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怪談せむし男

1965年、東映東京、高岩肇脚本、佐藤肇監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

社長夫人である宗方芳江(楠郁子)は、とある満月で風の強い夜、ベッドでうなされ目覚める。

その時、階下で電話の鳴る音が聞こえ、それに対応に出たお手伝いが、驚いたような声を上げ、寝室にやって来ると、たった今、入院していた病院で御主人がなくなったと知らせに来る。

それを聞いた芳江は、今、私はその夢を観ていたと告白する。

向った輝愛精神病院では、柩に納められた夫新一の遺骸を前に、この病院の院長で、実の夫の父親でもある宗方圭介(加藤武)と担当医の山下(江原真二郎)が待ち受けていた。

夫信一は二ヶ月前に謎の発狂をし、実父がいるこの病院に入院していたのだった。

山下は、御主人は亡くなる寸前まで何かものを言いたそうに口を動かしていたが、突然、痙攣を起こし、呼吸困難になって亡くなったと芳江に説明するが、それを聞いていた圭介は、信一は脳髄をやられていたのに、そんな真似ができるはずがないと否定する。

柩の蓋をし、部屋を出ようとした芳江は、棺桶の中から物音が聞こえたので、もう一度蓋を開けてくれと頼んで中を覗き込むと、柩の中の夫、信一は、体の廻りに飾られていた白菊の一本を口にしっかりくわえているではないか。

芳江が、その菊を取ろうと引っ張っても、菊はがっちり信一の歯にくわえられており取れない。

その様子を観た圭介は、死後硬直だと説明して、芳江を納得させようとする。

信一の柩は焼き場で焼かれる事になるが、その外で芳江は、磯辺弁護士(加藤和夫)なる人物から声をかけられ、御主人が生前に購入されていた山荘の権利書と鍵があると手渡される。

その山荘こそ、信一が発狂した場所であったのだ。

タイトル

芳江は後日、その山荘に向うが、霧の中に現れた門を開けようと降りた運転手が、どうやっても開かないと頭を傾げているので、芳江自身が近づいて門に触ってみると、不思議な事にすぐに門は開くのだった。

山荘に入った芳江は、無人と思っていた玄関先に無気味な小男が立っていたので固まってしまう。

誰なのかと問いかけると、この屋敷の番人(西村晃)なのだと言う。

芳江は、玄関ロビーに聳え立っている無気味な怪人のような彫像に目を奪われるが、その一瞬の隙に、何時の間にか番人の姿は消えていた。

別の部屋に入ってみた芳江は、突然、部屋に入り込んで来たカラスに襲撃される。

しかし、その直後、外のドアから入って来た番人が、そのカラスをたたき落として手にぶら下げているではないか。

そのカラスを持った番人について外に出た芳江は、崖からカラスの死骸を投げ落とす番人から、下に積もっているのは、全てカラスの死骸なのだと教えられる。

この辺にはカラスがうじゃうじゃいるのだと言う番人の言葉を聞くまでもなく、空には無数のカラスが飛び回っていた。

屋敷に戻った芳江は、又すぐに去ろうとする番人を呼び止め、ここで主人が発狂した時の様子を聞かせてくれと頼む。

すると、番人は、御主人様は、ここで(…と暖炉の前を指差し)死骸を抱いておられました、女の方の…と答えるや否や、又すぐに部屋から姿を消してしまうのだった。

一人になった芳江は、どこからともなく聞こえて来る男の笑い声を聞く。

その時、突如、部屋のドアが開いたかと思うと、番人が顔を出し、客人が来た事を告げる。

訪れて来たのは、義父の圭介、山下、そして看護婦の白川和子(葉山葉子)だった。

彼らは、芳江から、この屋敷に到着してからの怪異を聞くと、圭介は自己妄想に過ぎないと一笑する。

芳江が聞いたと言う夫の笑い声なる音は、古い家の歪みが引き起こした軋み音などの錯覚だろうと、山下は医者らしく解説しはじめるが、その時、億の扉が独りでにバタバタと開閉したので、不審に思った山下がその扉に近づくと、その扉はずっと鍵がかかっているかのようにびくとも動かなかった。

