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日本一の断絶男

1969年、東宝+渡辺プロ、田波靖男+佐々木守脚本、須川栄三監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

「月の石を採取せよ」と、うるさそく呼び掛けるヒューストンからの声(納谷悟朗)に目覚めさせられた宇宙飛行士(植木等)は、嫌な夢を観たとボヤキながら、着陸船から月面に降り立つと、「この一歩は人類にとって偉大な一歩だが…、腹減った〜」と洩らした所で目が覚める。

日本(ひのもと)一郎(植木等)は、大阪にある橋の下の船の中で目覚める。

空腹を覚えた彼は、橋の上でおでんを食べている匂いを嗅ぎ付けうらやましがるが、巧い事に、そのおでんの串刺しが一つ、目の前に落ちて来る。

それを不精にも、寝たまま拾おうとした所にやって来たのが、この船の住人だと言う丸山竹千代(なべおさみ)だった。

丸山から、すぐに出て行くように言われた一郎だったが、頑として動こうとしない。

そんな二人が言い争っている所に訪ねて来たのが、丸山の幼馴染みミミ子(緑魔子)で、彼女は、丸山が一流会社のサラリーマンになったと思い込んでおり、自分も結婚相手を探、故郷から出て来たのだと言う。

しかし、丸山は、そんなミミ子に田舎に帰れと冷たい態度を取る。

その後、おでん屋に一郎を連れて来た丸山は、自分は大学に行っていたものの、ゲバ棒を振るっていたばかりに退学になってしまい、その事を故郷のおふくろには打ち明けられず、一流会社のサラリーマンになったと嘘の連絡をしたのだと教える。

それを聞いた一郎は、このおでんをおごってくれるのなら、自分が就職の世話をしてやっても良いと言う。

喜んだ丸山は、自分は広告代理店に勤めたいのだが…と、希望を伝える。

翌日、久しぶりにめかしこんで、一郎の来るのを待っていた丸山だったが、太郎が連れて来たのは、どう見ても日雇い労働者の一団だった。

ニコヨンなんて嫌だと逃げようとする丸山の様子を見た親方風の男(橋本功)は、話が通っていない事に腹を立て、仲介者役の一郎諸共、現場である万博会場に連れて行く。

タイトル

そこで、大量の土砂を取り払うと言うのがその日の仕事だったのだが、一郎だけは、物陰で寝てサボっている。

それを見つけた親方が、叱りつけている所にふらりと現れたのが、ミミ子で、すっかり小奇麗な衣装を着ているので、どうしたのかと聞くと、バーのホステスになったのだと言う。

その指には、ママから揃えてもらったと言うダイヤの指輪までしている事に気付いた一郎は、それを抜いて、見ている振りをして、土砂の山に捨ててしまう。

そして、今の100万円のダイヤの指輪を見つけたものには、一割の10万円くれるってと、大きな声を張り上げたので、それを聞いていた親方、丸山を始め労働者たちは、一斉に、土砂を撤去させはじめる。

このおかげで、仕事はあっという間に終了してしまうが、指輪は出て来なかった。

それを怒るミミ子に対し、一郎は、袖の中に隠していたダイヤを出してみせる。

最初から投げてなどいなかったのだ。

すっかり彼のトリックに乗せられ、バテバテになった親方たちを尻目に、「♪今日は〜、今日は〜…」と陽気に唄いながら、その場を去って行く一郎だったが、ミミ子と丸山がその後を追い掛けて来る。

ミミ子はすっかり一郎の頭の良さに惹かれ、結婚してくれと言い、丸山の方は、先日おごったおでん代と今回の仕事の前金を寄越せと言うのであった。

しかし、そんな二人を振払い、東京へ向う新幹線に乗り込んだ一郎は、またもや、しつこく追って来た丸山に見つかってしまう。

そこに車掌(小松政夫)が近づいて来たので、一郎は、切符を丸山に手渡すような振りをしてその場を去る。

しかし、その渡されたものは、一郎の名刺でしかく、結局丸山は、二人分の切符代を支払う事になってしまう。

東京につき、トイレを探していた一郎は、ようやく開いているトイレを見つけ、用を足して、外に出た所で、又、丸山に見つかってしまう。

丸山から、これまで立て替えた金をこの場で返すか、自分をサラリーマンにしてくれるか、故郷の母親に真実を話すと脅かしているミミ子の口を封じるためにあんたがあいつと結婚するか、三つに一つを決めてくれと迫れた一郎は、君が希望していたのは広告代理店だったなと聞くと、そのまま丸山を、八百広告と言う会社に連れて行く。

