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ROBO☆ROCK

2007年、「ROBO☆ROCK」製作委員会、竹内利光+渡辺雄介脚本、須賀大観原案+監督作品。

※この作品は新作ですが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、御注意下さい。コメントはページ下です。

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運なんて、神様が人間を鉄砲に詰めて、的を狙っているようなもの。

的に当りャ幸運な人生、外れりゃどん底。

俺の人生、的の端をかすってくれるくらいでも良いんだが…。

便利屋マサル(塩谷瞬)は、今日も、女物のパンツを盗むと言う奇妙な依頼を遂行するため、とある外国人夫婦のマンションのベランダに忍び込んだは良いが、その現場をまともに夫婦に見られたため、必死に逃げ回っていた。

ゴミ箱に身を隠し、何とか夫婦の追跡をかわしたマサルは、仕事の斡旋屋イブセ(遠藤憲一)の待つクラブに行って、盗んで来たパンツを見せるが、イブセはダメだと言う。

熟女下着マニアの依頼人(我修院達也)が求めていた獲物は「塾女の(ださい)パンツ」であって、今風の「パンティ」ではないと言う。

確かに、指定されたベランダには、ださいパンツが干してあった事をマサルは思い出していた。

「パンツ」と「パンティ」の違いすら良く分からない マサルは、今回で37回も仕事に失敗しており、又しても金を取り損ね、がっくりしてカウンターに座ると、その役立たずのパンティをバーテンに見せる。

すると意外にもそのバーテンは、疲れた時には女装に限ると妙な事を口走り、そのパンティをあっさり受取るのだった。

そんなマサルの横に、血まみれの右手が差し出される。

同じ便利屋仲間のコウ(本多章一)が腰を降ろし、酒を注文したのだった。

コウはマサルと違い、悪名高い斡旋屋αトム ( 鮎貝健)、βトム (デニス・ガン)と言うトム兄弟が持ちかけるヤバい仕事を中心にやっている男だった。

今日も、見知らぬ相手を半殺しにすると言うヤバい仕事を終えて来た所らしい。

そのトム兄弟がコウの側にすりよって来たのを見たイブセは、この店は人と地球に優しい店なんだから、お前らのような連中は出て行けと凄んで追い返す。

しかし、トム兄弟は、コウやマサルに、おれたちの方が金になるぞと囁きかける。

コウの車に乗せてもらって帰る事にしたマサルは、コウが、自分の稼ぎの中からマタルに金を渡そうとしたので、思わず断わる。

必要な事以外はめったに口を開かない無口なコウだったが、マサルとはウマが合う友達だったからだ。

何時までこんな仕事を続けるつもりなんだと、マサルが心配して聞くと、コウはボソリと「死ぬまで…」と答えるだけ。

マサルは、一種類の絵柄しか彫れない奇妙な刺青師キリコ(美波)の店「バーバレラ」に同居している。

彼女の練習台になったのは、マサルの尻だった。

そんなマサルの元に、一本の電話がかかって来る。

仕事があると言うのだった。

外で出会った依頼人は、江戸川区の環境防災課で働いているニラサワ(中山祐一郎)と名乗り、話は自分の家でやりたいと、マサルを下町の自宅に連れて行く。

二階に招かれたマサルは、その部屋に集められたブリキの玩具などに目を奪われるが、その隙に、後から部屋に入って来たニラサワは、何故か扉に鍵をかけてしまう。

不審に思ったマサルに、ニラサワは、何かに取り付かれたような目つきで話を始める。

何と、身長25m、体重420トンの巨大ロボットが50年も前から存在しており、音声認識で動くそれを起動させるためには、マサルの声が必要なのだと言う。

マサルは、明らかに常人とは思えないニラサワの態度にビビりながら、どうやって自分の声を探し出したのかと、恐る恐る聞き出してみると、マサルが昔、ロック歌手を目指して、音楽事務所に送ってその後捨てられたカセットを見つけだし、その声の主を求めて、ニラサワはあらゆるマサルの日常生活の声を盗聴行為で収集したと言う。

それを聞いたマサルは、さすがに逆上して、ニラサワに飛びかかり、鍵を奪うと、自分のカセット奪って部屋を飛び出してしまう。

自宅に帰りついたマサルは、ベッドに横になるが、持って来たカセットを見ていると、ついバンドをやっていた6年前のことを思い出してしまう。

「♪俺は、声を出さない魚を喰わない」と、オリジナルロックを唄ってプロを目指していたが、どこの会社からも相手にされず、いつしかバンド仲間も離れて行ったのだった。

マサルは、夢を追っていた日々のことを忘れるように、カセットをゴミ箱に投げ捨てるのだった。

ある日、いつものように、クラブにやって来たマサルは、トム兄弟から何かを注射された直後、床に倒れたコウを見かけて駆け寄る。

危険な新薬の人体実験の役目を引き受けたらしい。

怒ったマサルは、そんな仕事をコウにやらせたトム兄弟に言い寄るが、逆に殴り倒されてしまう。

トム兄弟は、倒れたコウの背中に報酬の札束を投げ捨てて帰って行く。


その後、何とか体調が回復したコウと一緒に、馴染みの定食屋で飯を喰う事にしたマサルは、こんな危険な仕事をしていても先がない。お前が仕事を辞める気なら、俺も一緒に辞めるとコウに説教するが、コウは返事をしない。

