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続スーパー・ジャイアンツ
悪魔の化身

1959年、新東宝、宮川一郎脚本、赤坂長義監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

パジャマ姿で公園にやって来た青葉学園の孤児健ちゃんは、ブランコの前に出現した無気味な魔女のような女を見て倒れてしまう。

一緒に付いて来たヒロシ君は、びっくりして健ちゃんを起こそうと呼び掛けるが、目を覚まさない。

いつの間にか、ブランコの前にいた魔女の姿はかき消えていた。

翌日、学園に、結局亡くなってしまった健ちゃんの様子を見に来た生理学者の畑中道夫(明日香実)は、極度の恐怖による全身の衰弱で死亡したと診断し、同席した学園長(中西博樹)や保母さんらの、最近、健ちゃんは夜中うなされていたと言う話を興味深げに聞いていた。

同じ学園仲間の葉子(山根恵子)と一緒にその話を園長室で聞いていたヒロシ君は、健ちゃんは悪魔に殺されたんだ。僕、見たんだと言うが、大人たちは誰も信用しない。

お寺の境内で野球ごっこをしていた青葉学園の子供達は、ヒロシ君が打ったボールが、お寺の頂上の宝珠の玉の中に入り込んでしまい、取れなくなってしまう。

みんなが困っている所にやって来たのは、黒いソフト帽に黒い背広を着た優しいおじさん大賀一平(宇津井健)だった。

おじさんは、ひょいと飛び上がると寺の天辺に降り立ち、簡単にボールを取って降りて来てくれた。

礼を言いに来た園長に、大賀は、ここで雇ってくれないかと切り出す。

ある日の遊園地、母親と一緒に遊びに来ていた二人の姉妹が、遊具乗り場に走って行った後、付いて行っていた母親は、地面に埋まった姿で出現した魔女のような女に睨まれ、その場に倒れてしまう。

気付いて戻って来た姉妹が、母親を揺り動かしても動かない。

バレエの公演まで後三日に迫ったバレエ教室で練習をしていたのり子は、突然、ピアノの前に出現した魔女に見入られ倒れてしまう。

気付いて、助け起こした仲間たちに、のり子は「鏡の中に恐ろしい顔が…」とピアノの方を指差すのだが、もうそこには何の姿もなかった。

こうした事件が都内一円で頻発し、新聞紙上は連日のように、恐るべき魔女の犯行と謳いあげるのだった。

その頃、青葉学園での大賀一平は、スーパージャイアンツのおじさんとして子供達に慕われていた。

そんな大賀は、ヒロシ君に夜うなされる事を聞き出そうとする。

そして、正義と平和の玉と言うものを、生徒を代表してヒロシ君に手渡すのだった。

困った時や危ない時には、それを外に投げろと言う。

そして、大賀は、子供達の歌う「蝶蝶」に合わせ、オルガンを弾いてやるのだった。

そんなある日、バレエの公演を控えた恋人の安西泰子(瀬戸麗子)と久々に会っていた畑中は、大川先生の所に行かねばならなくなったので、公演には行けなくなったと詫びていた。

ちょうどその横を通りかかったのが大川博士(大谷友彦)で、畑中の姿を見ると、すぐにレポートを頼むと言い残して研究所に去って行く。

泰子は、左目の周囲を隠すように大きな眼帯風マスクをつけた大川博士を不気味がるが、弟子である畑中は、あれは戦争で受けた傷であり、大川博士は世界一の生理学者だと説明するのだった。

