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ハイウェイの王様

1965年、マナセ・プロ+松竹、阿川弘之原作、岩井基成脚本、市村泰一監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

第一交通機動捜査隊白バイ隊所属になって三年の源さんこと市川源三郎(坂本九)が、路上で発見したスピードオーバーの車を停車させると、運転席から降りて来た女性ドライバーが、トイレに行きたかったのだと言い訳する。

それを聞いた源さんは、慌てず、近くの店にトイレを貸してくれと頼み、その女性ドライバーを案内するが、用を終えて来たその女性から違反切符を切るのは忘れなかった。

その後、今度は、ジープを運転してスピードオーバーの女性を発見、すぐさま追尾して停車させると、違反調書を書き、交通裁判所に出頭するように通告する。

すると、その朝永さおり(香川美子)と名乗った女性は、おじさんに何と言われるか…と、困った様子。

それを聞いた源さんは、ノーベル賞をもらった朝永振一郎博士の姪と思い込み、博士の名前を汚さないようにと注意するだけで許してやる事にする。

ところが、その後、朝永博士には、そのような娘などいない事が判明、署に戻った源さんは、自分のミスを分隊長(谷幹一)に報告するが、厳しい中にも優しさを持った分隊長は、今は「一姫二トラ三ダンプ」と言うくらいなので、女性には十分気をつけるよう忠告する。

同じく同僚の一人は、盗難車を見逃してしまったとぼやいていた。

その夜、同僚の伊木(菅原文太)は、恋人春代(葵京子)がやっている焼き鳥屋「小春」に、同僚の池尻(勝呂誉)と気落ちしている源さんを誘い、みんなで源さんを励ます事にする。

しかし、誘った伊木は、何故か浮かぬ表情。

巡査部長の試験勉強をしなければいけないのでと断わって、早々に帰ってしまう。

その後、今度は、池尻の恋人白坂幾子(夏圭子)が店にやって来る。

源さんは、春代が女手一人で育てている息子の進が、前からニコリともしない事に気付いていた。

春代の夫、つまり進の父親は車に轢かれて亡くなっており、それ以来、進は笑顔を見せない子供になってしまったのだ。

伊木は、そんな春代との結婚を考えているようだったが、今の自分に自信が持てないようだった。

そんな「小春」に、「東京百景」と言う雑誌の編集長桜井(園井啓介)がふらりとやって来る。

そんな中、幾子も又、恋人が白バイ警官である事に不安を抱いていた。

彼女の父親も白バイ警官をやっており、事故で死亡していたからだった。

彼女は、恋人にもっと静かで平凡な生活を送って欲しいと願うが、池尻は、白バイは辞められないと言い張る。

その後も、源さんの仕事は苦労続き。

あるスピード違反の車を停めると、中に乗っていた政治家(上田吉二郎)から、自分は国事で急いでいるのだ、お前の上司に会わせろと凄まれたあげく、後藤中隊長(河野秋武)に電話で抗議される始末。

その話を知った分隊長は、そっと源さんを慰め、「東京百景」の桜井から、白バイ警官の写真を紹介したいと言って来たので、日頃の苦労を一般の人たちに知ってもらうために一つ協力してやってくれと依頼する。

翌日、絵画館前でカメラマンを待っていた源さんは、歌手の九重佑三子がファンに取り囲まれ、次の会場の歌舞伎座に遅れそうになっている所に遭遇、白バイで先導して歌舞伎座まで誘導してやる事にする。

一方、同じく絵画館前で正午にと約束していた桜井とカメラマンは、待ちぼうけを喰っていた。

そこへ戻って来た源さんは、カメラマンと言うのが、先日、騙された、あの朝永さおりだった事を知り驚愕。

文句を言うと、相手は、自分のおじさんと言うのは「朝永一郎」と言う名前の全くの別人で、勘違いをしたのはそちらだと言い返して来る始末。

これでは、らちが明かないと諦めた源さんは、分隊長命令でもあるので、そのままさおりのカメラの前で、白バイを運転してみせる。

さおりは、その姿をカメラにおさめながら、すごいバイタリティー!と感心する。

次の日曜日、さおりは、出来上がった写真を持って、源さんのアパート「清風荘」にやって来る。

源さんには、写真に添える雑誌の原稿を書くように依頼していたのだ。

しかし、源さんは、まだ書けないと言う。

できている冒頭部分を読んでみると、自分は沖の島生まれで、白バイ隊のきれいな服に憧れて警官になったなどと、堅苦しい文章。

呆れたさおりは、自分が代わって書いてあげると申し出る。

源さんは、幼稚園の園児たちや老人を安全に誘導する地道な日頃の仕事のエピソードなどを話して聞かせるのだった。

その後も、源さんの地道な仕事は続いていた。

ある時は、結婚式場に向うウエディングドレス姿の花嫁の車がエンストしていたので、後ろを押してやったり、積載オーバーのダンプの運転手(長門勇)に注意すると、女房が病気で、医者から金を請求されているので、無理をして働いているのだと言い訳されたり…

