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女探偵物語 女性SOS

1958年、東宝、中山保江原作、若尾徳平脚本、丸林久信監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

朝、出勤するため団地を出た小山伸江(白川由美)は、タクシーを止めるため道路に出たところで、近づいて来たトラックに水しぶきをはねられ、スカートが濡れてしまったので、がっくり来て、スカートを少したくし上げながら拭いていると、通りかかった出前の自転車がこけたり、団地のベランダから子供を背負ったどこかの亭主がニヤニヤ観ているのに気付き、呆れてしまう。

それほど彼女は美貌の持主だったのだが、職業は、帝国秘密探偵社に勤める女探偵であった。

出社して机についた伸江が、すぐに弁当を取り出したのを見た同僚の木下(佐原健二)は、まだ食事を済ませていなかったのかと聞く。

倹約しなけりゃと言い、弁当の蓋を開けかけた伸江だったが、すぐに、部長(小沢栄太郎)から呼出される。

伸江は、今回の事件は示談で済ませたと報告するが、自分の個人的な意見も添えたので、君は事件に私情を挟み過ぎると注意される。

席に戻った伸江が再び弁当に手を伸ばした時、面会人があると坊やが伝えに来る。

その面会人と言うのが、毎回、23才のと言う年の離れた新妻の素行調査を執拗に繰り返している西村豊吉(沢村いき雄)だと分かっている伸江は、木下に代わってくれないかと頼むが、今夜付き合ってくれるのならと条件を出されてしまう。

結局、西村に会い、奥さんは潔白だと強調した伸江だったが、西村は、妻が若いので心配で仕方がないと嘆くばかり。

その頃、部長の机の電話が鳴り、新しい調査依頼が入る。

部屋に戻って来た伸江は、ただりに部長に呼ばれると、新しい依頼人、西條有正の妻綾子(一の宮あつ子)の待つ自宅に向うよう命じられる。

席に戻って来た伸江は、弁当を食べる暇もないと、木下にこぼして出かける。

西條家に到着し、依頼人の綾子から話を聞くと、娘のみどりが付き合っている岩田洋一郎なる人物の素行調査をして欲しいと言うものだった。

その話の最中、二階から降りて来て、母親に小遣をねだるみどり(峯京子)は、まだいかにも世間知らずと言った愛くるしい少女だった。

さっそく岩田の会社の課長(瀬良明)の所へ向った伸江は、ちょうど帰る所だった先客とすれ違い、過張本人からも、あなたも岩田君の素行調査課と聞かれ面くらう。

その後、それとなく、岩田の様子を探ろうと、仕事部屋に乗り込んだ伸江が見たものは、周囲の同僚たちを集め、おもちゃのピストルが発射する吸盤付きのダーツのようなものを的に当てて遊んでいる姿。

岩田本人(平田昭彦)は、そのピストルで、側を通り過ぎていた女子社員(若林映子)のお尻を撃つと言う子供っぽさを持つ人物だった。

岩田の大学時代の友人石黒(中丸忠雄)に話を聞きに行った伸江は、先程、面会した課長の部屋から帰って行った先客が喫茶店でその男と話しているのに気付く。

石黒は、岩田はスキーなんかやった事ないし、女の子を口説けるようなタイプではないのだが…と、相手の話に首をかしげていた。

石黒から話を聞いていた相手(堺左千夫)も、伸江の存在に気付いたようで、近くの椅子に座っていた彼女の組んだ足に気を取られ、思わず興奮したのか、コーヒーなどが乗ったテーブルクロスを引っ張ってしまい、石黒を慌てさせる。

続いて向った岩田の出身大学でも先に来ていたらしいその男に捕まってしまい、同業者のようだから、多外耳情報交換しないかと話を持ちかけられるが、女探偵と見くびられる事を嫌った彼女は、思わず、自分は岩田の許嫁だと答えてしまう。

後日、伸江から報告を受けた綾子は、玩具の鉄砲で女性のお尻にいたずらを…と言いかけた相手の話を最後まで聞かず、それでは変態ではないか、そんな相手の女性関係が分からないとはどう言う事かと激怒するが、調査費用の関係で、この件はここで打切らせてもらうと言い残し、伸江は帰る事にする。

その夜、木下と食事に出かけた伸江は、今回の事例は結婚詐欺ではないかと話すが、聞いていた木下は、植樹中くらい仕事の話は止めようとうんざりした顔で、これから踊りに行かないかと誘って来るが、伸江は、家に洗濯物がたまっているのでダメと断わる。