その後、大川博士の研究所にレポートを持ってやって来た畑中は、レポートは急がないから、今日はさっきの恋人の所へ行ってきたまえと、意外な言葉を聞かされる。

その泰子は、公演前の最後の仕上げ練習中、ピアノの前に出現した魔女の姿を見て気絶しかかった所に、ちょうど畑中がやって来て助け起こすのだった。

山川病院に入院した泰子の容態は、やはり、極度の恐怖による全身衰弱で死亡する病気と山川医師(岡竜弘)によって診断される。

その頃、研究所内では、一人になった大川博士が、壁際の電燈の下に付いたスイッチを押すと、壁がどんでん返しのように開き、その中に入り込んで行く。

そこは、地下の研究所に繋がる隠し戸だったのだ。

地下研究室のガラスの中には、脳髄が蠢いており、その前にやって来た大川博士は、娘よ、もう眠ったか?芳子!と呼び掛ける。

大川博士は、さらに、戦争がお前を奪い、わしの顔をこうした…と呟く。

そして、その復讐の為、地球上の人類を抹殺しなければならないと言い出す。

人間共よ死ね!お前たちを暗黒の中に押し込んでやるのだ!と叫ぶ博士の目には、すでに正気は失われており、彼は、長い行方不明の後、再会を果たしたものの、すぐにあっけなく亡くなってしまった娘の芳子(宮田文子)の、柩の中で花に埋もれて眠る姿を思い出していた。

その頃すでに正気を失っていた大川博士は、その柩の中の娘に向い、私は改めて生命を与えてやると誓うのだった。

その生き返された芳子の脳髄が、今、博士の前で蠢いているものだった。

そんな大川研究所にやって来た畑中は、誰もいない博士の部屋の中で、どこからともなく聞こえて来る笑い声を耳にしていた。

どうやら、その声は、壁の向こう側から聞こえて来ると気付いた畑中は、その壁の周囲を注意深く観察し、電燈の下のスイッチを発見して動かすと、想像通り壁が開くではないか!

思いきって中に入ってみた畑中は、今まで知らなかった秘密の地下の研究所にいた大川博士と、その前に立っている無気味な魔女のような女の姿を垣間見て、急いで元の部屋に逃げ戻るのだった。

急いで、研究所から去ろうとしていた畑中だったが、気配を気付かれ、部屋に戻って来た大川博士から声をかけられ、しどろもどろになる。

しかし、博士が、全てにおいて慎重に行動したまえ。自分は顔に傷を受けて以来、人と付き合わないようにしているが…と個人的な話題を振って来たので、畑中は思いきって、恋人が魔女を見ると言う流行病にかかってしまった事を打ち明け、魔女と言う言葉をあざ笑う大川博士に対し、すでに、この病気で300人も死亡している。一体、先生は何の研究をしているのか?何となく、人道的ではない予感がする…と言い残して帰るのだった。

その後、一人になった大川博士は、壁のスイッチの電燈が点滅したので、秘密の通路から来客がある事を知り、壁を開くと、左手がかぎ爪になった黒メガネの男風間(大江満彦)がライフルを持って入って来る。

大川博士から、畑中の恋人を奪って来いと命じられた風間は、俺の部下の腕を信用しろと言いながら、その場でライフルを連射し、壁に並べてあった薬品の瓶を次々に打ち砕いて行くのだった。

青葉学園の近くの墓場に来ていたヒロシ君と大賀は、銃声を聞き駆け付けると、そこで左手を撃たれてうずくまっていた畑中を発見する。

ヒロシ君にその介抱を頼んだ大賀は、その場でスーパージャイアンツに変身すると、近くでライフルを持っていたマスクを被った二人の男を捕らえる。

二人は風間の部下たちだったのだが、スーパージャイアンツが、後ろから聞こえて来たヒロシ君の応援の声に気を取られている隙に、一人がその手を離れ逃げてしまう。

スーパージャイアンツによって警察に連れて来られた子分の方は、田崎刑事(正木正)によって尋問を受けるが、黙秘権を行使して、全く口を開こうとしない。

その様子を観ていた部長刑事(松方信)は、田崎刑事を廊下に呼出すと、バックで糸を引いている奴がいるに違いないとアドバイスする。

その頃、怪我をした畑中の方は、青葉学園に連れて行かれ、大賀の手当てを受けていた。

畑中は、城南大学の大川博士邸から帰る途中だった事情を明かすと、今入院中の安西泰子の事を心配し、病院に電話をかけてみるのだった。

電話を受けた看護婦が、念のため、病室に様子を見に行ってみると、案の定、泰子の姿はベッドになく、3人のマスクの男たちに拉致された泰子が、無理矢理車に乗せられ誘拐される所だった。

