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アワモリ君売出す

1961年、秋好馨原作、新井一脚本、古沢憲吾監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

立花チャームスクールの教室では、講師(塩沢とき)が生徒たちに、男を悩殺するウィンクの仕方を教えていた。

もっともっと女らしい女を作るのが、この学校のモットーだった。

その学長室では、学園長の立花つや子(沢村貞子)が、新しく作る寄宿舎の建設計画を、依頼している建設会社の土地原(並木一路)から聞いていた。

寄宿希望者は60名。

ところが、その模型の一角に凹みがあるのを発見、理由を尋ねると、建設予定地に、一軒だけ、いまだに立ち退きを拒否している家があるのだと言う。

つや子は、そんなみっともない建物は認められないので、何とか、その立ち退きを完了するように、土地原に命ずる。

すぐさま承知した土地原は、学園長を食事を誘うが、秘書の加代子(森山加代子)から、その日のびっしり詰まったスケジュールを確認するつや子から、体よく断わられる事になる。

世田谷区のとある商店街にある「アワモリ洋品店」が、その立ち退きを断固反対している問題の家だった。

その「アワモリ洋品店」の店先で、品物を迷っている風の男女の相手をしていたアワモリ一(有島一郎)は、その二人が何か焦げ臭いと言い出したので、慌てて店の奥にある台所へ飛んで行く。

しかし、コンロに火がついていた様子はなく、不思議に思って店先に戻ってみると、先ほどの男女の姿とともに、そこに置いてあった品物がごっそり消え失せていた。

計画的な万引きだった。

そこに帰って来たのがアワモリ九(坂本九)、親父のミスを知ると、やっぱり家庭と仕事の両立は無理だと言い出し、カバ山の親父が嫁さん探してやると言っていたと教える。

その後、又アワモリが出かけた後、店に訪ねて来たのがカバ山大学(ジェリー藤尾)の両親で、漫才師夫婦のカバ山万三(丘窮児)と女房のよろめき(都家かつ江)だったので、嫁探しの話を持って来てくれたと早合点した一は、照れながらも、二人を丁重に奥の部屋に迎え入れる。

しかし、二人がやって来た話と言うのは、最近、この辺り一帯にアパートが建つので、土地を売ってくれと言われた近所の家が、もう立ち退きを決めたらしいと言う話だった。

自分の早合点にがっくり来ながらも、この土地は戦争も震災の時も頑張って守って来た場所だから、売る訳には行かないよときっぱり答える。

その後、万三とよろめき夫婦が訪れた先は、土地原建設の社長、土地原の部屋だった。

実は二人は、土地原からの依頼で、一を説得して土地を売らせれば、仕事の面倒を観てやると言われてやったのだ。

その二人が役に立たなかった事を知った土地原は、山田と言う社員に電話を入れ、強行手段を取るよう命ずる。

翌日、店を開けようと表の引戸の所に来た一は、唖然とする。

その後に起きて来たアワモリ君が、どうしたのかと聞くと、入口の前にブルドーザーが置いてあって、人の出入りが出来ないようになっていると言う。

九は、建設会社の嫌がらせと気付き、引戸とブルドーザーの隙間から外を観て、やって来た婦人客に、店は開いていると教えるが、お探しの品はこれですか?と大きなパンツを広げてみせたものだから、婦人客は怒って帰ってしまう。

