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河内風土記 続おいろけ説法

1961年、宝塚映画、今東光原作、椎名龍治脚本、佐伯幸三監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

「山村栄三郎一座」と書かれた旅廻りの芸人一行を乗せたトラックが、河内地方に繋がる橋に差し掛かり、目的地の村の場所を、トラックに乗っていた千鳥(北川町子)が川原にいた学生国島信吉(高島忠夫)に尋ねる。

信吉がすぐこの先だと教えた後、トラックは走り去るが、その後、信吉は地面に落ちていたハンカチを拾う。

今トラックに乗っていた美女千鳥の持ち物だった。

そのハンカチを見つめていた信吉に、近くで軍鶏の餌を捕っていた平馬(立原博)が声をかけて来る。

その頃、村では、七公(頭師孝雄)、万太郎(早崎文司)、米吉(大屋満)ら若衆が祭りの神輿の練習中だった。

練習を終えたその若衆たちが、祇園さん(祇園神社)にストリップが来ると言いながら、その小屋の様子を見に行く途中、お民(浪花千栄子)とぶつかる。

ストリップを演じるのは「山村栄三郎一座」の芸人たちだった。

若衆たちは、楽屋で化粧をしていた女芸人千種(原知左子)の様子を小屋の裏側の覗き穴から覗き込もうとするが、それに気付いた姉の千鳥が、穴からおしろいをかけて退散させる。

しかし、若衆たちは、そんな仕打ちにはへこたれず、祭りの夜に担いでやろうと悪だくみを始める。

一方、芝居小屋の前に来ていたお種(初音礼子)は、宣伝チラシを配っていた一座の富八郎(天王寺虎之助)に、自分の家にチラシを張ってやると話し掛け、まんまと芝居の招待券をせしめる事に成功する。

その頃、天台院では、やって来たお民が、最近、亭主の山伏丹海(アチャコ)が、めっきり夜の方がダメになったと、作家で住職の今野東吾(森繁久彌)に相談を持ちかけていた。

側で一緒に聴いているのは、檀家の浅吉(山茶花究)と、手伝いの松(中村是好)。

その夜、ストリップ小屋が開く。

客席には、招待券で芝居目当てにやって来たお種や浅吉親分の姿もあった。

ストリップが終わると、座長山村栄三郎(茶川一郎)演ずる「源氏店(げんやだな)」が始まる。

芝居がはねた後、一座の勘次(藤木悠)は、この村に、7年間逢ってない人がいるのでと、情婦の小夜子に言い残し、小屋を出て行く。

その頃、闘鶏に夢中の平馬は、鬼河内と言う強豪の軍鶏に勝つには、銀世界と言う軍鶏を買わねばならず、そのために2万円必要だと言うので、妻お由(赤木春恵)はそれでは借金が3万2000円になると文句を言う。

その頃、鬼河内の買主である為吉(安達国晴)の家を訪ねて来たのが勘次。

勘次が7年間逢ってなかった人とは、その妻おつま(園佳也子)であった。

二人は幼馴染みだったのだ。

その頃、ハンカチを落として誘ったつもりだったが学生が来るのではないかと、千鳥はこっそり小屋を抜け出していたが、妹の千草と鉢合わせする。

千草は、男に騙された過去があるらしく、もう男は懲り懲りと言いながら、今でも尻軽な姉の事を当て擦る。

千草も、お目当ての学生が来ない事を知ると、すっかりふて腐れてしまうのだった。

天台院で副住職として大学に通わせてもらっている信吉と共に、住職の帰りを待っていた浅吉と松は、女連れで寺に戻って来た東呉が、何故か、門の外で話し込んでいる様子なのに気付き、好奇心から様子をうかがう。

ある日、滝に打たれて修行の最中だった丹海の所に、浅吉親分がやって来る。

ややこしい話だから山の上に行こうと誘った浅吉親分は、お民から聴いた相談の事を丹海に確認する。

すると、丹海は、その通りで、いろんなものを試してみたが、もうさっぱりダメだと弱音を吐く。

浅吉は、だったら、大阪にやいと(お灸)の名人がいるので、そこに通ってみたらどうかとアドバイスしてやる。

まだまだ若いお民に惚れ込んでいる丹海は、元気が戻るのならぜひとも通ってみたいと乗り気になる。

その頃、家で留守番をしていたお民の所に、暑くてたまらないので滝を浴びさせてくれとやって来たのは、若い山伏助八(頭師正明)が建設会社に勤めていた頃の先輩で、今は電車の改札係三郎(南都雄二)。

