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まり子自叙伝 花咲く星座

1959年、東宝、菊田一夫原作、関沢新一脚本、松林宗恵監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

舞台で唄う宮城まり子。

一人語りで、自分の幼い事の事を話し出す。

♪私は蒲田生まれ、月足らずで逆子で生まれたので泣かなかったが、産婆さんがお尻を叩いてようやく泣いた〜

♪父親はアルミ工場の社長、母親は音楽学校の卒業生〜

♪小学校は父親の仕事の関係で大阪に行った〜

♪小学2年生の時、母親が亡くなった〜…

小学生の本田まり子(中山千夏)は、病院に入院している母親の熱を下げるため、氷を求めて歩き歩いていたが、15軒回ってもどこも売ってくれず、仕方なく、祭りの屋台で出ていたかき氷屋(堺左千夫)に氷を売ってくれと頼み込むが、商売用なので売る訳には行かないと断わられる。

そんなまり子が、ようやく氷を手に入れて病室に駆け付けると、もう母親が臨終間際である事を知り、母親の顔を観てやれと言う父親(坂本武)や兄寿雄の言葉も聞かず、悲しみのあまり外に飛び出す。

日本は戦争と言うくらい時代を迎え、それから4年後、まり子は小学校を卒業する。

女学校に行きたいと願うまり子だったが、父親は産婆の貫野のり枝(本間文子)に彼女を預ける事にする。

のり枝は、当初、何とかまり子を女学校に行かせてやりたいと言っていたが、現実には生活に追われ、とてもそれを実行する事は出来なかった。

のり枝の夫(田中春男)は、妻が働いている中、まり子は本田家から預かっている身だけに、お手伝いのように使う訳にも行かず、家事一切を自分が行わなければならず腐っていた。

そんな中、まり子は、子守りをしながら、まだ女学校へ行けると信じ、本屋で立ち読みをしては、店主から煙たがられ、追い出される。

渋々道に出ていくと、そこで学校帰りの角のボンボン(久保明)と出会ったので、まり子は嬉しくなる。

中学校に通っているボンボンの事を前から好きだったからだ。

まり子は思いきって、彼に話し掛け名前を名乗ると、 自分も女学校に行くのだと自慢するのだった。

しかし、のり枝は、女学校に行かせてもらうと言う約束をいつまでも忘れないまり子に少し手を焼いていた。

産婆学校に行って、自分の後を継ぐつもりはないかと言い出したのである。

さすがに、この言葉は、まり子にとってショックだった。

のり枝が仕事で出かけた後、亭主の方も二階で昼寝をはじめたので、幼子を寝かした横で、まり子は大好きな蓄音機を取り出すと、レコードの曲に合わせて自分も唄い出すのだった。

そこに、小学校時代からまり子の事を気にかけてくれていた谷口先生(丹阿弥谷津子)が訪ねて来たので、まり子は、女学校に行けなくなった事情を話し、いっその事、自分はレコード歌手になろうと思うと打ち明ける。

谷口先生に聞かせようと、まり子が大きな声で唄い出した途端、入院中の妊産婦が産気づいてしまい、付き添いの親がその場にいた谷口先生を医者と思い込み、奥に連れていこうとするし、赤ん坊は泣き出し、その騒動で起きて来た亭主は、急いで、妻が出向いている相手先の家に電話をかけるが、そちらも今てんてこ舞いの最中と言う事で、すぐに帰れないと言う事が分かって大混乱になる。

その後、又子守りで外を出たまり子は、角のボンボンの帰りを待ち受け、好きだと告白しようとしていたが、ちょうどそのボンボンが通りかかったので、自分はレコード歌手になろうと思うと夢を語る。