その店には、ペルーから来たばかりで、まだ日本語が得意でないと言うかわいらしいウエイトレスが働いていたが、どうやらコウは、その子の事が気になっている様子。

独り帰宅したマサルは、キリコが床に倒れている姿を発見、驚いていると、自分も、部屋の隅で待ち受けていたニラサワから怪しげな噴霧器を浴びせられ、気絶してしまう。

気がつくと、マサルは、がんじがらめに縛られて、ニラサワのあの家の二階に転がされていた。

横には、口にテープを貼られたキリコも、同じように縛られて転がされているではないか。

横にいたニラサワは、間違えてキリコに睡眠薬を吹き掛けたので、一緒に連れて来てしまったのだと言う。

ニラサワは、前と同じように、一人で、自分と巨大ロボットとの出合いを熱く語りはじめる。

子供の頃から、ロボットに夢中だったニラサワは、いつかそんな巨大ロボットと出会えるのではないかと、工事現場などをうろつく毎日だったが、大人になるまで、そんな機会は一度として訪れなかった。

ところが、子供時代から度々通っていた航空科学研究所の展示を観終えたニラサワが、3年前のある日、終了時間になったので帰りかけると、呼び止める老人があった。

彼は、度々ここを訪れているニラサワが異様に機会工学に興味を持っている事に気付いており、話し掛けて来たのだった。

その老人の自宅である自転車屋に連れて行かれたニラサワは、そのタタラジマ博士と名乗る老人(うえだ俊)が、元は科学者だったと教えられる。

彼は、戦時中にすでに、来るべき宇宙人を撃退するために、オーバーパワー計画と言う作戦を実行し、「ランドツェッペリン」と言う迎撃用巨大ロボットを完成させていたと語り、その証拠写真も三枚見せてくれただけではなく、ニラサワに、隊員バッジまで胸に付けてくれたと言うのだ。

さらに、巨大ロボットの証拠品として、そのロボットに使ったのと同じネジを一本くれたと言いながら、ニラサワは、畳に転がっているマサルに、そのネジを見せる。


しかし、聞いていたマサルは、そんな老人の話など、100%嘘に決まっていると断じるが、相変わらず、ニラサワは聞く耳を持たないどころか、侵略して来るのは土星人が怪しいのではないかなどと真剣に悩んでいる。

取りあえず、キリコの縄をほどかせて、二人で仕事を引き受けるかどうか相談する振りをして、逃げ出そうと考えたマサルだったが、驚いた事に、キリコは、せっかくのチャンスなので、思いきりふっかけようと小声で囁いて来る。

ニラサワに、これで仕事を引き受けると片手を広げたキリコを見て、さらに驚いた事に、ニラサワは、それを5000万と解釈し、何となすると答える始末。

片手の意味は50万だとばかり思い込んでいたマサルも、500万だと思っていたキリコもこれには呆然となるばかり。

それでも、今すぐ全額は払えないのでの言いながら、ニラサワから手付け金を渡されたので、二人は黙って引き下がるしかなかった。

その後、大金が手に入る事が分かり、すっかり有頂天になったキリコは、例のクラブで酒を浴びるように飲みはじめ、泥酔状態になるが、そんな姿を見ていたマサルの方は呆れかえってしまう。

そんなコウは、店内を見渡している内に、又、コウが、トム兄弟と何か打合せをしている姿を見かけ、注意をしようと近づいて行く。

マサルの姿を見たトム兄弟は、今回は簡単な仕事で、ジャニーズ・ジョプリンのレアもののレコードをしばらく預かって、指定の日時にある人物に渡してくれるだけで良いのだと言う。

そんな話をしている席に、酔ったキリコが興味を示して近づいて来たので、マサルは慌てて追い返す。

そんな簡単な仕事なのだったら、自分でやれば良いではないかとマサルが突っ込むと、自分達は財務省税務局に目を付けられているので動けないのだと言いながら、レコードをコウとマサルの前で再生させながら、その本当の正体を明かす。

