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青春ジャズ娘

1953年、新東宝、北田一郎+蓮池義雄脚本、松林宗恵監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

8大学ジャズコンクール、司会の学生二人(南道郎)が漫才口調で、次の出演者東都大学フルーノーツを紹介する。

ゲスト審査員として、ティーブ釜范、人気ジャズシンガーの江利チエミやナンシー梅木の姿もある。

フルーノーツのボーカル笈田敏夫が唄う。

楽屋裏の廊下で、社員の安木(大泉滉)と何か打合せをしている悪名高い芸能プロダクション「大世界芸能社」の山崎権平(三島雅夫)の姿を見かけた夕刊スポーツ社の三上(水島道太郎)は、自分の後輩に当る城南大学6メロディアンズの引き抜きだけは止めてくれと声をかける。

その6メロディアンズ、出番前の楽屋では、ドラムの青木の姿が見えないとちょっとメンバーたちが心配していたが、すぐにその青木(フランキー堺)は戻って来て、彼らは舞台に上がり、ファッションモデル皆川京子(安西郷子)が幼い兄弟を連れて客席で応戦する中、見事に優勝する。

その後、6メロディアンズの楽屋に江利チエミが激励に来る。

優勝を喜ぶ三上は、今後はプロとして活躍する事になるんだから頑張れと、後輩たちに応援の言葉を送るが、ただ独り、青木だけがうかない顔をしている。

トランペット担当の後藤春彦(片山明彦)はボーカルの浅井俊子(新倉美子)と恋人同士と言う事もあり、今後のプロ活動の事に夢を馳せていたが、その後藤を安木が呼びに来る。

廊下で、山崎から名刺を渡され、引き抜きの話を持ちかけられた後藤は即座に断わるが、もう青木はこちらの話を呑んだと聞かされ驚愕する。

楽屋に戻って、その事を青木に確認すると、聞いていた他のメンバーたちも驚き、青木の事を責めはじめる。

青木は、自分は皆と違い、おふくろや弟たちを養わなければいけないので金がいるのだと冷めた返事を返すだけ。

その夜、京子の家に三上と6メロディアンズメンバーが集まり、ささやかな祝賀パーティが行われたが、青木の姿だけはなかった。

秘かに青木に思いを寄せてた京子は心配するが、その心の内を母親(清川虹子)は敏感に感じ取っていた。

翌朝、銀座のデパートのファッションショーに出かける京子を家の前まで見送った母親皆川夫人は、下宿している後藤春彦はいるかと尋ねる見知らぬ中年男の来訪を受ける。

聞けば、田舎から出て来た後藤春彦の父親で県会議員をしている後藤金兵衛(柳家金悟楼)だと言う。

その春彦は、ちょうど遊びに来ていたメンバーの田原(高島忠夫)、野村(小笠原弘)と3人で、大学を卒業してもう二ヶ月も経つのにいまだにプロとしての仕事も決まらない現状を憂いていた。

青木が抜けた後、さらにメンバーの石川(天知茂)と杉本(君島靖二)も6メロディアンズを去っており、バンドはバラバラの状態だったのだ。

そんな所にやって来た金兵衛は、ジャズのトランペット吹きになりたいと言う春彦の言葉を聞いて猛反対する。

父親は、息子を自分の後を継ぐ政治家にさせたいのだった。

ちょうど二人に茶を持って来た皆川夫人が、今や世の中はジャズの時代、下手な給料取りより、ジャズをやった方が高給取りになれるのだと春彦を弁護するが、金兵衛は頑として聞き入れなかった。

銀座の街角では、「ビッグフォー」のサービスタイム演奏が行われていた。

そんな銀座にあるとある楽器店の売り場で働いていた俊子を口説き落とそうと、山崎と安木がやって来ていた。

しかし、俊子は、自分はここに勤めているのではなく、住居があるのだと説明するが、山崎は、自分の事務所に引き抜こうと必死。

そんな様子を観ていた俊子の父親で、ここの店の守衛をしている浅井良策(古川緑波)は、しつこく娘に迫っている山崎に近づくと、自分はここの店の社長だと嘘をつき、二人を退散させてしまう。

