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俺の血は他人の血

1974年、松竹大船、筒井康隆原作、舛田利雄脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

9月23日、とある地方都市の夜の繁華街。

一人の男が、タクシーでやって来ると、バー「マーチンズ」に入っていく。

その直後、同じくタクシーで乗り付けた別の男が、その店の前で張り込みを始める。

しばらくして、「マーチンズ」から出て来た男が、タクシーを呼び止めて乗り込もうとした時、後部席に乗っていた先客が発砲する。

たまたま、近くを歩いていた青年絹川良介(火野正平)は、撃たれて倒れかける男を助け起こそうとするが、後ろの方から 「よせ!かかわり合いになるだけだ」と声が聞こえたので、男の身体を横たえると「マーチンズ」に入って行く事にする。

店には、声をかけた男と思しき中年男がカウンター席に座っていたので、良介が忠告してくれた礼を言うと、中年男沢村六助(フランキー堺)は知らん振りをする。

店のママ蘭子(那智わたる)が声をかけて来たので、働き口を探しに来たと答える良介。

しかし、地元出身らしき蘭子は「ここは嫌な町よ」と言う。

そこに、ヤクザらしき三人組が入って来てボックス席に座ると、折悪く、ホステスのマリとユリが山鹿副社長が表で殺されたと報告しながら入って来る。

その言葉に敏感に反応したチンピラたちは、カウンターの中にいた女性バーテン房子(奈美悦子)をホステスがわりに呼びつけようとするが、房子が今、良介の相手をしている所だと断わったので、チンピラたちは立ち上がって、良介をいたぶりはじめる。

最初は震えていた良介だったが、頭のどこからか「よせ!ストップ」の声が聞こえ、次第に顔つきが変りはじる…

ふと我にかえった良介が観たものは、メチャクチャに壊れた「マーチンズ」の店内の様子と、何時の間にか、チンピラの姿が消えている事。

呆然とした良介が、俺、何したん?と聞くと、呆れたような顔をした房子が、自分で半殺しにしておいて…と答える。

先ほどの三人組は大橋組の雇い人たちで、良介自身が店の外に放り出したのだと言うではないか。

窓から表の様子をうかがっていた六助が、大橋組の助っ人たちが駆け付けて来たのを見つけ、良介を連れて裏口から逃げ出す。

橋の下に逃げ込んだ六助は、俺と手を組まないかと、良介に持ちかけて来る。

この町は伏魔殿のような所なのだと、六助が説明をし始める。

20年前、山鹿虎一郎なる人物が何もなかった土地を買取り、一代で作ってしまった山鹿産業がこの町を牛耳っていると言って良い。

その山鹿虎一郎も老い、今や、左文字組と組んだ福田常務と、大橋組と手を握った足田専務と言う山鹿産業の二つの派閥が、町の実権を握っていると言って良く、先ほど店の前で殺されたのは、山鹿社長が東京から呼び寄せて副社長にさせた息子なのだと言う。

副社長はもともと役人出身で、インテリの正義感だっただけに、色々、会社の不正を暴こうと、独自に調査している最中で殺されたのだ。

今、大橋組と対立している左文字組が用心棒を募集しているので、君の力は役に立つはずと六助は言うのだ。

翌朝、橋の下で目覚めた良介は、ここで待っていろと書かれた六助の置き手紙を発見する。

その六助、自ら左文字(橋本功)社長に会いに出向き、用心棒になりそうな強い奴がいると良介の事を売り込んでいた。

昨夜、大橋組のチンピラたちを叩きのめした男がいる噂は、すでに左文字の耳にも伝わっており、興味を示すが、その最中、当の良介が、運転手に雇ってもらいたいと下に来ていると子分の鴇田(吉原正皓)が伝えに来る。

