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一刀斎は背番号6

1959年、大映東京、五味康祐原作、木村恵吾脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

後楽園球場では、その日の試合「大毎オリオンズ対西鉄ライオンズ」の試合の前のファンサービスとして、「素人打撃腕自慢大会」なる催し物を始めると場内放送される。

客から選ばれた9人がバッターボックスに立ち、西鉄の稲尾と大毎の小野が投げる球を打ち返せれば、その度合いによって賞金を出すと言うのだ。

両チームの混成軍が守備をする中、かすったら500円、ヒットしたら2000円、二塁打3000円、三塁打5000円、万一ホームランになったら賞金5万円と言う条件に、スタンドにつめかけた観客たちは大喜び。

今年好調な鉄腕稲尾の豪速球をはねかえせるものなどいる訳がないと、最初からからかいムードが漂っている。

案の定、最初に登場した寿司屋の望月某など、手もなく空振りの三振。

その頃、記者席にいた東京スポーツの記者倉橋(滝田裕介)は、本社からの電話で、球場にいるはずの野球評論家小西得郎と作家の五味康祐からインタビューを取るように命ぜられ、席を立っていた。

やがて、食堂でカレーを食べていた小西さんを見つけた倉橋は、今日の試合の予想など聞きはじめる。

球場内では、すでにバッターボックスに立った4人が三振に倒れた所だったが、5番目に立った出場者の様子を観た場内がざわめきだす。

何と、ヒゲヅラの青年が着物に袴、げたと言う出で立ちでバッターボックスに立ったのだから驚くのも当然。

場内アナウンスで紹介された名前は、奈良県から来た伊藤(菅原謙二)と言い、職業は「武者修行中」なのだと言うではないか。

これには場内も大受け。

その内、その変人の同行者らしき女性を発見した周囲の連中が、彼女をからかいはじめる。

その女性、上野の旅館「但馬館」の娘、芳江(叶順子)は恥ずかしそうに、自分は知り合いではないが、あの人は田舎から出て来たばかりで、プロ野球など観た事もないと言うので連れて来てやっただけで、ぼーっとしているので、いつの間にか、この余興に引っ張り出されてしまったのだと言い訳する。

そんな中、バットの持ち方もおぼつかなかった青年は、稲尾が投げた豪速球をあっさり外野スタンドに跳ね返してしまう。

場内あっけに取られる中、審判に促されたその青年は、ベースを走り、見事、ホームインする事になる。

それを観て驚いた倉橋は、試合後、さっそく女性カメラマン(市田ひろみ)を引き連れ、青年が泊まっているらしき「但馬館」へと車を走らせる。

その頃、「但馬館」に帰りついていた芳江は、母親(浦辺粂子)と父親(菅井一郎)に、事の次第を報告した後、天丼を注文に行くように、女中の絹(小笠原まり子)に命じていた。

何せ、問題の青年、伊藤は、天丼と上野公園の西郷像が痛く気に入ったらしく、毎日、そればかり観たり食べたりしていたからだった。

伊藤がふらりと「但馬館」に現れたのは一昨日の事であった。

その伊藤、天丼が届くまで、故郷の母親に葉書を出して来ると外出する。

その間、芳江は、今日の賞金としてもらった5万円を自分が預かっていると母親に教え、一日三食付きで800円もらおうとちゃっかり相談していた。

そこへ、電話が鳴り、出た父親が後楽園から伊藤に対しての内容と知ると、側で聞いていた母親が、そんな人はいないと言えと小声で注意する。

きっと賞金を多く出し過ぎたので、返せと言って来たに違いないと思い込んでいる様子。

しかし、父親は今出かけていると言ってしまい、当の伊藤本人が戻って来てしまう。

伊藤が東京にやって来た目的は、芝大門に住むと言う歌垣陣衛門なる71才になる合気道の名人を訪ねて来たと言う事を承知している芳江は、人探しは大変だから…と長逗留をそれとなくすすめる。

