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続スーパー・ジャイアンツ
毒蛾王国

1959年、新東宝、宮川一郎脚本、赤坂長義監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

銀座の宝石店「日本堂」に、エンゼル学園の園長先生(山口多賀志)に連れて来られた園児の文雄(原聖二)と則子(中原栞)は、大人の買い物に退屈してした。

そんな所に入って来た男性客が女性店員(上野綾子)に、ダイヤの指輪を見せてくれと言い、出されたダイヤを品定めしている振りをしている隙に、もう一人の客が、何かを店員に投付け、倒れたのを見計らって、その指輪を強奪して二人とも逃げ出してしまう。

その犯人が投付けたのは、特殊な毒の付いた針で、この事件は白昼の毒殺魔事件として世間を震え上がらせる事になる。

しかし、その一部始終を目撃する事になった文雄は、エンゼル学園に戻ると、すっかり「少年探偵団」熱に取り付かれ、自分で毒殺魔を見つけだしてやると意気込んで、園児たちに吹聴し始めたので、聞いていた園長は、危ない事をしてはいけないと注意する。

警察では、毒の正体も分からず、取りあえずは、毒殺魔の背後には、大掛かりな組織を持った大集団がいるらしく、盗まれた宝石類は、海外に流れているらしい事だけを突き止めているに留まっていた。

そんな捜査主任(千葉徹)の報告を、真剣に聞いている川田刑事(御木基伸介)がいた。

ある夜、大きな鞄を持っていた男が謎の二人組に襲われ、倒れて鞄を奪われた直後の現場に、警戒していた川田刑事が気付き駆け付けて来る。

倒れた男には、やはり毒の付いた針が刺さっており、「怪しい二人組の男が…」と呟くのが最後だった。

その頃、園長先生の注意も聞かず、則子と二人で、町内で毒殺魔を見つけるべく、探偵の真似事をして張込んでいた文雄は、日本堂で見かけたのと同じ二人組の男を発見し、隠れてその様子を観察しはじめる。

一方、川田刑事の方も、探していた二人組の男に気付き、その後を追跡しはじめると、二人は開業医の「菱山病院」の中に消えたように見受けられた。

急いで、中に入り、出て来た佐藤看護婦(西朱実)に、怪しい二人組を観なかったと尋ねた川田刑事だったが、看護婦も、その後、出て来た医者の菱山(大原譲二)も、ここには、娘と看護婦と自分しか住んでおらず、他には誰もいないと言うのだった。

仕方なく道を戻りかけた川田刑事は、近くをうろうろしていた文雄と則子から「怪しい二人組を観た」と言う貴重な証言を得たと思った瞬間、怪しげな黒タイツ姿の集団に、子供二人と共に取り囲まれてしまう。

そこに現れたのがスーパージャイアンツ(宇津井健)で、あっという間に、賊を蹴散らしてしまう。

始めて会った川田刑事が、あなたどなた?と聞くと、スーパージャイアンツは名乗り、組織を粉砕しますと答えるのだった。

その秘密組織の本部の中、マスクをつけた団長らしき男が、強奪して来たバッグの中の宝石を取り出して、居並ぶ団員たちに見せる。

彼らは、ビアス革命団のメンバーで、近く来日するビアス国皇太子の暗殺を目論んでいた。

そこに、先ほど、川田刑事たちを襲った一団が戻って来て、スーパージャイアンツに邪魔をされたと報告する。

その後、毒の分析を依頼していた大学へ向った川田刑事は、山本教授(倉橋宏明)から、世界一古い王国と言われるビアスと言う国に、特殊な毒を持つ蛾が生息していると聞いた事があり、今回の毒殺魔が使っている毒は、その毒ではないかと言う分析結果を聞く。

その教授が言うには、ビアス人は猟でもその毒を用い、今、そのビアスでは革命が起きかけてて、内乱状態なのらしい。

さらに山本教授は、この毒に関しては菱山博士と言う人物が以前発表していたので、聞いてみたらと言う言葉を聞いた川田刑事は、その人物があの菱田病院の医者だった事を知る。

その後、その菱山を再度訪ね、今回の毒殺魔事件は、ビアス人の犯行ではないかと聞くと、実は自分にも思い当たる所があり、 最近、家の周囲に怪しげな人物が出没しているのだと言う。

菱山は、さらに、自分はビアス王国から預かった数千カラットのダイヤの飾りを持っていると明かし、そこに茶を持ってやって来た娘のみち子(星輝美)に部屋の鍵をかけさせると、室内にある金庫の扉を開け、ソの中にしまってあった二種類の首飾りを見せ、今後、この保護を警察にお願いしたいと川田刑事に頼む。

一方、エンゼル学園に大賀一平の姿で現れたスーパージャイアンツは、文雄に対し、もう探偵ごっこはしないね?と、やさしく注意するのだった。

警視庁に戻った川田刑事が捜査主任に、菱山邸を張込みたいと申し出ると、すでに、ビアス王国の皇太子が来日すると言う事で外務省の方からも警戒するように注意があったと言う。

