TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

ふり袖侠艶録

1955年、東映京都、旗一平原作、中田竜雄脚本、佐々木康監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

鏡山藩記録、正徳3年5月1日、城主松ケ枝主水守(三島雅夫)病気。

同6月10日、側室病死、度重なる不審事の責任を取って、家老梅垣庄左衛門(中村時十郎)は切腹を仰せつかるが、死に行く前に、妻に、甥の梅垣伊織を呼び寄せる事、後の事は江戸勤めの宍戸丹左衛門に頼むよう言い残す。

正徳5年4月、老女尾上(千原しのぶ)、江戸詰めになるも、若君病死。

ここに至って、床に伏せていた城主松ケ枝主水守は、家老宍戸丹左衛門(澤村國太郎)や黒崎半兵衛(山茶花究)を呼び寄せると、幼きわが子鶴丸(植木千恵)の事が気掛かりなので、長い間別れていた腹違いの弟大輔(尾上笹太郎)を呼び寄せ、鶴丸の後見人にさせたいと言い出す。

部屋に戻った丹左衛門に、妹の老女岩藤(浦里はるみ)は、このままでは、これまで食事に薬を入れて、城主を衰弱させて来た計画が無駄になると悔しがるが、丹左衛門は慌てず、長年会ってない大輔の顔など誰も知らないのだから、本人を殺害して、替え玉を連れてくれば、自分達の思いのままになると教える。

彼ら兄妹は、鏡山藩15万石を乗っ取ろうと企んでいたのだった。

山道で大輔が来るのを待ちかまえていた黒崎半兵衛は、大輔を油断させ、背中から斬り捨てる。

立ち去ろうとした黒崎半兵衛は、草むらから声をかけて来た酔った浪人(東千代之介)に気付く。

見られたからには斬ろうとした黒崎半兵衛だったが、この男こそ、替え玉として使えるのではないかと考え、そのまま城に連れて帰る。

宍戸丹左衛門から、金でも出世でも思いのままにさせてやるから、自分達の言う事を聞けと言われた浪人は、そんなものはいらないから酒を飲ませろと答える。

大輔の替え玉として、その浪人は、城主と接見する。

ある日、鶴丸を連れた尾上は、浅草の観音に参詣に出かけていた。

その時、幼い鶴丸は、境内から聞こえて来る歌声に耳をそばだてる。

その歌を唄っていたのは、お初(美空ひばり)と言う娘で、玄妙斎(川田晴久)が売っていた「神通膏」と言う塗り薬の客寄せのためだった。

お初が唄い終わると、玄妙斎は、駕篭の鳥を外に放つと、横に立っていたお初が、小刀で、その鳥を斬って落とす。

その落ちた鳥を拾った玄妙斎が、薬を塗って駕篭に入れると、その小鳥は元の元気な姿に戻る。

それを観ていた浪人渋川三五郎(堺駿二)が、その薬は、生づめを剥がしたのにも効くか?と聞き、35文で買う。

ところが、その直後、岡っ引が玄妙斎を捕まえに来る。

買った薬が全く効かず、かえって悪化したので、インチキだと訴えがあったと言うのだ。

玄妙斎とお初は、見物客に紛れて逃げだす。

江戸屋敷に戻った尾上は、今度、殿が引退為さるので、今後、鶴丸の後見人としてお国元へ向うよう命ぜられていた。

国では、何やらきな臭い騒動が起きているようなので、油断は禁物とも付け加えられる。

尾上が、鶴丸に同行し、国元へ戻る道中、一人の娘が駕篭屋に因縁をつけられている現場に通りかかる。

娘は、江戸から逃げて来たお初だった。

着の身着のまま駕篭に乗ってしまったので、払う金がなく、つい財布を落としたのだと駕篭屋に弁解している所だったのだ。

そうした事情を知らないながら、見かねた尾上は、駕篭屋に代金を自分が払うと言い出し、吹き掛けられた十両と言う法外な金をあっさり払ってやる。

鶴丸も降りて来て、お初が浅草の観音様の境内で唄っていた娘だと気付く。

お初は、尾上に対し、助けてもらった礼を言い、名前を名乗る。

ところが、そんなお初を見つけて近づいて来たのが、江戸から探し歩いていた玄妙斎。

お初を捕まえると、行き倒れになっていたお前を助けて育ててやった恩を忘れたかと詰め寄る。

それを見た尾上は、この娘は、自分達の召し使いであると玄妙斎を叱りつける。

その玄妙斎を見つけたのは、買った塗り薬を足の爪に塗ったばかりに、かえって悪化したので、だまされたと分かり、売った相手を探していた渋川三五郎、玄妙斎を捕まえて、金を返せと迫るが、まんまと逃げられてしまう。