しかし、それを聞いたボンボンは軽佻浮薄やと言い放ち、目の描かれてない小さなダルマの人形をくれるのだった。

しかし、まり子には、ぼんやり自分の進むべき道が見え始めていた。

それから、近所のピアノ教習所に通い、歌のレッスンを始める。

それから3年後、 まり子は、兄の寿雄(池部良)が ドラムを叩いていた花月劇場の舞台で唄い始める。

しかし、最初は、まり子が唄いはじめると、どんどん客が帰っていってしまった。

時ならぬ空襲警報が鳴り出したのだ。

家の周辺も爆撃を受けたので、急いで帰って父親の身を案じたまり子と寿雄だったが、何とか父親は無事だった。

そして、その父親が言うには、自分の故郷の福岡に疎開して、向こうで、まり子を座長とする楽団を始めようと提案する。

いっその事、まり子の芸名も考えようと言い出した父親は、宮城千鶴子と命名する。

こうして、一家三人を中心に組んだ宮城千鶴子楽団は、九州の地で巡業を開始する事になる。

ところが、とある町にやって来た時、千鶴子らが出演する劇場の看板に「水の江ターキー来る!」とありもしない宣伝文句が書かれているではないか。

さすがにこれに怒った寿雄が、父親に抗議してくれと言っている最中に、当の劇場主(沢村いき雄)が楽屋に訪ねて来て、ああでも書かなければここらでは客は集まらないし、始まる前にターキーは病気にでもなったと言えば、客は何も言えないと虫の良い事を言う。

さらに、舞台が始まる前になって、急に座員の男女二人が急に辞めたいと父親に言い出す。

何でも、疎開のつもりでこちらに付いて来たが、こちらも最近では空襲がひどくなり、身の危険を感じるので、東京に戻りたいと言うのだ。

ここで、二人抜けられては、舞台が出来なくなると感じた父親と千鶴子は、必死に二人を慰留しようとするが、寿雄は、そんな二人の態度を諌める。

千鶴子も、決心したかのように、二人を引き止める事を止め、これからは自分一人で全部の舞台を仕切ってみせると言い出す。

急遽、予定されていた舞台構成を練り直し、寿雄が弾くピアノに合わせ、千鶴子の練習を始める事にする。

しかし、もう今日の幕開けは迫っており、客が騒ぎはじめていた。

何とか、父親が引き延ばしをしようとするが、客はますます騒ぎ出すが、練習をしないまま舞台には出られないと、父親にさらなる客の説得を頼み、何とか兄妹の練習を続け、ようやく、千鶴子が、舞台に出て事なきを得る。

千鶴子の独り舞台は大評判で、舞台が跳ねた後、劇場主が上機嫌で、ウドンの差し入れを楽屋に持って来てくれる。

しかし、それを皆で食べようとしていた所で、又、空襲警報が鳴りだし、まり子は、近くの防空壕へ逃げ込む。

ところが、まり子は、そこで思い掛けない人物と出会う。

角のボンボンであった。

彼はもう大学生になっており、学徒動員でこちらに来ているのだと言う。

嬉しくなったまり子は、以前、ボンボンからもらっていたダルマをまだ持っていると見せ、自分がレコードを出して、それがヒットしたら片目を入れるつもりだと話す。

もう片方は?とボンボンから聞かれたまり子は、それは秘密だと答える。

どうやら、空襲警報は誤報だった事が分かり、じきに解除されたので、明日、近くの浜で再開する事を約束し、二人は別れる。

翌日、浜辺で再びボンボンと出会ったまり子は、今、この場で空襲警報が鳴り出したら、二人一緒に逃げる事になり、まるで小説のようだと乙女チックな夢を語るが、当のボンボンはさっさと一人で帰ってしまう。

しかし、その夜、まり子はボンボンと二人っきりで、浜辺を空襲から逃げる夢を観ていた。

やがて日本は終戦を迎える。

昭和21年、大阪に戻って来た千鶴子は、ある日、角のボンボンに会いに行くが、一家ごと疎開していて誰もいないと言う。

がっかりして兄が出演している朝日劇場の前まで戻って来た千鶴子は、靴磨きの少年が近くのチンピラたちに囲まれているのを観て、つい義侠心から担架を切ってしまう。

今度は自分がチンピラたちに絡まれ出したので、千鶴子はつい兄の名を呼ぶ。

すると、裏口からちょうど出て来た寿雄が、千鶴子に気付いて近づいて来たので、その寿雄がチンピラから殴りつけられる事になる。

思わぬ災難に会った寿雄だったが、その後、公園に行きに、ブランコに乗りながら、谷口先生の消息が分かったと千鶴子に教えてやる。

さらに、今日、ボンボンに会いに行った事に気付いていた寿雄は、千鶴子の気持ちを確かめるために、ボンボンの事好きか?と聞いてみる。

千鶴子が、好きと答えたのは言うまでもない。

さっそく、谷口先生の家を訪ねていった千鶴子は、今度、思いきって、東京に出てみたいと相談する。

今、父親が、浅草のトキワ座に出演交渉しに行っているのだ。

谷口先生は、驚きながらも賛成してくれるが、ちょうど帰宅して来た夫(三島耕)は、止めた方が良いと忠告するのだった。

結果、千鶴子の目の前で、夫婦の言い争いが始まってしまう。

やがて、千鶴子は列車で上京する事になるが、浅草に行ってみて分かった事は、出演できるのが、トキワ座ではなく、小さな小屋だった事だった。

その客席の片隅に、彼女の才能に目を止めた男が一人いた。

やがて、そこで唄っていた姿を認められ、ビクターの専属歌手になる事が出来た千鶴子だったが、専属と行っても「ぴんきり」の「きり」の方の扱いで、吹き込みするチャンスはなかなか回って来なかった。

