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ラッキー百万円娘

1949年、吉本プロダクション+新東宝、八住利雄脚本、斎藤寅次郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

街角で、二人の学生栗山二吉(エンタツ)と貝塚五平(木戸新太郎)が「学生ピーナッツ」なるものを売っているが、大30円、小15円と言う値段が高いからか、いっこうに客は寄り付かず、二吉は手持ち無沙汰もあり、昼飯の代わりと称して、売り物のピーナッツに自ら手をつける始末。

その側では、女性の歌い手町子(杉山よし子)が路上で歌っており、その周囲は人だかり。

その人だかりの中に、家出をして来たかのような薄汚い格好の少女、岡ひばり(美空ひばり)が混ざって歌を聴いていたが、汚らわしいとでも言わんばかりに金持ちの婦人らしき女性に追い払われる。

その様子を後ろで見ていた一人の浮浪児が、仕返しのため、そのご婦人に自分の身体から取ったのみを一匹くっつけて逃げる。

ご婦人は、急に身体がかゆくなったので、身体をモゾオゾとよじらせるのだった。

追い払われた少女ひばりの方は、その後、ふらふらと車道の方に向かい、走って来た車にはねられてしまう。

それを目撃した二吉は、急いでひばりを抱きかかえると、近くの病院に送り届けてやる。

幸い傷は軽く、二三日で歩けるようになると看護婦から言われた二吉は一安心するが、入院費の話をされると急に黙り込む。

何せ、手持ちの金と言ったら20円しかない。

やがて、ベッドに寝かされていたひばりが目覚めたので、自宅や両親の事を聞いてみるが、家はなく、母もとうに亡くなり、ただ一人の肉親である父親も、いまだに異国の丘から帰って来ないと言うではないか。

親に入院費を請求できないと知った二吉は、とんだ人助けになってしまったと困惑する。

そんな二吉の様子を見ていたひばりは、子供ながらに気を使い、将来金持ちになれるかもしれないと、一枚の紙切れを二吉に見せる。

それは、「181608」と記された日本貿易博覧会発行のくじだった。

がっかりした二吉は、自ら院長(武村新)に献血を申し込んで、その謝礼金を入院費にしてもらうよう交渉するのだった。

その後、退院したひばりを連れた二吉は、街頭で歌っていた沢田四郎(川田晴久)に、12歳のこの子を預かってくれないかと頼む。

一緒に街頭に立っていれば、その内、父親に会えるかもしれないからと言う話を聞いた沢田は、承知する。

その後、二吉は、下宿先のおでん屋に帰って来る。

二階に上がった二吉に、おでん屋「のんき」の主人森三太(花菱アチャコ)の娘、久美子(野上千鶴子)が付いて来て、かいがいしく世話を焼く。

これには、二階の部屋に同居している貝塚も、父親の三太も気が気ではない。

下に呼び戻して説教する三太だったが、栗山さんはプラトンの研究家だと、尊敬しているらしき久美子は反抗する。

しかし、大学に10年も通っている二吉を信用できないと粘る三太。

そこへ二吉も降りて来て、自分はその内、この家の養子になるのだからと、三太の事をお父さん呼ばわりする始末。

夜、二階部屋に貝塚が布団を敷いて寝ようとすると、今から栗山さんが勉強するからと、その布団を片付ける久美子。

貝塚は、階段に追いやられて、一緒に机に座る二吉と久美子の熱々振りを見せつけられてしまう。

それに気づいた三太は、貝塚に二階に上がれと命ずるが、貝塚は上にも下にも動けない。

久美子から耳掃除をしてもらう二吉は、気持ち良さかこそばゆさから、机の上にあった納豆の小鉢をもてあそんでいるうちに、とうとう納豆を階段の貝塚に放り投げてしまう。

下の店で客の相手をしていた三太も、二階の娘の事が気になってたまらず、うっかり「たわし」を客に皿に乗せてしまう有様だった。

久美子は、机の下にあった包みを見つけ、開けてみると、それが女物の着物だったので、自分へのプレゼントだと思い喜ぶが、二吉が、それは別の女の子のためのものだと言うと、嫉妬のあまり暴れだし、彼女が投げた色々なものが、階段にいた貝塚の頭の上に降り掛かって来る。