山下は、芳江と共に、ホールに立っている無気味な彫像を調べに行くが、それはこの屋敷が出来た時から一緒に作られたものだろうと言うくらいしか分からなかった。

その時、天井からカラスの羽が一枚舞い降りて来る。

その天井裏には、番人が潜んでいたのであった。

その後、芳江と二人きりになった義父の圭介は、建て坪300坪、敷地が2万坪もあるこんな立派な別荘を息子が生前に購入していたとは知らなかったが、自分はかねてより、新しい療養所を建てようと土地を探していた所だったのでうってつけであり、ここは一つ、互いに手を握りあって新しい事業を一緒に始めないかと持ちかけて来る。

その頃、和子は、玄関ホールの彫像の下の床を黙々と深夜拭いている番人の姿を見つけ、不審に感じ、山下に報告すると、何か恐ろしい事が起きそうで怖いと弱音を洩らすのだった。

その夜、寝室で独り寝ていた芳江は、又うなされて目覚めると、壁に写った無気味な影を観る事になる。

それは笑いながら女性を脅かす無気味な男の姿であり、さらに、部屋の床には血のりが流れているではないか!

それを呆然と見つめていた芳江は、すぐ近くで、番人の笑い声を聞く。

部屋から逃げる番人を追って部屋の外に飛び出た芳江は、彫像の横でつむじ風に襲われたように体が回転し、その場に気絶してしまう。

異変を察知し、駆け付けた義父や山下らから助け起こされた芳江は、確かに信一の笑い声が聞こえたと教える。

翌朝、番人が出す朝食を食べている席で、義父は、全ては、自分達を屋敷から追い出そうとする、あの番人の仕業に違いないと断言する。

しかし、芳江は、夫の信一が、生前、女性を殺したのかも知れないと異論を述べ、夕べ、突き当たりのドアから強い風が吹き付けた事情を説明する。

義父は又しても妄想だと否定するが、一緒に聞いていた山下の方は、実際に芳江が怪我をしたのは事実であり、あながち芳江の妄想とばかりは言い切れないと助け舟を出す。

その後、一緒に外に出てみた芳江、圭介、山下、和子の4人は、番人がカラスをいつも捨てている崖の側に、戦時中の高射砲跡を発見する。

さらに、その側に、手作りらしい十字架が三つ立てられているのに気付き、側に寄ってみると、それは誰か外国人の墓らしく「ジョージ」「アイリーン」「ジュディ」と言う名前が書かれてあった。

他の3人がすぐその場を立ち去る中、独り残り、墓に供えてあった花の形を整えていた和子は、どこからともなく「ジュディ!」と呼び掛ける男の声を聞く。

屋敷に先に戻って来た三人は、問題の突き当たりのドアを調べに行くが、やはり鍵がかかっているのかびくともしない。

番人が鍵を持っているに違いないと、取りに向う三人とすれ違うように、その場に戻って来た和子が、何気なく閉ったドアに手を触れると、不思議な事に瞬時に開くではないか。

そこに戻って来た他の三人は、その様子を観て驚く。

ドアの奥は、地下室に続いているようだった。

地下室には、蝋燭と白い菊に囲まれたカラスの死骸が安置してあった。

そのカラスの嘴は、白菊をくわえていた。

独り、スープをすすっていた番人の部屋に向った義父たちは、地下室においてあるカラスの死骸の意味を問いただそうとするが、又しても、番人は無言でその場を立ち去ろうとする。

それを捕まえた山下は、番人の首にかかっている十字架のペンダントを見つけ、これは殺されたと言う女の持ち物ではないかと問いつめるが、それには答えず、部屋を飛び出した番人は、すぐに又戻って来ると、新たな来客がやって来た事を告げる。