これではいけないと考えたアワモリ君は、訪問販売に出掛けると言い出す。

店の品物を背中に背負ったアワモリ君は、ちょうどフォークダンスを楽しんでいた農家の娘たちの輪に近づくと、軒先きに品物を広げて披露しはじめる。

娘たちは興味を持って、アワモリ君の廻りに集まって来る。

その後、大学がアワモリ洋品店にやって来る。

ちょうどそこに、野菜をたくさん抱えたアワモリが帰って来る。

全部品物は売れたが、金の代わりに野菜と交換したと言うのだ。

さすがに、アワモリも失敗したと感じたのか「ドーモ、もーしわけない」と自ら口にする。

今度は、大学と二人で、路上販売する事にするが、地元のチンピラ(二瓶正也)に囲まれ、二人は殴られてしまう。

アワモリは、怪我で寝込んでしまい、頭を冷やすために、大学が氷を買って洋品店に持って来る。

そんな息子の姿を観て腹にすえかねた一は、建設会社に嫌がらせまでさせて寄宿舎を作ろうとしている立花チャームスクールに乗り込む事にする。

チャームスクールの校舎内に入った一は、通り過ぎる生徒たちが、全員、彼に向って意味ありげなウインクをして来るのでどっきりしてしまう。

その途中、アワモリ君の友達で、今はこの学園長秘書をしている加代子(森山加代子)に出会う。

園長室では、ちょうど、つや子が美容体操に励んでいる所だった。

その部屋に案内され、つや子の顔を観た一はびっくりする。

それは、幼馴染みのつたちゃんだったからだ。

つや子の方も、一の顔を観ていっちゃん?!と驚きの声をあげる。

その頃、土地原と学園理事の一人(佐田豊)は、チャームスクールの理事長の地位を狙おうと画策していた。

一とつや子は、子供の頃、一緒に大磯に行った昔話に耽っていた。

一は、その頃から、つや子の事が好きだったのだが、恥ずかしくて言い出せない。

一方、洋品店の奥の部屋で食事をはじめたアワモリ君、大学も一緒に食べたいと言うので、猫用に作っておいたネコマンマを食べさせるが、大学は気付かない。

つや子は、一君が私に蛙をぶつけた事があると言い出すが、それを聞いていた一は、それをやったのは田中だとぶ然とする。

しかし、つや子の方も譲ろうとせず、互いに意地の張り合いから、とうとう口汚く口げんかをはじめ、怒った一は奮然と席を立って、学校を後にする。

家では、アワモリ君が「池田首相はなぜ嘘をつかないか」と題された雑誌を読んでいた。

そこに一が帰って来るが、何故か意気消沈している。

翌日のチャームスクールの授業では、講師が、今日はセクシーボイスの出し方を教えると言いながら、放送室に合図をするが、流れて来たのは、園長室から聞こえて来るつや子の唄う歌声だった。

生活に貧窮したカバ山家には、税務署の人間がやって来て、近々差し押えをすると予告していた。

万三は、そんな中、狸寝入りを決め込んでいたが、税務署員が帰った後、よろめきは、最近仕事がないと嘆くのだった。

洋品店に遊びに来ていた大学は、一に対し、嫁をもらえば良いじゃないかと、無責任な事を言っていた。

大学はその後、「歌のコンクール勝ち抜き合戦」に出場し、チャンピオンの美代ちゃん(渡辺とも子)に挑戦する三人目のチャレンジャーとして登場し、見事に金を鳴らして勝ち残る。

その頃、よろめきと万三は、自分達の結婚25周年のお祝を一緒に祝ってくれと、一の店にケーキを持って来ていた。

実はそれは、一に結婚の良さを再確認させるための二人の作戦だったのだが、その芝居をしている内に、段々二人とも本気になってしまい、甘いムードに浸りいちゃつきはじめる。

バカバカしくなった一は、そんな二人にお茶の代わりに熱冷ましの薬を飲ませるのだった。

そんな中、アワモリ君がテレビのスイッチを入れると、そこには二人抜きに成功した大学の姿が映し出されていた。

後日、まだ赤ん坊の弟を抱いてあやしていた大学の元にやって来た加代子は、ボディガードをやらないかと誘う。

ある日、いつものように、チャームスクールの園長室に来た土地原が、つや子の事を口説きはじめると、その甘い囁きがそのままレッスン室のスピーカーから流れて来たものだから、生徒たちは皆おかしそうに笑う。