愛想良く、その場で服を脱ぐように勧めたお民だったが、その若い肉体にちょっと心を動かしてしまい、パンツ一丁で滝を浴びはじめた三郎の裸を、側でしみじみと見愡れるのだった。

天台院で、住職の東吾と浅吉親分が話している所にやって来たのは、噂好きの松で、信吉が女役者と歩いていたと告げ口する。

千鳥と会っていた信吉は、自分は宗教大学の受験をしなければいけない身なので、恋愛等は出来ないのだと断りを言うとその場を立ち去ろうとするが、千鳥の方から、帰すまいと抱きついて来る。

一方、すっかり富八郎にぞっこんになってしまったお種は、彼を呼出すと、自分がブラシの内職で稼いだ金で面倒をしてやるから、一緒に暮さないかと持ちかけていたが、それを七公、万太郎、米吉らが覗いていた。

その頃、芝居小屋の楽屋では、座長の山村栄三郎と小夜子が、相方の勘次がなかなか戻らないのでいらついていた。

千種が一人で芝居小屋の中でいると、若衆3人組が担ぎに忍び込んで来るが、芸人仲間が駆け付けて来て追っ払ってやる。

その頃、姉の千鳥は、雲行きが怪しくなる中、信吉相手に藁小屋の中でいちゃついていた。

雷が鳴り雨が降り出した中、帰るに帰れなくなった三郎は、お民の家で二人っきりになっていた。

そんな中、雷が怖いと三郎に甘えかかったお民は、そのまま三郎に身を任せてしまう。

そんな最中に帰って来たのが助八、二人の様子で事情を察した彼は、いきなり三郎を外に連れ出すと殴りつける。

思わぬ所を目撃されてしまったお民は、急に祈りはじめる。

そんな緊迫した状況も知らず、のんきに帰って来たのが丹海で、何も知らない彼は、若い助八と三郎の姿を見つけると機嫌良くこづかいを渡す始末。

そんなお人好しな丹海の姿を観た三郎は、改めて早まった事をしてしまった自分を後悔し、助八と共に天台院の東吾に相談に訪れるが、その事は一切、丹海の耳に入れるなと釘を刺される。

又、お民から迫られたらどうしたら良いものか?と三郎が聴くので、同行した助八は呆れてさっさと帰ってしまう。

その三郎が、改札の仕事をしている駅に帰って来た信吉に、若衆3人組が闘鶏を見に行かないかと誘って来る。

闘鶏は、平馬の銀世界と為吉の鬼河内の勝負だったが、銀世界が勝ち、平馬は、これで為吉の家はわいのもんやと有頂天になる。

その事を知った浅吉親分は、為吉の事を心配する。

一方、すっかり調子づいた平馬は、今手に入れた賞金の内、お由から300円こづかいとしてもらうと、屋台で昼間からビールを飲みはじめる。

そんな平馬にすりよるように座って来て、酌をし始めた女がいた。

お民と一緒に、祭りの縁日を見物していた松は、千種はいるかとヤクザらしき男たちが屋台の中を覗き込んだ時、平馬と女が仲良くしている所を目撃したので、いつもの好奇心から二人の後を尾行しはじめる。

