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続向う三軒両隣り
どんぐり歌合戦

1948年、新東宝、八住利雄+北村寿夫+北条誠+伊馬春部原作、八住利雄+成澤昌史茂脚本、斎藤寅次郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

車引きの坂東亀造(柳家金語楼)が車を磨いていると、荷物を運んでくれと言う復員姿の青年がやって来る。

お茶の水駅で年寄りが待っていると言うのだ。

しかし、頑固一徹の亀造は、車は人間を乗せる物で荷物なんか乗せないと断わったきりさっさと出かけてしまう。

呆然と立ち尽くす青年の前に出て来たのが、亀造の娘みどり(野上千鶴子)で、父親の無礼を詫びると、その青年は、しばらくこの荷物を預かっておいてくれとみどりに強引に押し付けて足早に立ち去ってしまう。

その後、みどりの所に、近所の山田の婆さんつる(飯田蝶子)がやって来て、砂糖を少し分けてくれと言う。

この婆さんは、しょっちゅうそう言って、物を借りては全く返そうとしないので、さすがにみどりも黙っておれず、今までどれだけお貸ししたと思っているのかと聞くが、耳の遠い婆さんは、都合が悪くなると聞こえない振りをする。

重ねて、みどりが同じ事を言うと、今まで借りた物はちゃんと手帳に取ってあるから大丈夫と、その手帳を出してみせる。

紅茶に入れる分だけで良いからと、結局、借りて来た砂糖を、客に出す紅茶に入れていたつるだが、人目を盗んでこっそり嘗めていたのを、目ざとく見つけて、そんなみっともない真似はやめてくれと叱りつけたのが、病弱で長年寝てばかりいる娘のよし子(江戸川蘭子)だった。

つるは、二カ月も甘い物を口にしていなかったから…と、言い訳を言う。

プライドが人一倍高いよし子は、養子にもらった夫の孝助(江川宇禮雄)が、高等官までやった優秀な男である事がいまだに自慢だった。

しかし、現実は、その孝助も今は退職して、今日もかつての部下だった青年が結婚相手を連れて挨拶に来ている所だった。

そんな部下に、何か渡さねばと、よし子は、母親のつるに、神田医院に渡す予定だったお金を包んでやれと言い出す。

さらに、部下の前では、そんな年寄りが母親だと思われたくないので、お手伝いと言う事にしてくれとまで言う。

紅茶を出しながら、養子である孝助に「旦那様」と呼出したつるが、金を包んだ祝儀袋を差し出したので、それを受取る孝助はびっくりしてしまう。

しかし、そのなけなしの金を部下に与えない訳に行かず、孝助は、泣く泣く祝儀として手渡すのだった。

その頃、その山田家の娘で、小学生の孝子(美空ひばり)は、亀造らと一緒に、近所の少年野球チーム「どんぐりチーム」の応援をしていた。

そんな所に、どこかの女中が、急病人なので運んでくれと亀造の元に依頼に来る。

すぐさま、「花井寓」と表札に書かれた大きな屋敷に駆け付けた亀造だったが、急病人はどこかと聞くと、女主人の花井夫人(清川虹子)が抱いたペルシャ猫のタマ子の事だと言うではないか。

それを知って怒った亀造は、鉢巻きを額に巻き、啖呵を切りながら、迫って来た書生牧野(田中春男)を突き飛ばしてしまう。

すると、怯えた花井夫人は「おりき!」と奥に呼び掛けると、巨大な体をしたお手伝いが出て来たので、これには叶わないと感じた亀造はすぐに逃げ出す事にする。

その頃、山田家では、よし子が、質屋に着物を持って行こうとするつるに、目だたないように持って行ってくれと注文をつけていた。

それを聞きながら、つるは、孝助が仕事に付こうと新しい仕事を見つけて来る度に、お前が似つかわしくないと断わっているからじゃないか…と愚痴をこぼすのだが、そうした会話を聞いていた孝子は、明日から、自分が納豆売りを朝やって良いかと言い出す。

一つ20円で売ると、5円儲かると友達から聞いたと言うのだ。

しかし、よし子は、みっともないからおよしなさいと即座に拒絶するのだった。

亀造は、路上で夕刊を売っている二人の少年を見つけて声をかける。

どうやら浮浪児らしいが、けらけら笑って可愛いので、二枚20円と高かったが新聞を買ってやる事にする。

次の日、音楽の先生から誉められたからと、孝子がいつもより早く学校に言ったので、両親はすっかりその言葉を信じていたが、実は、孝子はこっそり納豆売りをやっていた。

ところが、かわいらしい彼女の姿を見かけ声をかけた家には、すぐさま、近くで同じアルバイトをしていた大学生が駆け付けて売ってしまうので、なかなか孝子の納豆は売れなかった。