お初は、二度までも助けてもらった礼を尾上に言うと、自分を道中のお供に連れて行ってくれないかと申し出る。

さすがに、身分違いのこの申し出には、尾上も困惑し、先ほど召し使いだと言ったのは単なる方便であり、これは大切な道中だから、めったな人物を連れて行く訳にはいかないと断わるが、お初は、自分も元々は武家の生まれなのだと食い下がる。

その押し問答を聞いていた鶴丸は、一緒に連れて行ってやれ、その代わり、いつも歌を唄ってくれと、お初に命ずるのだった。

鶴丸一行が藩のすぐ近くまで近づいて来た事を知った宍戸丹左衛門は、宿泊している本陣を襲撃するよう、配下たちに命ずる。

それを秘かに聞いていた腰元磯路(美山黎子)は、ただちに本陣に急を知らせるため駆け付ける。

その夜、本陣上州屋で寝ていたお初は、賊の侵入に気付き、腰元たちを起こして、鶴丸を守ろうと懐剣を抜いて立ち向かう。

そこへ、お城から駆け付けた磯路も援護に加わり、何とか賊を追い払う事が出来た。

磯路は尾上に、城で宍戸丹左衛門らが鶴丸を狙っている計画を打ち明ける。

尾上は、どうしたらこの苦難を切り抜ける事ができるか悩み始める。

その間、お初は鶴丸に、浅草で唄っていた歌を唄ってやる。

すると、一計を案じた磯路が、尾上を一件のあばら家へ案内する。

その家に住んでいたのは、かつてお城で腰元をしていたが、暇を出され、今は飴屋をして、独り息子を育てていた関野(八汐路恵子)。

尾上は、その関野の息子善太(植木千恵-二役)の顔を見て驚く、鶴丸と瓜二つだったからだ。

尾上は、お家の大事、鶴丸の大事のためと、しばらく善太を預けてくれぬかと頭を下げる。

その頃、城では、城主松ケ枝主水守が、鶴丸の到着はまだかと宍戸丹左衛門に問いただしていた。

一方、大輔に成り済ました浪人は、毎日、酒を飲んではぐうたらしているばかり。

さすがにこれでは正体がばれると、宍戸丹左衛門が注意すると、それでは、この替え玉の仕事を辞めさせてもらいたいと言い出す始末。

そこへ、鶴丸襲撃に向っていた綾部と沼崎が戻って来て、作戦の失敗を伝えたので、丹左衛門は叱りつけるのだった。

大輔役の浪人の事が気に入っていた岩藤は、何とかその浪人を手なずけようと近づいては色目を使うが、浪人が相手にしないので、逆上してしまう。

そんな所に、鶴丸到着の知らせ。

その鶴丸とは、善太が化けたものだった。

その頃、本物の鶴丸の方は、善太に成り済まし、関野の家にいたが、寂しがるので、その世話係として側に仕えていたお初が子守唄を唄って踊ってみせる。

そんな関野の家の近くに、一人の飴売りが現れる。

玄妙斎だった。

彼は巧みな歌で子供を惹き付けようとするが、商売敵の飴売り関野を発見、因縁を付けてその商売道具を壊してしまう。

その場にやって来たのが、又しても、渋川三五郎。

玄妙斎は、渋々逃げ出すのだった。

その後、家に戻って来た関野から、このままでは、鶴丸に食べさせる食事代さえ稼げないと聞いたお初は、自分が替わってやってみると言い出す。

翌日、表に出たお初の飴屋は、歌も巧い事から、あっという間に子供達を虜にしてしまう。

そんなお初の姿を見かけ、風車を買ってくれたのは、城から出ていた大輔に化けた浪人だった。

浪人は、お初の指に竹刀鮹を見つけ、ただ者ではない事に気付く。

駕篭に戻って来た浪人に、岩藤は、変な女に目を付けたねとからかうのだった。

その後やって来た磯路は、お初に岩藤の事を教える。

性懲りもなく、又元の場所に戻って、商売をはじめた玄妙斎だったが、ちっとも子供達が寄って来ない事に気付き、何故、飴が売れないのか、自分で食べてみるが、そのまずさに納得してしまう。