実は、そのレコードに吹き込んである謎の言葉は、「ハープ」と言う新種の麻薬の使方法で、レコードの表面に薬が塗り付けてあるのだと言う。

結局、ヤクの運び屋じゃないかと憤るマサルを他所に、コウは引き受けると言い出す。

それを聞いたマサルは、自分も一緒にやると答えてしまう。

トム兄弟が車で帰った後、今度の仕事はヤバすぎて、命を落とすかも知れないぞとコウに注意するが、コウは、それならそれでも構わない。生きていて、何か意味あるのか?と無表情に答える。

マサルは、レコードの入ったケースを自宅に持ち帰り、戸棚の中に隠すのだが、昔、瓶に入れたままにしてあるエレキのピックをじっと見つめると、夢を追っていた昔のことを又思い出してしまう。

後日、イブセに仕事を辞めたいと申し出、説教されていたマサルは、新入りだと一人の男を紹介される。

見ると、その新人とは、あのニラサワであった。

この仕事の正体を知っているのかと聞くと、承知しているし、マサルたちに支払う金を作るためにやるしかないのだとニラサワは平然と答える。

ニラサワは、イブセが差し出した仕事のリストを、全部自分が引き受けると言い出す。

どれを観たマサルは、負けじ魂に火がつき、自分も仕事を引き受けると言い出すが、いざ、二人でコンビを組んで仕事をやると、マサルが失敗する事でも、ニラサワは全て巧く成功してしまう事に気付く。

新人に差を付けられ、ちょっと落ち込んだマサルに、ニラサワは「言葉で表現できなくなった時 音楽が始まる」と言うドビュッシーの言葉を教えるのだった。

一方、一人で定食屋に来ていたコウは、スペイン語の本を携えていたが、なかなかウエイトレスに話し掛けるチャンスを持てないでいた。

そんなある夜、自宅に戻っていたマサルの元に、イブセから電話が入り、ニラサワがトム兄弟の新薬の人体実験を引き受け、倒れて入院したと知らされる。

マサルは、病院に見舞いに行く事にする。

病室で寝ていたニラサワに、どうしてそこまでできるんだと疑問をぶつけるマサル。

すると、ニラサワは、金を作るため、もうすぐ家を売ろうと思うが、自分にはもっと大切なものがあるからだと答える。

ワタルは、老人から聞いた話など、騙されているに違いないと説得する。

しかし、ニラサワは、自分も疑った事がない訳ではないが、老人からもらったネジを観ていると、そんな疑問は吹き飛んでしまう。君にはそんなものはないのか?と逆に聞いて来る。

マサルは、瓶に入れたままにしているエレキのピックのことを思い出していた。

そんなマサルの心を見透かしたかのように、ニラサワは、マサル君には歌があるのに、どうして便利屋などをやっているのかと尋ねる。

翌日、マサルは、コウと一緒に、預かったレコードケースを売人の待つ倉庫に、車で運んでいた。

倉庫の入口に着いたコウは、一緒に入ろうとするマサルを押しとどめ、一人でレコードケースを持って中に入って行く。

倉庫で待っていた売人たちは、スペイン語でしゃべっていたが、コウが運び屋だと知ると、黙ってレコドケースを受取り、中を確認する。

ケースの中は空だった。

車で待っていたマサルは、倉庫の中から発砲音を聞き、慌てて降りるが、そこに、腕を撃ち抜かれたコウを掴んだ売人たちが出て来る。

レコードケースの中が空だったと聞かされたマサルは、訳が分からなかったが、コウを人質に取られている以上、急いで家に探しに帰る事にする。

その頃、退院したニラサワも、マサルの行方を探し回っていた。

一方、クラブでは、トム兄弟から、問題のレコードをイブセが買取っていた。

イブセは、南米の客が高く買ってくれる事になったので、自分が横取りする事にしたのだった。

そこにやって来たマサルは、その光景を目撃して、はじめて自分がはめられた事に気付く。

夕べ、イブセがマサルに電話して、ニラサワの病院に向わせたのは、家を空にさせる罠だったのだ。

マサルが出かけた後、イブセと一緒に車で近くにいたトム兄弟は、こっそり家に忍び込み、マサルが棚に隠していたレコードケースを発見すると、中のレコードを抜き取っていたのだった。