そこへ、東京スポーツの倉橋と女性カメラマンが訪ねて来る。

入口にいた伊藤を発見した倉橋は、さっそく、インタビューを開始し、職業を詳しく尋ねてみるが、伊藤いわく、ある時は炭を焼き、ある時は木を切り…とはっきりしない。

名前を聞かれると、伊藤は、一刀流正嫡伊藤一刀斎敏明と名乗るので、倉橋は面喰らうばかり。

そんな所へやって来たのが、大毎のスカウト石井(多々良純)と西鉄のスカウト池上(早川雄二)。

池上が言うには、先ほどホームランを打たれた稲尾が、ぜひとももう一度、勝負させて欲しいと言っていると言うのだ。

石井も負けずに、うちの田宮や山内、桂木も勝負をさせてくれと言っていると伝える。

それほど請われているのなら…と、伊藤は、もう一度後楽園に舞い戻り、三塁中西太などが守る中、稲尾の投球を受けるが、何故か伊藤は見逃してしまう。

伊藤いわく、審判の許しがなかったからだと言う。

その言葉通り、審判の許可が出た二球目はいとも簡単にホームランにしてしまう伊藤。

翌日、伊藤は芳江と共に、東京タワーが近くに見える芝大門にやって来る。

一手お手合わせ願いたいと、歌垣を探しに来たのである。

しかし、はっきりした住所も分からず、途方にくれている所に正午のサイレンが聞こえて来たので、たまたま近くにあった天婦羅屋に入り、またもや、好物の天丼を注文する事にする。

伊藤に二杯目を注文してやった芳江は、今日、恋人の信雄(小林勝彦)と一緒に映画に行く約束をしていた事を思い出し、「但馬館」に電話をかけると、母親のからかいの後に、すでにやって来ていた信雄が出る。

しかし、大毎の石井が二時間も伊藤の帰りを待っていると知った芳江は、その場にいた女店員に、歌垣陣衛門なる人物を近所で知らないかと聞いてみると、何と、その女店員が歌垣の娘まゆら(仁木多鶴子)であり、道場はこの店のすぐ裏にあるのだと言う。

思わぬ偶然に喜んだ芳江と伊藤だったが、暗い表情のまゆらが言うには、その父親は、増上寺に東京タワーなる不粋な建造物が出来た事に憤り、家を飛び出したまま、もう3、4ヶ月戻って来ないし、行方も、戸隠山で滝に打たれていると言う噂が届いただけで、本当の所は分からないらしい。

天婦羅屋の主人留吉(潮万太郎)は、伊藤の名前を聞くと、歌垣の弟子の田村と言う人物からかねがね噂に聞いており、「かげろう」の秘太刀をあみ出したと言う十七世伊藤を、歌垣がたいそう認めていたとの事。

その頃、「但馬館」では、伊藤の帰りを今か遅しと待ち構えていた石井が、球団の金で、芳江の両親と信雄に接待をしている最中だった。

すっかり嬉しくなった母親は、信雄は近くの銀行の支店長で、近々芳江と結婚する相手だと石井に紹介していた。

一方、天婦羅屋では、芳江が伊藤に、いつ帰って来るか分からない歌垣を東京で待っているには、それなりの滞在費が必要であり、それを稼ぐためには、石井の誘っている球団に入ったら金が入って来ると勧めていた。

