2008年、内田けんじ脚本+監督作品。
※この作品は新作であると同時に、後半、大掛かりなどんでん返しがありますが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、御注意下さい。コメントはページ下です。
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中学校の玄関口にある下足箱の前で、一人の少女が誰かを待っている。
そこにかわいらしい顔をした一人の少年がやって来たのを見た少女は、「木村君!」と呼び掛け、その男の子に持っていた手紙を渡す。
もらった少年は、感激したような顔をする。
少年は大人の木村(堺雅人)に成長していた。
彼は今、目の前にいる臨月間近な妻美紀(常盤貴子)をやさしく見つめている。
妻の父親(山本圭)が、狭い新婚夫婦のマンションに呆れたように、もっと良い所へ住めと文句を言うが、妻はお金がないとしっかり者らしいセリフを言う。
そのマンションの下では、木村の中学時代からの親友で、現在、中学校教師の教師をやっている神野(大泉洋)が、買い替えた新車のポルシェを管理人から珍しげに眺められていた。
そのポルシェを、自分の車のように借りて行く木村は、何時の間にか、自分用の車のキーを使って運転席に乗り込む。
何時の間に合鍵など作っていたんだとあっけに取られ、発車した自分の新車を見送る神野は、木村からあいつの事頼むと言い残されたので、美紀の待つ部屋に管理人と共に様子を見に行く。
美紀は、世話をかけてごめんねと恐縮するが、神野は今、夏休み中だからと笑って応対する。
神野は、今日木村は横浜の方に行くんだっけ?と問いかけるが、美紀はそんな話はしてない様子。
テレビでは、今選挙期間中なので、保守党候補者江藤政義の政見放送を流していた。
木村は、若い女性と会っていた。
タイトル
木村の会社梶山商事の同僚が、たまたまそんな木村と女性の密会現場を写メで撮ったと、社内で仲間と話していると、それを聞いていた上司の唐沢(奥田達士)が、その写真をくれと言い、大黒社長(北見敏之)に知らせに行くと、片岡さんに知らせた方が良いでしょうか?と聞く。
歌舞伎町にある「大人のおもちゃ屋」
そこの店長北沢(佐々木蔵之介)の裏の顔は探偵業で、色々ヤバい事件を調査しているらしい。
その日も、店の奥で売人から拳銃を受取っていた。
そこへ、店に見慣れぬサラリーマンが入って来るのを監視カメラで確認した北沢は、すぐに近くの中華料理屋に逃げ出す。
刑事かも知れなかったからだ。
そんな北沢を、ショップ店員の学が探しに来て、先ほどの客は、今日撮られたと言うツーショット写真に写った木村の行方を探して欲しいと言う探偵業の方の依頼人だったと教える。
北沢は、写真に写っている木村と言う男の同窓会サイトを調べて友達を捜せと学に命じた後、北海道出身だと言う学に、俺が今度サッポロに行くと言ったら、お前はついて来るかと確認する。
子分格の学は、もちろんですよと答える。
その頃、神野のケイタイに「生まれる」と言う美紀からの連絡が入る。
慌てた神野は、美紀を抱えて部屋から連れ出すと、たまたまマンションの前に帰って来た見知らぬ男の車に乗せてもらい病院へ向う。
途中、何度も木村を呼出そうとする神野だったが、全くケイタイが通じない。
何とか、病院についた美紀は、無事、女の子を出産する。
「大人のおもちゃ屋」では、北沢が、連絡をして来てもらった男から、ヤクと交換で、木村が女と密会していたホテルのその日の防犯ビデオを受取っていた。
病院では、生まれたばかりの赤ん坊を嬉しそうに抱いた美紀の様子を、神野が写メで撮っていた。
やって来た美紀の父親は、木村と連絡がつかない事に苛立ち、まさか、女の所にでも行っているのではと疑惑を口にするが、「そんなことない!」と神野はきっぱり否定する。
中学時代から木村の事は良く知っているが、あいつはそんな男ではないと言うのだ。
その病院には、怪しげなヤクザ風の男がやって来ていて「木村はここにはいない」と確認しあっていた。
北沢は、木村が卒業した中学校の職員室に、大沢先生はいらっしゃいますか?と卒業生を演じて尋ねに行く。
