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シミキンのオオ!市民諸君

1948年、横井福次郎原作、斉藤良輔+津路嘉郎脚本、川島雄三監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

ある日、丸銀商事の社長丸屋銀造は、会社が終わると秘書の肥後(南進一郎)を無理矢理車に乗せて自宅に帰ると、自慢の茶器でお茶を飲ませる。

銀造の趣味は骨董に金を費やす事だったが、その収集された骨董とは、丹下左膳の左目とか、牛若丸の下駄とか、孫悟空の生まれた卵とか、どれも怪しげなものばかリだったので、肥後はことあるごとに無駄遣いはやめた方が良いと忠告していたのだった。

今日自宅に連れて来られたのは、今度買ったと言う「沼津島」と言う茶碗を見せるためだと言う。

すでにそれを入れるガラスケースも出来上がっており、今、書生の駿六(堺駿二)に金を渡して買いに行かせている所なのだと言う。

そんな話をしている最中、庭から飛び込んで来たボールが、ガラスケーツを直撃し壊してしまう。

庭で野球をやっていたのは、銀造の娘マリ(朝霧鏡子)とその女友達だった。

活発なお嬢さんですねと肥後が社長にお愛想を言ってボールを投げ返すと、マリはすぐにその受取ったボールをバットで打つが、今度はそのボールが帰って来たばかりの駿六にぶつかってしまったので、さすがにマリたちも慌てて介抱に駆け付けて来る。

その駿六、何か酷く慌てており、自分は首になるかも知れないと怯えている。

書斎に戻って来た駿六が言うには、500万を払って購入した沼津島と言うのは茶碗の名前ではなく、文字通り島の名前で、しかも本当の名前は「ナマズ島」と言うナマズの形をした無人島だったと、もらって来た大きな地図を広げながら説明する。

何でも、さる家族の先祖の大名が所有していた島で、昔は罪人が送られる場所だったのだと言う。

しかし、さすがに、そんな罪人も今では全員死に絶え、無人になっているだろうと言う話を聞いた銀造は愕然とするが、秘書の肥後は、本当に無人島なのなら、金儲けのチャンスかも知れないと言い出す。

ナマズ島開発株式会社とか適当な会社を作って、株を募れば良いのだと言う。

そして、ナマズ島には、ルーレットや酒場、裸踊りを見せる場所など、つまり、飲む打つ買うの三拍子が揃った施設を作れば大儲けするはずだと肥後から聞いた銀造は、ただちに、駿六に、その島の探検に行くように命ずる。

いきなりの命令にビビった駿六だったが、その話を聞いていたマリも、面白そうだから私たちもついて行くと言い出す。

しかし、問題のナマズ島は無人島ではなかった。

森の中を、蔦を掴んでターザンよろしく飛び回る男や湖を泳ぐ妙齢の美女の姿があった。

彼らは、別々に遭難して、この島へ漂着して来た者たちだった。

手製のラッパを吹いて、食事時間を仲間に知らせたターザン風の男の名は金八(清水金一)、今日は、その金八の漂着一周年記念日と言うので、ジェーンのように愛らしい娘アンコ(勅使河原幸子)が花束をプレゼントするが、他の二人は、金八ばかりがもてるので面白くなさそう。

その時、アンコが、もう一人の仲間である博士の姿が見えないのに気付く。

日頃から太陽の黒点の観察などしている変わり者の博士は、その時崖の上から、手製の望遠鏡で海を観ていたのだが、異変を発見したので非常警報用の鳴子を鳴らす。

その音を聞き付け、博士の元に駆け付けた金八たちは、望遠鏡を覗いて、海の向こうから近づいて来る船を発見する。

博士は、自分がここに漂着して5年3ケ月になるが、今まで一隻の船も見かけた事がなかったと不思議がる。

一方、その船に乗っていたのは、駿六とマリとその3人の女友達で、彼らも、近づいて来るナマズ島から煙が立ち上っているのに気付き、海賊でもいるのではないかと不安がるのだった。