辞めたくなったら、いつ辞めても良いと言う好条件だった事もあり、伊藤は、芳江のアドバイスに従う事にする。

かくして、大毎オリオンズに入団した伊藤は、それまでトレードマークだったヒゲを剃り、ユニフォームに袖を通すのだった。

その背番号は「6」

さっそく、大毎のピッチャー相手に打撃練習をはじめた伊藤だったが、誰が投げても場外ホームランになってしまう。

内野席では、倉橋が、小西得郎と作家の五味康祐に、伊藤の印象を聞いていた。

五味康祐は、伊藤のバットの持ち方を八双の構えだとカンパする。

その打撃に感心していた監督(十朱久雄)だったが、ふと思い付いたように、石井に、伊藤の守備はどこにするのかと聞く。

この質問は、石井にとっても意外だったようで、そう言えば、伊藤の守備に関しては全くの未知数。

取りあえず、一塁を守らせてみる事にし、グローブを手渡そうとするが、伊藤は、そのような小手は使わぬと拒否する。

しかし、一塁上に立った伊藤は、ピッチャーが投げた球を、手裏剣から身を守るように、とっさにかわしてしまうだけだった。

結局、代打専門と言う事になり、チームに参加した伊藤だったが、日本各地を移動する試合で連戦連勝、連続ホームラン記録30本、空振りなし、大毎は優勝街道まっしぐらと新聞に文字が踊る毎日。

そんな遠征中の伊藤から、近況を知らせる葉書を受取った芳江は嬉しそうに文面に目を通すのだった。

そんな中、母親は、伊藤が宿泊している旅館と言う事が知れ渡ったおかげで商売も繁昌しはじめたと、嬉しそうに但馬館にやって来た信雄に言いながら、芳江は今、あんたの着物を縫っているよと教える。

その母親、旅館の玄関前で、向いにあるすみれ美容院のママ静代(清川玉枝)と、踊子をやっている娘のハルミ(春川ますみ)とおしゃべりをし始める。

一方、二階にいた芳江に会い、ディズニーの「黄色い老犬」を観に行く約束などをしていた信雄だったが、裏のマッちゃんの弾くマンドリンの音に刺激されたのか、いきなり芳江を押し倒そうとする。

しかし、芳江は思わぬ抵抗をし、信雄を跳ね返して立ち去る。

下に降りた芳江は、目の前に立っている伊藤の姿を見つける。

立った今、遠征先から帰って来た所なのだと言う。

その姿を目ざとく見つけた近所の子供達が、サインをねだって「但馬館」の玄関先に群がる。

母親は、先ほど大橋旅館に行くと出かけた主人を呼びに、お絹を走らせる一方、子供達を追い払うのだった。

しかし、その主人、実は、大橋旅館などにはおらず、近くの「キャバレーミワク」で、ホステスと踊っている最中だった。

そんな「キャバレーミワク」に、酔った信雄も誘い込まれていた。

やがて、二人は顔を会わせ、互いにぎょっとする。

翌日、芝大門にやって来た伊藤は、天婦羅屋「天留」の前でまゆらと出会うが、父親はまだ帰って来ないと言いながら、まゆらは哀しそうに道路の方へ向う。

次の瞬間、大きな衝突音が聞こえ、近所中が驚いて家を飛び出してみると、まゆらが車にはねられ、それを目撃した伊藤が、すぐに抱きかかえて、道場に運び込む所だった。

翌朝まで、伊藤は付きっきりで、まゆらの看病をしてやる。

その頃「但馬館」の前では、母親が美容院の静代から、実は娘のハルミにはヤクザの男が付きまとっており、金をせびられて困っているので、空き部屋があったらしばらく娘を預かってくれないかと相談を受けていた。

その朝も、「但馬館」の前には、サインをもらおうと子供が集まっていたが、伊藤の姿はなかった。

伊藤は、まゆらの額を、氷のうで冷やしてやっていたのだ。

熱に浮かされたうわ言で「お父さん」と口走るまゆらの姿を不憫に思った伊藤は、そっとその手に、歌垣が置いていったタバコ入れを握らすのだった。

その後、氷を砕いている伊藤の元へ、医者からもらった薬を届けに「天留」の女将(竹里光子)がやって来て、伊藤に礼を言うと共に、ちゃっかり、息子のためのサインをもらうのだった。