大沢先生は退職され、次に名前を出してみた井上先生も転勤したと聞かされた北沢は、名前を聞かれたので、思わず、同窓生名簿にあった島崎と名乗る。
そんな所に通りかかったのが、木村の同級生だった神野だったので、職員室にいた教師は、同期の島崎だと、北沢の事を紹介する。
北沢は、まさか、木村の同窓生が同じ中学の教師になっているとは思ってもいなかったので、自分の嘘がその場でバレやしないかと緊張するが、神野は、当時、同学年だけでも8クラスもあったので、島崎など記憶になかったが、取りあえず嘘には気付かず適当に話を合わせて来たのでほっとする。
北沢は、神野が今でも木村と友達付き合いしているとは予想もしてなかったので、梶山商事に勤めている木村を知らないか?探しているのだと伝えてみる。
神野は、怪しまず、神野なら病院に行けばあえるかも知れない。佐野美紀がお母さんになったんだと教えるが、同窓生ではない北沢は、佐野美紀と木村の関係が今一つ分からない。
神野は、お前、自分の妹にラブレター出してただろう?と、急に島崎の名前を思い出す。
今、その妹は警察官をやっているのだと言うが、それにも適当に北沢は話を合わせながら、自分の車に神野を乗せる。
その時、北沢のケイタイが鳴り、見つかったかと依頼人が聞いて来る。
手がかりは掴んだので金をもらいたいので11時に店で会おうと約束をして、車の中に戻った北沢は、神野に木村と若い女性が写った写真を見せ、ちょっと悪いが、手伝ってもらいたい。時間がないんだと言いながら、車を発車させる。
歌舞伎町の「大人のおもちゃ屋」に到着した北沢は、店の奥で、神野に着替えさせると、写真を撮っても、シャッター音が出ないように改良し、GPS機能もあるのだと言うケイタイを渡すと、これから店に来る奴の尾行をしてくれ、自分は面が割れているので、尾行が出来ないのだと頼む。
そこへ唐沢やって来て、北沢に調査費を渡す。
訳が分からないまま、外で待っていた神野に、怪しげな男が近づいて来て、手相を見てやるなどと神野に迫る。
そこに、唐沢が店から出て来たので、神野は怪しげな男を振り切って、尾行を開始する。
北沢は、店の奥のパソコン画面で、神野が動いている位置を確認していた。
唐沢は、歌舞伎町の映画館外を突っ切り、ミラノボウルに入って行く。
そこで、大黒に出会った唐沢は、あの北沢と言う男は信用できるのか?と聞く。
北沢を紹介したのは大黒だったからだ。
大黒は、自分がここまで生き延びられたのは、用心深かったからだ。あいつは大丈夫だと太鼓判を押す。
そうした様子を、二人に近づいた神野が、ケイタイをかけている振りをして、動画機能で北沢に映像を送っていた。
そんな北沢に近づいて来た強面の男、その顔を見た北沢は、それがヤクザの片岡(伊武雅刀)だと知る。
ボウリング場で何気なく片岡が大黒の側に座り、何かをこっそり渡している現場も目撃する。
そんな監視を続けていた北沢のケイタイが鳴る。
出てみると、何と、今パソコン画面で監視していた片岡本人からではないか。
片岡は、学から聞いたらしく、北沢が札幌に逃げる気か?と聞かれ、慌ててケイタイを切ると、すぐさま逃げ支度を始める。
神野には、途中で車で拾うと連絡し、パソコンと神野の衣装を持つと、北沢は車で店を出発し、待っていた神野を助手席に乗せる。
北沢は、先ほど得た片山が梶山商事の大黒社長に何か週刊誌を渡している映像記録を見せながら、木村はヤクザと付き合いがあるらしいと神野に教える。
しかし、神野は、木村はそんな事に関わりないと否定する。
パクと言う主人が経営する場末の韓国料理店「ホルモンパク」にやって来た北沢は、パクが好きだと言うロリコンビデオを渡して、片岡について情報を得ようとする。
パクは、片岡は最近、「HEAVEN(ヘブン)」と言う店にいたあゆみと言う女を探しているらしいが、その探している事自体を周囲に知られたがってないらしいと言う。
「HEAVEN(ヘブン)」と言う店は、梶山商事が接待で良く利用する店なのだと言う。
その頃、大黒は、とあるホテルに来ると、先ほど片岡から渡された週刊誌の間に挟まれていた鍵で、指定された部屋を開けて中に入ると、上海からの人もホテルについたとの連絡を受ける。
一方、北沢に連れられ、南大門市場なるDVDショップにやって来た神野は、イヤホンをつけられ、これから自分がマイクで伝える通りにしゃべって行動しろと言われ、仕方なくビデオショップに入って行く。