その時、木ノ下で、独りぽつんと孤立している子供を見つける。

近所の子供達に馴染めず、一人ぽっちだった鶴丸だった。

家に戻って来たお初は、鶴丸の姿が見えない事に気付き、外に探しに出かけるが、飴屋と一緒にいたと言う子供の証言を得る。

やがて、鶴丸の手を引いている玄妙斎を発見、近づいて鶴丸を取り戻そうとするが、逆に自分が玄妙斎に捕まりそうになる。

それを助けてくれたのが、さっき風車を買ってくれた偽大輔だった。

お初は礼を言い、鶴丸の事を弟だと紹介し、椎木横町に住んでいると明かして別れる。

その後、家に戻るお初と鶴丸の姿を見つけたのが黒崎半兵衛、二人が入った家を確認すると、すぐさま宍戸丹左衛門に報告に帰る。

鶴丸にそっくりな子を見つけたと言う半兵衛の話に、尾上が替え玉を登城させた可能性を察した丹左衛門は、その尾上を呼び寄せると、鶴丸の良い遊び相手が欲しいから、昔奥勤めをしており、先年暇を出した関野の息子を城に招こうと提案する。

結局、鶴丸は善太として、 お初はその姉として、城に連れて来られる事になる。

こうした事態になった事を憂慮した尾上は、シンパの腰元を四人集め、善後策を検討しあう。

浪乃(美多川光子)と深雪(和田道子)には、ただちに江戸勤め家老大ノ木主膳を呼びに行くよう、さらにお初、磯路たちには、宍戸丹左衛門と岩藤の動きに注意するよう、尾上は指図する。

そんな中、偽大輔に会ったお初は、尾上の力になってくれまいかと頼み込むが、話を聞いただけではどちらが悪いとも判断できないし、力を貸しても徳にはなりそうもないのでとやんわり断わられたので、見損なったと憤慨してしまう。

その夜、江戸へ駕篭を急がしていた浪乃と深雪は、突然、賊に襲撃される。

その時、黒覆面をかぶった謎の人物が白馬で駆け付けて来て、二人を助ける。

翌日、城の自室にいた偽大輔は、どこからともなく聞こえて来るお初の歌声を耳にし、柱にさした風車を見ては、何かしら物思いに耽るのだった。

そんな所に、又、岩藤がやって来て、夕べいなかったがどこに行っていたのかと聞く。

城は面白くないので、市中に出て飲んでいたと偽大輔が答えると、自分がいるのに…と、又、岩藤は誘惑しはじめる。

城の庭では、善太役の鶴丸と、鶴丸役の善太が一緒にマリ遊びをしていたが、善太役の鶴丸からこぼれたマリが、ちょうどなぎなたの練習中だった岩藤一派の足元に転がってしまう。

お初が岩藤に謝罪してマリを拾おうとすると、岩藤は、尾上に謝りに来させろと言い出す。

その事を、お初から伝え聞いた尾上は、従順に岩藤の前にまかりでると丁寧に謝罪するが、岩藤は聞かず。この大切な稽古の場に何たる事か、かくなる上は、そなたの江戸仕込みの腕を見せてもらいたいので、自分と剣の勝負をしろと尾上に強いる。

これには、さすがの尾上も返事を返しかねるが、この窮地を見かねたお初が、自分が替わって相手をすると言い、竹刀を取ろうとするが、その直前に、岩藤は、持っていたなぎなたで、その竹刀を跳ね飛ばしてしまう。

竹刀を失ったお初が、素手で、岩藤と対峙した時、その竹刀を拾い、投げ返してくれたのは、それまでの様子を近くから眺めていた偽大輔だった。

そのお陰もあって、お初は、見事に岩藤から小手を奪う。

手をねん挫していまいましがる岩藤の部屋にやって来た丹左衛門は、敵もなかなか尻尾を出さんと悔しがるのだった。

そんなある日、城主松ケ枝主水守の前にまかりでた岩藤は、尾上が連れていた鶴丸役の善太に、嘘を付いていると天罰が下るよと脅しの言葉をかける。

すると、その言葉に怯えた膳太が、自分は偽者だとしゃべってしまう。

これを聞いた岩藤は、尾上をお家横領の芝居をうった極悪人呼ばわりし、持っていた草履で、尾上の身体を打ち据えはじめ、追って沙汰すると言う情趣の言葉を聞くと、自分の愚かさの証拠としてその草履を持って、部屋で沙汰を待っていろと憎々しげに言い放つ。