そんな俊子親子の前に中央劇場の森田(田中春男)を連れてやって来たのは夕刊スポーツの三上だった。

三上も又、青木の現状を心配している一人だったが、今日は、森田を江利チエミに紹介に行く所だと言う。

ラジオのスタジオで唄っていた江利チエミに劇場への出演以来に来た森田と三上だったが、マネージャーから、スケジュールが詰まっており、とても無理だと断わられてしまう。

日本ジャズ学校で歌の練習をしていた俊子は、ギターで演奏をしてくれていた先生の所に、店で唄う歌手を欲しいと言う客が来たと言うので待っていると、それは、俊子の女学校の先輩で、今や銀座の「赤馬車」と言う店のママをやっている川口由紀子(関千恵子)だったので、両者とも奇遇を喜び合う。

そんな俊子と、銀座で待合せをしていた春彦は、安木らと共に、愉快そうに車に乗り込んでいる青木の姿を見かけるのだった。

遊園地で遊んだ後、俊子の住まいである楽器店にやって来た春彦は、待っていた父親の勧めもあって、ちょっと部屋に寄っていく事にする。

父親の良策も、昔、浅草の舞台で唄っていた経験があると、昔のアルバムを披露しながらつい唄い出しそうになるのを、必死に娘の俊子が止める。

そんな中、暗い表情だった春彦が、もう自分の才能に自信がなくなったので、故郷に帰ろうと思うと打ち明ける。

それを聞いた俊子は驚くが、良策は、若い頃には良くある事だが、本当に芸術を捨てられるのか?と問いかける。

何も答えられない春彦を、楽器売り場に連れていった良策は、そこに飾ってあった新品のトランペットを渡し、吹いてごらんと勧める。

トランペットを手にした春彦は、自らの迷いを断ち切るように吹きはじめる。

それを側で観ていた俊子も又、安心して微笑むのだった。

その後、ビルの屋上で俊子と二人きりになった春彦は、もう一度、メンバーを集めてやり直してみると決意を語るのだった。

部屋では、良策が、独り満足げに微笑んでいた。

「大世界芸能社」の看板がかかった大きなビルに入った安木は、屋上までやって来ると、そこの小さな小屋がに入る。「大世界芸能社」とは、その小さな事務所の事だったのだ。

待っていた社長の山崎に、青木がギャラの事で文句を言っていると報告する安木。

青木には、今度、北海道でも廻させようと言いながら新聞を読んでいた山崎は、銀座の「赤馬車」と言う店で唄う事になった俊子の記事に目を止め、さっそく、その日「赤馬車」に向うと、ママに、ステージで唄っている俊子を紹介してくれとせがむ。

一応、唄い終わった後、俊子を山崎に紹介したママだったが、あまりに山崎がしつこく俊子に引き抜きの話をせがみ、あまつさえ、彼女の手を握って離さない様子を見かね、その山崎の手にタバコの火を押し付けると、インチキブローカーに俊子は渡せない。さっさと帰ってくれと追い返してしまう。