六助が慌てて下に降りていくと、自分は用心棒等になるつもりはないと言い、さっさと良介はその場を立ち去る。

良介は自問自答していた。

又、あの病気か?何年も出なかったあの病気なのか?…と。

そして、「マーチンズ」の房子を遊園地に呼出すと、夕べ、自分があの店でやった事を何もかも話して欲しいと伝える。

ウォータースライダー等に乗り、しばらく遊んだ後、ベンチで休息した房子は夕べの事を語りはじめる。

チンピラ相手に暴れている時、良介は「エクスクレメント!」と叫んでいたと言うのだ。

それを聞いた良介は、実は、自分は病気で、暴れている間の記憶は全くない事、同じ状況に子供の頃2度なった事があるのだと打ち明ける。

一度目は小学生の頃で、大勢で虐められた野球仲間を、何時の間にかバットで殴りつけていた。

二度目は高校生の時で、不良六人に脅かされた時、同じようにボコボコにやっつけて、教師に止められるまで何も覚えていないと。

何軒もの医者に観てもらったが、何か子供の頃のトラウマに関係があるのではないかと言われただけ。

結局、いつかは人を殺すのではないかと怖くなり、大学を出た後、こうして各地を歩き回っているのだと良介は打ち明ける。

そんな二人の元にやって来たのが、大橋組のチンピラたち。

逃げようとした良介だったが、彼らにあっさりつかまり足で踏み付けられる内に、彼の顔色が変りはじめる。

そこに、左文字組のチンピラたちも駆け付けて来て、大橋組と乱闘を始める。

又しても人格が豹変した良介が、チンピラたちを投げ飛ばしている間、文子が大橋組に連れていかれてしまう。

それに気付いた良介は後を追おうとするが途中で転んでしまう。

そこに駆け付けて来て良介を助けてくれたのは六助だった。

そんな中、ドサクサに紛れて、大橋組の望月と言う男が殺されている事が判明する。

それを六助から聞いた良介は、とうとう恐れていた自体が起こってしまった事に愕然とし、やって来た警官に自ら両手を差し出す。

しかし、左文字組のチンピラを殺したのは良介ではありえなかった。

何故なら、その男は、短刀で突き殺されていたからだ。

良介が警官に連れていかれたのは、この町の警察署長(小松方正)の部屋だった。

良介の後見人として六助も同席を許される。

良介が呼ばれたのは、殺人容疑等ではなく、山鹿副社長殺害の唯一の目撃者だったからだった。

署長から容疑者の写真を大量に見せられるが、良介は良く覚えていないが、本人に会ったら分かるかも知れないと答え、大橋組に拉致された房子を救出してくれと頼んで辞去する。