その頃、加代子は遊園地で落ち合ったアワモリ君に、学園長の恋の話を聞かせ、一との喧嘩をまとめてやりたいと提案する。

その作戦に協力する事にしたアワモリ君は、父親が書いたように見せかけた学園長への謝罪の手紙を自分で書いてしまう。

一方、加代子の方も、学園長から一へ書いたように、偽の手紙を彼女が書いていた。

その手紙を受取った二人は、その手紙が偽物とも気付かずに、互いに、再び相手への愛情を感じはじめるのだった。

すっかり機嫌を直したつや子は、来客にオールドパーを出すように加代子に命ずる。

一の方もすっかり浮かれてしまい、やって来た税務署員にまで愛想を振りまく始末。

一は、手紙に記してあった日にチャームスクールのつや子を訪ねる。

ムードを高めるため、放送室にいた加代子はファンファーレを流して、一を出迎えると、後は学園長からの指示通り、室内にムード音楽を流しはじめる。

園長室にやって来た一に、コーヒーを運んで来た加代子は、二人が良い雰囲気なのを観て、作戦が成功したと喜ぶが、二人きりになったつや子と一は、互いに手紙をもらって嬉しかったと言い出し、自分は出してないと否定した事から話がねじれはじめ、加代子も、うっかり軍艦マーチ等かけてしまったものだから、またまた互いに譲らず、喧嘩になって、一は怒ったまま帰ってしまう。

その日以来、一は、やって来た客には不機嫌な態度を取るようになり、見かねたアワモリ君は、自分が店番をしてやると申し出る。

何せ、もう三日間も売上がないのだ。

一方、学園長室には、加代子が大学を連れて来て紹介していたが、一応、ここは男子禁制だからと注意する。

そこへ土地原がやって来たので、応対したつや子は、寄宿舎建設は止めるつもりと打ち明ける。

土地原は、立ち退きに最後まで反対しているアワモリ洋品店の悪口を言い出すが、それを聞いた学園長は、反論するのだった。

そこに、つい立ての後ろから窮にクマが出現したので、土地原は驚愕して逃げ出してしまう。

そのクマは、大学が中に入った着ぐるみだった。

その後、大磯ロングビーチで、チャームスクールと、人気グループのパラダイスキングを使ってショーをやろうと言う計画が立ち上がったので、つや子直々に、生徒たちにポーズの取り方を始動しはじめる。

そんなチャームスクールに、しつこく土地原がやって来たので、加代子が追い返そうとし、又、大学が入ったクマが出て来るが、同じ手は二度通用しないとみえ、土地原は、花瓶をクマにぶつけ、俺は一度目標を見つけたら外さない男だと捨て台詞を残し、怒って帰る。

アワモリ一の元には、10万円の催促状が税務署から来ていた。

しかし、商売が上がったりでは、払うに払えない。

そんな沈んだ一の目を盗んで、加代子がアワモリ君を裏口に呼出すと、今度、学園長が大磯に行くので、一もそこに呼出して会わせようと相談する。

それは名案と、帰って、一に大磯に行こうと誘うが、一は、たまたま読んでいた新聞に、大磯でつや子のファッションショーがある事が書いてある記事を見つけ、行かないと言い出す。