そこで、孝子は、自慢の歌を唄い出すと、近所中から、その歌声を聞き付けて来た奥さん連中が集まって来る。

孝子は、自分だけではなく、大学生たちからも買ってやるように勧める行儀の良さ。

その内、神田医院の前に通りかかった時、そこの奥さんからも呼び止められたので、納豆を渡しながら、いつも母さんがお世話になっているのでお代はいらないと帰ろうとする。

すると、窓から顔を出した医者の神田(河津清三郎)が、そんな事はしなくても良いんだと言い聞かすのだった。

一方、朝食の席に付いていた亀造は、昨日の浮浪児の事を思い出しながら、そろそろみどりも結婚する年頃だな〜…などと言いながら、みどりを照れさせていたが、それまでは家にいて欲しいと言う所を見ると、 本心では、みどりと別れたくないのだ。

その頃、散歩に出かけていた孝助は、納豆を売っているわが子の姿を目撃してしまう。

すぐに孝子に駆け寄った孝助は、お父さんが勇気を出して働くんだった…と、謝るのだった。

一方、買い物を済ませて、自家用車に乗り込もうとしていた花井夫人は、車の中に、見知らぬ少年が隠れている事に気付き、その少年が、新聞の売り場を巡ってチンピラから追われているので助けてと言うにも関わらず、運転手に追い出させる。

そこへ通りかかったのが、亀造で、野次馬の中を覗き込むと、見覚えのある少年が、車の前で倒れているではないか。

亀造は、すぐさま、その加害者が目の前にいる花井夫人と判断、因縁をつけるが、ちょうど、警官がやって来て、道の真ん中に人力車なんか止めてはいかんと言われたので、その場は素直に引き上げる事にする。

その頃、職安に向った孝助だったが、係員に履歴書を見せると、あまりに立派すぎる経歴が、かえって職探しの邪魔になると言われてしまう。

坂東家では、留守番をしていたみどりが、押入に入れたままにしていた、いつかの復員服の男が預けっぱなしの風呂敷を出して困っていた。

その後、あの青年が全く来なくなったからだ。

そんな所に、亀造が見知らぬ少年を連れて帰って来る。

聞けば、この子を、中央児童相談所から、養子として引取る事にしたと言うではないか。

その後、健康診断の為に連れて行った神田医員では、神田から、養子にすると、40円80銭の養育費が月々もらえるのだと教えられる。

健康には全く問題はなかったが、知能の方はどうだろうと、文字を書かせてみると、ちゃんと書けるようだった。

年を聞くと12と言うので、すぐにでも6年生に編入できると神田は保証する。

肝心の名前を聞くと、大久保健吉とはっきり答える。

その後、喫茶店「白百合」にどんぐりチームの面々を集めた亀造は、健吉が今日から自分の息子になったから、みんなのチームに入れて仲良くしてやってくれと挨拶をし、お汁粉を全員に振舞うのだった。

その最中、花井家の書生が、間が悪くお汁粉の出前を注文に来たので、亀造が、今日はもう売り切れだと追い返すのだった。

その後、子供達による演芸大会が始まる。

三才くらいの幼女が「豆ブギ」を唄えば、手先の器用な子が、大人顔負のジャグラーを披露する。

最後は、孝子の歌だった。

翌朝、健吉は、張り切って学校に出かける。

亀造は「言って来ます!お父さん」の言葉に感激していた。

学校では、「こくぞう」の幼虫を顕微鏡で覗く授業が行われていたが、顕微鏡を始めて見る健吉はものすごく感激して喜ぶのだった。

やがて、参観日と言うので、父母たちが教室に入って来る。

その中には、もちろん、紋付袴の正装をした亀造もいたが、先生から指名されたわが子健吉が、立派ニホンを呼んだので、鼻高々になり、それを見ていた山田つるは、皆さん、亀造さんが催促していますよと促し、その意味に気付いた他の父母たちは全員拍手をするのだった。