千鶴子は、毎日のようにビクターに通ったが、電車賃もないので、いつも徒歩でだった。

家に戻ると、兄がパンを一切れ買って来てくれて、それにミソを付けて、父親と三人で食べる生活だった。

このままでは喰うにも事欠くので、千鶴子に、アトラクションに出演してみないかと父親が提案するが、千鶴子は、又そう言う生活に戻ったら声が荒れると言い返す。

父親は、寿雄にも、キャバレーでドラムを叩かないかと聞くが、彼も又、作曲家として一人前の男になりたいので、そう言う生活には戻りたくないと言い、なまじこんなものがあるからそう言う欲が出るのと言いながら、部屋にあったドラムを自ら包丁で切り裂いてしまう。

父親は説得を諦め、日劇に出演交渉に行くとでかける。

その頃、日劇の支配人室では、支配人(山茶花究)が誰か新しい才能がいないかと、芸能記者の伊川(伊藤久哉)と相談していた。

伊川は、浅草で見かけた千鶴子の事を思い出して、良い娘がいると教える。

千鶴子と兄は、部屋で唄いはじめていた。

兄が、板に描いた架空のピアノで作った歌をまり子が唄いはじめたのだ。

兄と妹には、部屋の中がコンサートホールに思えた。

やがて、寿雄も歌に加わり、二人は一緒に踊り始める。

気分は昂揚した二人だったが、空腹はおさまらなかった。

千鶴子は、つい、アトラクションに出てみようか…と弱音を吐く。

そんな所に訪ねて来たのが伊川だった。

彼の口から、日劇のテストを受けてみないかと聞かされた二人は唖然となる。

たった今、父親が交渉に行っている所だと話すと、知らない人じゃ無理だとにべもない。

すぐに、伊川の車に乗り込み日劇のテストを受けに行く二人。

千鶴子の歌を聞いた支配人はすぐに気に入り、ダイヤモンドショーに出てもらうと千鶴子に伝える。

さらに、千鶴子と言う芸名では古いので、宮城まり子で行こうと言う事になる。

大喜びのまり子と寿雄が、テスト室を出て帰ろうとしていると、父親が待っているではないか。

父親は、二人がたった今、日劇のテストに今愛かったと聞いても、訳が分からない様子。

こうして宮城まり子は、日劇で歌を唄う事ができたが、まだ、レコード吹き込みの夢は叶わなかった。

まり子は、以前のようにレコード会社に日参して、野口ディレクター(南道郎)に頭を下げるが、全く相手にされない。

そんな扱いには慣れっこになっているまり子は、野口に付いて文芸部にも押し掛ける。

野口は、元売れっ子歌手だった住ノ江照江(白石奈緒美)は、もう使い物にならないと文芸部長に伝える。

文芸部長(清水一郎)は、誰か替わりを探さなくては…とこぼしている。

野口と文芸部長がスタジオに出向いた間、独り部屋に残っていた作曲家の佐原(市村俊幸)にまり子は頭を下げる。

しかし、すでに62回も頭を下げて来たまり子に、人の良い佐原は困るだけ。

デモンストレーションとして、同伴して来た寿雄がピアノを弾き、佐原の目の前で一曲唄ってみせるまり子。

その熱意に打たれた佐原は、持っていた曲の楽譜をまり子に渡してやる。

野口と文芸部長は、住ノ江を諦め、桜井京美(飛鳥みさ子)に唄わせる事にする。

すると、B面の曲が必要になり、文芸部に戻って来た二人は佐原に、何か曲がないかと尋ねると、困ったように、今、一曲まり子に渡したと答える。

野口と文芸部長は、あっさり、その楽譜をまり子の手から奪ってしまう。

すっかり、自分の曲をもらえたと思っていたまり子は、ショックのため泣き出してしまう。

そのまり子を慰めながら、佐原も兄も先に帰ってしまう。

文芸部に独り残ったまり子。

そこにやって来たのは、電気を消しに来た守衛の吉田さん(中村是好)だった。

彼は、毎日のように会社にやって来るまり子の事を同情していたのだった。

独り、会社を出て帰りかけたまり子は、橋の上に差し掛かった時、いっその事、この川に飛び込んで死んだら、自分がどんなに哀しかったか、会社の人たちにも分かるだろうと考え、欄干を乗り越えかけるが、そこに通りかかったのが、吉田さん。

