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万事お金

1964年、東宝、源氏鶏太原作、井手俊郎脚本、松林宗恵監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

あぁ〜あぁ、やんなっちゃった〜、あぁ〜あぁ、驚いた〜…と、牧伸二のウクレレ漫談が、新幹線や野球ブーム、ボウリングにゴルフと流行りものを皮肉る。

タイトル

銀座の近くの小さな公園。

雨が降る中、遊具の列車の中で対面した音羽サクラ(星由里子)が、恋人の豊年太郎(坂本九)に別れ話を持ちかけていた。

世の中、お金がなかったら地獄、だから私との結婚は諦めてと言うのである。

しかし、月給2万1000円の安サラリーマンである太郎は、愛情の方が大切だろうと懸命に反論しようとするが、大好きだけど、大金持ちの弓矢八万太郎から求婚された。相手は40才くらいの中年だけど、自分は母親の面倒も見なければ行けないし…と、申し訳なさそうにサクラは言い返す。

いきなりふられてしまった太郎は呆然とし、サクラと一緒に帰る途中、うっかり赤信号の交差点に歩み出ようとして、地獄へ行っちゃうわよとサクラに注意される始末。

その後、「ホテル パラダイス」に誘い込もうとする太郎だったが、500円しか持っていない彼には、御休憩料金600円も払えない事が分かり、がっかり。

その様子を観たサクラは呆れたように、「お幸せに」の言葉を残し去って行く。

馴染みの飲み屋に来た太郎は、店のママまる子(市原悦子)が、今夜は、身体を売るか売らないかの瀬戸際である事を打ち明ける。

この店を作った時、とあるパトロンから返すのはいつでも良いと言われて50万円の借金をしたのだが、今頃になって、急に返してくれといわれ、出来なければ二号になれと言われたのだと言う。

その相手の名前を聞くと、弓矢八万太郎だと言うではないか。

弓矢商事の社長で、20億〜30億の資産を持っている人なのだと言う。

その頃、路地裏の貧しい家にたどり着いたサクラは、出迎えた母親(浪花千栄子)から、今日、弓矢がやって来て、10万円置いていったと、嬉しそうに報告しながら、サクラに半分の5万円を手渡す。

一方、まる子の方は、浮気してやると言い出し、カウンターに座っていた太郎を口説きはじめる。

そこに、人相の悪い男がやってきて、例の返事を聞かせろと凄む。弓矢の子分青岩捨吉(桐野洋雄)だった。

そこに割って入った太郎、互いにサラリーマン同士仲良くしようと言いながら、いきなり相手を殴りつけてしまう。

そして、自分の名前を名乗ると、お前の社長に音羽サクラは渡さないと啖呵を切る。

まる子は、借金は月5000円づつ払うと言ってくれと捨吉に伝言を頼む。

その日、太郎が帰って来た自宅アパートの部屋に飾ってある母親の写真の裏には、サクラの写真が忍ばせてあった。

翌日、出社して、算盤を弾きはじめた太郎だったが、サクラの事を思い出して、いらついていた。

そんな太郎を呼び寄せた社長山盛金助(有島一郎)は、実は今月、会社の資金が80万ほど足りないのだと打ち明けた後、こうなったらある所から手形をもらって来るしかなく、君、金持ちの娘と結婚しないかねと、急に持ちかけて来る。