六助と良介は、「マーチンズ」に戻る。

六助は、山鹿副社長が殺される直前、この店に入ったのを観ており、副社長が何を言ったのか知りたい。土地っこのママは、何もかも知っているはずだと蘭子に迫る。

一方、良介は、先輩に当る記者の伊丹に宛て、「エスクレメント」という言葉の意味を教えてくれないかと葉書を書く。

そこに、山鹿邸の執事なる人物から電話が入り、こちらに来て欲しいと連絡があり、容量を得ない良介に変って電話に出た六助が、早速うかがうと答える。

山鹿邸では、執事(谷村昌彦)と虎一郎(安部徹)本人が待ち受けていた。

虎一郎の要件は、町の警察は一切信用できないので、息子を殺害した犯人を君たちで探して、まず自分に知らせて欲しいと言うものだった。

まだまだ自分がいかに健在かと、社員たちに示したいらしい。

前金として、独り50万、発見したら、残りの50万づつを払うと言う。

良介は気乗りしなかったが、六助がさっさと金を受取って承知してしまう。

すぐさま、二人は大橋組に乗り込む。

出迎えた大橋(青木義朗)とボディガード風の男だけだったが、酒を出してくれたその男の顔を観た良介は驚愕する。

その伊藤と呼ばれる男こそ、山鹿副社長をタクシーの中から射殺した男だったからである。

しかし、良介は、自分は何も観ていないと答え、その言葉は、しっかりに録音されていたようで、その隠しテープを取り出した伊藤はほくそ笑む。

そのテープが保証になったのか、大橋はすぐに房子を返してくれる。

帰りがけ、六助は、殺された望月は刺されていたと大橋に教える。

言い様にされてたまるかと言う意地だった。

さらに、左文字組の社長に電話をかけた六助は、匿名で、山の手のジャリ工場に大橋組が乗り込んで来たと密告する。

鴇田たちは、さっそくジャリ工場へ向い、そこにいた大橋組の車と大格闘を始める。

鴇田は、ブルドーザーに乗り込むと、相手の車に突っ込み持ち上げたり、トラックの荷台に満載したジャリを、相手方の車の上から浴びせかけるのだった。

その事を知った良介は、まるで西部劇の町みたいだと呆れる。

六助は、これから、大橋組と左文字組との手打ち式が開かれるからと「マーチンズ」から出て行く。

一方、蘭子から速達を渡された良介は、それが伊丹先輩からのものであり、「エクスクレメント」とはイタリア語で「糞」と言う意味で、マフィアのボスだったロベルティスの口癖としても有名だったと言う。

その頃、料亭の庭に忍び込んだ六助は、警察署長が真ん中に座って仕切る中、左文字組を率いた福田常務(穂積隆信)と、大橋組を引き連れた足田専務(渥美國泰)の双方のメンバーが揃って、互いに手打ちの挨拶をしていた。

その様子を、必死にメモする六助。

良介の方は、すぐさま、伊丹先輩に電話を入れ、ロベルティスのもっと詳しい情報を教えてくれと頼む。

マフィアのロベルティスは、腕っぷしも強かったが、拳銃の使い手としても知られ、麻薬の取り引きで1949年4月に日本にやって来た時、横浜で死んだのだと言う。

それを聞いた良介は、自分の誕生日が、その1949年の4月だった事を打ち明け、その奇妙な富豪に呆然とするのだった。

蘭子に勧められ、ママの部屋のベッドで休ませてもらう事にした良介。

そんな様子を観ていた房子は、あの男はバカだと罵る。

しかし、その本心は良介に惹かれており、自分もママの部屋に入って行く。

やって来た房子に対し、自分は不安だ、俺は一体誰なんだ!房ちゃん教えてくれよ!と弱音を吐く良介は、始めから好きだったと言いながら、何時の間にか、房子に抱きついていた。

「マーチンズ」に戻って来た六助に、蘭子は、過去の秘密を打ち明けはじめていた。

昔、山鹿産業の掘と言う経理課長と付き合っていた綾子と言う蘭子の友人が、ある日、堀と彼が連れて来た足田専務が、二重帳簿の事を話しているのを聞いてしまったと言うのだ。

不正経理で浮いた金を芦田専務が私していたのだ。

その二重帳簿は、芦田専務の家の秘密金庫にしまっておく事も聞いてしまった綾子は、その四日後、車に轢き殺されてしまったと言う。

それを教えた副社長の事を、蘭子は好きだったと告白する。

話を聞き終えた六助は、自分と組まないかと言い出す。

何時の間にか外に出て、公園のブランコに乗りロマンチックな気分に浸っていた良介と房子を、突如銃声が襲う。

その狙撃者を捕まえたのは六助だったが、狙撃者は意外な事に若い女性だった。

殺された望月の恋人だった信子(舛田紀子)だと分かる。

良介の事を、仇と思い込んでの犯行だった。

取りあえず、怪我をした信子を房子のアパートに連れて行き、望月を殺したのは左文字組の誰かだと教えた六助は、自分が仇をとってやると約束し、良介を外に連れ出す。

良介は、足田専務の屋敷に忍び込むと言う六助の手伝いを頼まれ狼狽する。

しかし、結局、外で待っていて、合図があった場合だけ助けに行くと言う条件で承知する。

屋敷に忍び込んだ六助は、書斎の壁にかかった油絵の後ろに秘密の金庫を見つけだし、その中から二重帳簿を頂戴するが、帰りがけ、女の喘ぎ声が聞こえたので、好奇心から寝室を覗いてみると、足田専務と女がベッドインしている最中。

ついそのまま覗いている内に、足元に黒猫が出現、猫嫌いの六助は思わず音を立ててしまい、専務らに気付かれてしまう。

庭先で、ボディガード役のチンピラたちに取り囲まれた六助は、打合せ通り合図のターザンの雄叫びをだし、渋々良介が中に入って来るが、チンピラたちがけしかけて来た犬を見るととたんに尻込みをしてしまう。