それを電話で聞いた畑中は驚くが、一緒に聞いていた大賀は、その場でスーパージャイアンツに変身すると、あっという間に空に飛んで行く。

その直後、玄関でそれを見送っていた園長や園児たちの前に、風間の配下たちがやって来て、マシンガンを突き付けると、匿っている畑中道夫を出せと迫る。

ヒロシ君は、彼らに見つからないように用心しながら、ポケットから、スーパージャイアンツからもらった玉を取り出すと、そっと後ろ手で合図をしながら、隣に立っていた葉子に手渡すのだった。

さらに、葉子は、同じ要領で、隣の子に手渡し、次々とバトンタッチされた玉は、一番端にいた子供の手に渡る。

一方、泰子を乗せた車の前に降り立ったスーパージャイアンツは、車から降りて来たマスクの男たちと対決していたが、青葉学園の子供達の方は、まだ、玉を外に投げるチャンスを見つけられず、又、後ろ手による玉のバトンタッチを続けていた。

ようやく、謎の男たちの隙を見つけた子供が、玉を玄関口から外に転がす。

すると、その玉は、瞬間移動したようにスーパージャイアンツの目の前に現れ、子供達の危機を察知したスーパージャイアンツは、泰子を自分に捕まらせると、一緒に空を飛び、あっという間に青葉学園に戻って来る。

ちょうど、賊が畑中を外に連れ出そうとしていた所だったが、泰子とともに降り立ったスーパージャイアンツが、あっという間に蹴散らしてしまう。

その頃、大川邸の地下研究所に出現した魔女は、博士の前にあるガラスに入った脳髄の中に戻っていた。

大川博士は、わしの第二の研究所が完成しつつある。今、自分は、人口脳髄の分泌液から抽出した猛毒を持つ最近を手に入れたので、これをウルバイシンと名付ける事にしたと独り言を言う。

その細菌は、1gで1000万の生物を殺害する、原水爆の何倍もの威力を持つ兵器になると言うのだ。

そこにやって来た風間が、ようやく化学工場が出来たが、部下たちがスーパージャイアンツにだいぶんやられたと報告する。

そんな大川邸に、畑中に案内され連れて来られた大賀は、突然聞こえて来た笑い声と、「来たかスーパージャイアンツ。俺は悪魔だ。俺の挑戦状をに応じるか」との声に、「望む所だ!叩き潰してやる」と毅然と答えるのだった。

それから、スーパージャイアンツの新研究所探しが始まり、畑中も協力を約束する。

一方、警察に捕まっていた風間の部下は、証拠不十分と言う事で釈放されるが、しっかり刑事たちの尾行が付いていた。最初から、泳がせるつもりだったのだ。

そんな事は知らない風間の部下は、真直ぐ、港の側にあるビルの一室「アトム商事」にいた風間の元にやって来る。

風間は、尾行が付いている事を叱りながら、慰労金として札束を部下に渡すのだった。

その直後に、その会社の前に到着した刑事たちは、表で「事業不振につき解散する アトム商事」と書かれた貼り紙を見つけ中に入るが、もうそこはもぬけの殻だった。

その頃、空を飛んで偵察していたスーパージャイアンツは、山中で苦しんでいる一人の男を発見し、急降下すると、男を抱え起こす。

その男は毒を飲まされているようで、「黒メガネの男に酒を飲まされ…」と呟いた後、息絶えてしまう。

その言葉を聞いたスーパージャイアンツは、この近くで新化学工場を作っているに違いないと確信する。

その新研究所で、とうとうウルバイシンを完成させた大川博士の元にやって来た風間は、自分がこれから外国へ売りに行くと言う。

博士は、自分は地球上の人間が抹殺出来さえすれば良いのだと言いながらも、風間が何か余計な事をしでかした事を察知し詰問すると、一刻も早く細菌の効力を試してみたくて、ちょっときこりに…と風間は答える。