その夜、医書にバーに出かけ、恋人にふられたと言う話を太郎から聞いた社長は、分かる、分かると頷いた後、その恋人の相手と言う金持ちから金を借りられないかと言い出す。

弓矢八幡太郎と言う名前を聞くと、知っていると社長は言う。

その後、待合せ場所であるホテルに場所を移した社長が言う縁談話の相手と言うのは、肝甚工業の社長肝甚要太郎の二号の娘なのだと言う。

もし、結婚してくれたら、百万円を会社に前払いしてくれるらしい。

このいわば、会社の人身御供とでも言うべき話に承知してくれたら、太郎を専務取締役にさせてやると言うのである。

その時、太郎は、見知らぬ男と連れ立ってやって来たサクラの姿を認め、声をかけようとするが、社長になだめられる。

その直後、待合せの相手である肝甚要社長(伴淳三郎)と、その二号の娘梅林ウメ子(浜美枝)が到着する。

太郎は、同じ部屋の向こうで、弓矢らしき男(平田昭彦)と食事をしているサクラへの当て付けの気持ちもあったのか、即座に、ウメ子との交際を承知する。

あまりにあっさり、事が決まってしまったので、取りあえず4人は乾杯を交わす事にする。

しかし、太郎の本心は、向こうに座っているサクラの事が気にかかって仕方ない様子。

そんな太郎の気持ちも知らないで、肝甚要は、ウメ子の母親と言うのは、元赤坂の芸者だった等と説明しはじめ、その母親と一緒に暮してくれないだろうかと条件を出して来る。

その代わり、1000万と言う、生涯働いても稼げない学を持参金としてウメ子につけると言うのだ。

その時、弓矢とサクラが帰るのに気付き、顔を見知っている肝甚要は、一度弓矢社長に苦境を救ってもらったものですと挨拶をしに行く。

その様子を観ていた太郎は、さらにいらつくが、山盛と肝甚要が気を利かせ、後は若い者同士でと二人を外に送りだす。

外をぶらつく事になったウメ子は、さっきの人知っているでしょうと太郎に聞いて来る。

太郎は、隠さず恋人だと答え、今所持金が2000円しかないと打ち明けた後、まる子の店に連れて行く。

ウメ子は、パパから1000万円もらいたいだけなので、結婚する振りをして、その前に別れましょうとドライな事を言い出す。

これは自分にとって、一種の正当防衛のようなものであり、父親は1億くらいの資産を持っているのだから、金を受取るために、自分と口裏を合わせて欲しい。そうしてくれたら、5%の50万渡すと言うのである。

それを聞いていたまる子も、そうする事で、サクラが嫉妬するかも知れないから、太郎に同意するよう勧める。

太郎は、九州男児とばかりにその話に乗る。

ウメ子は、実は自分にも別に好きな相手がいるのだと打ち明け、まる子と三人で作戦成功を願って乾杯する。

そんなウメ子を送って帰る太郎は、実は、うちの社長から、今夜中にあなたと接吻しろと言われたのだと言い、ウメ子もあっさり、その言葉に応ずる。

その頃、慣れぬホテルでは満足に食事が咽に通らなかったらしいサクラが、自宅で茶漬けをかき込みながら、今日、弓矢からキスされたと母親に報告していた。

一方、ウメ子の自宅にやって来た太郎は、彼女の母親松枝(坪内美詠子)に勧められ、三人で酒を酌み交わす事になる。母親も又、金目当ての偽装結婚の事を承知していたのだった。

その夜、床についたサクラは、何故か太郎の事を思い出していた。

翌日、出社して来た太郎から、夕べ、ウメ子と二回も接吻をしたと報告を受けた大盛社長は、これで融資は間違いなしと大喜びする。

しかし、太郎は、そんな大盛社長に、ウメ個と交わした約束の事を話してしまう。

大盛は、君は女好きだと呆れる。

その足で、肝甚要の経営する会社社長室に乗り込んだ太郎は、肝甚要から1000万の小切手をもらおうとするが、それだけの大金、今全部手元にある訳でもなく、今すぐに出す訳にはいかん。しばらくは会社への預け金としてもらい、渡すのは結婚して2、3年待ってから…と言い出す。

太郎は、その後、サクラに電話を入れ、自分は今、1000万の持参金付きの女性から求婚されているので、5時に新宿で会いたいと伝える。

約束の時間に喫茶店で落ち合った太郎はサクラに、弓矢には2号や3号がいるのだと教え、再度、自分と付き合ってくれないかと求めるが、サクラは、楽隠居になるのが夢の母親は捨てられないのだと、何て言ったって、金が全てなのだと、その申し出を拒否する。

その後、まる子の店に二人で立ち寄り、サクラは空腹だとラーメンをすすりはじめる。

それまでのいきさつを聞いたまる子は、サクラの夢は分かる、人間の幸せは金で買えるものだと言い出す。

それを聞いた太郎は、紙も仏もないのかと呆れる。

そんな所にふらりと現れたのがウメ子で、サクラを意識して、わざと太郎に馴れ馴れしくする。

すると、その様子を横目で観ていたサクラはかちんと来たらしく、珍しくビールを飲みたいと言い出す。

一応、その場で、サクラとウメ子は互いに名乗りあうのだが、雰囲気は陰悪。

そこへ青岩捨吉が又やって来たので、太郎は、この男は50万のカタに、この店を取ろうとする弓矢の子分だとサクラに教えると、サクラは急に、自分の名前を名乗って青岩を叱りつけるのだった。