その夜、書斎にいた菱山に茶を運んで来たみち子は、突然、部屋の灯が消えたので無気味がるが、突如、ドアが開いたかと思うと、覆面姿の男が二人入って来て、突然、菱山に向って発砲をして逃げ去る。

その直後、電気がつき、発砲音で駆け付けて来た佐藤看護婦も、左手を撃たれた菱山の姿を観て驚愕し、すぐに警察に電話を入れる。

大田町の菱山病院で襲撃事件があったとの知らせを受けた川田刑事は、すぐさま仲間と共に現場に駆け付けて来る。

川田刑事から、事件の状況の説明を受けた佐藤看護婦は、みち子の姿が見えなくなったと言う。

そこに電話がなり、それに出た菱山に対し、明日の晩12時にもらいに行くとの声が響いて来る。

相手は毒殺魔だった。

その予告を阻止するため、次の晩、厳重な警戒でのぞんだ12時が、何事もなく過ぎ去って行く。

安心した川田刑事だったが、菱山が、念のため金庫を開けてみると、中はもぬけの殻だった。

そこに、又しても電話が鳴ったので、それを取った川田刑事の耳に聞こえて来たのは、宝石はもらったが、娘も返さん。日本の警察は大した事がないなと嘲る冷酷な毒殺魔からの言葉だった。

このニュースは、翌日の新聞でも大きく報道される。

菱山は、川田刑事に、日本の警察力を持ってしても、みち子は戻らないのかと嘆く。

その頃、怪しいマスクの男二人が、公園で遊んでいた文雄と則子の様子を近くからうかがっていた。

一人が、子供らに、毒針を投げ付けようとしたその時、やって来たスーパージャイアンツに妨害され、何本も投付けた針がことごとく、スーパージャイアンツには通用しないと気付くと、さっさと逃げ出してしまうのだった。

ところが、その日、自分達が狙われていた事など知らない文雄と則子は、又懲りずに探偵ごっこを始め、道夫が急病を装い、菱山病院に入る事にする。

則子に付き添われて、菱山に会った文雄は、最近夜のなるとうなされると説明する則子を他所に、診察は嫌いだとダダをこね、取りあえず様子を見るため、診察を受けないまま入院する事に成功する。

怪しまれずに入院出来たと喜んだ文雄は、個室の窓の横から、こっそり庭先を覗き込むと、そこにいた菱山が、これで警察は自分を全く疑わなくなったとつぶやきながら、庭に置いてある置き物を廻すと、蛇口の付いた洗い場が回転をし始め、そこに出来た空洞の中に入って行くのを目撃する。

すぐに、窓から庭先に降り立った文雄も、同じ要領で、秘密の通路をあけると、中に潜り込んで行く。

その通路の先には、ビアス反乱軍の秘密部屋があり、団長が、いよいよ大望成就の時期が来た。明日、ヒルマン皇太子が来日すると説明していた。

その様子を見ながら、忍び込んだ文雄は、こっそり秘密の部屋の前に来ると、ドラにかかっていた鍵を開けようと必死に針金でいじり廻していたが、ようやく鍵が開いて、中に縛られていたみち子の姿が見えたと思った瞬間、その様子に気付いた団長らに即座に捕まえられてしまう。

連れて来られた文雄とみち子の前で、団長が顔につけていたマスクを外すと、その正体は菱山本人だった。

それを知って驚愕したみち子だったが、我々の大きな目的を達成するには、遠大な芝居が必要だったと説明し、秘密を知られたからには、二人とも生かしておく訳には行かないと言いだす。

愕然とするみち子に対し、菱山は、お前は自分の本当の娘ではなく、小さい頃、さらわれて来たのだと言うではないか。

その頃、エンゼル学園に戻って来ていた則子は、文雄の事を心配していたが、夕食を知らせに来た保母(水上恵子)に文雄の事を聞かれても、何も答えられなかった。

しかし、そこにスーパージャイアンツがやって来て、もう一度、則子に同じ事を尋ねると、とうとう本当の事を伝える。

それを聞いたスーパージャイアンツは、それは危ないと危険を察知する。

その頃、当の文雄とみち子は、ビアスに伝わる神像に捧げる生贄として座らされ、その前で、剣を持った奇妙な女の踊りが始まっていた。

則子は、警察に電話をしていた。

踊っていた女が、剣でみち子を突こうとした瞬間、やって来たスーパージャイアンツが間一髪阻止する。

秘密部屋に、川田たち警察隊もなだれ込んで来たので、菱山は、ここはひとまず退散だと言って、逃亡してしまう。

エンゼル幼稚園に文雄を送り届けて来た川田刑事は、スーパージャイアンツに、やはり犯人は菱山だったんですねと確認していた。

スーパージャイアンツは、独自に今回の毒殺魔事件を追い掛けていたのだが、ビアス国の転覆を狙う反乱軍の首領が菱山だった事が分かったのだと説明する。

翌日、厳重な警備体制が敷かれた羽田空港に、ビアス国のヒルマン皇太子を乗せた飛行機が降り立つ。

空港内をお付のものどもを従えて歩いて来きたサングラス姿のヒルマン皇太子一行の前に、突如出現した菱山ら反乱軍の一行が発砲するが、弾を受けたはずのヒルマン皇太子は倒れる様子がない。

