもらうと、西原に馬に名義貸しした夫人たちから告訴されたと伝えに行く。

葛木は西原に、この7年間、どう言う気持ちで生きて来たのかと尋ね、今の住居に引っ越す前、焼却炉で何か燃やしていたな?とカマをかけたりする。

その頃、アパートでテレビを観ていた孝子は、ペガサスクラブが、伝染性貧血で急死したと言うニュースを知り愕然とする。

2億8000万が、その瞬間、消えてしまったのだ。

若い刑事が、そのニュースを報じた新聞を、留置中だった西原に見せる。

西原もショックを受け、泣き崩れる。

しかし、その後面会にやって来た孝子は、そんなニュースはあなたを陥れる罠で、ペガサスクラブは今でも元気だと嘘をつき、励ます。

その言葉を聞いた西原は元気付く。

葛木は、なかなか口を割らない西原を犯人と特定するために、焼却炉で見かけたと言う主婦を呼出すと、西原の面通しをしてみるが、主婦は分からないと言う。

葛木は、延長した拘留期限も迫って来たので、さらに西原を締め上げ、焼却炉から500円札の燃えカスが見つかったし、お前を見たと言う目撃者もいるんだとカマをかけても、西原は頑として口を開かない。

長い拘留で、疲労困ぱいになっていた西原だったが、馬の夢を見たと言い出す。

それで、500円札の燃えカスも罠だと分かったんだと。

とうとう、拘留期限の深夜0時を回ってしまった。

確証をついに得られなかった葛木は、この夜に完全犯罪などないぞと西原に捨て台詞をはくが、部屋を出た西原は、迎えに来ていた孝子と抱き合うのだった。

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

犯罪史上に残る「三億円事件」を元にしたフィクションの映画化。

一つの仮説と言う雰囲気だが、それなりに興味深く描かれている。

主役は、岡田裕介(現東映社長)とも、小川真由美とも、捜査をする側の金子信雄とも見えるが、素材のセンセーショナルな要素以上に、特にインパクトがあるキャスティングとも思えず、興行的に当ったのかどうかは不明。

地味なキャスティングではあるが、適材適所だとは感じる。

甘えたボンボン風の岡田裕介、色っぽい情婦役の小川真由美ともに、役にぴったりと言うしかない。

おそらく、平塚八兵衛氏をモデルにしていると思われるベテラン刑事葛木を演じている金子信雄は、何やら、テレビの通俗刑事ドラマにでも登場しそうな、かなり癖のある演技をしており、その辺が、この作品を好き嫌いの好みが別れる部分かも知れないが、この時代としては珍しく善人を演じているので、印象には残る。

要所要所のサスペンスの盛り上げ方などは、なかなか堂にいった感じがする。