彼は犬が苦手だったのだ。

足田専務の手には拳銃が握られており、チンピラと犬とを前に、手も足もでない六助は、渋々m盗んで来たばかりの帳簿を返す事になる。

しかし、次の瞬間、又しても顔色が変った良介は、隙を観て、専務から拳銃を奪い取ると、たちまち発砲して犬たちを射殺してしまう。

その勢いに凍り付いたチンピラと専務から、再び帳簿を受取ると、二人は意気揚々と夜が開けた中、房子のアパートへ戻るのだが、ちょうど、信子が何者かに拉致されて、車で連れ出される現場に遭遇する。

急いで、房子の部屋に駆け込んだ良介は、そこに倒れていた房子の身体を発見する。

どうやら、信子を奪われないようにと抵抗し、チンピラたちからなぎ倒された時、壁に頭をぶつけて死んだらしい。

茫然自失の状態になった良介は、手に入れた二重帳簿を種に大儲けできる等と話している六助の顔を観ている内に、逆上して、その首を締め付けはじめる。

しかし、ほどなく正気に戻り、素直に六助に謝る良介。

信子を誘拐したのは、左文字組の鴇田と悟った良介は、単身、左文字の社長の部屋に乗り込むと、信子を返してくれ。自分は鴇田と勝負したいと迫る。

それを聞いた左文字は、面白そうに、お前たちが、足田専務の屋敷から奪ったものをこちらに渡すと言う条件を飲むなら、言う事を聞いてやろうと答える。

足田専務と大橋組の弱味さえ逃げれば、この町は、俺と福田常務のものになるので、鴇田など好きにして良いと言うのだ。

それを聞いた良介は、本当に悪いやつが誰なのか分かった。自分がこの町をきれいにしてやると答える。

その頃六助は、大橋組へ出向き、大橋と足田専務に、左文字組でも帳簿を欲しがっているので、せいぜい、値段を競り上げてくれ、自分は高い方に売るつもりだと持ちかけていた。

良介は、房子の葬儀が行われていた教会に出席していたが、そこにやって来たのが、他ならぬ、伊丹先輩(中谷一郎)だった。

彼は、さらにロベルティスの最後に付いて、詳しい調査をしてくれたのだった。

それによると、日本に密輸の取り引きでやって来ていたロベルティスは、裏切りに会い、壮絶な殴り合いと銃撃戦の末、6発の銃弾を受けて倒れたが、自分で病院に通報して、江南大学付属病院に運ばれ、そこで亡くなったが、その三日後に同じ病院で生まれたのが良介だったのだと言う。

しかし、良介は、新生児要血清疾患と言う病気である事が判明し、大量の輸血が必要だったが、特殊な血液型だったため、両親からの採血は不可能で、結局、安置してあったロベルティスの血液を輸血に使用したのだと言う。

その輸血が、今回の病気とどう言う関係があるのかまでは分からないが、25年間の間に、もう体内の血液は全て入れ替わっているはずで、超自然現象のようなものではないかと言う。

その話を聞いた良介は、これを逆手にとってやる。俺は怒ってやる。ロベルティスの力を借りて、この町を全滅させてやると呟く。

しかし、その二人の会話を近くで聞いていたものがいた。蘭子だった。

「マーチンズ」に蘭子と戻った良介は、のんきにカウンターの中でカクテル等作っていた六助を殴って縛り付けると、蘭子から教わった椅子の下に隠された二重帳簿を見つけだす。