そのサクラの態度を観ていたまる子は思わず誉めるが、弓矢をかばおうとするサクラの態度を見せつけられた太郎の気持ちは複雑だった。

サクラが先に帰った後、残ったウメ子は、今夜、あの人が太郎の事が好きだと言う事が分かったので、よけいに闘志を持ったと打ち明ける。

太郎は、弓矢に電話して面会を申込み、7時に「つるかめ」と言う店に来るよう言われる。

その店に来て弓矢と対面した太郎は、接待する女将のつる子(久慈あさみ)から、自分もこの店が3年前に潰れかけた時、弓矢に助けてもらったのだと聞かされる。

自分には子供が二人おり、やはりお金のある人の方が好きだとも。

それを聞いていた弓矢は、自分は本来ケチなのだと謙遜する。

そして、太郎がまだ26才だと聞くと、うちの会社に来ないかと誘い掛けて来る。

サラリーは10万、いや15万出そうと言うではないか。

しかし、その言葉に立腹した太郎は、サクラの事は諦めないと言い残し、その場を立ち去る。

その後、サクラの自宅前にやって来た太郎は、家から追い出されて来る見知らぬ中年男の姿を見る。

どうやら、その人物が、8年前に家出したと言うサクラの父親(三井弘次)らしい。

その父親を誘って、近くの屋台で飲みはじめた太郎は、これまでの自分とサクラのいきさつを残らず打ち明けるのだが、聞いていた父親は同情するどころか、金持ちと結婚する事を選んだ娘の賢明さを誉める。

そして、二度と娘の前に現れるなと太郎を追い払いながらも、屋台の勘定だけは払って行けと嫌らしい事を言う。

すっかり落胆して帰る太郎は、ちょうど銭湯から帰って来たサクラと母親にばったり出会う。

太郎の姿を観た母親は、まだしつこく娘につきまとっていると怒り出し、持っていた洗面器で太郎の頭を殴りつける。

さすがに、痛さのあまり、その場にしゃがみ込んでしまった太郎の姿を観たサクラは慌て、怪我の治療をするため家に行こうと言い出す。

母親は猛反対するが、ちょうどそこにやって来た父親が肩を貸す事になり、四人は家に戻る。

玄関前まで来ると、父親は二度と家に入れさせないと母親が追い出そうとするが、成りゆき上、四人とも部屋に上がり込む事になる。

怪我の手当てをしてくれるサクラの手を握りしめる太郎だったが、母親は頑固に、二度と娘に会わないでくれと言い渡す。

父親も同調し、この男を外に追い出してくれと言う母親に対し、じゃあ、俺を父親と認めるんだなと確認する。

太郎は開き直り、さあ殴れと言うし、それを真に受けた母親は帚を持ち出して、本当に殴ろうとする。

サクラは、もう諦めてと太郎を説得するだけだった。

後日、ウメ子とドライブに出かけた太郎は、早くあなたと結婚して1000万円もらいたい。父親は血圧が高くて、いつぽっくり行くか分からないとウメ子から迫られ、キスする。

やがて、二人の婚約は成立し、ウメ子と母親、太郎と山盛社長、そして肝甚要社長を交えた5人で一席設ける事になる。

その席でも、肝甚要は1000万の話になるととぼけはじめるが、太郎は、自分はウメ子に事が好きなので、1000万をもらわなくても結婚すると心にもない事を言い切る。

しかし、同席したウメ子とその母親は、1000万もらわなければ承知できないと、金の事ばかり肝甚要に要求するので、その姿を観ていた太郎はがっかりしてしまう。

肝甚要は、そんなウメ子と母親に、1000万の現金はない。株で儲けようとして大損してしまったのだと打ち明ける。

100万円で良かったら明日にでも渡せるが、その代わり、自分との縁を切ってくれと言う。

その一部始終を目撃し、気分が滅入ってしまった大盛社長は、太郎を誘ってその場を去る事にする。

その太郎に、ウメ子が、大切な話があるので、新宿の喫茶店で待っていてくれと耳打ちする。

帰り道、大盛社長は、例え100万でも、会社に融資してくれれば…と未練がある様子。

やがて、太郎は一人で公園に出向く。

偶然、そこは、サクラから別れ話を持ちかけられた公園だった。

気がつくと、そこに当のサクラもいるではないか!