その頃、安木もいる「大世界芸能社」の事務所でドラムの練習をやっていた青木は、最近コンディションが悪いとこぼす。

そこへ、おかしな格好をした中年男(伴淳三郎)が現れ、安木に名刺を渡すと、自分は何でもできる芸人だから、ここで雇ってくれないかと申し出る。

名刺には「パー・アジャ」とローマ語で書かれてあった。

パー・アジャは、青木にマンボのリズムを叩いてくれと注文すると、それに合わせて踊り出す。

その後、山崎が帰って来たので、辞めたいと言い出した青木だったが、それでは、契約不履行になり、違約金をもらわなければならないと山崎は突っぱねる。

その「大世界芸能社」のビルに、野村と二人でやって来た春彦だったが、一階入口で偶然出会った安木に、体よく追い返されてしまう。

青木に会えず、意気消沈した春彦は、ぼーっと帰る時、車にはねられてしまう。

三越ファッションショーに出演していた京子は、舞台裏で偶然、演奏にやって来た青木に出くわす。

青木は、もう一度「6メロディアンズ」に戻って来てくれと頼む京子に、自分は裏切者だと返事してその場を去ってしまう。

そこに、皆川夫人が駆け付けて来て、京子に、春彦が交通事故にあって入院した事を知らせる。

病室には、すでに俊子がやって来ていた。

野村と杉本も、見舞いにやって来るが、廊下で、別の部屋に見舞いに来ていた江利チエミと出会い、春彦が入院している事を教えると、チエミも一緒に見舞うと言う。

その病室で、青木が戻ってくれば…と悩んでいるメンバーたちの話を聞いたチエミは、自分も力になるから、何とか、日本一のバンドになるように頑張ってと、春彦たちを励ますのだった。

とあるキャバレーのステージでは、マンガ太郎が、即興のお色気マンガを客に披露していたが、その伴奏をしていた石川の所に来たメンバーが、又集まろうと書いた手紙を見せると、石川はすぐにオーケーのサインを返して来る。

夜の街角、一人の酔っ払い風の男(益田キートン)が、塀に向って立ち小便でもする様子。

それを見つけた警官が近づいて来て注意すると、振り向いた男は、腹の下で札束の勘定をしていただけだと分かる。

同じく、夜の街角を唄いながら歩く流しの歌手(高英男)、その横でギターの伴奏をしていたのは田原であった。

その田原も、春彦らが復帰要請をすると、横で聞いていた歌手も承諾してくれ、そのまま復帰が決まる。

いよいよ、後は青木だけと言う事になり、春彦から相談を受けた夕刊スポーツ社の三上は、自分が何とかしようと答える。

その頃、「大世界芸能社」の事務所では、女性事務員が買い物に出るので留守番を頼まれた青木が一人でいた。

そこにやって来た春彦は、今夜皆集まるので、何とか、君も来てくれないかと持ちかける。

乗り気だった青木だが、山崎に違約金30万払わないと事務所を辞められないのだと打ち明ける。

その後、戻って来た山崎に、再度、辞めたい旨を申込んだ青木だったが、青木正二とスイングボールズに辞められたら、この事務所は大損害だと言いながら、山崎は、又しても、辞めたいのなら、違約金を持って来いと迫るのだった。

皆川邸に集まった元メンバーたち。

皆川夫人は、春彦から話を聞き、30万を自分が出すと言い出す。

そこに、森田を連れた三上がやって来て、中央劇場で、君たちのデビューの舞台となるジャズ大会を用意していると伝える。

ギャラを、水害地の救済に当てたいので、誰か、客が呼べるような有名な歌手が呼べれば…と森田は思案していたが、江利チエミに頼めないかとの案は、今、彼女は映画出演中なので、難しいだろうと言う事になる。

そこに、「赤馬車」にいた俊子から電話が入り、今、青木がこの店に来ていると言う。

さっそく、全員で「赤馬車」に向うが、そこには酔いつぶれている青木がいた。

春彦は、そんな青木に、再度メンバーに戻るように説得するが、青木は拗ねるばかり。

そんな情けない様子を見かねた春彦は、つい、青木を殴りつけてしまう。

床に倒れた青木に駆け寄り、気色ばむ京子。

しかし、起き上がった青木は、はじめて目が冷めたかのように、自分が弱すぎたと皆に謝罪し、春彦が持って来た30万を有難く受取ると、山崎には自分がきっぱり断わってみせると言い切る。

そこに、野村と杉本がやって来て、江利チエミが、自分達のショーに出てくれると承諾してくれたと報告に来る。

いよいよ中央劇場でジャズ大会が始まり、司会は人気者のトニー谷が勤めていた。

まずは、与田輝雄とシックスレモンをバックに、ナンシー梅木が「サヨナラ」を唄いはじめる。

客席では、京子と母親、金兵衛と良策も観ていた。

その頃、江利チエミは、新東宝のスタジオで、「テキサスの娘」と言う映画を撮影中だったが、電圧が麻から落ち気味で、撮影の途中で照明が落ちてしまい、何度も撮り直しをすると言うアクシデントに見回れていた。