二吉との同居に限界を感じた貝塚は、知り合いである倉井一(古川緑波)に悩みを打ち明けるが、倉井は、20万の遺産が転がり込んだ新婚ほやほやの男だった。

そんな中、あのひばりが泣きながら、ピーナッツを売っていた二吉の元へ戻って来る。

付いて来た沢田が言うには、この子がいると楽団内がもめると言うのだった。

それを聞いていた貝塚は、倉井の家なら良いのではないかと言い出す。

かくして、ひばりは倉井家に世話になるが、新妻新子(宮川玲子)は、幼い彼女を女中としてこき使い始める。

それを見かねた倉井は、一緒に掃除を手伝いながら、ひばりと共に唄を歌うが、それも見た新子に叱られる。

さらに、ひばりが一人で二升のご飯を食べてしまったと言うので、これ以上家においておけないので、早く追い出してくれと説教する始末。

恐妻家で気の弱い倉井は、新妻を説得する事が出来ず、やむなく、ひばりに事情を話し、出て行ってもらう事にするが、奥さんのいない会社においでと誘う。

ひばりは悲しみながら、倉井家を後にするが、その後、呼ばれておでん屋「のんき」にやって来る。

そこには、倉井がおり、事情を知った二吉と貝塚から、その不人情振りを責められていた。

話しを聞いていた三太も、一緒にカストリ焼酎を飲みながら、倉井のだらしなさを責める。

やがて、倉井は、飲んだ勢いから、新妻の悪口を言い始め、今度こそ自分が彼女を従わせてみせると息巻くので、それを聞いた二吉、貝塚、三太は愉快がり、自分たちも一緒に家に行ってやると店を後にする。

ちょうど、店にやって来た沢田も合流し、5人は倉井家にやって来る。

ミシンを踏んで留守番をしていた新子は、突然の訪問客にびっくり。

その顔を見た倉井も、いっぺんに酔いが冷め、謝ろうとするが、他の4人がそうさせない空気を醸し出している。

三太は勝手にレコードをかけるし、部屋に置いてあった洋酒を取り、倉井にもどんどん飲むよう勧める。

隣の部屋で、新子は一人、酔っぱらいたちのどんちゃん騒ぎを聞きながら、引きつるのだった。

再び寄った倉井に、他の4人が、さっき言っていた通り、女房を叱りつけてみろとけしかける。

しかし、隣の部屋に向かった倉井に、新子は母親の元に返らせてもらうとふくれる。

戻って来た倉井は、妻は風邪を引いたとごまかすが、4人はおかまいなく、そんな倉井に踊れと無理強いする。

隣の部屋に入って来た三太は、新子に、これまでの「のんき」の勘定書を出してみせ、払ってくれるまで帰らないと言い出す。

後日、ピーナッツを売る二吉と貝塚の所にいたひばりに、沢田が近づいて来て、楽団の歌手だった町子がいなくなったので、久しぶりにお稽古してやろうと、ギターを取り出す。

ひばりはさっそく、笠置シヅ子のまねで「ジャングルブギ」を歌い始める。

その頃、一人の復員兵が東京に戻って来ていた。

彼は、吉森隊にいたと言うではないか。

ひばりの父、初五郎(田中春男)であった。

一方、久しぶりに「のんき」にやって来た倉井は、君たちに家庭をめちゃくちゃにされ、離縁されてしまったので、これからは、ここに置いてもらおうと思うと言う。

それを聞いていた三太は悠然と聞き流し、酒を勧めながら、20万円の遺産の残りを預かっておこうと手を出すが、そんな金などないと言うではないか。

すると、がらりと態度を変えた三太は、倉井を追い返すのだった。

ひばりは、沢田の家で「憧れのハワイ航路」を歌っていた。

その後、沢田が街頭演奏を始めたのに付いて行ったひばりだったが、見物客の中に復員兵姿の男を見つけ、喜んで近づくが、父親ではないと気づくと落ち込むのだった。

客たちも帰り始めた頃、近くでNHKの街頭録音が始まる。

アナウンサー(和田信賢)が、集まった客たちに求めるテーマは「今、何を望むか?」だった。

最初に登場したソフト帽の紳士は、自分が望むのは髪が増える事と言い、持っていた毛生え薬の宣伝をし始めたので、慌ててアナウンサーが止める。

続いて壇上に登場した主婦は、インフレなので、ラジオの聴取料をただにして欲しいと言い出し、さらには出演料が欲しいと言うので、またまたアナウンサーは困まってしまう。

続いて壇上に登場したのが二吉で、大学の授業料を安くして欲しい、自分のような天才のために、篤志家の寄付を求むと主張する。

最後に壇上に登ったのは、沢田であった。

彼は、自分の楽団には、異国の岡から未だ帰らぬ父親を待っている岡ひばりと言う少女がいると話し始め、ひばり本人がマイクの前に立つと、お父ちゃんに早く帰って来て欲しいと発言する。