一方、平馬の自宅にやって来た浅吉親分は、先に戻っていたお由に、あまり為吉にひどい事をするなと忠告してやる。

その頃、勘次は、幼馴染みのおつまの事を思って、闘鶏で家を失いそうになった為吉に、もっと向上心を持って真面目に働いたらどうかと説教していた。

しかし、為吉は、妙に馴れ馴れしい妻のおつまと勘次の仲を揶揄して外に出て行ってしまう。

その頃、浅吉とお由の所に駆け付けて来た松が、平馬と見知らぬ女が宿に入ったと告げ口する。

ふて腐れた夫が外に出て行ってしまった後、勘次とおつまはしっかり抱き合ってしまい、こうなったのも不可抗力と互いに納得していた。

松の話が、宿から出て来た平馬が女に5000円札を手渡そうとしたが、女はそれを突っ返して帰ったと、お由に詳しく教えた直後、何喰わぬ顔で帰って来たのが当の平馬。

興奮したお由が、彼につかみ掛かった時、いきなり現れたのは勘次だった。

勘次は、為吉の金を持って来たと言い、そこに現金を置くと帰ってしまう。

その様子を観ていた浅吉親分は不思議がる。

浅吉親分と松が帰って行った後、もう仲直りした平馬は、お由に、手に入った現金を、いつものように天井裏に隠すよう命ずる。

梯子を立て掛け、天井裏に札束を置きに昇ったお由は、それまで溜めておいた紙幣がぼろぼろになっているのを発見し悲鳴をあげる。

全部、ネズミにかじられてしまっていたのだ。

それを知った平馬もうろたえてしまい、天井からぶら下げた蠅取り紙に自分がくっついてしまう始末。

その頃、天台院を訪れた丹海が、やいとが効いたと嬉しそうに東吾に報告していた。

そこに、山村民之助(内田朝雄)が千鳥を連れてやって来る。

千鳥は信吉に、千草が昔の男に追われているのだと打ち明ける。

芝居小屋に東呉が行ってみると、入山なるヤクザが千草を求めて居座っていたが、栄三郎には仲裁が出来ない様子だった。

そこに、信吉がやって来て、千草を救出すると、どこかに身を隠すしかないと説き伏せ、山の頂上まで連れて行く。

千草は、自暴自棄になっており、もう芝居なんか嫌いになった。人間って、何のために生きているのよ!と信吉に問いかけて来る。

それに対し信吉は、皆も自分も浅ましいと思うし、人間と獣の違いが分からなくなった。もっと勉強して、次にはしっかりした答えができるようになっていたいと答える。

その頃、何故か平馬は、嬉しそうに銀行からチャリで走り出し、その側を歩いていた丹海は、三郎の姿を見かけていた。

家に帰りついた平馬は、お由に、ぼろぼろの紙幣でも、元の形に大体再現出来たら、現金と交換してくれると銀行で聞いてきた話を教え、急いで、札束の復元作業に取りかかるのだった。