マイクから聞こえて来る通り、「スーパーボックス」でと店員に神野が伝えると、DVDをチョイスして個室に入れと言われる。
訳が分からないまま、言われた通りモニターがある個室で待っていると、いきなり笛を吹きながら、派手な格好をした女性が部屋に侵入して来る。
どうやらここは風俗のようだった。
北沢は、イヤホン越しに、その女に、これから俺が言う通りに木村と女が写った写真を見せて、女の情報を巧く聞き出せと、神野に指示する。
しかし神野は、北沢の指示を待つ前に、勝手に、この子知っていると女に聞く。
それを車の中で聞いていた北沢は舌打ちするが、意外にも、女があっさりと「このみちゃんでしょう?」と答える声が聞こえて来る。
本名は知らないけど、以前「HEAVEN(ヘブン)」と言う店に勤めていた時に知り合った子で、互いに親の借金でそんな生活をしていたので、悩みを打ち明けあったりしていたが、ある日突然、店から姿を消したのだと言う。
その店には、木村と言う人も時々来ていたとも言う。
店を出た神野のケイタイが鳴り、出てみると警察からで、自分のポルシェが駐車禁止区域で発見されレッカー移動されたので取りに来いと言うものだった。
ようやく、木村が朝乗って行った車と再開した神野だったが、木村の姿はない。
神野は運転席に乗り込むと、隠していた紙袋を開けてみる。
中には指輪が入っていた。
その後、北沢の車に随行し、木村が泊まったと思しきホテルの前にやって来た神野は、もう一度、木村に連絡を取ってみようと、外に降りてケイタイをかけてみる。
すると、今自分が降りたポルシェの中から着信音が聞こえて来る事に、北沢が気付く。
木村のケイタイは、ポルシェの中に置いてあったのだ。
北沢はすぐに、そのケイタイを自分の車に持ち込んで、データ解析をしようとするが、さすがにそれはマナー違反だろうと神野から抗議されたので、仕方なく、返す振りをして、同じ機種の別のケイタイを神野に渡す。
その後、又ヤク中の売人から、そのホテルの監視ビデオを手に入れた北沢は、エレベーターに乗り込む木村と若い女の姿を確認する。
エレベーターの中に入った女は、木村に対し、ちょっともたれ掛かるような仕種をしている。
それをパソコンの画面で見せられた神野はあっけに取られるが、そんな神野の態度をからかうかのように、女房が妊娠中の浮気なんて良くある事だ。お前も、今なら、その女房と関係ができるかも知れないぞと下びた事を言う。
そんな擦れた態度を見せる北沢に対し、神野は、何でお前、そうなっちまったんだと呆れる。
北沢は、世の中には中学校しか知らないお前の知らない事はたくさんあるんだ。もういつまでも、中学校ごっこなんて続けているのは止めちまえよとバカにしたように忠告する。
さすがに白けた神野がその場を立ち去ると、北沢は唐沢に電話を入れる。
ちょうど、江藤外相のいる料亭で同席していた唐沢が、廊下に出て電話に出ると、木村だけではなく、女の正体も分かったので、そちらの情報は別料金で買わないかと持ちかける。
何を言い出すかと憤慨する唐沢に、大黒社長と片岡が繋がっている事を知られてはまずいのではありませんか?と北沢はやんわり脅しつける。
自宅マンションに帰って来た神野は、部屋に木村が帰って来ている事に気付く。
木村は何事もなかったかのように、社長は明日、大金を持って出かけると教える。
神野は、そんな木村に対し、今日一日、お前を探していた探偵に付き合されたと教える。
そして、ケイタイを木村に返すが、受取った木村は、これは自分のケイタイではないと言い出す。
そこでの会話は、そのケイタイを通じて北沢が盗聴していたが、そこにヤクザが二人姿を見せる。
ヤクザに連れられ、北沢は「HEAVEN(ヘブン)」で待っていた片岡の前に連れてこられる。
片岡は、あゆみは見つかったかと聞く。
その頃、神野は木村に、準備はできたかと確認していた。
その頃、ホテルにいた大黒社長は唐沢から、こちらを脅迫して来た北沢が片岡に捕まった話を知らされると同時に、片岡さんに迷惑をかけて良いのか?北沢を紹介したのはあんたでしたね?自分はもう次のボスを決めているので関係ないがと、縁切りとも取れる冷ややかな報告を受けていた。