来たのは、磯辺弁護士と見知らぬ女性だった。

ここに来る途中で、車がエンストしてしまい、ちょうど通りかかったスポーツカーに乗せて来てもらったと言う弁護士の言葉を聞いた山下が外に出てみると、スポーツカーを運転していたのは、精神病院の経営者の娘藤井秋子(弓恵子)だった。

弁護士が連れて来た女は、亡くなった信一の愛人、横田あけみ(春川ますみ)だった。

信一の生前、手切れ金として約束していた金額の、まだ半分しかもらっていないので、残りの200万を取りに来たのだと言う。

しかし、それを聞いた義父圭介は、すでに信一の会社は人手に渡っているし、金などないと突っぱねようとするが、あけみは、まだ、こんな立派な屋敷があるではないかと一歩も引く様子はない。

森の中では、山下からかねてより頼まれていた病院長の地位を、もし今の宗方圭介を辞めさせる事ができるのなら、あなたに任せても良いと秋子が約束していた。

秋子は、看護婦の和子はあなたの事が好きらしいと教えた後、その山下と口づけを交わすのだが、その様子を、近くの木の影から、当の和子が哀しげに見つめていた。

和子がフと気付くと、自分の側に、あの番人が立っているではないか。

和子は、何故かこの番人には親しみを覚え、彼の向う後をついていくと、そこには大きな傷跡がついた巨木が立っており、その傷跡を、番人が愛おしそうに撫でるので、訳を聞くと、昔ここで、サイドカーに乗った人間がぶつかって死んだのだと言う。

和子は、番人に、ジュディの言う名前に聞き覚えがないかと尋ねると、黙って、番人は、和子を古井戸の所に連れていく。

その井戸の水面を見下ろした和子は、又しても「ジュディ!」と呼び掛ける男の声を聞く。

番人は、この声が聞こえている限りこの屋敷を出る事は出来ないと、謎めいた言葉を呟きながら帰ろうとするが、その時、彼が落とした十字架を、やさしく拾って渡す和子に、番人は特別な眼差しで見つめるのだった。

その頃、屋敷の書斎では、磯貝弁護士が、信一の遺言状が見つかったと報告していた。

そこに記された期日は、9ケ月前のものであり、発狂する2ケ月前のものだから、法的に問題はないとし、この屋敷の権利は、妻の芳江と父親圭介の共有とするると記してあったと言う。

ただし、圭介には、芳江の後見人となる事が条件として付け加えてあり、どちらか一人が死んだら、もう一人になるとも記されてあった。

その場で一緒に話を聞いていたあけみが、自分の200万の事を聞くと、それは口約束だったから、今となっては無効だと説明した磯辺弁護士は、怒るあけみを部屋の外に連れ出すと、何とかすると言うからついて来たんじゃないかと詰め寄るあけみをなだめながら、強引に彼女を抱いてごまかそうとする。

そこに、秋子を伴って戻って来た山下が、書斎にいた芳江に席を外してもらうと、一人になった圭介に対し、あなたは戦時中、中国の奥地で生態解剖をしましたねと詰め寄る。

思わぬ山下からの追求にたじろいだ圭介は、何とかごまかそうとするが、それを理事会で同じように説明できるかと切り返されると、返す言葉がない。

山下は、すでにあなたの知識は古い。心霊を頭から信じようとしない所などもそうだと言い出す。

それを聞いた圭介は、それなら、君が心霊なるものを科学者として証明したまえと逆に詰め寄る。

その夜、芳江、圭介、山下、秋子、和子らは、芳江が信一の声を聞いたと言う寝室に集まり、霊の出現を待つ事にするが、夜中近くになっても何の変化も現れない。

業を煮やして圭介が去ろうとし、和子も立ち上がった瞬間、彼らの前にあったテーブルが突然がたがたと動き出す。

そして、その直後、大きな男の叫び声が聞こえたので、山下はすぐさま、部屋の二つのドアに鍵を内側からかける。

すると、男の声がさらに続き、ドアを外から叩く音が響きはじめる。

強い風の音が響き、ドアは外から強い力に押され、今にも外れそうになる。

それを恐怖に固まり見つめる圭介、芳江、山下、秋子、和子ら。

やがて、ドアに亀裂が入り、天井のシャンデリアが揺れたかと思うと、ドアがとうとう開き、その向こうから女の悲鳴が聞こえ、さらに「ジュディ!ジュディ!」と呼ぶ男の声が聞こえて来る。