その頃、さおりの方は、師匠のカメラマン徳山(永井智夫)のヌード撮影の手伝いをしていた。

そのスタジオ内では、流行作家柴ケン(神山繁)と新劇女優(加賀まりこ)が遊びに来ており、タイヤの商品撮影をし始めたさおりの事を、徳山と話題にし始める。

週刊誌に載った白バイの写真がなかなか良かったと言うのだ。

やがて、ああいうダイナミックな写真を撮りたがると言うのは、カメラマン本人に欲求不満があるのではないかとからかいはじめる始末。

その頃、白バイ隊の一人は、スピード違反のスポーツカーを停めて、運転手浜口(橋本功)に免許証提出を求めた所、その運転手は、急発進して逃げ出す。

すぐさま追跡を始めた白バイだったが、途中、土手に滑り落ちてしまい、見逃してしまう。

結局、その車は盗難車である事が後で分かったと、「小春」で池尻の口から聞かされた幾子は、そもそもこの仕事そのものに問題があるのよと怖がるのだった。

そんなある日、さおりは、源さんに会うため警察にやってくるが、六日前に転倒事故を起こして、今入院中なのだと伊木から教えられる。

慌てて、警察病院に向ったさおりだったが、源さんの病室の前に来た時、中から「あのこと、考えてくれた?」と親しげに問いかける女性の声が聞こえて来たので、思わず立ち止まってしまう。

その女性は春代だった。

彼女が病室から立ち去るのを外で待って、部屋に入ったさおりは、ビジネスで寄っただけと照れて言いながら、師匠の徳山から、今度、前のバイク写真と同じようなテーマで個展を開いてはどうか?と言われたので、その撮影のため一緒に箱根に行かないかと誘う。

そして、持って来た花束を無雑作にベッドに放り投げて、さおりは帰って行く。

やがて、怪我も癒え、源さんは現場に復帰する。

しかし、同僚の浜口は、盗難車犯人の捜査に行き詰まっていたし、池尻はイライラしていた。

そんな池尻の様子を見かねた分隊長は、休暇を撮るように進言する。

その夜、「小春」で源さんと酒を酌み交わす事になった池尻は、白バイの仕事に疑問があると言い出す。

源さんは、すぐに幾子に反対されたのだと見抜く。

その後、源さんは、さおりに電話をかけ、お茶でも飲みながら、今度の仕事の打合せでもしないかと誘うが、さおりは今忙しいと冷たく切ってしまう。

源さんから、さおりからの仕事の依頼の話を聞かされた分隊長は、代休を撮って良いから、その代わり、22時までに戻って来いと許可を与える。

さおりは、源さんのバイクをジープの後ろに積んで、箱根に向う。

運転席に座る源さんとのカップルは目立つらしく、通りかかったトラックの運ちゃんから冷やかされる始末。

徳山の別荘に到着した二人だったが、先に到着しているはずの徳山らの姿が見えない事に気付く。

その、徳山は、パラダイスキングや作家の阿川弘之などもいる柴ケン先生の別荘に集合し、賭けトランプに興じていた。

やがて雨が降り出し、外で雷が鳴りだした中、停電してしまった別荘に残っていたさおりは、雷の音が嫌いで、思わず源さんに飛びつくが、すぐに今日はビジネスで来たのだと言い出し、怒ったように身を放す。