そこにやって来た為吉の女房おつまは、平馬に家の鍵を渡して帰る。

その後、今度は、弁護士の鈴木(遠藤辰雄)と名乗る身知らぬ男がやって来て、この写真の女に見覚えはないかと、一枚の写真を平馬に差し出す。

そこには、今日、宿に連れ込んだ女と平馬の嬉しそうなツーショットが写っていた。

女に無理矢理せがまれ撮ったものだった。

弁護士は、その女は自分の女房であり、50万の慰謝料をよこせと迫って来る。今すぐ出すなら、30万に負けても良いと言う。

その一部始終を近くで目撃していた松は、又、告げ口の種を拾ったとばかり、喜色満面で駆け出して行くと、出会った浅吉と丹海に、事の次第を教えてやる。

その丹海、その日もやいとをすえるため、大阪に行く所だったのだが、電車賃を忘れてしまった事に気付き、家に戻る事にする。

家に入ろうとした丹海は、家の中で抱き合っている三郎とお民の姿を目撃してしまう。

しかし、丹海は、怒るどころか、仕方ないと自らを慰めるように家を離れて行く。

そこにやって来たのが、千種を連れた信吉で、しばらくこの娘を預かってくれないかと頼み込むが、すっかり落ち込んだ丹海は、今、それ所ではないと断わってしまう。

その頃、山村栄三郎一座は千秋楽の挨拶を舞台で行っていた。

その楽屋の勘次を訪ねてやって来たおつまだったが、そこにストリップの舞台から戻って来たのが情婦の小夜子で、わざとその場で勘次との仲を見せつけて追い返してしまう。

一方、意気消沈した丹海は、天台院にやって来て、今の自分は、子作りの役目を終えると死んでしまうシャケがうらやましいと東吾に打ち明ける。

駆け落ちするつもりで家を出て来たのに、勘次に自分以外の女がいる事を知ったおつまは、暗い橋の所までやって来て呆然としていた。

同じ橋にやって来たのが、こちらも人生に絶望した丹海で、橋から身投げしようかと考えている最中、側から先に飛び込んだ音を聞きびっくり。

慌てて、そのおつまを助けんと、自ら川に飛び込むのだった。

それを目撃していたのが、又、噂好きの松で、すぐさま、心中事件だと村に触れ回りに行く。

色々問題を起こしている一同を天台院に呼び寄せた東吾は、独りづつ説教を始める。

まず、平馬に対しては、強欲すぎると注意をした上で、鈴木と言う男は美人局専門の詐欺師で、今警察に行っていると打ち明けた上で、勘次から受取った金を返すよう命ずる。

今度は、三郎に対しては、これ以上、お民との関係を続けるようだと、電鉄会社の社長に言うぞと叱りつける。

それを聞いていた丹海は、妻に逃げられた男に、裁判官をする刺客はないと揶揄する。

ここ姑く、東吾の妻がいなくなっており、以前、松や浅吉が、寺の外で東吾とひそひそ話している所を目撃した女の事で家出したのだろうともっぱらの噂になっていたからだ。

しかし、その家出をしているはずの妻(中北千枝子)は、ちゃんと家にいる事が分かる。

しかも見知らぬ幼女まで連れているので、一同は訳が分からず唖然とするばかり。

東吾は、何事もなかったかのように落ち着いた口調で、お民には、しばらく煩悩を鎮めるため、滝行をするよう命ずる。

為吉に対しては、寺で働いて、少しづつ金を戻すようにしろと提案する。

さらに、勘次には、おつまから受取った金をおつまに返せと言う。

別室に匿っていた千種に会った東吾は、この村を去るよう忠告する。

三郎に対しては、今後、精力がつかないようなものを食えと言う東吾に対し、どんなものを喰えばと聞くので、流動物と答えて帰す。

残った浅吉が、幼い女の子の事を知りたそうなので、妻が、後輩の奥さんの子供を預かってやっているのだと打ち明ける。

あの時の女は、東吾の浮気相手でも何でもなかったのだ。

その女の子が泣き出したので、ドドンパを踊ってあやす東吾だったが、女の子は、ただオシッコがしたかっただけだった事が分かる。

山村栄三郎一座が村を去る事になり、お種が富三郎と別れを惜しんでいた。

信吉も又、千鳥と最後の対面をしていた。

去って行く一座のトラックを追って、 彼らと最初に出会った橋の袂までやって来た信吉に、待っていた浅吉が、そっと連れて来た千草と会わせてやる。

実は、彼女をブラシ工場で働かす事になったと教えるためであった。

そんな千草と信吉が出会っている様子を目撃した松は、又、ニュース!ニュース!と叫びながら、村に駆けて行くのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

タイトル的には「河内風土記 おいろけ説法」の続編であるが、「みみずく説法」(1958)から始まる森繁主演の今野東吾ものの三作目に当り、主要な登場人物は同じである。

今回、新たに加わったのは、副住職と言う肩書きの代わりに、東吾から大学に通わせてもらっている真面目な青年役を演じている高島忠夫。

話の基本は、村にやって来た役者一座のメンバーと、高島演ずる信吉や村の若い衆たちが繰り広げる艶笑エピソードの数々を綴ったもの。

「みみずく説法」で、まだ小学生役を演じていた頭師孝雄が、成長して若衆の一人を演じているし、その実兄である頭師正明も、若き山伏として出演している。

精力が衰え、すっかり人間も弱気になった山伏を演じるアチャコや、その妻に誘惑される男を演じる南都雄二の姿がなんとも面白い。

さらに、庶民的なおかみさんをはじめ、色々な役柄を演じているベテラン浪花千枝子が、情慾をもてあまし、若い男に自ら身を投げる妻と言うちょっと淫らな役を演じているのも意外性がある。

そして何より、足の悪い松が、今回は「ニュース!ニュース!」と、何かと目撃しては噂をばらまいて村を駆け回る姿が、エピソードのつなぎ役としてだけではなく、全体をスラップスティックな味わいにしているようで印象的である。