「但馬館」に戻って来た伊藤は、ホームランの商品としてもらったトースターを芳江の母親に手渡すと、母親は、たいそう喜ぶのだった。

二階の自室に登って行った伊藤は、隣の部屋に、何時の間にか、見知らぬ若い娘がいる事に気付き、思わず固まってしまう。

芳江に勧められるまま、浴室に向った伊藤は、扉を開いて入ろうとすると、何時の間にか、隣の娘ハルミが入浴している事に気付き、またもや凍り付いてしまうのだった。

一方、芳江の母親は、連続37ホーマーの商品として伊藤からもらった電気釜、トースター、ミキサーを芳江に見せ、嫁入り道具になると喜んでみせる。

芳江も喜び、現金にも、夕食の席で、伊藤にお酌をしてやるのだった。

その後、二階に戻った伊藤は、自分の部屋の襖に、何時の間にか、艶かしいハルミのサイン入りプロマイドが貼付けられている事に気付く。

下では、母親が芳江に、結婚は何時にするのかと確認していた。

二階では、ギターを弾きながら唄いはじめたハルミが、勝手に伊藤の部屋に入り込んで来て、窓際に逃げる伊藤に迫って来る。

武芸には強いが女にはからきし弱い伊藤は、そのハルミの迫力に押されるまま窓の外に押し出され、ハルミが、部屋に飾られていたユニフォーム姿の伊藤のプロマイドにキスするのを見るや、ついに動転して下に落ちてしまう。

それに驚いた芳江は、二階から降りて来た芳江が、伊藤にちょっかいを出した事を察し、こんな女に、伊藤の隣の部屋を与えた母親を叱りながら、猛然とつかみ掛かって行く。

ハルミと芳江が、取っ組み合いの喧嘩をしている最中、玄関に入って来たのは、あきらかにハルミを探している松井組のやくざたちのグループだった。

ハルミの男の弟分であるミサイルの辰(八波むと志)が、日本刀片手に凄んでみせる中、当の兄貴分ロケットの源次がリンゴを片手にやって来る。

源次は、ハルミをおとなしくこちらに来るよう説得するが、その場に現れた伊藤が、許してくれぬかと頭を下げる。

しかし、その相手が、野球選手と知った源次は、見下すようにリンゴを口に喰わえ、辰は日本刀を突き出してみせるが、次の瞬間、源次が持っていたリンゴが真っ二つに斬られている事に気付き、ヤクザたちは一斉に逃げ出してしまう。

伊藤が、辰の持っていた日本刀を使って、目にも止まらぬ居合いを披露したのだった。

その後、二階に戻った伊藤は、隣の部屋に、老婆の客を案内して来る芳江の姿を見る。

そうなってしまうと、今度は襖に残されたハルミのブロマイドを見つめてしまう伊藤だった。

翌朝も、歌垣道場に向った伊藤は、何とか歩けるようになったまゆらを励ましながら、道場でリハビリの手伝いをし始めるが、その日のまゆらは、何故か口数が多く、窓から鯉のぼりが見えるだの、今度、アメリカから選抜軍が来るのでしょうなどと話し掛けて来る。