暖炉の前には、女の遺体を抱いた男の亡霊が通り過ぎて消える。

その瞬間、和子は失神してしまう。

その和子を助け起こした山下らは、階下から男の叫び声を聞き、全員で下に降りてみると、玄関ホールの彫像の所に立ちすくんだ磯辺弁護士の足元に、あけみが倒れていた。

磯辺が呆然とした表情で言うには、こんな屋敷にこれ以上いられないので、彼女と一緒に逃げ出そうとしていたが、ここへ来た途端、廊下の方からすごい風が吹き付けて来て、あけみを巻き込んでしまったらしい。

あけみはもう事切れていた。

山下は、この屋敷には悪霊がついており、おそらく、戦時中に、ジュディと言う女性を想い続けていた人物がいたに違いなく、その妄執がまだ満足しておらず、ジュディとその両親は、その犠牲になったのだろうのだと推理する。

現れた番人に過去の事を問いただしてみても、あんたに教えても、どうしようもない事だとつれない返事。

そこに、突然、見知らぬ人物が訪ねて来る。

偶然、この屋敷の前を通った際、この屋敷に悪霊がついていると守護霊が教えてくれたと言うその女性(鈴木光枝)は、霊媒師のようだった。

もはや、この屋敷に人知を超えた悪霊が存在している事を疑わなくなった圭介たちは、さっそく、その霊媒に霊を呼出してもらう事にする。

部屋のカーテンを締切り、集中するので、途中で絶対、灯などつけないようにと注意した霊媒師は、暗闇の中で祈祷を始める。

やがて、その霊媒師の様子が変り、明らかに別の人格が乗り移ったようになる。

芳江…と呼び掛けて来たので、その場にいた山下は思いきったように、あんたは宗方さんかと問いかけると、そうだと霊媒師は答える。

女性は何が原因で死んだのだと聞くと、…焼けた。…過失ではない。…殺された。…俺が殺したのだと霊媒師は断片的に答える。

どうやって殺したのかと聞くと、霊媒師はニヤニヤ笑いながら、焼いた…、焼き殺してやった…、ガソリンを少しづつ女の体に塗って、蝋燭を近づけてジリジリ一晩中かかって焼いてやった…。女はのたうちまわって死んでいった…と嬉しそうに続ける。