その時伸江は、近くのテーブルで、あの岩田が見知らぬ男(土屋嘉男)と二人で食事をしている姿を発見する。

それとなく、木下にも教えると、二人を見た木下は、がさつそうに食べている岩田に対し、同伴者の方は、おとなしい紳士風でハンサムな男だと印象を述べる。

その岩田の同伴者の方も、伸江の美貌に気付いているようだった。

その後、木下と一緒に踊りに行ったダンスホールに、又しても、岩田とその同伴者が揃ってやって来て、テーブルにつくや、岩田の方は腕まくり状態でガブガブ酒を飲みはじめるが、同伴者の方は、伸江の動向を見ている様子。

伸江がそろそろ帰らなきゃと言うと、今日はラストまで付き合うと行ったじゃないか、誘ったのは君の方だぜと木下は不満そうな顔をする。

そこに立ち上がって来た岩田の同伴者が、踊ってくれませんかと伸江を誘う。

一方、岩田の方は、そんな廻りの状況には興味なさそうに、相変わらず酒を飲み続けている。

伸江を奪われた形の木下は、独り、面白くなさそうにタバコを吸いはじめる。

踊りながら岩田の同伴者が、連れは自分の従兄弟だと言うので、紹介してくれと頼んで彼のテーブルに座った伸江は、随分お召し上がりになっていますが、そんな事では、奥様になられる方が哀しまれますよと忠告する。

すると岩田は、伸江の正体を怪んだようで、俺はお巡りみたいな女は嫌いだし、そうじゃないとしたら、あんたは単なる色気違いだと言い放ったので、それを聞いた木下が飛んで来て、謝れ、謝らないで、岩田と掴み合いになってしまう。

後日、みどりは、その岩田の同伴者と街で待ち合わせ、電話で、社長をしている父親の西條有正(林幹)に小遣をせびっていた。

呼んだ秘書に、娘が来たら渡してくれと財布から札束を出して渡した西條の元へ、岩田の見物調査を依頼していた探偵(堺左千夫)がやって来る。

その報告書を読みはじめた西條は、岩田に許嫁がいるとの記述に激昂して、自宅にいた妻の綾子に知らせる。

それを聞いた綾子は、自分とは別に、夫も別の探偵に調査を頼んでいた事を知るが、許嫁の事は初耳だったので、伸江に確認に電話を入れるが、伸江はその事は良く承知していると軽く受け流すのだった。

その頃、みどりは、岩田の従兄弟とドライブをしていた。

みどりは、その男の事を岩田洋一郎だと思い込んでいる様子。

運転中のその従兄弟が、しきりに助手席の彼女にキスを求めて来るばかりか、終いには、彼女のワンピースのファスナーを降ろそうとするので、恥ずかしさから嫌がっていたみどりだったが、あなたとだったら天国に行っても良いと言うので、それを聞いた従兄弟は、僕も天国に行きたいと思っていたんだと言い、ハンドルを切ると、海岸に車を乗り入れ止める。

車の中で、みどりを襲おうとした従兄弟だったが、さすがに拒否されたので、気まずそうに体裁を取り繕うと、そのまま帰宅する事にする。

その後、岩田のアパートの部屋の前で様子を伺っていた伸江の前に、ちょうど岩田本人が帰って来たので、ドライブはいかがでしたか?と皮肉まじりに問いかけると、岩田は怪訝そうな顔をする。

近くの喫茶店で岩田が打ち明けた所によると、従兄弟は時々、自分の名前を騙って女を引っ掛けているらしく、自分も迷惑していると言うのだ。

従兄弟の住所を聞いても、決まった住まいは持たないらしく、適当に女の所を渡り歩いているのではないかと言う返事。

その言葉通り、岩田民夫(土屋嘉男)は、バーのママ(中田康子)のベッドの上で、一人で南京豆を食べ続けているママといちゃつきながら、みどりにしらじらしい電話を入れていた。

翌日、探偵社に出社した伸江に、部長が、例の偽者が西條家に現れた。今、木下を張込ませてあると伝える。

警官姿に化けた木下は、母親の綾子と打ち合わせ、伸江が到着するまで、偽者を引き止めてるようアドバイスしていた。

木下が、踏み台に乗って、窓の外からみどりの部屋を覗いてみると、偽者、岩田民夫はみどりをダンスを踊っていた。

その最中、民夫がみどりにキスしようとして、とうとうみどりも応じてしまったので、興奮した木下は踏み台諸共、転がってしまう。

みどりの部屋の前では、そわそわした綾子が、女中ふみ(野口ふみえ)が持って来た茶菓子のケーキを受取ると、自ら部屋の中に入り、そろそろおいとましようかと言う民夫を、もっと引き止めるよう、みどりにけしかけるのだった。