イブセには、秘密を知ったマサルは捕まり殴られ、縛り付けられた後、トム兄弟らと共にクラブを立ち去る。

さらに、ついにランドツェッペリンを見つけた!と叫びながら、ニラサワがやって来る。

しかし、そこへ、何故か舞い戻って来たイブセとトム兄弟、ハープを何時すり替えたとマサルに迫って来る。

彼らが持って行ったレコードは、全く別物だと気付いたのだった。

しかし、聞かれたマサルにも訳が分からなかった。

そこへ、コウを連れた南米のギャング一味が乱入して来て、イブセらと銃撃戦が始まる。

コウが、秘かに勉強していたスペイン語が役に立ったらしい。

ニラサワとコウは、縛られていたマサルを助け出して逃げ出そうとするが、その時、イブセが放った銃弾がコウの背中を撃ち抜く。

コウは、定食屋のウエイトレスに告げるはずだった言葉を呟きながら、マサルの目の前で息絶える。

イブセとトム兄弟は、ギャング団を全員射殺していた。

その間、一瞬の隙を観て、ニラサワはマサルを外に連れ出す。

車に乗り込んだニラサワは、ランドツェッペリンの場所へ行こうと、とある倉庫へマサルを連れて行く。

しかし、その中にあったのは、ランドツェッペリンのミニチュア三体だけだった。

呆然とするニラサワ。

そのミニチュアこそ、老人から見せられた写真に写っていたものだったからだ。

呆然と立ちすくむニラサワを、やっぱりなかったじゃないかと囁いたマサルは一緒に外に連れ出すが、そこに待ち受けていたのは、二人を追って来たイブセとトム兄弟だった。

マサルを撃とうと身構えたイブセの前に、この人は地球で一番大切なひと男だとと叫んで立ちふさがるニラサワ。

しかし、イブセは、そんなニラサワの胸を撃つ。

倒れたニラサワは、必死に、抱き起こそうとするマサルに、ランドツェッペリン起動せよ!と叫んでくれとい頼む。

マサルは、仕方なく、言われた通りに声を出してみる。

すると、突如、地響きが怒り、先ほど自分達が出て来た倉庫が崩れ落ちると、その中から、巨大なロボットが出現するのを目撃する。

銃を構えて近づいて来たイブセやトム兄弟も、その光景に立ちすくむだけ。

何時の間にか、マサルの横に立ち上がっているニラサワは元気そうだった。

イブセから撃たれた銃弾は、タタラジマ博士から胸に付けてもらっていたあの隊員バッジが受けとめていたのだった。

トム兄弟は、乗って来たイブセのライトバンを奪って、その場から逃走しようとするが、ランドツェッペリンがその前をふさぎ、ライトバンを掴むと、遠くに投げ捨てててしまう。

その間、イブセは、別の車に乗り込み、ニラサワとマサルを轢き殺そうと迫って来る。

マサルが、ニラサワから教えられたように叫ぶと、ランドツェッペリンの右手が離脱して、イブセの車の前に飛び出す。

イブセの車はその腕に激突して炎上してしまう。

その後、マサルの命令音声を全てテープに収録したニラサワは、スピーカーを通して、岸壁に立っていたランドツェッペリンに発信する。

飛行形態に変型したランドツェッペリンは、土星人撃滅のため、彼らが迫っていると思われる月に向って飛翔して行く。

その頃、キリコは、トム兄弟が侵入して来たあの夜、一足先に中身をすり替えて奪っておいたレコードを、古代店に持ち込み高く売ろうとしていた。

しかし、店主は、音楽ではない奇妙な言葉の入ったレコードなんかに興味を示さなかった。

おまけに、レコードの表面には白い粉のようなものが付着しているので、とても売り物にはならないと言う。

それを聞いたキリコは、癇癪を起こし、床にレコードを叩き付けて、踏み付けてしまう。

マサルは、定食屋のテレビで、月の表面で大爆発が起きたとのニュースを何気なく観ていた。

その爆発映像の中には、小さくランドツェッペリンらしきシルエットが映し出されていた。

それを観て勇気づけられたマサルは、おばさんが持って来た焼き魚定食を、俺はロッカーなので、泣かない魚は喰わないんだと断わると、ペルー人のウエイトレスに、コウが最後に呟いたスペイン語を伝えて店を出る。

神様は、人間を銃弾のようにライフルに詰め込んでを狙って運命を決める。

だったら、自分がその銃を奪って、自分で的を狙えば良いんじゃないか!

当った場所が、ど真ん中なんだ!

マサルは、楽器店に入り、エレキを掴むのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

もともと「ロング・アームド・モンキーズ」と題されて作りはじめられた作品。

いわゆる「巨大ロボットもの」だが、それと同時に、「夢を諦めるな」と言うシンプルなメッセージが込められた青春ものも合体されている。

アニメのような自在で軽やかな語り口で、快調に物語は展開して行く。

キャラクターたちの造型も各々巧くいっており、特に、一見危ないオタク青年に見えるニラサワの言動や行動は、夢を失っていたマサルだけではなく、観ているものたちにも喝を入れてくれる重要な役所になっている。

巨大ロボット登場のスペクタクルシーン自体は、そう長くないが、そこまでに至るストーリー展開が面白い。

基本的には低予算特撮ものだが、意外な拾い物に出会えたようなお得感と爽快感がある。