あなたは狂っていたのか?と山下が問いかけると、狂ってなどいないと答えた霊媒師の様子は又変化し、苦しみ出すと、その目は白く変化していた。

そして、芳江に抱きついて来たので、あなたは奥さんと愛人とどちらを愛していたのかと山下が聞くと、両方ともだと霊媒師は言う。

俺は、病院でもお前を抱いたが、それを鉄格子の向こうから父親がいつも覗いていた…、父親には気をつけろ…と芳江に語りかける霊媒師。

さらに、何がこの屋敷に取り付いているのか?縛り付けているものは誰の霊か?と山下が尋ねると、又、霊媒師は苦しみ出す。

その時、近くで番人の笑い声が聞こえたので、圭介が思わずカーテンを引き開け、光を部屋に取り入れると、それを浴びた霊媒師は絶叫をあげて倒れてしまう。

何時の間にか、部屋に入り込んでいた番人も苦しんで逃げ出し、地下室に続く、廊下の奥のドアへ向う。

それを、磯辺弁護士や山下らも追う。

地下室には、ネグリジェ姿の和子がいた。

番人は、追って来た山下たちを振り返ると、俺は冨永男爵だ…、この屋敷に足を踏み入れたものは、独り残らず殺してやる…と、明らかに別人の表情になり答える。

番人は、終戦間近な頃、この屋敷には一人の白痴女と暮していた…と、告白しはじめる。

男爵は、その女との愛欲生活に溺れていたが、ある夏の夜、突然、一人の憲兵が屋敷に侵入して来たと言う。

その憲兵は、男爵を地下牢に落とし、その天井の鉄格子の上で、白痴女を自分のもののように抱きはじめたと言う。

その様子を、地下から見せつけられた男爵は、生きているものを永遠に呪い続けてやると決意する。

やがて、女に抱き飽きた憲兵は、その白痴女の腹目掛けて、拳銃を発射すると、日本刀で背中から斬殺してしまう。

屋敷を出ていった憲兵は、独りサイドカーを運転して走り去るが、男爵の呪で、森の中の巨木に正面衝突し、無惨な死を迎える。

番人は、冨永男爵の弟だった。

白痴女の死体に気付いて抱き上げた番人を見た男爵は、地下から、お前は、この呪を一生背負っていくのだと告げる。

それから20年…と、男爵の霊が乗り移った番人は山下たちに話し終えると、階上に逃げていく。

地下室に閉じ込められた形になった山下らが、奥の扉をこじ開けると、そこには今話に出て来た地下牢があった。

その下を覗くと、確かに冨永男爵の遺体らしい残骸が横たわっている。

その頃、気がついた霊媒師は、屋敷の恐れをなして、玄関からこっそり逃げ出していた。

山下は、ミイラ化している冨永男爵の遺体を手厚く葬れば、屋敷の呪は解けるのではないかと言い出し、磯辺弁護士と二人で、ロープを垂らして、下に降りてみる。

死骸に触ろうとした山下だったが、その瞬間、ミイラ化した死体が動き出すのを見る。

その時、上の方からものすごい音が聞こえて来たので、遺体の回収を諦めて、全員、上に戻ってみる事にする。

地下室へと繋がるドアの所に戻って来た山下らは、そこで頭から血を流した霊媒師が立っているのを見つける。

霊媒師は、「木が倒れかけて来た…」と呟くと、山下らに倒れかかって来る。

この屋敷に足を踏み入れたものは、二度と外に出れないと言う、先ほどの冨永男爵の言葉を思い出したのか、山下は窓を破って外に逃げ出そうとするが、鉄の飾りが張り巡らせてある窓は、どうしても破れなかった。

一方、磯弁護士の方は、玄関ホールの怪物の彫像の所で息絶えていた。

彫像の影から現れた万人は、その死体を引きずって、どこへともなく持ち去る。

山下は、秋子を2階部屋に連れていき、中から鍵をかけて待っているようにと言い残すと、独り屋敷の屋根裏部屋に登り、そこにあった木わくのはまった窓を破って、何とか外に逃げ出そうとする。

木わくは、何とか壊れたが、外へ身を乗り出そうとした瞬間、後ろから何者かが首を絞めて来る。

あの番人であった。

山下は、番人の怪力を跳ね返す事が出来ず、とうとう絞め殺されてしまう。

その後、独り部屋で待っていた秋子は、部屋の電気が消えたのに気付くが、次の瞬間、どこから入って来たのか鍵をかけていた部屋に、何時の間にか、番人が入り込んでいる事に気付く。

狂暴化した番人は、秋子の来ていた洋服を引き裂き襲いかかる。

そして、ベッドに押し倒すと、彼女が首にかけていたパールのネックレスで、その首を締め付けるのだった。

様子がおかしい事に気付いた圭介は、ちょっと様子を観て来ると芳江に言い残し、二階の部屋で死んでいた秋子の死体を発見する。

怯えた圭介は、逃げ出そうと窓を観ると、外で、キャンプファイヤー用の木を積み上げている番人の姿を見つける。

そこへ、芳江もやって来て同じ光景を目撃するが、圭介は、そんな芳江を急に抱きしめ、襲いかかろうとする。

霊媒の口を借りた信一が言っていたように、病院でいつも夫に抱かれている彼女の様子を、鉄格子の向こうからいつも観ていたのだと言う。

テーブルに身体を押し付けられ、強引にキスしようとして来る義父の顔を避けようとしながら、手探りしていた芳江は、テーブル上にナイフの感触を感じ、それを握ると、思いきって圭介の腹に突き刺す。