太郎は、サクラに近づくと、何か後悔しているような様子の相手に、二ヶ月前、この公園で諦めろと行ったじゃないかと責める。

もう止めて!と遮ろうとするサクラに、幸せにね…と言い残し立ち去る太郎。

残されたサクラは独り泣きはじめる。

喫茶店に入った太郎は、店員から手紙を渡される。

それは、ウメ子からのもので、そこには、自分は悪い女だった。100万円受取って一番好きな人と結婚する。太郎は二番目だったと書かれてあった。

一番好きな相手とは小説家の卵だとも。

太郎はまる子の店に出向き、その手紙を読ませる。

その日の出来事を聞いたまる子は、サクラにサヨナラと言ったのねと確認する。

実は、今や弓矢とサクラは関係なくなったのだと言う。

何故なら、サクラの両親が欲を出して、何百万も弓矢に吹っかけたからだと言う。

慌てて、要求を五分の一に値下げしてみても、もう弓矢は聞く耳を持たなかったらしい。

それを聞いた太郎は、公園で会ったサクラは、何かを言いたそうだったと思い出す。

サクラを本当に幸せにしてやれるのはあなただけよと、太郎に言い聞かせるまる子。

その後、サクラの家に向った太郎は、夢破れた母親が「女の一生を台なしにして!」と父親につかみ掛かっている現場に出くわす。

サクラの事を聞くと、家出したと言うので、太郎は、自分が必ず探し出して結婚すると言い残して家を後にする。

町中を探し回った太郎は、独り淋しげに公園のブランコに乗っているサクラを発見する。

近づいた太郎は、思わずサクラを抱き締めるのだった。

サクラもその気になり、二人はキスをしようとするが、その時、近所を巡回中だった警官から怪しまれ、懐中電灯の光を向けられてしまう。

ちょっと水を差された二人だったが、天国に行こうと言う太郎の言葉につられ、サクラは太郎と手を繋いで交差点に差し掛かる。

そこで、夢心地の二人は、うっかり赤信号の歩道を渡りはじめ、走って来た車にはねられてしまう。

仲良く、救急車に乗せられ、病院に向う中、ベッドに横たわったサクラは、横に同じく寝ている太郎に、これが私たちの天国なのね…と呟く。

太郎は、そんなサクラの手をぎゅっと握り返すのだった。

サラリーマン小説等で人気作家だった源氏鶏太の小説を映画化した風刺コメディ。

世の中の幸せは全て金で買える…と言う、いわば本音を言い出した恋人に翻弄される貧乏サラリーマンのドタバタを描いたものだが、通常、へたな女性がその手の本音を言ってしまうと、たちまちヒール(悪役)みたいに観客には感じるものだが、本音を言うのがメチャメチャ可愛い時代の星由里子と言うのが、この作品の救いになっている。

本当に、この映画での星由里子は輝くばかりに可憐で可愛らしい。

何を言っても憎めないし、風刺劇としての「洒落」になっている。

坂本九ちゃんは、いつもの底抜けに明るいキャラクターではなく、かなりシリアスな演技をしている。

だからドタバタ映画のように底抜けに楽しい…と言う雰囲気にはならないのだが、じんわり楽しめる内容になっている。

「ああ、そう…」が口癖の金持ちを演じている平田昭彦を面白い。

松林監督は、平田昭彦がかなりお気に入りだったらしく、あれこれ作品に登場させているが、この作品でのキャラクターはハマリ役の一つだろう。

重要な役所のまる子を演じている市原悦子も、この当時は若々しく魅力的。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

有島一郎は「アリモリ君〜」シリーズで坂本九の父親を演じている馴染みの間柄。

浪花千栄子と三井弘次の夫婦は、まさに芸達者同士のコンビといった感じで、リアルな庶民像を見事に演じている。

星由里子に対する浜美枝の存在も貴重。

見た目、庶民派風に見える星に対し、どちらかと言えば浜美枝の方がドライに徹しきれる女性のタイプに見えるので、本作での役所もぴったりと言う感じ。

この時代の浜美枝は、どの作品でも奇妙な帽子を被っているのが、今観るとおかしい。