みどりが乗っていた電車の中、目の見えない老人が網棚にあったはずの荷物を探している。

前に立っていた男性が訳を聞くと、人から勧められて座った際、その人が荷物は網棚に上げてあげると言ってくれたのだが…と困惑した様子。

しかし、網棚には荷物などなく、悪いやつに持ち逃げされたのだと、みどりや周囲の乗客たちは気付く。

復員して来たばかりで、あの荷物が全財産だったのだと嘆く老人の姿を見かねた男性が、ここは一つ、ここにいるみんなが少しづつ持ち合わせを出し合って、この老人を助けようじゃないかと言い出す。

みどりも賛成し、周囲の乗客から金を集めていると、後ろを向いたままそ知らぬ様子をしている青年の顔に見覚えがあった。

彼女に風呂敷包みを託したまま、やって来ないあの復員服の青年だった。

青年の方も、みどりに気付いたようだが、今持ち合わせがなく、母の形見の指輪しか持っていないのだと、恥ずかしそうに言う。

聞けば、復員して来たものの、待っているはずの両親と弟は、戦災で行方知れずになったのだと言う。

同情したみどりだったが、さすがに悪いと思ったのか、その青年も車内カンパを集める手伝いをすると言い出す。

しかし、電車を降りて別れたその青年は、又姿を消してしまう。

ある日、いつものように、どんぐりチームの野球を空き地でやっていた亀造は、息子の健吉が打ったボールが、隣の花井家の窓ガラスを這ってしまうのを目撃する。

そのボールは、ちょうど、スープをすすろうとしていた花井夫人のスープ皿の中に飛び込んでしまう。

その直後、少年たちを連れた亀造が謝りに来たので、怒った花井夫人は、あの空き地は家の地所なのだから、明日からもう使わせないと言い出す。

その理不尽な言い方に怒った亀造が、いつものように鉢巻きを絞めると、健吉が必死に暴力はいけないと止めるのだった。

翌日、空き地には「立ち入り禁止」の立て札が立っていた。

がっかりする少年たちの姿を見かねた亀造は、再び花井家を訪れ、出て来た書生に空き地を使わせてくれと願い出るが、出て来たおりきに「浮気者」と叩かれたのは書生の方だった。

実はさっきまで、他の女中のいちゃいちゃしていたからだ。

玄関口で、その思わぬ男女の諍いを止めようとした亀造まで、おりきから帚で叩かれてしまう。

その頃、銀座に買い物に出ていた花井夫人は、道でサンドイッチマンをしている山田孝助の姿を目撃し驚いていた。

孝助の方も、花井夫人に気付き、彼女に見られたからには、すぐに噂が広まるに違いないと感じ、その日帰宅すると、明日、銀座に募金活動に行くのだと言う孝子に、どうせ噂になるのなら、勇気を出さなくてはと伝えていた。

翌日、銀座の街角で募金活動をしていた孝子たち小学生の元へ、協力に来た「白百合」のまさ(浦辺粂子)や、ようやく体が直り、床上げをした母親のよし子もやって来ていた。

そこへ、「あの橋もこの路もあなたの税金が作りました」と書かれた看板を背負った孝助がやって来たので、それを見たよし子は驚愕して、恥ずかしさのあまり、他人の振りをして逃げ出すのだった。

それを追って来た孝助は、何を恥ずかしがる事がある。お前は、孝子が納豆売りをしていた事を知っているか?私や孝子がこんな仕事をしてまで、お前の見栄を支えていたのだよと説明する。

思わず泣き出したよし子の側に来た孝子は、母親を優しく慰めるのだった。

募金が終わり、学校で集計をしていた孝子たちは、お金の一部が紛失している事に気付く。

10円札を20枚束ねたものがないと言うのだ。

それを聞いた男子生徒の一人が、このクラスには、風紀上よろしくない環境にいた人がいますからねと、意味ありげな事を言い出す。

健吉は、浮浪児だった自分の事が疑われているのだと直感する。

その頃、亀造は、押入にしまってあった風呂敷包みを発見し、その中身が、高級な着物の類いだったので、こんな立派なものを持っていると言う事は、あの青年は泥棒だったんじゃないかと疑っていた。

電車であったけど、そんな悪い人には見えなかったと弁護するみどりだったが、とにかくその荷物を警察に届けるよう亀造が命じていた所へ、泣きながら健吉が帰って来る。

募金の一部が紛失して、健吉が疑われたと聞いた亀造は、孝子のいる山田家に文句を言いに行くが、そこには耳の遠い祖母のつるしかおらず、話が通じない。

その後、健吉を「白百合」へ連れて行って、お汁粉で機嫌を直そうとした亀造だったが、つい、本当に心当たりがないんだなと聞いてしまったばかりに、又、健吉は泣き出してしまう。

