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グリム童話 金の鳥

1987年、東映、ヤーコブ・グリム+ウィルヘルム・グリム原作、田代淳二脚本、平田敏夫監督。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

空から舞い降りた金色に輝く鳥が、大きな枯木の枝に止まると、その枯木が青白く光り、やがて魔女(声-富山敬)が登場し、高笑いをする。

タイトル

カイゼル国の中庭に生えている金色のリンゴの実がなる木。

ある夜、そのリンゴを金色の鳥が一個奪い去ってしまう。

カネリッチ国の魔女は、金色の鳥が持って来た金のリンゴを満て大喜びする。

金が大好きな魔女は、世界中の金を取って見せると無気味な笑みを浮かべるのだった。

翌朝、起きて来て、中庭の金のリンゴの数を数えていたカイゼル国の王様(声-宮内幸平)は、リンゴが9つしかない事に気付き、夕べの内に1個誰かに盗まれてしまった事に気付く。

前日までは、確かに10個あったからだ。

王は、息子たち3人に、今夜一晩中、金のリンゴの見張りをして、誰が盗むのか見届けろと命ずる。

青白い顔をした長男クロイラー王子(声-古川登志夫)と太った次男ワルナー王子(声-山本圭子)は、共に、その言い付けを面倒くさがり、夜になると、金のリンゴの木の側で居眠りをし始める。

独り起きていた、ちょっと頭の足りない三男坊のハンス王子(声-三輪勝恵)は、その日もやって来た金鳥を見つけて、射落とそうと、矢を放つ。

すると、金の鳥は逃げ去り、後には一枚の金の羽だけが落ちて来る。

ハンスは、眠りこけている兄たちを何とか起こそうとするが、二人とも全く起きる気配はなかった。

ところが、翌朝、王様の所に、金の羽を持って、夕べ、金の鳥がやって来た事を報告したのは、弟から聞いた兄二人だった。

ハンスは、自分が矢を射ったと話そうとするが、兄二人に邪魔され、手柄を横取りされてしまう。

しかし、カイゼル王は、そんな三人兄弟に、金の鳥を捜しに行けと命ずる。

一方、金に囲まれて過ごしていた魔女は、戻って来た金の鳥の羽が一枚抜け落ちている事に気付き激怒する。

すぐさま、鈴を鳴らし、手下の蝙蝠トリオを呼出す。

そこに、カネマッチ王(声-滝口順平)が兵士たちに、御輿を担がれて帰って来る。

戦争好きなカネマッチ王のために、魔女は、にんにくや七竃などを煎じたものを大きな壷の中の液体に放り込むと、その中から多数の魔法の子らが誕生して来る。

ロボットのような形をした、その魔法の子とは、不死身で、戦争の兵士としては理想的なものだったので、カネマッチ王は大喜びになり、戦争だ!戦争だ!と叫びながら、又、戦争をしに出かけて行く。

