TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

調子のいい奴
いたずらの天才

1965年、マナセ・プロ+松竹、岩井基成脚本、二本松嘉澄端脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

警官(ジェリー藤尾)が、公園を見回りしていると、一人の青年が、ベンチを占領して眠っているのを発見、起こして注意すると、その青年は、いきなりベンチを持ち上げて逃げ出す。

驚いた警官が、後を追跡して捕まえると、青年は、このベンチは私が買ったものですと、3000円の領収書を見せる。

唖然とする警官の顔を観て、いたずら大成功と愉快そうにする青年の名は、藤島洋(坂本九)。

タイトル

藤島が看板を首からかけて、町を練り歩くサンドイッチマンをしていると、一人のサラリーマン河野幸男(谷幹一)が通り過ぎる。

藤島は、こっそり、その河野の頭を後ろから殴って、すぐに逃げるが、その時、一人のOLとぶつかり、その美貌に一目惚れしたので、そのまま彼女の後をついて行く。

彼女が入っていったジャパン貿易と言う会社に、そのまま自分も入ろうとした藤島だったが、玄関で守衛(左卜全)に呼び止められたので、この会社に入社する者だとごまかす。

その後、外に出た藤島は、通りかかった人に持っていた看板を渡すと、そのまま陽気に唄いはじめる。

彼は本当に入りたい会社を見つけたからだった。

初出社の朝、満員電車の中で、いつか頭を殴った河野と身体が密着した藤島は、持っていた剣山を河野に押し付けるいたずらをやる。

出社した藤島は、八木社長(堺駿二)から、取り引きしたいアメリカンホワイト社には、日本物産と言うライバルがいる事を教えられる。

その後、配属された営業部には山崎大五郎課長(穂積隆信)がいたが、驚いた事に、あの何回かいたずらをした男もいるではないか。

上司となる河野係長だった。

絶望した藤島は辞表を書きはじめる。

しかし、憧れの彼女、タイピストの中原道子(香川美子)もいたので、嬉しくなった藤島はあれこれ語りかけるが、その様子を見ていた河野係長はヤキモチを焼く。

彼も又、道子の事を気に入っているらしいのだ。

藤島は、書き終えた辞表を破り捨てる。登る山(彼女)を見つけたからだった。

その夜、藤島は、河野と共に、アメリカンホワイト社のミスターブラックを宴席に接待する事になる。

得意の宴会芸で、すっかり調子づいた河野は、芸者の春美(三原葉子)が気に入ったようで、誘い掛けるが、袖にされたので頭にきて、転び専門などとバカにするが、別の部屋では、その春美を目当てに一人で飲んでいた先客がいた。

ジャパン貿易とはライバル関係にある日本物産の只野部長(桂小金治)だった。

河野の部屋を抜け出した春美は、廊下で、河野の悪口を言っていたが、それを聞いた藤島は、良き友を得たという風に、気軽に話し掛ける。

ある日、駅にやって来た藤島は、品川-大井駅でダンプの衝突事故が起きて、電車が普通になっていると知ると、取材に来ていた新聞記者に、衝突現場の写真を撮ったと、持参のフイルムを買わせる。

しかし、社に戻って現像してみた記者は、そのフイルムには何も写ってない事に気付く。

ある朝、河野が出社すると、タイムレコーダーの前に長蛇の列が出来ているではないか。

前の方の様子を見ると、藤島が、タイムレコーダーのカードの挿入口に指を挟まれて身動きできない様子。

仕方がないので、河野はトンカチを持って来て、タイムレコーダーを壊してしまうが、藤島は指が挟まった振りをしていただけだった事が分かる。

勤務時間中、藤島が楽しげに私用電話をかけているので、河野が注意しようとすると、その相手は八木社長らしいと分かり、何も言えなくなる。

しかし、その電話も、藤島の一人芝居だった。

その河野、気のある道子を見つけ、追い掛けてみると、藤島と待合せしていた事に気付き悔しがる。

道子とデートが出来、公園の噴水の前で嬉しそうに唄う藤島。

道子は、これまで、付きまとう係長の事を怖がって、誰も自分と付き合ってくれなかったと告白する。

藤島は、噴水の中に洗剤を投入、いつの間にか、噴水は泡だらけになる。

翌日、会社で道子が転び、椅子が壊れる。

いつものように、社長相手に気安く電話をしている真似をする藤島だったが、その部屋の前を、当のヤギ社長が通りかかったので、それを見た河野は、藤島の芝居に気付く。

八木社長は、ミスターブラックが転勤したと河野に伝えながらも、藤島のいたずら電話を叱りつける。

しかし、藤島は、叱られた自分を見て愉快そうにしている河野に仕返しするために、社長秘書室から河野を呼出し、遺産で社長室にやって来た河野が、社長から叱られるのを見ていた。