しかし、その頃、父親の初五郎は、ゴミ屋の仕事で汗を流していた。

沢田は、今、新東京音頭の作詞、作曲を募集しているから、自分も応募してみようと思うとひばりに説明すると、家で作業を始める。

三日間、家に閉じこもって作詞作曲した後、久々に働きに出ようとするひばりと沢田。

その頃、二吉は、街に張り出された「日本貿易博覧会」のくじの当選番号を何気なく眺めていた。

「181608」…、どこかで見たような数字だった。

やがて、それが、ひばりが持っていたくじの番号だった事を思い出し、近くにいたひばりから券を受け取って確認すると、やっぱり一等に当選していた。

ひばりが一等くじに当たった事は新聞にも掲載され、それを読んだ新子は、夫の倉井を呼びつけると、ひばりを、もう一度うちに引き取ろうと言い出す。

「のんき」の二階に集まった貝塚、二吉、三太、そして倉井夫婦たちに、ひばりは当選金100万を20万づつに分け、惜しげもなく与えるのだった。

みんなには世話になったし、世の中にはいい人ばかりだと教えられたと健気に言うひばり。

そんな中、「のんき」の前には、ひばりを引き取りたいと言うにわか親戚を名乗る人たちが集まって来ていた。

しかし、それを知ったひばりは、自分には親戚などおらず、肉親と言えば父親だけだと言うので、三太たちは、群衆を追い返そうと店の前に出る。

その様子を二階の窓から眺めていたひばりだったが、群衆の中に、一人見覚えがある顔を見つける。

まぎれもなく、父親の初五郎だった。

店の前に飛び出したひばりは、追い返されそうになっていた父親に飛びつくのだった。

本当の父親と分かり、二階に招かれた初五郎は、今自分は御代街厚生会に入っており、集めた紙ゴミを静岡の製紙工場に送っていたのだが、新聞でひばりの事を知りやって来たと話す。

しかし、当てにしていた100万円を、5人に渡してしまったとひばりから聞かされると、さすがに気落ちするが、すぐに気を取り直し、お前は100万円にも勝る宝だと、ひばりをほめる。

その会話をじっと聞き入っていた二吉は、この金を厚生会に寄付させてもらおうとみんなに促す。

それを聞いた三太は心底感心し、あんたは今日からうちの養子やなと、同意する。

他の3人も同意したが、新子だけはちょっと惜しそうだった。

そこへ、沢田が上がって来て、新東京音頭の作詞作曲コンテストで一等になったと報告する。

新曲発表会場では、出来たばかりの「新東京音頭」を藤山一郎が歌い、それに合わせ、二吉たち全員が踊りを踊っていた。

やがて、倉井も特別出演で歌いだすのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

吉本興業が新東宝と提携して作った音楽映画。

当初「新東京五人男」と言うタイトルだったものが、東日・コロンビアが後援して、劇中に「新東京音頭」を取り入れた経過があるようだ。

吉本四人男だった、エンタツ、アチャコ、川田晴久、そしてキドシンこと木戸新太郎に、少女時代の美空ひばりが絡む展開になっている。

キドシンは顔に馴染みがなく、資料で見るまで、誰だか分からなかった。

この作品でのひばりは、かなりわざとらしい表情などを作っており、見ていてかなり違和感がある。

悲しむ顔などを、かなり臭く演じているため、かわいげがないのだ。

しかし、一旦歌い始めると、その上手さには仰天させられる。

笠置シヅ子の唄を歌うときなど、生意気に顔まねまでしてみせているから憎らしくなる。

話自体はたあい無いものだが、エンタツのちょっと気取ったボケ味と、アチャコのいかにもおっとりしたとぼけ加減、また、恐妻家を演じているロッパのおどおどしたキャラクターなどが楽しい。