その頃、ハンスと兄二人は、金の鳥を捜す旅をしていた。

森に入った所で、兄二人が休憩をすると言い出す。

その時、ハンスは、近くから「待ちくたびれていたんだ」と言う声を聞く。

声の方を見ると、そこにいたのはキツネだった。

ルルと名乗ったそのキツネ(声-藤田淑子)、金の鳥はカネマッチ城にいると教える。

しかし、兄二人はその言葉を信用しようとせず、あそこには魔女がいるんだとおびえ、キツネに対し矢を放つ。

その瞬間、キツネは姿を消してしまう。

兄弟たちは、さらに山奥に登り、谷に倒れた大きな木を橋代わりに渡ろうとし、先にハンスを行かせる。

ハンスは、こわごわ木を渡ろうとするが、途中で足を滑らせ落ちかけるが、又、近くに出現したキツネのルルが助けてくれる。

しかし、そこに蝙蝠トリオが出現し、彼らを襲って来たので、全員、谷に落下してしまう。

兄二人は、途中蔦に捕まり、何とか助かるが、ルルとハンスは谷底に落ち気絶してしまう。

どのくらいの時間が建ったのだろうか?気がついたハンスは、空腹だと言うルルに、自分が持っていたリンゴとワインを差し出す。

その時、どこからか、とてつもなく大きないびきが響いて来る。

大きな岩の上から聞こえて来るので、ルルがよじ登ってみると、そこには巨大な足の裏が見えたので、驚いて下に落ちてしまう。

大きな足の正体は、ピンク色の巨大な鳥(声-八奈見乗児)だった。

大鳥は、ルルが乗っていたワインの匂いで目を覚まし、それを飲みたいと言い出す。

ルルは、飲ませてやる代わりに、自分達を崖の上まで乗せて行ってくれないかと頼むと、簡単だと、寝ていた岩の上から飛び立とうとするが、崖下に落ちてしまう。

太って羽が退化した大鳥は、飛べない様子。

仕方がないので、さらにちょっと高い岩の上まで大鳥を連れて行き、ハンスとルルはその背中に乗るが、助走を付けて飛び立とうとした大鳥は、又しても墜落してしまう。

やっぱりワインを飲まないと力が出ないと言うので、飲ましてやると、急に張り切り、ロケットのように飛び立つ。

どこまで行きたいのかと大鳥が聞くので、カネマッチ城までとルルが答えると、「勘弁してくれ!」と急に怯えた大鳥は、山肌にぶつかり墜落すると、ここからは歩いて行ってくれと、ルルとハンスを降ろしてしまう。

仕方がないので、その後、歩いて旅を続けたハンスとルルは、やがて、荒廃した街に到着する。

戦争好きな王様と魔女のせいで、誰の人がいなくなってしまったカネマッチの街だった。

ルルは、普通の鳥に金粉を塗っただけの偽金の鳥を取り出してみせると、自分は訳あってこれ以上城に近付けないので、ここからはハンス一人で行ってくれ。ただし、本物の金の鳥の側には金の鳥かごがあるが、くれぐれもその中に鳥を入れてはならないと忠告する。