そんなさおりに、源さんは好きになってしまったので、恋人になっていただけたら…と告白する。

外では雨もやみ、月が出ていた。

源さんは、自分も伊木さんみたいに、試験に受かって巡査部長になってみせるから、結婚してくれとプロポーズする。

すると、さおりは、自分も貧しい農民の子だと打ち明け、警察病院に見舞いに来ていた春代の事を問いただしてみる。

源さんは、伊木さんの恋人だと答える。

それでも、さおりは、個展が済むまで、返事を待ってくれ、東京に戻ったら、一度会って下さいと言い出す。

その後、分隊長との約束を守って、本部に急いでいた源さんだったが、本部に到着したのは10時30分だった。

しかし、待っていた本部長の口から出た言葉は、小春のママ春代が事故に会ったと言うものだった。

伊木が言うにはひき逃げで、さらに仲間の一人が抜けてしまったと、池尻が白バイ隊を辞めた事を伝える。

その伊木と二人で、病院に見舞いに向った源さんは、病室の前で独り遊んでいた進の姿を見て、部長試験前の伊木に、自分が預かると言い、進を自宅に連れて行く事にする。

源さんは、いつものように笑顔を失った進に、歌を唄って聞かせるが、笑顔は戻らない。

しかし、その内、進は「上を向いて歩こう」を唄いはじめる。

そんな所にやって来たのが、さおりで、今日はドレスを着てきどっている。

その後、春代の意識が戻ったと連絡を受けた源さんは、進とさおりを病院に連れて行った帰り、みんなで東京タワーに登る。

時間が5時5分になる事を知ったさおりは、5時半までにパーティ会場に戻らなければいけないのだと打ち明け、九重佑三子のショーがあるので一緒に行かないかと進を誘う。

すると、進も会いたいと言うので、源さんと共に一緒に会場に連れて行き、楽屋にいた九重佑三子に紹介してやる。

九重佑三子は、源さんの事を覚えており、進の境遇の事を知ると、笑顔を何とか取り戻させてあげたいと、一緒にパーティ会場に連れて行ってやる事にする。

そこでは、パラダイスキングや新劇女優がうわさ話に花を咲かさせており、最近のさおりと白バイ警官には、絶対に何かあったに違いないが、あの警官は、小春のママの恋人らしく、子供を引取っている…などと言い合っていた。

その言葉を、会場に戻って来たさおりは聞いてしまう。

その会場に、九重佑三子に連れられた進と源さんがやってきたので、その姿を見たさおりは思わず逃げ出してしまう。

それに気付いた源さんは、さおりが逃げ込んだ現像室まで追い掛け、何故逃げるのかと聞くと、あなたは女二人をだます気?嘘つき!出て行ってと言われてしまう。

翌朝の朝礼、分隊長は、様子がおかしい源さんの姿を見て、悩みごとがあるのなら休めと命ずる。

源さんは池尻に、さおりが、伊木さんの恋人の事を勘違いしているのだ、俺も白バイを辞めようと思ったが辞められないと打ち明けに行く。

その頃、本部に戻って来た伊木を待っている春代の姿があった。

春代は伊木に、部長試験に受かったら、進の父親になってくれと頼む。

伊木はそんな彼女に、源さんがママの事で誤解されているらしいと、さおりの事を打ち明ける。

その頃、本庁には、新たな車の盗難報告が届いていた。

佐織の個展会場には、作家の阿川弘之や色川部大などが来ており、徳山もマスコミからインタビューを受けるなど盛り上がっていたが、肝心のさおり本人は落ち込んでいた。

そこに、幾子も客の一人として訪れていた。

その後、牛込分駐にいた池尻の元に、そんな幾子から電話が入り、私は今では父親と恋人が同じ職業である事に誇りに思う。仕事を辞めてと言った事が恥ずかしいと連絡して来る。

それを聞いた池尻は急に張り切り出す。

警邏中の伊木は、赤いスポーツカーの浜口を発見する。

連絡を受けた池尻は、葛飾区で盗難車発見と本部に通報。

分駐所では、後藤中隊長が白バイ隊全員に、犯人が乗った盗難車はフェアレディのオープン、晴海に集結と指令を出す。

会場で、このニュースを聞いていたパラキンのラジオに耳を傾けるさおり。

その様子を横で見ていた柴ケン先生は、絶好のシャッターチャンスじゃないかと、彼女に謎をかける。

それを聞いたさおりは、迷う事なく、着物姿のまま、表に停めてあったジープに飛び乗る。

浜口は、晴海埠頭で暴走を繰り返していた。

しかし、白バイ隊に囲まれ、とうとう源さんと伊木に手錠をかけられてしまう。

そんな伊木は、ジープでやって来た佐織の姿を見つけ、源さんに教えてやる。

しかし、源さんは、そのまま白バイに跨がると走り去ってしまう。

さおりのジープに近づいた伊木は、今度、自分は小春のママと結婚しますと挨拶をする。

それを聞いたさおりは、自分の勘違いを悟り、すぐさまジープで源さんの白バイを追い掛ける事に。

そして、わざと白バイを追い抜くが、源さんはそ知らぬ振りで、別の車を追い掛けて行く。

そんな源さんに、ようやく追い付いたさおりは、お詫びを言いたかったの、来て…と誘うが、源さんは、只今、勤務中であります!ととぼけるのであった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

芸能プロダクションが、当時所属していた人気歌手坂本九を主役に作ったアイドル映画。

九重佑三子やパラダイスキングなど、同事務所所属の他のタレントもゲスト出演している。

内容的には、他愛無い恋愛ものだが、白バイ警官ものというのがちょっと異色。

刑事物や警官ものは良くある設定だが、白バイ警官を主役にした作品は珍しいと思う。

特に、アクションものとかサスペンスと言った派手な要素はなく、あくまでも、地道に働く白バイ警官の人間的な悩みのような部分に焦点を当てている。

原作者である阿川弘之や色川武大(阿佐田哲也)なども登場しているが、劇中で神山繁が演じている柴ケン先制と言うのは、もちろん「柴連」こと柴田連三郎の事だろう。

いかにも生意気そうな若手女優として登場している加賀まりこが、ヒロイン役の香川美子共々初々しい。

松竹時代の菅原文太が、中途半端な二枚目と言った感じで、いかにも役に恵まれていなかった感じが伝わって来るのも、今観ると興味深い。

福永振一郎博士のノーベル賞受賞などのネタが、時代を感じさせる。