さらにその後、大黒は経理課の木村から電話を受ける。
明日、本社で行われる会議の事で話があるので、お会い出来ませんかと言う奇妙な内容。
その木村が泊まっていたホテルにやって来たやくざたちは、ホテルの前に警察車両が赤色灯を回転させて停まっているのを目撃する。
港に停めた片岡の車の後部座席、木村から奇妙な連絡があった事を報告する大黒。
木村は、自分達の関係を証明する何か資料を渡したいのだと言って来たと大黒は言う。
それを聞いた片岡は、あんたがうちの代行をしている事を以前付き合っていたあゆみと言う女に、寝物語でうっかり洩らした事があるのだと打ち明ける。
それを木村はあゆみから聞いた可能性があると言うのだ。
そこにケイタイが鳴り、片岡に子分たちから、今、ホテルの前にいるが、警察車両がいて中に入れないと報告を受ける。
その間、片岡の車の外で、立たされていた北沢のケイタイも鳴る。
出ると、それは神野からで、あの女を追っても無駄だと言うものだった。
片岡は、木村からの電話で指示して来た「すぎのや」と言ううどん屋の外で車を停め待機していた。
そこへホテルに行っていた二人の子分が戻って来て、頭から血を流し倒れている女の死体の写真を見せる。
警察車両が来ていたのは、そのためだったのだ。
その写真を確認した片岡は「あゆみだ」と呟く。
付き合っていた時、あいつが妊娠したので、堕ろせと金を渡したら、逃げ出したとも…
その頃、神野は、病院の美紀に会いに行き、ちょっと場所を移動しようと伝える。
北沢は、神野に渡したケイタイのGPS機能を使って、そうした神野の動きを逐一監視していた。
「すぎのや」には、まず大黒が大きなトランクを持ってやって来る。
続いて、その席の前に、木村がにこやかに現れる。
早く取り引きを済ませて帰りたい大黒だったが、木村は呑気そうに、まずうどんでも食べましょうよと持ちかける。
一方、北沢は、拳銃を取り出すと、神野がいた中学校の教室に乗り込んで行く。
北沢は、黒板の落書きを独り消していた神野に向い、何時から俺が同級生の島崎じゃないと分かった?と尋ねる。
あの木村と女の写真を見せられた時だと神野は答える。
あそこに写っていた女は俺の妹だよと神野は続け、その妹にラブレターを出すほど好きだった島崎なら、大人になった彼女の顔を分からないはずがないからだと説明する。
その頃、その妹(田畑智子)は、美紀と赤ん坊を中学校に連れて来ていた。
妹は、血のりの付いた髪の毛を拭きながら、あのホテルで、あゆみの代わりに死んで来たと笑う。
木村はかつて、接待で付いて行った「HEAVEN(ヘブン)」で、中学校時代、自分に手紙を渡して転校して行った女学生と偶然出会う。彼女は店ではあゆみと名乗っていた。
その帰り、自分を送るため車で待機していた神野の所に戻って来た木村は、今店で、佐野美紀に会ったと教える。
そこにその美紀が乗り込んで来て、ちょっと助けて欲しい事があるのと二人の元同級生に打ち明ける。
神野は当然、その事を、警察官である妹に相談した。
その頃、片岡の動きを追っていた警察としては、にわかに美紀が重要参考人になると気付き、身柄を保護すると同時に、神野と木村に、捜査を協力してくれと依頼する。
「すぎのや」では、大黒から渡された札束を、木村が堂々とその場で取り出して確認するので、周囲の客の目を気にする大黒は気が気ではない。
さらに木村は、香港から来る人は、一体何を持って来るのか?とズケズケと聞いて来る。
学校の教室では、神野が北沢に、俺のケイタイを返せと脅していた。
「すぎのや」では、テーブルの下で、大黒が木村から、資料らしきものを受取っていた。
大黒は、お前が会っていた女は警察の人間じゃないかと思っていたのだと言い捨てて、店を出て行く。
その後、独り席に残っていた木村の前に、片岡が座る。
片岡は、近づいて来た子分と一緒にちょっと凄んでみせるが、木村は全く気にしないように、席を立ってしまう。
あっけに取られる片岡の前に、今まで、その周辺で客を装っていた刑事が近づいて来る。
さすがに、顔見知りの刑事の顔を見た片岡は固まって、無理に笑ってみせる。
つまり、明日行われる大きな取り引きの証拠を得るため、今まで「すぎのや」には、大勢の刑事たちが、客席や調理場で待機しており、逐一、大黒や片岡の動きを監視続けていたのだった。