共同の住まいに戻った金八たちの方も、あれはきっと海賊に違いないので、襲われる前に、代表を送って話し合おうと相談していた。

では、誰がその代表になるかと言う事になり、皆は口が巧い金八を推すが、金八はとんでもないと辞退する。

結局、投票で決めようと言う事になり、議長役のアンコの前に、皆、名前を書いた札を持って行く。

すると、3対1で金八に決まってしまう。

金八当人以外は、全員彼に投票したのだ。

一方、島に到着し、海岸にテントを設営したマリたちも、偵察に行けと駿六に命じていた。

森の中で、恐る恐る双方からやって来た二人は遭遇し、互いに腰を抜かす。

翌日、改めて対面した駿六は、この島は自分達の所有物なので、すぐにでも出て行ってくれと説得しはじめるが、金八の方も、居住権を盾に一歩も譲ろうとしない。

駿六は、立退料として一人2万、5人で10万出すと言うが、金八たちは承知しない。

すぐにも、駿六は30万出すと値上げしてみるが、金八たちは譲らない。

マリが交渉役を交代して、40万出すと言うと、島代表側もアンコが出て来て嫌だと言う。

マリが50万!と言うと、マリは、例え100万出されてもごめんだとはねつけるのだった。

こうして、交渉は決裂してしまう。

浜辺では、マリと女友達たちが、ラジオの曲に合わせて陽気に踊っていた。

すると、島の住民たちも近くで、負けじと唄い出す。

マリたちが、ラジオのボリュームをあげると、島の住民たちも声を張り上げ、歌を止めようとしない。

そんな所に、又非常警報の鳴子が鳴りだし、博士の所へ向った住民たちは、望遠鏡の中に、さらに巨大な船が近づいて来ている様子を見る事になる。

それは、秘書の肥後を始め、島に開発会社としての基礎を築きに来た大集団だった。

次々に荷物が運び込まれ、すぐにその場で、宣伝用の南洋を舞台にした映画の撮影まで始まる。

監督はマリであった。

一方、立ち退きを拒んでいる島の住民たちの事を知った肥後は、用心棒役として連れて来たヤクザの常夏の鐵(横尾泥海男)を利用しようと考える。

その頃、撮影隊は、可愛いアンコを写そうと迫っていたが、アンコは恥ずかしがって森の中に逃げ込む。

それを撮影隊も追い掛けるのだが、それに気付いた金八は、いつものように蔦を伝って、ターザンのように先回りを始める。

池を泳いで向こう岸についたアンコだったが、目の前に立ちふさがったのは先回りしていた常夏の鐵だった。

撮影隊と鐵とに囲まれてしまったアンコだったが、その時、どこからともなく雄叫び声が聞こえて来ると、綱に乗った金八が降り立ち、あっけに撮られる撮影隊の目の前から、アンコを奪って、又蔦で立ち去るのだった。

その後も、腰蓑をつけた南洋風の衣装の女たち(松竹歌劇団)が踊る姿を映画隊は撮影していたが、その様子を近くから面白そうに眺めている金八が、その内、わざと踊りの輪の中に乱入して来たりしたので、撮影はNGになってしまう。

そうした金八の所に、常夏の鐵が脅しに来て、庇護も持っていたライフルを空に向けて威嚇射撃などしてみせたので、金八と島の住民たちは恐れて逃げ帰ってしまう。

そんな住民たちを脅して来ようと、鐵とその手下たちが森に向う。

その頃、住まいに戻り、食事の準備をしていた金八たちは、鳴子が鳴ったので、八番の罠に獲物がかかった事を知り、急いで駆け付けるが、網に引っ掛かっていたのは、鐵とその手下たちだった。

網から外してやり、面と向った鐵と対峙した金八は、勝負をすると見せ掛けて、相手の体をクルクル廻し、目が回って倒れた所を相手方のテントまで運んでやるのだった。

そんな様子を見た肥後は、奥の手を出そうと言い出す。

その奥の手とは、島の住民の代表が東京に出向いて行って、社長直々に交渉して欲しいと言う申し出であった。

その申し出を受けた金八たちは、一体誰が代表として東京に向うかと言う事になり、又しても投票の結果、金八が選ばれてしまう。

金八は思わず泣くが、翌日、アンコから手製のパンツと、アンコがいつも首にかけていた首飾りをプレゼントさせると、そのお返しとして、いつも自分が吹いていた手製のラッパをアンコに渡し、丸木舟に乗り込み、東京へと漕ぎ出すのだった。

ところが、丸木舟はいっこうに進まず、結局、マリや駿六が乗っていた船に助けられ、それで東京へ戻る事になる。

東京についた金八は、ナマズ島代表として、都民たちに自分達の主張を演説して回る。

そんな金八の演説現場に来た鐵は、彼にDDTを散布したり、嫌がらせをする。

それを助けに来たのはマリだった。

その頃、ナマズ島開発株式会社の株は急騰し、丸屋銀造社長や肥後は笑いが泊まらなかった。

マリに世話をされながらの東京生活が長引く内に、すっかり紳士風に変貌した金八は、喫茶店でコーヒーを飲みながら、ピンナップガールとして店内に飾られていたナマズ島のアイドルアンコの姿を観て、彼女の事を思い出していた。