尾上は言い訳する事もなく、ただ黙ってその言葉に従うだけだった。

一方、善太に化けた鶴丸には岩藤の配下が近づき、関野が来たと嘘を言い、どこへともなく連れ去ってしまう。

ちょっと目を離した隙に、鶴丸がいなくなった事に気付いたお初は、尾上に詫びるが、尾上は、そんなお初に、今から文箱を持って行ってくれと用事を言い付ける。

今夜だけは許してくれと、お初が抵抗すると、たった今暇を出すと尾上はきつい言葉で返す。

さすがに、この態度にはあがないようもなく、お初は、預かった文箱を持って城の外に出かけるが、この様子をうかがっていた岩藤の配下の腰元が、その文箱を奪い取ろうと駆け寄る。

そこへ駆け付けたのが、又しても謎の黒覆面で、腰元は退散したが、地面に落ちて開いた文箱を拾おうとしたお初は、その中に「遺書」と書かれた文が入っている事に気付き、急いで、尾上の部屋に駆け戻るが、そこにはすでに自害して果てた尾上のからだが横たわっていた。

その横に置かれた草履を見たお初は、それを持って岩藤の部屋に出向くと、たった今、尾上が自害した事を報告した上で、岩藤の冷酷振りを罵りながら、その草履で殴りつける。

一端は怯んだ岩藤だったが、お初が呆然としている隙をついて、懐剣を取り出すと刺そうとするが、一瞬早く気付いたお初ともみ合いになり、自分の懐剣で胸を突いて果ててしまう。

そこへ、磯路が、若様の居所が知れたと駆け込んで来る。

その鶴丸は、丹左衛門一行が、とある料亭の蔵に幽閉していた。

座敷で丹左衛門たちが酒宴を始めようとしている時に、ふらりと現れたのが偽大輔で、いつも通り酒をねだろうとするが、蔵の中の鶴丸に饅頭を持って行ってやれと丹左衛門から厄介払いさせられる。

蔵の中に入った偽大輔は、持って来た饅頭と風車を鶴丸に渡す。

その時、座敷に殴り込んで来たのが、お初と磯路。

しかし、そんな所に「止めろ!」と言いながら、偽大輔が鶴丸を抱きかかえて来る。

そして、丹左衛門に対しては、この毒饅頭を自分で喰ってみろと迫る。

そんな偽大輔は、自分は梅垣庄左衛門の甥、梅垣伊織だとはじめて正体を明かし、今まで内密に調べ上げて来た丹左衛門の悪事をぶちまける。

それでもしらをきる相手に対しては、文箱を奪おうとした祭捉えておいた腰元を、動かぬ証人だとして連れて来させる。

そこに、江戸から家老が駆け付けて来る。

事件は無事解決し、やがて、船合戦を陸から眺めて楽しむ鶴丸の姿があった。

その横には、新家老になった梅垣伊織と二代目尾上となったお初の晴れやかな顔もあった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

美空ひばりと東千代之介が共演した娯楽時代劇。

元々は歌舞伎の演題だったものを映画化したもののようだ。

実際、尾上が、岩藤から無理矢理剣の試合を申込まれるなど嫌がらせを受けたり、お初を夜中に無理矢理使いに出させ、その隙に自害すると言う展開などは、「怪猫有馬屋敷」(1953)などでも描かれている。

当時としては、良く知られたエピソードだったのかも知れない。

本作で岩藤を演じた浦里はるみさんも、最近のトークショーで、この芝居そのものは、撮影時から良く知っていたとおっしゃっていた。

その岩藤の悪女振りは実に印象的。

東千代之介が、白馬に跨がった黒覆面姿で、いつも颯爽と現れると言うのも、東映の新諸国物語シリーズなどでもお馴染みのパターンである。

小悪党の玄妙斎を演じる川田晴久と、ひばり映画では常連の堺駿二とのドタバタも、なかなか愉快に描かれている。

ひばりの歌声も素晴らしいが、飴売りに扮した川田晴久の伸びのある美声もなかなか。

色々な要素を組み合わせた通俗時代劇と言った所だろう。