木村は、警察の協力をして脅迫者の芝居をしていただけ。
その頃、車で帰っていた大黒の方も、検問に引っ掛かっていた。
思わず、助手席に置いていた資料を隠そうとするが、目ざとく警官に見つかり、中身を確認されると、それは裏DVDで、これも又、警察の罠だったのだ。
神野の妹と一緒にいた美紀は、これからはこの子のためにも幸せにならなければいけないと決意を固めていた。
一方、教室で、神野から、これまでの経緯を説明されていた北沢は愕然としていた。
そんな事は全く知らなかった自分は、探偵ごっこのつもりで、うっかり警察の捜査網の中に自分から身を投じていた事になる。
ヤバい立場になったと気付いた北沢はすぐさまその場から立ち去ろうとするが、そこに、車の駐車違反を言いに来た刑事が二人やって来て、うろたえた北沢は、持っていた拳銃を床に落としてしまう。
銃刀法違反の現行犯で連行されかけていた北沢は、神野に向い、「あの女を助けて何の得になる?」と尋ねる。
すると、神野は怪訝そうな顔をして「得?」と言いながら、あんたみたいな生徒はどこのクラスにも必ずいると言い出す。
世の中の事は何もかも知っているよう振りをして、一人で粋がっている。
だけど、学校がつまらないのは、学校が悪いんじゃなくて、お前自身のせいだと言い捨てる。
その言葉を背中で聞きながら、北沢は刑事たちに連行されて行く。
片岡も逮捕して「すぎのや」から帰ろうとする刑事が木村に問いかける。「佐野美紀の事は君たちに任せて良いのか?」と。
木村は思い出していた。
美紀から手紙を渡された中学生の頃を。
中学生だった美紀は、自分は転校するので、この手紙を神野君に渡して欲しいと頼む。
事件が解決し、朝の中学校のグランドで話す現在の神野と美紀。
神野はあのラブレターを木村を通じてもらった時、嬉しくて、すぐに一緒に帰ろうと君を探したけど、もう君はいなくなっていたと、当時を振り返る。
そして、目の前にいる美紀に向い、一緒に帰ろう、おれんちに帰ろうと告げる。
木村の方は、神野の妹と一緒に、ホテルに戻って来ていた。
木村は、神野は、もう美紀と結婚する気持ちを固めており、その指輪も車の中に隠しているのだと教える。
そして、俺って何時も橋渡し役だなと自嘲するのを見た妹は、ひょっとしたら木村さんも、美紀さんの事を…と気付き、急に親しげに、落ち込んだ時には甘いものを食べましょうと言いながら、木村をホテルに連れ込む。
エレベーターに乗り込んだ木村は、靴が汚れたんだと言い、妹は「へえ?」とそれを覗き込む。
その姿を監視カメラで見ていると、まるで、妹が木村にしなだれかかっているように見える。
エンドロール
テレビでは、江藤外相(大石吾朗)が逮捕されたとのニュースを報じていた。
▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼
「運命じゃない人」に次ぐ内田けんじ監督の二作目。
今回もなかなか緻密に練られた脚本で見せてくれる。
それなりに良く出来ているとは思うが、 「運命じゃない人」の時は、監督や映画に対して、大半の客が何の予備知識も持っていなかったので、難なく、内田けんじ監督の仕掛けた背負い投げにあっさり投げられてしまったのに対し、今回、前作を観ている客たちは皆一様に「だまされまい」と身構えて観たはずなので、前作ほどには衝撃感を感じなかったのではないだろうか?
すごいトリックでデビューしたミステリ作家の二作目の難しさと同じ現象だろう。
ただし今回も、「ひねり」の真相に完全に気付いた人などほとんどいなかったはず。
今回は、それなりに知名度のある人を使っているのだが、観客が持っている「その俳優に対するイメージ」までも、ちゃんと計算して「引っ掛け」に使用している所などはさすがだと感じた。
ただ、若干気になるのは、前作と同じような素材(ヤクザ、探偵、それに巻き込まれる一般人)が又繰り返されている事。
ヤクザや警察の描写が、あまりそれらしく見えないなど、前作の弱点がそのまま残っているような気もする。
展開も、地味と言えば地味な内容と言うしかなく、ミステリーなど「ち密な構成もの」が好きな人向けだろう。
メインとなる役者たちは、皆好演していると思う。