床に倒れた圭介は、そのまま息を引取る。

興奮状態になった芳江は、玄関ホールに逃げ出すが、そこに待っていたのは番人だった。

番人は、先ほどの秋子同様、芳江にも襲いかかると、服を引き裂く。

床に倒された芳江は、近くに刺さっていた先ほどのナイフを取ろうと腕を伸ばすが、先に握った番人から、今度は芳江の方が腹を刺されてしまう。

芳江を刺し殺した番人は高笑いを始める。

その頃、何故かネグリジェ姿で地下室に眠っていた和子が、ジュディを呼ぶ男の声で目覚める。

目の前には、番人が立っていたが、彼は、和子を襲おうとはせず、帰れと言う。

しかし、和子は、まるで催眠術にでもかかっているかのようにぼんやりしたまま。

その時、屋敷が崩れはじめる。

その事に気付いた番人は、「兄さん!嫌だ!」と叫び、十字架のペンダントを握りしめた手からは血が滴り落ちる。

何も言わず、蝋燭立てを持った和子は、まるで夢遊病者のようにふらふらと地下室から一階へ上がり、そのまま玄関から外へ歩いて出る。

番人はその後を追い、止まるように叫びかけるが、どこからともなく鞭の音がすると苦しみ出す。

和子の方は何も聞こえないかのように、笑いながらそのままずんずん守の中に足を進めていくと、先ほど、番人自身が積み上げた薪の側に火のついた蝋燭を持ったまま近づく。

見えない鞭に打たれ、苦しみながらも、和子を止めようとと追って来た番人は、思わず「止めろ!」と絶叫するが、次の瞬間、和子の身体は、薪とともに炎に包まれてしまう。

和子は、笑いながら焼けていく。

その恐ろしい光景をなす術なく見つめる番人。

やがて、どこからともなく笑い声が響き渡ると、番人は思わず、自らの顔を手で覆って泣き出すのだった。

冨永男爵らしき男の声が響く。

「お前は永遠に、俺を裏切る事は出来ないのだ!」と…

薪とともに燃えつきた和子の死体を確認した番人は、無言のまま、屋敷に戻っていくのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「散歩する霊柩車」(1964)や「吸血鬼ゴケミドロ」(1968)で知られる佐藤肇監督の独壇場とも言える「洋風幽霊屋敷もの」。

屋敷にやって来た医者が、科学的好奇心で屋敷に取り付いた悪霊の正体を探り出そうとする趣向などは後年の「ヘルハウス」(1973)などを連想させるし、霊媒師が登場する所など典型的な幽霊屋敷ものと言うしかない。

とにかく、西村晃のせ○し男が絶品。

普段の無表情さと、突然、憎悪をむき出しにする狂暴性、さらに、自分に優しくしてくれる女性への叶わぬ恋慕に苦しむ表情の演じ分けが見事。

その西村晃以上に熱演を見せるのが、霊媒師を演じている鈴木光枝。

途中から、金色(?)のコンタクトをして、無気味な演技を見せる。

タイトルには、ハロルド・コンウェイら、当時の外国人俳優の名前が登場するが、何故か画面には登場しない。

劇中、亡くなった三人の外国人名が登場しているので、回想シーンでその生前の姿を演じているのではないかと思われるが、その部分はカットされたのだろうか?

さすがに古い作品なので、今観て怖いと言うほどのものでもないが、丁寧に作られた古典怪奇映画の秀作だと思う。