ターバンとサングラスを取ったその顔は、スーパージャイアンツその人だった。

本物のヒルマン皇太子(ユスフ・トルコ)は、少し後ろからやって来ていたのだった。

スーパージャイアンツは菱山に対し、この際、男らしく捕まりたまえと説得するが、菱山は取り出した手榴弾を投付け、それが爆発した瞬間を狙って逃亡をはかる。

廃工場へ逃げて来た一味だったが、その前にスーパージャイアンツが現れ、さらに逃げようとした菱山らだったが、周囲を全て警察に包囲されている事を知るのだった。

全ての事件が解決したある日、エンゼル学園にやって来たスーパージャイアンツは、文雄に対し、今回はお手柄だったねと頭をなでてやると、今後は、この川田のおじさんに任せてねと川田刑事を紹介すると、その場から飛び立って行くのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

宇津井健主演の和製スーパーマン「スーパージャイアンツ」シリーズの第9作にして最終作。

この頃になると、SFファンタジーらしさはなくなり、ごく普通の犯罪サスペンスものに変貌している。

相変わらず幼稚園児が主人公なのだが、その男の子が大人の言う事を全く聞かず、危険きわまりない冒険を繰り返すと言うのが、子供向けの定番の展開とは言え、小学生程度ならまだしも、幼稚園児の行動としてはあまりにも不自然きわまりないように思える。

まず、園長が、自分の学園の園児を宝石店に連れて行くと言う冒頭部分からして、どう言う状況なのか良く分からない。

主人公の子供達に、毒殺魔に遭遇させる為に無理矢理設定した状況だからだろう。

さらに、どう考えても、幼稚園児二人だけで普通の看護婦もいる開業医を訪ねて来て、誰にも不審がられないのもおかしいし、開けっ広げの秘密基地の中で、幼稚園児が堂々と人質救助をはかると言うのもバカバカしいと言うしかない。

そもそもどうして、幼稚園児が、みち子誘拐事件を知っていたのかが分からない。

毎日、新聞でも読んでいるのだろうか?

そこは、大人の噂でも聞いて知っていたと解釈したとしても、誘拐された娘が、そこの自宅の中にある秘密基地の中に捕えられているなどと、名探偵も顔負けの大胆な想像したのは、何故なのかさっぱり分からない。

あっさり針金一本で鍵を開けてしまう所も、並みの幼児とは思えないし、捕まって、生贄にされる直前まで、泣くでも怯えるでもなく、菱山を睨み付けていると言うのも、幼児離れしたすごい勇気の持主と言うしかない。

その一方、川田刑事は仕方ないにしても、事件を独自に追っていたと言うスーパージャイアンツが、則子に聞くまで、文雄の行動を全く把握していなかったと言うのも情けない。

敵の毒針で暗殺されかけた時は、すぐに防いでくれたと言うのに?

その後、スーパージャイアンツは一体どこに行っていたのか?

どうやら、子供らを監視していた風でもなく、かと言って、菱山邸に目星をつけて見張っていたのでもないらしく、それなら、それまで独自に追っていたと言うスーパージャイアンツの捜査も、警察と大差なかったと言う事だろう。

もともとこのシリーズ、大人が観るものとして作られていないだけに、そうした御都合主義の部分の粗探しは不粋だが、この作品に関しては、幼児向けにしては、犯人の捜査撹乱などの行動は妙に大人向きだし、犯罪も現実的すぎるような気がするだけに、そのチグハグさが目だつような気がする。

ちなみに、ビアス反乱軍の一味の服装は全身黒タイツで、腰の廻りにはチャンピオンベルトのような帯を巻いている事もあり、一見すると、仮面ライダーのショッカーを連想したりする所が興味深かったりする。

しかし、犯罪ものの要素が濃くなって来た前作と言い今作と言い、スーパージャイアンツは、犯人の目の前に出現しても、格闘するだけで、決して執拗に追い掛けて捕まえるような趣味はないらしく、逃げだす相手は、いつもあっさり見逃してしまうのが特長らしい。

結局、その曖昧な行動が、次の事件を誘発している事になるのであり、逆に言うと、物語上、常に事件を継続させるために、いつもスーパージャイアンツは敵を逃し続けていると考えるしかない。