そこへ、ようやく伸江がタクシーで乗り付けて来る。

玄関先の木陰に隠れていた木下に気付き合流した伸江だったが、ちょうど玄関から出て来た民夫を追って出て来たみどりが、目の前で濃厚なキスをし始めたので、思わず目をつぶってしまうのだった。

興奮した木下の方は、思わず伸江の手をつかむと、その手のひらにキスしようとしかかったので、ふと我に返った伸江は、仕事、仕事!とごまかして立ち上がるのだった。

民夫を追って、盛り場にやって来た二人だったが、偶然、そこで西村豊吉に遭遇してしまい、目の前の喫茶店に妻の浮気相手がいると押し込まれてしまう。

喫茶店の中にいたのは、西村の妻(小泉澄子)とあのライバル社の探偵だった。

どうやら、妻の方も、いつも伸江と会っている亭主の浮気を心配していたようで、目の前に洗われた二人の姿を見て、相手はこの人よ!と興奮して探偵に伝えるが、事情を察した二人の探偵は、各々の依頼人にこれは単なる勘違いだと説得する事になる。

その後、木下をその店の窓際に座らせ、そこから見える民夫が入ったらしいバー「ナイン」を監視するよう命じた伸江は、派手な化粧に変装すると、自ら「ナイン」に入ってみる事にする。

ママとキスして、チョコレートの味がすると浮気を見破られていた民夫だったが、ママはそんな事で起こるような器ではないらしく、三千円の小遣を素直に出してくれていた。

ママの自室から店に出た民夫は、そこで独り飲んでいた伸江を発見、声をかけるが、伸江があっさり帰ってしまったので、追い掛けて外に出る所で、後ろから来たママから励まされる。

その後、別の店で一緒に酒を飲んだ民夫は、明日の5時、新橋の「リ−ツ」と言う店で会おうと、勝手に約束してしまう。

店を出た伸江を待っていたのは、心配してつけて来ていた木下だったが、伸江は芝居がばれると叱りつけるのだった。

その後、西條家に出向き、両親とみどりの前で、民夫の素性を全てさらけだした伸江だったが、それを聞いていたみどりは、自分だけ子供扱いされたと逆上してしまう。

相手がどんな人間だろうと、好きになってしまったものは仕方ないじゃないか。もう、自分は子供ではなく、自分で天国に行く方法だって知っていると言い残し、二階の自室へ駆け上がって行ったみどりを追った伸江は、あなたなんか勝手に天国へ行ってしまえば良いんだと突き放し、その頬をぶち、もっと、自分を大切にしなさいと言い聞かすが、興奮状態のみどりは、探偵なら、人の恋に立ち入る権利があると言うのか?探偵なんて、野良犬だと言い返して来たので、又、頬をぶってしまう伸江だった。

そんな伸江の行動を知った木下は、二人きりになった時、深入りし過ぎだと注意するが、子供が溺れかかっているのを見ていられない!自分は一人でやると興奮覚めやらぬ様子。

そんな言葉を聞いた木下は、自分も協力すると言わざるを得なくなる。

みどりは、一人で岩田のアパートへやって来て、ちょうど銭湯に行こうと部屋から出て来た岩田に、岩田洋一郎はいるかと聞く。

岩田が、それは自分の事だと答えると、はじめて、嘘をつかれていた事を悟ったみどりは、部屋に上がるよう勧める岩田を無視して逃げ帰るのだった。

その頃、伸江は「リ−ツ」で民夫と踊りながら、自分は家出して来たのだと嘘をついていた。

罠にかかったと思ったのか、民夫はあなたの信頼に答えますよと嬉しそうに囁く。

名前を教えてくれと迫られた伸江だったが、とぼけて、化粧直しに行く振りをして、ホテルで待ち受けている木下に確認の電話を入れる。

伸江が用意したホテルの隣に陣取っていた木下は、ホテルのボーイ(加藤春哉)を買収して、盗聴器を隣の28号室の壺の中に忍ばせて、聞こえ具合を隣の部屋でテストをしていた。

木ノ下の言われるまま、28号室で「有楽町で会いましょう」を唄い出すボーイ。

同じレコードを自室のベッドで聞いていたのはみどりだった。

綾子は、まだみどりは心変わりしていないようだと電話で伝えていた。

その後、伸江が用意していたホテルに来た民夫は、彼女がこんな所をしているのを意外がるが、伸江が、私だって恋人の一人や二人いなかった訳じゃないのよとごまかすと、チェッ!お古だったのかと聞こえないように呟く。