彼は、まり子を屋台の中華そば屋に誘うと、自分もこれまで色んな歌手を観て来たが、運がない時にはずっとダメなものだが、一旦運が向きはじめるとトントン拍子になるものだから、君も死ぬなんて考えるなと忠告してくれる。

まり子は、その言葉を胸に秘め、その翌日からも毎日、会社に出向いては、野口や文芸部長が会社内を逃げ回るほど、頭を下げ続けるのだった。

そうした熱意が認められたのか、とうとう「東京ヤンチャ娘」と言う曲で、レコードを吹き込む事になる。

その曲は評判を呼び、やがて「毒消しゃいらんかね」「東京シンデレラ」「六長家の唄」「納豆売りの唄」など、ヒット局が連続し、町中では、まり子の歌声が鳴り渡るようになる。

そんなある日、楽屋にいたまり子に、竹村なる来客があるとの知らせが届く。

出てみると、竹村とは、まり子が恋いこがれていた角のボンボンの事であった。

彼が言うには、身体を壊して、九州からしばらく戻って来れなかったが、今は技師をやっており、建設省に用があったので上京して来たので、歌手になったまり子に会いに北と言うのである。

今度、まり子が大劇場に出演する事になったら、花束を持って会いに来るとボンボンが言ってくれたので、嬉しくなったまり子は、指切りをする。

その後、とうとう、東宝宝塚劇場に出られる事になる。

兄と父親は、東宝の菊田重役と会う事になる。

まり子は、さっそく、谷口先生とボンボンに手紙を書きはじめる。

まり子は、菊田一夫原作の「極楽島物語」の主役を勤める事になり、菊田指導の元、舞台の練習を始める。

いよいよ開幕の日、楽屋には谷口先生がやって来てくれる。さらに吉田さんも。

そして、一番待ちわびていたボンボンも、約束通りやって来てくれた。

ボンボンは、君のファンだと言う人を連れて来たので会わせたいと言う。

まり子の前に現れたその人物とは、ボンボンの妻の幸子(安西郷子)だと言うではないか。

唖然とするまり子。

その後ろ姿を楽屋から観ている兄、寿雄。

ボンボンと幸子が客席に戻っていった後、鏡の前に戻って来たまり子は号泣し出す。

もう、舞台等でないと言うのだ。

それを横で観ていた寿雄は、ここで落ちたら、一生這い上がれない穴に今落ちようとしているのだと、まり子を叱りつける。

しかし、まり子は、兄ちゃん、もういい…と聞く耳を持たない。

そんなまり子の頬を殴りつける寿雄。

そのビンタで迷いが消えたのか、兄ちゃん、うち、負けへん、うち、負けへん…、舞台、一生懸命やる!と言い切る。

そして、片目だけ描いていなかっただるまのもう片方に、バツ印を書き込む。

舞台に出たまり子は、日本兵役の二人の共演者(有島一郎、三木のり平)と共に、踊りながら、元気に唄いはじめるのだった。

その頬には、涙が流れ続けていた…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

宮城まり子の半生を描いたスター誕生物語。

舞台の映画化「極楽島物語」(1957)をはじめ、50年代後半頃、映画に良く出ていた宮城まり子だが、そのデビューまでの道のりは全く知らなかっただけに、なかなか興味深い内容になっている。

小学生時代のまり子を演じているのが中山千夏と言うのも驚きだが、小学校を卒業して以降は、まり子本人が演じている。

天衣無縫なまり子自身の演技も見物なのだが、父親役の坂本武と兄役の池部良が、しっかりした芝居で、宮城まり子を支えている。

特に、池部良が唄い踊るシーンは珍しい。(声は吹替えかも知れないが)

谷口先生を演じているのは、若き日の丹阿弥谷津子。

中村是好や伊藤久哉、市村俊幸らが、まり子の恩人を演じている。