楽屋では、メンバーたちが出番を持っていたが、そこに春彦がやって来て、青木がいなくなったと報告に来る。

ステージでは、ウィリー・ジェームズとチャックワゴンボーイズが演奏していた。

青木は、「大世界芸能界」の事務所で、安木が頼んだチンピラたちに取り囲まれ、縛り付けられていた。

そこにやって来た三上は、チンピラたちと屋上で格闘を始める。

安木と青木だけになった事務所に、何時の間にか入り込んで来たパー・アジャがナイフを取り出すと、それで安木を脅し、青木が縛られていた綱を斬ってやる。

自由の身になった青木も、屋上に飛び出すと、三上を助けて、チンピラと戦いはじめる。

パー・アジャは安木と戦い、持っていたマンドリンで安木の頭を殴りつける。

チンピラたちをあらかたかたずけた三上と青木は、ビルの一階に降り、そこで車を待機させていた「赤馬車」のママ由紀子と共に中央劇場へ急ぐ。

中央劇場のステージでは、プロたちの演奏が終了し、司会のトニー谷が「6メロディアンズ」を紹介するが、まだメンバーが揃っていないので出られない。

楽屋に、心配した森田が駆け付けて来るが、青木がいないのではどうしようもない。

だんだん客席が騒然として来る。

その中に混じって観ていた山崎は、独りほくそ笑んでいた。

森田から、場を繋いでくれと懇願されたトニー谷は、困惑しながらも、再び舞台の中央に戻って来ると、バンツマコントや、蠅取り紙に引っ掛かった蠅を演ずる即興バレエ「瀕死の蠅」を披露しはじめる。

ようやく青木の車が到着し、用意が整ったので、森田が舞台袖からオーケーの合図をし、それを観たトニーはほっとしたように、再び「6メロディアンズ」を紹介する。

こうして、6メロディアンズの演奏は無事始まったが、ゲストの江利チエミはまだ到着しない。

客席から、山崎が「江利はどうした!?」と弥次を飛ばす。

その頃、当の江利チエミは、新東宝のスタジオをようやく出発していた。

ステージでは、時間を稼ぐため、青木がドラムのソロを披露しはじめる。

車中でメイクをし終えた江利チエミが、無事中央劇場に到着し、舞台で「カモナ・マイ・ハウス」を唄いはじめる。

こそこそ、劇場を逃げ出そうとした山崎を見つけた三上は、お前のような悪徳ブローカーがいるから、若い才能が伸びないんだと殴りつけ、俺は柔道三段だと脅す。

舞台では、6メロディアンズと江利チエミのステージが続いていた。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

スター誕生パターンのストーリーをベースにした音楽映画で、話自体はそう珍しいものではないが、登場する当時の人気者たちの姿が、今となっては大変貴重な作品。

冒頭に登場する漫才師としての南道郎の姿がまず貴重。

話の中心になる城南大学のジャズバンド「6(シックス)メロディアンズ」のドラムは、めちゃめちゃ痩せているフランキー堺、ウッドベースが高島忠夫、ピアノは天知茂と言う、後の映画界を担う新人たちばかり。

フランキーは、この作品では一切コメディアン的な芝居をしておらず、全編シリアスな芝居に徹している。

若い頃のジョージ川口とか、「サヨナラ」を唄っている日本唯一のアカデミー賞女優ナンシー梅木の姿も珍しいが、「吸血鬼ゴケミドロ」の高英男の若い頃の姿にはびっくり!

他にも、古川緑波(ロッパ)、伴淳三郎、柳家金語楼、益田キートン、トニー谷などお笑い陣も豪華。

さらに、安西郷子まで出ていたのにも驚かされる。

ロイド風の帽子を被った大泉滉も、コメディリリーフっぽい小悪人風な芝居をしている。

冒頭に、審査員として登場しているティーブ釜范とは、ムッシュかまやつの父親。

とにかく、当時の音楽状況を知る上で、重要な映像と言う事が出来よう。