困った亀造は、何とか健吉の機嫌を直してやろうと、鼻のない象がいると言う上野動物園に連れて行くが、上野に付いた健吉は、野上は昔の事を思い出すから嫌だと言い出す。

仕方がないので、別の公園に出かけ、弁当を広げていた亀造だったが、そこで掃除をしている復員服の男の顔を見て驚く。あの荷物を預けっぱなしにしている青年だったのだ。

思わず、捕まえようと追い掛けた亀造だったが、相手も気付き逃げ出してしまう。

その後を一緒に追っていた健吉は、青年が途中転んで落として行った指輪を拾い、それが自分も持っているのと同じ指輪だと気付くと、あれは自分の兄たかしだと知り、呼び掛けながら追い掛けるが、もう青年は遠くに逃げ去っていた。

その夜、帰宅して来た亀造は、健吉からその事を聞かされるが、あいつは泥棒かも知れないと言うと、自分ばかりでなく、兄までも泥棒呼ばわりされた健吉は又泣き出すのだった。

その夜、寝ているはずの健吉がいなくなっている事にみどりが気付き亀造に知らせる。

寝室に行ってみると、兄を探して、泥棒ではない事を証明すると書かれた置き手紙があるではないか。

自分の軽はずみな言葉が、健吉を深く傷つけた事を反省した亀造だったが、そこに花井夫人が訪ねて来て、この前警察に届けた風呂敷に入っていた着物類は、全部、花井家から盗まれたものだったと、皮肉を交えた礼に来たのだった。

又しても、その慇懃無礼な態度に怒りかけた亀造だったが、いつか、健吉が、暴力はいけないと言っていたのを思い出し、じっと我慢をするのだが、それに気付いた花井夫人は、調子に乗って、無抵抗な亀造の頭を叩いて喜んで帰るのだった。

その後、今度は孝子とつるが連れ立ってやって来て、なくなったと思っていた募金の金が見つかったので、健吉に詫びに来たと言うではないか。

箱の隅に入れておいたのに気付かなかったのだと言うのだ。

しかし、その健吉が家出をしたと聞かされた孝子は、原因の一端は自分にもあると反省する。

そして、翌日、いつも、どんぐりチームが野球を楽しんでいた空き地の前に来ると、いなくなった健吉の事を思い出しながら、寂しげに唄い出すのだった…。

アナウンサーの女性が、後編をお待ち下さいとマイクの前で言いながら、この映画は終わる。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

人気ラジオドラマ「向こう三軒両隣り」のシリーズ三作目。

亀造役の柳家金語楼と山田の婆さんを演じる飯田蝶子、そして、少ししか登場しないが「白百合」の母役浦辺粂子だけは同じだが、後の主要人物は、一作目に出ていた俳優が、全く別の役柄で登場している。

まず、亀造の娘みどりだが、一作目で田中春男の恋人を演じていた美貌の野上千鶴子に替わっており、長女可奈子や長男精市はいない事になっている。

一作目で、医者の神田守を演じていた江川宇禮雄は、「ウルトラQ」の一ノ谷博士と同じような、大きなカイゼル髭をつけた顔で(ただし、髪の毛もひげも真っ黒)、山田家の養子であり、美空ひばりの父親の役を演じている。

この作中で、神田を演じているのは河津清三郎である。

清川虹子は、その神田の妻役から、闇で儲けた家の婦人になっているし、一作目で「白百合」の長男を演じていた田中春男は、コミカルな書生役に替わってしまっている。

こんなに、役を取り替えていて、一作目から続けて観ていた当時の観客は混乱しなかったのだろうか?

今回の見所は、何と言っても、小学生時代の美空ひばりが出ている事だろう。

一応、小学6年生の役で出ているのだが、当時、彼女の実年齢は10〜11才頃だと思われるので、見た目的には、もっと幼く見える。

内容的には、時代を反映した、復員兵と家族との離別、浮浪児、闇で儲けた人間、虚栄を戒めるエピソードなどが描かれている。

当時は、納豆を、学生や子供がこづかい稼ぎに売っていたらしい事も分かる。

鼻のない象が上野動物園にいると言うセリフも気にかかった。

おそらく実際に、当時、そうした象がいたのだろう。

空き地の奥に建っている花井家の豪邸は、マットアートによる合成である。

気になる箇所で終わっているだけに、できれば、この後編も観てみたい。