そして、左文字の所に電話を入れると、帳簿を渡すので山鹿産業の幹部を全員集めろと良介は命ずる。

左文字は喜んで、幹部たちに召集をかける。

蘭子は、そんな良介に、これを読んで研究してと一通の手紙を渡す。

やがて、山鹿虎一郎を中央に、山鹿産業の幹部全員、そして、左文字組、大橋組の全員も一室に集合する中、良介は、二重帳簿を持って出席する。

そして、全員が謹聴する中、良介は、まず、持参した二重帳簿が大橋組と足田専務の策略である事を説明した後、山鹿副社長を暗殺したのは、大橋組の伊藤だと爆弾発言する。

場内が騒然とする中、山鹿虎一郎が先を続けろと促す。

良介はさらに、左文字と副田常務が交わした土地の権利書を取り出してみせる。

今まで、にやついていた左文字と福田の表情が凍り付く。

次いで良介は、森村房子を殺害したのは、左文字組の鴇田だと喝破する。

ここに至って、場内は大混乱になる。

左文字組と大橋組が、室内で殺しあいをはじめたのだ。

それを観て、ほくそ笑む虎一郎。

良介は「エスクレメント!」と叫んでいた。

室内は、両陣営の殺しあいで、ほぼ全滅してしまう。

そこに、蘭子と六助が駆け付けて来る。

独り生き残った虎一郎に近づいた蘭子は、あなたは何も手を汚さずに、又会社を自分のものにしたと思っているのかも知れないが、しょせん、この連中はあなたに使われていただけ。

因果応報とはこの事。あなたが20年前、買収した地主の一人が自分の父だったのだが、先祖伝来の土地を売り払ったと、後で後悔し、申し訳ないと首吊り自殺を遂げたと告白する。

そうした多くの地主の恨みがこうさせたのだと…

それを聞いていた虎一郎は、急に吐血し、その場で息絶えてしまう。

それを目撃した蘭子は、これで、この町もきれいになるわと呟く。

そこに押っ取り刀でやって来た警察署長は、室内の様子を観て呆然となる。

そんな中、独り、野次馬の中を立ち去る男がいた。

良介だった。

その良介を追い掛けて来たのが六助。

俺と組んで金もうけしようと懲りずに誘い掛けるが、良介が興味なさそうな様子を見て取ると、悪かった、さよならと言葉をかける。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

筒井康隆原作のはじめての映画化作品で、火野正平のデビュー作。

一つの町を二分するヤクザが牛耳っている…と言う話のベースは完全に「用心棒」である。

ただし、当時の松竹には、迫力のあるヤクザを演じられる役者がいなかったらしく、一応、重要な役所は橋本功とか山谷初男、市原正皓など、若干強面風の役者にやらせているが、それ以外の子分たち同様、迫力は今一つ。

全体としては、コメディでもなしアクションとも思えず、かと言って、松竹お得意の人情話でもなし…と言った、どこかポイントがはっきりしない仕上がりになっている。

もちろん、スラップスティック(ドタバタ喜劇)にもなり切っていなし、どう考えてもSFとも言えない。

何となく観れるプログラムピクチャーと言うしかない。

さらに、ヒロイン役が奈美悦子(当時24才)と言うのも弱い。

もともと、見た目的に華のない女優だが、火野正平(身長168cm)と並ぶと結構大柄に見える(奈美悦子-身長167cm)のもちょっと可哀想。

なるべく二人が立って並ばないようにしているのが分かる。

奈美悦子は、大半の女優が脱いでいたこの時代、この作品でもやはり脱いでいない。

代わりに、足田専務のベッドルームで、意味のない無名女優のヌードシーンが挿入されている。

火野正平は、ジージャン姿のロンゲで、イケメンと言う訳ではないけれど、母性本能をくすぐるような甘い泣き顔だし、肉体は引き締まっているし、芝居もそれなりに巧い。

ただ、新人が主役では興行的に弱いと言う事なのか、フランキー堺が主人公のようにやたらと活躍してしまっているので、火野正平の方のヒーローっぽい活躍はあまり期待出来ない。

アクション等撮りなれていない当時の松竹の事なので、ヤクザが吹っ飛ぶシーンでは、あからさまに腰の辺りにピアノ線を繋ぐ装置が見えていたりするのが情けない。

横浜ドリームランドでのヤクザとのドタバタ乱闘や、ジャリ工場での車を使ったアクション等、当時の松竹にしては頑張っている部分もあるが、やはりクライマックスの見せ場が弱いので、決定的に、作品としての印象が弱くなってしまっているのが惜しまれる。

やはり、低予算でスラップスティックに挑戦しようとした企画自体に無理があったのではないだろうか。

興行的にも全く当らなかったのか、その後も、このジャンルの開拓はほとんど行われておらず、従って、いまだにこれと言った成功作はないように思われる。