その頃、こちらも仕事がなく困窮して困っているカバ山万三は、土地原の所に頭を下げに行くが、かえって、怒鳴り付けられるだけだった。

翌日、加代子がアワモリ君を迎えに来るが、一は行かないと言うので、睡眠薬を飲ませて眠らせているので、そのまま自動車に乗せて行こうと言う。

結局、大学とアワモリ君は、一をモデルたちが乗ったバスの中に運び込み、大磯へ出発する。

加代子の方は、つや子を乗せたオープンカーで随行する。

そんな一行の到着を車で待ち受けていた土地原は、やって来たバスにぶつけろと運転手に命令し、バスの側面に車を押し付けはじめる。

アワモリ、大学、モデルたちを乗せたバスは、ガードレールに押し付けられ、すぐ横の崖を観たモデルたちは恐怖に顔をこわばらせる。

しかし、やがて、「パン!」という音とともに、土地原の車のスピードが急速に落ちはじめる。

パンクをしたのだった。

そんな土地原の車の横を、何も知らないつや子と加代子のオープンカーが追い抜いて行く。

大磯ロングビーチのインドアプールで「1961年度水着ショー」が始まる。

坂本九とパラダイスキングの歌が、プールサイドで披露され、それを、まだ眠っている父親一を隣に座らせたアワモリ君も見物していた。

その歌が終わった時、一が寝ぼけて起きだし、プール際をよろよろ歩き出したので、止めようと駆けつけた大学の方が、一を捕まえ損ねてプールに落ちてしまう。

そのまま、外に出てしまった一を追ってアワモリ君も外へ飛び出すが、坂本九ちゃんと間違われて、女の子たちに取り囲まれてしまう。

一方、廊下で、坂本九に出会った加代子は、アワモリ君だと思って話し掛ける。

すっかり、九ちゃんと間違われてしまったアワモリ君は、パラダイスキングが待ち受けていた、先ほどのインドアプールへ連れ戻され、「今日は土曜日」をメンバーたちが唄いはじめるが、アワモリ君に歌えるはずもない。

そこへ、本物の九ちゃんが現れ、ようやく歌が始まる。

その頃、加代子は、大学の両親、万三とよろめきが来ているのを見かけ声をかけると、今日は久々に漫才で呼ばれたので手品漫才をやろうと思っていると、手品用のピストル等見せながら言う。

そんな休憩所にアワモリ君がやって来たので、加代子は、又、坂本九じゃないのかと迷う。

眠り薬から醒めかけ半分ぼんやり歩いていた一は、加代子から弁当はここでと指定された場所で一人待っていたつや子と再会、二人とも、これまでの行動を恥ずかしがりながら、一緒の席に座る。

その頃、遅れて大磯に着いた土地原は、休憩所に置いてあった万三たちの小道具ピストルを盗み取るっていた。

つや子が、用意されていた弁当の包みを広げると、その中に、一とつや子の想い出の写真が貼っておる懐かしいアルバムが入れてあるではないか。

それは、もちろん、加代子が入れたものだったが、二人はそのアルバムを観ながら、自然と肩を寄せあうのだった。

そんな二人の様子を、加代子とアワモリ君は陰から観ていたが、そこに現れたのが土地原。

土地原は、二人に向って発砲するが、銃身から飛び出て来たのは、万国旗だった。

後日、立花チャームスクールでは、学園長のつや子が、生徒たちを前に、新しい理事長を紹介していた。

その理事長とはアワモリ一であった。

そんな父親の姿を、招かれて出席していたアワモリ君も嬉しそうに見ていたが、挨拶に立った一に向い、生徒たちが一斉にウインクすると、アワモリ君も又、父親に向ってウインクするのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

秋好馨の漫画「アワモリ君」の実写化で、当時アイドルだった坂本九が演じたシリーズ第一作。

たあいない内容だが、この第一作を観ていないと、後に続くシリーズの基本設定が良く分からない部分もあり、そう言う意味では貴重な作品。

アワモリ君は、早くに母親を亡くし、父親の一と二人で「洋品店」を営んでいる事。

アワモリ君の友人、カバ山大学の両親は漫才師夫婦である事などは、この作品を観てはじめて知った。

この作品のラストで、一はチャームスクールの理事長になっているが、これはこの作品だけの話のようで、二作目以降はそう言う設定にはなっていない。

後半の大磯ロングビーチでの見せ場と言えば、坂本九がアワモリ君と本物の坂本九の二役を演じている事。

特に、合成等を使ったような大袈裟なものではなく、衣装を替えてシーンごとに入れ替わっているだけ。

森山加代子が劇中で唄う「♪ラ〜メちゃんたらギッチョンチョンでパイのパイのパイ♪」など、意味不明で懐かしい曲目「東京節」も楽しい。

ちなみに、この「東京節」と言う曲は、「大きな古時計」でおなじみのH・C・ワークの曲に、添田さつきと言う日本の演歌師が、独特の詩を付けて大正期に流行らせた曲だったようで、確かに、エノケンが唄っているのも、何かの映画で聞いた覚えがある。