その後も、藤島の河野へのいたずらは続き、河野の座る椅子にブーブークッションを敷いておいたり、道子の方も、河野からのデートの誘いを、藤島との約束で今日はロードショーに行かなければならないし、今後一ヶ月間もスケジュールが詰まっていると、全部断わる。

しゃくに触った河野は、藤島に、大量の書類を与え、明日までに全部整理しておけと命じ、藤島が持っていたロードショーの券をとってしまう。

その後、藤島から中庭に行ってみろと言われた河野が、何事かと行ってみると、そこで、守衛のおじさんが書類の束を燃やす光景を発見、真っ青になる。

その書類の中には、アメリカンホワイト社との契約書も入っていたからだった。

責任を感じた河野は、山崎課長に辞表を提出しかけるが、その横で、藤島が、河野から渡された書類を書いている姿を目撃して驚く。

中庭で燃やしていた書類は、全く、藤島が与えられた書類とは無関係のものだったと分かる。

度重なる藤島のいたずら攻勢に、河野は心臓が調子悪くなってしまう。

かくして、藤島は営業用車に道子を乗せ、ドライブを楽しむ事ができる。

そこに、河野から無線が入り、課長が呼んでいると言う。

アメリカンホワイト社のレッド社長が神戸にやって来るするので、すぐに関西支社へ行ってくれと言うのである。

しかしその直後、山崎課長と河野係長の元へ守衛のおじさんがやって来て、今、藤島が交通事故を起こしてしまったと連絡があったと言うではないか。

山崎課長は、急遽、目の前にいた河野に関西出張を命ずる。

河野が、新幹線に乗り込むと、ホームに元気な藤島が見送りに来ているのを発見、手話で、道子さんの事は任せてと伝えるのを見た時、又しても、はめられた事に気付く。

レッド社長と会わなければならなくなった河野は、苦手の英語を覚えようと、英語の本を持参していたが、それを開くと、ページの中から水が飛び出して来る。

又しても、藤島の仕業らしい。

しかし、目的のレッド社長とは会えず終い、連絡があったレッドアロー号には乗っていなかったからだ。

レッド社長は、香港から空路、只野部長と共に羽田に向ったのだった。

この失態が原因なのか、その後、河野は会社を三日も休んでしまう。

会社の屋上に来た道子は、藤島に元気がない事に気付く。

河野がいないと、いたずらを仕掛ける相手がおらず、張り合いがないと言うのだ。

藤島は、果物の詰め合わせを購入して、河野のアパートに見舞いに出かけてみる。

すると、隣の部屋の女が出て来て、ここ一週間、いつも聞こえていた河野の鼾が聞こえないのだと言う。

藤島は、首でも括ったのではないかと案じ、その場で、果物籠の熨斗を不祝儀用のものに付け替えるのだった。

河野が失踪した事を知った藤島と道子は、警察の家出人相談所に申請に行く。

道子は、実は河野に、少し魅力を感じているようだった。

その頃、当の河野は、芸者の春海とホテルで、一緒に食事をしたり、プールサイドでは水着女に見とれ、プールに落ちたりと楽しく過ごしていた。

ある日、道子は、営業車に乗っている藤島に、熱海へ急行するよう無線で知らせる。

藤島は、パトカーに追われながらも、もうスピードで熱海のホテルに向う。

何故、河野を熱海に足留めしていたのかと春美に問うと、本社の平林課長から電報を受けて、ビジネスとしてやっただけだと言う。

金の出所を聞くと、最初は口を割ろうとしなかったが、とうとう日本物産の只野部長からだと白状する。

本社の平林課長もかんでいると言うのだ。

急ぎ東京本社に戻り、社長室に呼出した平林課長(石田智)から事情を聞いた所、アメリカンホワイト社とのの契約書類を日本物産に売渡したと言うではないか。

仕返しをしようとアイデアを思い付いた藤島は、すぐに薬局に行き、店主(長門勇)から、「ヨクデール」と言う利尿剤を1ダース購入して来る。

掃除婦に化けて日本物産に潜入した河野は、女性トイレの清掃をする振りをして、便器の中に一匹づつ金魚を泳がせて行く。