ボーイに案内され28号室に入った伸江だったが、すぐにお手洗いはどこかと廊下に飛び出すと、部屋の中にありますがといぶかしがるボーイに連れられ、受付の電話の所まで来ると、隣の部屋で待機していた木下に再度電話を入れ、みどりが来たかどうか聞くが、まだ来ないので伸ばしてくれと言われてしまう。

28号室に戻った伸江は、待ちかねていた民夫から襲われそうになるが、すっかり酔いが醒めたので、もう少し飲もうと牽制する。

一方、隣の拡声器で、その伸江と民夫の会話を聞いていた木下も、ヤケになって、持ち込んでいたポケット瓶をラッパ飲みするのだった。

いらついた彼は、廊下に出て28号室の前に立つが、みどりはまだ来ないかとボーイに確認する。

場が持たなくなった伸江は、ラジオをつけて民夫に踊りを誘う。

その音楽を聞きながら、隣室の木下も又、独り踊りの真似を始めるのだった。

その内、あまりにもじれて来た民夫は、ベッドに伸江を押し倒してしまう。

その様子を拡声器で聞いた木下は、思わず28号室に電話を入れる。

民夫が出てみると無言電話だったので、すぐに切って、また伸江に挑みかかるが、又電話がかかって来たので、今度は伸江が出て、とんま!電話間違えないで!と、わざと木下に怒鳴り付けるのだった。

そんな木下の部屋に、ようやくやって来たみどりをボーイが案内して来たので、拡声器の前に連れて行こうとするが、みどりは、こんな芝居には乗らない、こんな事をしているあんたたちの方が、よっぽど岩田さんより悪人よと言いと、拡声器を床に投げ付けようとする。

その時、コードが外れて、盗聴器の声が聞こえなくなってしまう。

その頃、民夫は、酔いと疲れで、本当に寝てしまった伸江をベッドに運んでいた。

帰りかけるみどりの腕を捕まえた木下は、隣の部屋にいるお伸さんは、僕の恋人なんだと訴える。

すると、さすがに木下らの真剣さが伝わったのか、部屋に戻って来たみどりは、拡声器の声が途切れている事に気付き慌てる木下に、コードが外れている事を教えてやるのだった。

繋がった拡声器からは、伸江の苦しげな声が聞こえて来た。

矢も楯もたまらなくなった木下は、部屋を飛び出し、隣の28号室に入り込むと、伸江に乗りかかっていた民夫に殴り掛かる。

みどりもやって来たのに気付いた民夫は誤解だとごまかすが、木下は眠っていた伸江を揺り起こす。

目覚めた伸江とみどりの前で、再び民夫と木下は殴り合いの喧嘩を始める。

盗聴器が入っているとも知らず、壺を持ち上げた伸江は、床を転がる二人に降り降ろすが、当ったのは木下の方だった。

木下が伸びてしまったので、立ち上がった民夫だったが、後ろに立っていたみどりが、思いっきり酒瓶で頭を殴って失神させる。

事件が一段落したある日、一緒に野球を観に行く約束で、団地の前まで迎えに来た木下だったが、道路を渡りかけた所に通りかかった散水車に水をかけられてしまう。

それを反対側から観ていた伸江は、呆れながら、アイロンかけてやるから部屋まで来いと言うので、入れてくれるのかと喜んだ木下だったが、ただし、あなたは部屋の外で待っているのよと釘を刺した伸江は、木下を連れて団地に戻って行くのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

上映時間58分の中編で、岡本喜八監督「若い娘たち」の併映だった作品である。

実話を元にした手記が原作らしく、どの程度フィクションとしての脚色が加えられているのか不明だが、正直な所、やや退屈な展開になっている。

退屈になっている原因は、活躍する女探偵の行動に今一つ感情移入できないからである。

確かに、彼女の、若い同性の危機を守ってやりたいと言う正義感は分かる。

しかし、やはり、職業の域を超え、男女関係に第三者が首を突っ込むと言うおせっかい振りには違和感を感じざるを得ない。

観ているこちらとしても、みどりの気持ちの方が正しいように思えてしまうのだ。

これを、結局、主人公の大人の判断の方が正しかったという風にまとめている所が、今の感覚とは少しずれてしまった所のように感じる。

ただし、女性の目から見ると、又、違った受け止め方があるかも知れない。

話の微妙な違和感を除けば、ちょっとバンカラ風のキャラを演じている平田昭彦とか、二面性を持つ土屋嘉男、色っぽい大人の女性を演じている中田康子など、俳優たちの芝居は面白いと思う。

チョイ役ながら、若林映子の姿が見れるのも貴重だし、ホテルのボーイ役の加藤春哉の歌声が聞けるのも楽しい。

最後になったが、この時代の白川由美の大人っぽい美しさには参る。