黙るように伊藤が制すると、思わずまゆらは、黙っていたら泣いてしまう。夕べ、父親が死んだと言う電報を受取ったのだと打ち明ける。

雨が降りしきる中、「但馬館」では、母親が芳江に、又、結婚の日取りは何時にするのかと確認していた。

その横で、父親が読んでいた新聞には、「アメリカヤンキース」が羽田に到着したと報じられていた。

そんな父親を目で示しながら、母親は、信雄さんから20万円借りているのだと芳江に打ち明ける。

しかし、それを聞いた芳江は、自分はそんな事に負けないと言い切るのだった。

その後、芝大門に傘を持って迎えに行った芳江は、出会った伊藤から、歌垣が信州の旅籠で大往生したとの知らせを聞かされる。

上京した目的が叶わぬ夢と化した伊藤は、明日の試合が終り次第、母親のいる故郷に戻ると言う。

お嫁さんはもらわないのかと芳江が聞くと、母親が決めてくれると答える伊藤に対し、封建的ねと語気を強めた芳江は、一人で帰る事にする。

「但馬館」に戻って来た芳江は、母親から、信雄が来ている事を聞かされると、式の日取りはいつでも良い。むしろ早い方が良いと伝えるのだった。

翌日、オールパシフィック対ヤンキースの試合が始まり、「天留」の店内も、テレビを見つめる客や野次馬でごった返していた。

ヤンキースのピッチャーは、スペンサー・メンドル。

対するオールパシフィックのピッチャーは、大毎の田宮。

「但馬館」では、今日故郷に帰る伊藤の荷造りを母親と芳江がしていたが、これも入れてと芳江が手渡したのは、今日まで彼女が縫っていた着物だった。

それを見た母親は、はじめて娘が本当に好きだった相手を知り、自分の早とちりを恥じながら、思わず詫びの言葉を呟くのだった。

その後、下に呼ばれて降りて行った芳江は、テレビの前に陣取った父親や信雄から、今正にピンチヒッターとしてバッターボックスに立った伊藤の姿を見せられる。

背番号2のメンドルが投げた豪速球にはじめて空振りをする伊藤。

次の球も空振りだった。

タイムをとった伊藤は、そのままベンチに向うと、監督に目隠しをしてくれと願い出る。

その後、手ぬぐいで目隠しをした状態のまま、バッターボックスに立った伊藤の姿に当惑するヤンキースのキャッチャーとメンドル。

しかし、その後メンドルが投げた白球は、見事に伊藤のバットに弾かれ、青空の中に吸い込まれて行くのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

五味康祐原作小説の映画化で、監督は「狸御殿」で有名な木村恵吾。

一見、忍者が巨人軍のピッチャーになる懐かしの野球マンガ「黒い秘密兵器」を連想させるようなスポーツファンタジーだが、後半は、とぼけたユーモアも交えた下町人情劇になっており、不思議な余韻を残す作品となっている。

この作品も、原作では確か巨人軍に入団するはずなのだが、大映が作った映画なので大毎オリオンズに変更されている所がミソ。

さすがに、人気のない大毎だけでは客を呼ばないと悟っていたのか、当時、パ・リーグの人気球団だった西鉄ライオンズから、稲尾和久や中西太などにゲスト出演してもらっている。

ヤンキースとの試合では、 南海の野村克也の姿などもちらり登場するが、基本的にパ・リーグなので華がない事は否めない。

結局、試合の方は地味なので、後半は、旅館の中の家族風景や、芝大門に住む歌垣の娘との交流などにスポットが当てられている。

歌垣の娘を演じているのは、前年「猫は知っていた」(1958)に主演した際、原作者仁木悦子の名前をもらった仁木多鶴子。

一刀斎を取材に旅館を訪ねて来る東京スポーツのカメラマンは、今や着物評論家の市田ひろみ。

パーマヘアにスカート姿なのが珍しいくらいで、顔つきと声は今とほとんど同じ。

スポーツものとしてみると、あまりにも奇想天外すぎて単調と言うしかないが、芳江の気持ちのうつろいを中心に見て行くと、味わい深い物語に見えて来る。

主役の菅原謙二といい、全体的に、役者もストーリーも地味と言うしかないが、「宇宙人東京に現る」(1956)などにも観られる、この当時の大映の、ファンタジー+下町人情劇路線の一本とでも解釈すれば、それなりに興味深いものがある。

特に、後半のとぼけた独特のユーモア演出は、今観てもそれなりに楽しめると思う。

原作者五味康祐も登場しているが、さすがに若い。

この人、かなり若くして亡くなったと記憶している。

当時、この手の映画に良く出ていた野球評論家の小西得郎さんは、さすがに手慣れた感じで、この作品では演技が板についていると言う感じ。

芝大門のセットでは、「ALWAYS 三丁目の夕日」のように、東京タワーが印象的に背景画として描かれているし、芳江が母親(浦辺粂子)に「今日、負けちゃった…、若秩父…」と、哀しそうに相撲の話題を話し掛けるのもノスタルジック。

若秩父とは、いつも大量の塩を撒く事で人気のあった力士であった。