ハンスは、こわごわ、城への道を一人で進む事になるが、急に物陰から飛び出した鴉の群れにも肝を潰す有り様。

城に入ったハンスは、そこで目的の金の鳥を見つける。

その頃、魔女は蝙蝠トリオと一緒に歌を唄って楽しんでいた。

ハンスが金の鳥に近づくと、難なく金の鳥は彼に懐いたので、安心したハンスは、ルルの言い付けを忘れ、側にあった金の鳥かごに金の鳥を入れてしまう。

すると、突如、鳥かごと金の鳥は巨大化し、ハンスも鳥かごに入った状態で、閉じこめれれてしまう。

そこへ、魔女に捕まっていた兄二人もつれて来られる。

金の鳥かごに捕えられたハンスを見つけた魔女は、カネマッチ王に、これで、カイゼル城を手に入れるチャンスが出来たと吹き込む。

そして、魔女はハンスに、白バラ城に住むローランド姫を連れて来たら、兄二人の命は助けてやると言い出す。

そんな事は出来ないと断わりかけたハンスだったが、兄二人が人質になっているとあっては言う事を聞くしかなかった。

鳥かごから出されたハンスは、見張り役の蝙蝠トリオと共に、白バラ城へ旅を始める。

森の中で眠る事にしたハンスだったが、蝙蝠トリオも一緒に寝入ると、間もなく、キツネのルルが出現する。

そして、白バラ城には中に入り込む秘密の入口があると耳打ちすると、これを見せるとローランド姫は必ずついて来るはずだと、ペンダントをハンスに渡す。

白バラ城の側に来たハンスは、ルルに教えられた秘密の入口である、庭の石の椅子を動かすと、その下に通路があった。

そこを通り抜けて向こう側に出てみると、そこは何と、ローランド姫(声-木の葉のこ)が眠っている寝室の中だった。

あまりに可愛いその寝顔を黙って見つめていると、やがて、目を覚ましたローランド姫がハンスに気付き、驚いて大きな声を出す。

しかし、ハンスが、ルルから預かって来たペンダントを見せると、これは兄さんのペンダントだと言い、会わせて、その人に!とハンスに頼む。

その前に着替えると、奥へローランド姫が引っ込むと、間もなく、白バラ王(声-青野武)と家臣たちが部屋に乱入して来て、ハンスは捕えられかける。

その時、ベランダに大鳥に乗ったルルが到着し、ハンスと着替え終わったローランド姫は一緒に乗って、城を飛び立つ。

それを監視していた蝙蝠トリオは、魔女に報告にするため飛び去って行く。

カネマッチ城の側まで来たルルはローランド姫に、兄に会うには魔女を倒すしかなく、ハンスとローランド姫二人にしか倒せないのだと説明する。

その時、側にあった巨大な石が落ちかけ、ハンスにぶつかる。

それを、昼夜監視していた魔法の子が発見、目から出るライトに照らされ、ルル、ハンス、ローランド姫の姿は見つかってしまう。

すぐに、大量の魔法の子らが、彼らの周囲を取り囲んでしまう。

三人の前に、カネマッチ王と魔女も姿を現す。

一体の魔法の子が、ローランド姫を捕まえる。

足が伸びた魔法の子らが、ハンスらに迫るが、ハンスは丸い石を転がし、まるでボーリングのように、魔法の子らを将棋倒しにする。

さらに、剣で斬り掛かって行くと、切断された魔法の子の体の中はもぬけの殻だった。

ルルも、ヨーヨーで加勢する。

しかし、一旦壊れたかに見えた魔法の子らは復活し、カネマッチ王が乗った御輿と共に、ハンスらをがけっぷちに追い詰めて来る。

間一髪、ルルはヨーヨーを向こう岸に投げ、全員、その紐に捕まって、反対側に飛ぶ。

しかし、それに気付いたカネマッチ王が乗った御輿を抱えた魔法の子たちの群れは、そのままがけっぷちに突進、王と共に崖下に次々と落下して行く。

それを見ていた魔女は、魔法の子らには「前に進め」としか教えていなかった事に気付き後悔する。

魔女は城に逃げ込むと、追って来たルルに、私の恐ろしさは、一番お前が知っているはずだと言いながら、新しい魔法の粉を調合すると、それを巨大壷の液体の中に投ずる。

すると、中の液体が見る間に渦巻きだし、その中から巨大な魔法の子が出現すると、魔女を手に取り、自らの頭の上に乗せる。

その巨大魔法の子に捕まったルルは、これを倒すには、清らかな心を持つ少年と少女が、金の馬に乗って戦う事だとハンスとローランド姫に叫ぶ。

二人は、側に置いてあった、魔女のコレクションの一つ、魔法の馬に跨がると、その馬は生き返ったように動き出すと、空中に飛び上がる。

さらにハンスの持った剣は輝き出す。

そこに、蝙蝠トリオが襲って来る。

それらを光る剣でやっつけると、ハンスは、剣を巨大魔法の子の頭部に突き立てる。

すると、巨大魔法の子は、魔女を頭に乗せたまま、城が建っていた山から墜落すると、谷底で大爆発してしまう。

やがて、巨大魔法の子は緑色に発光すると魔女の形をした枯木に変身してしまう。

その枝には、金の鳥が留まっていた。

その木の下にルルが倒れており、金の鳥が大空に飛び立った後、そこにハンスとローランド姫が駆け付けて来る。

見ると、倒れていたルルの体は金色に光って、やがて兄の姿に戻る。

兄に戻ったルルは、魔女にだまされてこんな姿になっていたと二人に説明し、ハンスに「ありがとう」と感謝するのだった。

谷底に倒れていた蝙蝠トリオのマントの下からは、子猫が三匹這い出して来る。

カイゼル国の祝賀パーティに招待された白バラ王とローランド姫。

白バラ王を接待していたカイゼル王は、ハンスの兄二人は、謹慎中だと説明する。

庭では、ハンス王子とローランド姫が、無邪気な喧嘩の最中だったので、それを城から眺めていた白バラ王は、あの二人が結婚すれば、我々も親戚と言う事になりますねと、目を細めるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

1987年春の東映まんがまつりの一本で、名目上は東映動画作品であるが、実質的には「協力」とタイトルロールには記されている外部会社マッドハウスに発注して制作したもの。

東映動画の名作路線としては、これが最後の作品なのかも知れない。

大橋学氏のイラスト風で個性豊かなキャラクターデザインや、絵本風に多彩な色彩を塗り重ねた幻想的な背景画が魅力となっており、従来の東映動画のイメージとはがらりと違ったモダンな仕上がりになっている。

主人公のハンスは、どことなく「スヌ−ピー」のチャーリ−・ブラウンに表情が似ているし、その線画はぶつぶつと切れたタッチで、従来のかっちりした線画とは違う、独特の軟らかい印象を出している。

魔法の子もレトロなロボットのような印象だし、大鳥も、何かアメリカのアングラコミックにでも登場していそうな、とぼけた味わいのキャラクターになっている。

ラストの見せ場である、金の馬に乗ったハンスとローランド姫が、巨大な魔法の子と戦うアクションシーンは、東映動画の名作「わんぱく王子の大蛇退治」(1963)へのオマージュのようにも感じられる。

洒落ていて楽しくて、ちょっぴり怪奇な味わいも楽しめる、アニメファンのみならず、絵本ファンやイラストファンも虜にしてしまいそうな名作である。