そこへ、スーパージャイアンツが飛来して来る。

警察隊も、新化学工場を突き止め、乗り込んで来た。

研究所内にいた覆面科学者や、風間の部下たちと戦いはじめたスーパージャイアンツを観た大川博士は、自分に芳子とウルバイシンがある限り負けんぞと強がりを言う。

その言葉通り、魔女の姿をした芳子が出現、スーパージャイアンツに火を放ち攻撃を始める。

魔女と博士の心は繋がっているようで、魔女がスーパージャイアンツに攻められると、博士も又、苦しみ出す。

やがて、魔女は大爆発を起こし消滅してしまう。

同時に、ガラスの中で蠢いていた人工脳髄も消え去ってしまう。

椅子に座っていた大川博士の側に来た刑事は、彼も又、息絶えている事を確認する。

そこに駆け付けて来た畑中が、大川博士が残したトランクを開こうとすると、そばにいたスーパージャイアンツが「その中には、悪魔の置き土産が入っている」と制する。

そして、そのトランクを持って飛び立ったスーパージャイアンツが、上空でトランクを投げ捨てると、それは大爆発を起こして消滅するのだった。

その後、青葉学園に戻って来たスーパージャイアンツは、みんなに見送られながら空に飛び立っていく。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

宇津井健主演の和製スーパーマン「スーパージャイアンツ」シリーズ第八弾。

今回は、謎めいた魔女の出現による病気の蔓延と言う事件で幕を開ける。

一見、魔法使いが登場する怪奇ファンタジーかと思わせるが、その裏には、戦争で自らも傷付き、最愛の娘までもを失った生理学者が甦らせた「娘の人工脳髄」がある事が分かる。

子供達が主人公だと言う点を観ても、これが大人向けのSFとして作られているのではない事は明らかで、その科学的裏付けははなはだ怪しいものだが、人工脳髄が生み出した幻と言うアイデアは面白い。

戦争によって、生きる望みを失い、人類への復讐を誓ったマッドサイエンティストと言う設定自体は平凡だが、これも子供向きとしては、それなりに哀感がある。

このシリーズ、スーパージャイアンツがあまりに強すぎて、戦いのサスペンスと言う醍醐味が全くないのが、今の感覚からすると物足りないのだが、当時のテレビで人気だったスーパーマン像は、こういう雰囲気だったので、仕方ない所だろう。

子供達の前でもすぐに変身してみせて、みんなから「スーパージャイアンツのおじさん」と呼ばれている大賀一平は、人間に化けている意味があまりないと思うのだが、正体を隠すと言う意味合いよりも、さすがに、ステージ衣装のようなひらひらの付いた全身タイツ姿のままでは、人間として、日頃の生活がやり難いからと言う事なのだろう。

たった1gで1000万もの生物を殺傷する原爆よりも恐ろしいと言うウルバイシンだが、風間がきこりの男に酒に混ぜて飲ませた様子を見ると、嚥下して、数十分は効果がないものと見える。

アイデアの核である「人工脳髄」の説明を、もっとしっかり聞きたかったような気もするし、細菌が入ったトランクを空中で投げ付けると、どうして爆発したのかとか、空中で細菌をばらまいた事にはならないのかなどと、色々説明不足で良く分からない部分も多いのだが、全ては、あくまでも幼児向けの荒唐無稽話の御都合主義として解釈すべきだろう。

古き良き時代の、いかにものどかなヒーローファンタジーである。