同じく、日本物産の給湯室に忍び込んだ藤島は、「ヨクデール」をお茶の中に混入し、それを、変装した道子が、タイピスト室の女性たちに配って行く。

そのお茶を飲んだ、タイピストたちは、皆一斉に尿意を催し、トイレに駆け込むが、水洗トイレの中に金魚が泳いでいるのを発見すると、そこでは用が足せなくなる。

彼女らが、トイレで右往左往している隙を狙い、藤島と河野は、タイピスト室に置いてあった書類を持ち去って行く。

その夜、河野と藤島はキャバレーで祝杯を挙げていた。

そこに只野部長が、外国人女性を連れてやって来る。

藤島が、近づいて来たボーイの足元にさり気なくビール瓶を転がすと、ボーイはそれに躓いて、持っていた皿を外国人女性にぶつけてしまう。

それに怒った只野部長は、藤島たちのテーブル目掛け、パイを投げ付ける。

それをきっかけとして、店中でパイ投げ合戦が始まる。

翌日、会社では、その話で皆大喜びだった。

ところが、そこに夕べ、皿をぶつけた外国人女性が山崎部長の所にやって来て、その正体が、レッド社長の娘グリーンである事が判明。

とんでもない失態を演じた事を悟った河野と藤島は、部長に、自分達を首にしてくれと頭を下げる。

しかし、そこに八木社長とレッド社長(E・H・エリック)が愉快そうにやって来て、藤島に東京見物の案内を頼みたいと言って来る。

藤島が、差し出されたレッド社長の手を握手すると、その手がすっぽり外れる。

何と、レッド社長も無類のいたずら好きだったのだ。

それから、藤島は、そのレッド社長を連れて、国会議事堂を始めあちこち見て廻るが、その先々で、二人はいたずらを繰り返して行く。

女性がバックしている車を親切そうに誘導してやり、わざと壁にぶつけたり、ボーリング場に行って、球の穴の中に接着剤を流し込んだり、写真を撮っているモデルの前に、わざとレッドと藤島が入り込んだり、スキヤキ屋に、芸者に化けた藤島が乗り込んだり、銭湯に一緒に入ったレッド社長が、アクアラングを付けて、女湯の方に侵入したり、テレビ局で撮っている時代劇の収録に紛れ込んだり、水着ショーを見に行ったレッドが、モデルに絵の具で着色した花束を渡すと、それに付いていた色が、顔を近づけた相手にくっついたり、深夜喫茶に出かけた藤島が、わざとらしく、目覚まし時計をセットして寝始めたり…

翌日、レッド社長と藤島は、すっかり意気投合していた。

ウィットとユーモアが分かる人は、世界に通じると言うのだ。

レッド社長は、ジャパン貿易と契約をすると宣言する。

この功績を認められ、藤島は、八木課長から課長に抜擢される。

ところが、その辞令を聞いた藤島は、河野はどうなるのかと、社長に問いただし、今のままだと聞くと、それでは自分は嫌だと固辞しはじめる。

かくして、藤島は係長、河野係長が新課長に任じられる事になる。

この藤島の恩義に河野は素直に感謝し、挨拶廻りに出かけて行くが、その背中には、藤島が仕掛けておいた爆弾が貼り付いていた。

その後、藤島自身も、係長になった挨拶をしに出かけようとすると、河野が戻って来て、道子を連れて行ってしまう。

公園にやって来た河野と道子に近づいた藤島は、道子を奪って逃げ出すのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

人気アイドルだった坂本九主演の、いたずらをテーマとしたちょっと珍しいコメディ。

一つ一つのいたずらは他愛のないもので、それで笑えると言うほどのものではないが、全体的に、日本映画では珍しく、カラッとしたコメディになっている。

坂本九とライバル関係になり、全編で活躍する谷幹一は、テレビ版「月光仮面」の五郎八役で、一躍茶の間の人気者になったコメディアン。

関計六、渥美清らと共に、トリオ「スリーポケッツ」を組んでいた事でも知られる。

映画としては、エピソードを繋げただけと言う印象で、さほど大きな感動はないが、日本映画のコメディとしては、ちょっと異色の一本と言うべきではないだろうか。