そこにやって来たマリ子は、見覚えがある柄のバッグを持っているので、それはどうしたのかと聞くと、金八がアンコから送られてはいていたパンツを改造したのだと言う。

さらに、マリは、金八が肌身はなさず首につけていたアンコの首飾りをくれと言い出す。

ピンナップの眺めながら迷いに迷った金八だったが、結局、マリに渡してしまう。

その頃、丸屋の屋敷では、肥後が、ナマズ島にドッグレース、ルーレットなど博打娯楽施設を作る計画を社長に説明していた。

そこに、マリと金八が帰って来たので、肥後は、思わず、島の開発予定地図を指しながら、音楽堂や図書館を作る予定だなどと、嘘の説明に切り替える。

そして、丸屋銀造は感心する金八に対し、ぜひとも島に戻って、仲間たちを説得して欲しいと頼むのだった。

マリが島について行くと言うと、金八もすぐに承諾をするが、丸屋社長もついて行くと言い出す。

その頃、ナマズ島では、手製のラッパを抱えたアンコが、彼の帰りを待ちわびて寂しがっていた。

そこへ、船が近づいて来て、喜んで迎えに言ったアンコだったが、丸屋たちとともに帰って来た金八が、すっかり都会風の背広姿に変貌しているのを観て怒り出す。

土産として金八がラジオを渡しても、アンコの機嫌は直らなかった。

テントでは、丸屋や肥後、駿六たちが、島に建設する飲む、打つ、買うの娯楽施設の話をしていたが、それをこっそり、島の住民たちが盗み聞いてしまう。

かつての仲間たちの住まいに出向き、文化の大切さを力説しはじめた金八だったが、住民たちは聞く耳を持たなかった。

結局、又、投票と言う事になり、金八は追放と言う事になる。

がっかりした金八は、一人住まいを出て行くが、待っていたマリたちにテントに連れて来られると、丸屋から、君をこの島の支配人にしてやると言われる。

金八の事が忘れられないアンコは、彼からもらったラジオを返そうと追い掛けるが、途中で立ち止まってしまう。

島民たちは、銀造たちがいるテントの前に押し掛け、歌を唄って抗議活動をし始めるが、テント内ではラジオのボリュームを上げて対抗しはじめる。

とうとう、肥後が、笑いガスを噴霧器に入れて撒き出したので、島民たちばかりでなく、駿六たちまで笑いはじめてしまう。

その騒ぎで、音楽を鳴らしていたラジオが地面に落ち、突如臨時ニュースが始まる。

本日16時、大地震が発生して、ナマズ島が沈没すると言うのだ。

後、5時間しかないと言うので、丸屋たちはパニックになる。

一方、金八からもらったラジオを聞いていたアンコも、そのニュースを聞き、仲間たちに知らせに行く。

金八は、何とか、船に島民たちも乗せて助けてくれと懇願するが、その肝心の船は、慌てた駿六が思わず蹴飛ばしてしまったので、誰も乗せないまま、島を離れて行ってしまう。

それを観た肥後は、かくなる上は、あの島民たちの丸木舟でも借りねばならないと言い出すが、海岸にやって来た島民たちが言うには、一隻だけあった丸木舟は、この前、金八が東京に向う際、乗って行って沈めてしまったと説明する。

絶望した駿六は、こんな事なら、最初から島民に島をやっておけば良かったんだと嘆く。

それを聞いた金八は文化人たちの身勝手さを知り、その場で洋服を脱いでしまう。

丸屋たちはパニック状態になり、海岸を右往左往しはじめるが、元の裸に戻った金八は、アンコにこれまでの事を詫びるのだった。

そこにやって来たのはマリで、自分も父親たちの本当の計画を知らなかったので、あなたを騙していたと思われたくない。今は、一人で死ぬつもりだと言い残して、二人の前を立ち去って行く。

社長や肥後、駿六らは、持っていた酒をがぶ飲みしはじめ、全員泥酔状態になっていた。

丸屋社長は、島が沈み、溺れている自分と肥後が、迫って来た大ナマズに飲み込まれる夢を観ていた。

その時、再びラジオがニュースを流しはじめ、先ほどのニュースは、機会の故障で間違いだったと言うではないか。

今後、絶対に、地震が起きる事はないと言う。

それを聞いた丸屋たちは、喜びのあまり、全員抱き合って喜びあう。

島民も、丸屋社長一行もみんな一つになって踊り始め、それを観ていた金八とアンコは、互いを見つめあって微笑むのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「不思議の国のブッチャー」など、SFマンガ家としても知られる横井福次郎のコミック原作を実写化した作品。

いわゆる文明批評をベースにしたコメディになっている。

島に漂着後、1年くらいしか経っていない主人公や島の住民たちが、何故かすっかりターザンみたいな生活になって、文明生活を忘れ去ってしまっている不自然さはあるが、その辺はマンガのお遊び発想と言う事だろう。

名前は以前から知っていたが、シミキンこと清水金一の姿をはじめて観る事が出来た。

この作品を観るかぎり、特に面白い事をやっているようにも思えないのだが、当時は相当人気があったらしい。

若い頃の、堺駿二(堺正章の父親)の姿も珍しい。

そして、何と言っても、ジェーンのような格好で伸びやかな肢体を披露しているアンコ役、勅使河原幸子 の愛くるしさは特筆もの。

自然の象徴の女神のような、このアンコの存在こそが、作品の中核と言っても良いくらい印象的なキャラクターになっている。

最後の方で、時間的には短いものだが、ナマズに飲み込まれる夢のシーンで、特撮が使われているのも、ちょっと珍しかった。