その会社では、今正に、黒川社長(飯田蝶子)の提案で、業界大手、伝広社に合併吸収する道を選ぶかどうかの議論をしている最中だった。

課長の泉谷(人見きよし)は、断固反対を主張していたが、そこに勝手は入り込んだ一郎は、吸収合併結構じゃないかと持論をぶちあげる。

有名な会社の社員になれた上に給料は良くなるし、大きな会社だから仕事をサボっても目だたなくなるしで良い事づくめじゃないかと言い、その場の雰囲気を一挙に賛成に変化させてしまう。

そんな一郎の正体を聞いた泉谷だが、太郎の適当な返事を聞いている内に、相手が伝広社の人間であると勘違いしてしまう。

それにすぐさま便乗した一郎は、女子社員に伝広社、日本太郎と書かれた名刺をすぐさま作らせる。

その名刺を持って、泉谷らを従えた一郎は、伝広社が行き付けのバーに出かけると、いつものように会社のツケでとママ(市川和子)に名刺を渡し、タダで飲みはじめる。

そこへやって来たのが、本物の伝広社の部長山崎(藤岡琢也)だった。

彼は、ママから怪しい人物が来ていると耳打ちされると、確かめてやろうと言いながら一郎たちのテーブルに近づき、どこの部署かと太郎に問いかける。

近々吸収される会社の者だがね…と言う一郎の曖昧な返事を聞いた山崎は、すぐに相手を八百広告の社員と早とちりをし、今度、自分がそちらに出向されるかも知れないのでと、急に低姿勢になる。

そこに姿を見せたのが、この店で働いていたミミ子だった。

彼女から逃げようと、「恋の奴隷」を唄いながら出口に向った一郎だったが、そこに現れたのは、本物の奥村チヨだった。

やがて、八百広告は伝広社に吸収され、山崎が出向して来る。

泉谷課長は、係長に降格されていた。

正体がばれた丸山と一郎も会社に姿を見せていたが、山崎が相手にしないでいると、そこに現れたのがミミ子で、いつもの店での付き合いをちらつかせ、二人を社員にするよう山崎に迫るのだった。

その甲斐あって、無事、伝広社の社員に採用された二人だったが、一郎は、山崎から倉庫に呼出されると、そこに山積みされたテーブルや椅子を一人で片付けろと命じられる。

しかし、山崎の姿が見えなくなると、一郎は、積んであったソファーに横たわると、又しても居眠りを始める。

そこにやって来たのがミミ子で、相変わらず女嫌いの一郎は、男に働かせて自分だけ楽をしようとする女なんか大嫌いだと言い、彼女を抱きかかえてソファーの上に乗せると、スタコラ逃げ出すのだった。

その後を追って来たミミ子は、路上に停めてあった車の中を通り抜けて行った一郎と、同じコースを取ろうと車に飛び込んだ所で、突如乗り込んで来たギャングに取り囲まれ、そのまま車は走りはじめてしまう。

それは、偶然にも、映画の撮影のロケに紛れ込んでいたのだった。

一方、アポロ食品を担当させられていた丸山の方は、スポンサーがテレビを降りると伝えて来たので、山崎部長から叱りつけられていた。

命を賭けてまでやり抜けと無茶な事を言われた丸山は、ヤケになって公園で寝ていたが、そこに同僚の久美子(高橋厚子)がやって来て、あの部長は、元八百広告の社員をいじめをするのが趣味なのよと慰めるのだった。

その頃、一郎の方は、仁侠映画のスター「緋桜ミミ子」の話題をする学生相手に麻雀をやっていた。

何と、あのバーに勤めていたミミ子が、今や、桜木ミミ子と言う映画スターになっていると言うではないか。

その麻雀勝負に負け、そのまま金も払わずに帰ろうとした一郎は、学生たちに取り囲まれ、「資金確保を妨害された」とアジられるが、逆に、自分から、今こそバリケードを作って自由闘争を続けようとアジり返す。

それを聞いた周囲の学生たちは、バリケードを作ろうにも、机や椅子は、今や官憲の手に押さえられているじゃないかと言われた一郎は、彼らを、自分が仕事を任されていた倉庫に連れて行き、まんまと学生たちに、中の机や椅子を持って行ってもらう事に成功する。

すっかり、綺麗に片付いた倉庫に残った一郎は、さて今夜はどこで寝ようかと、住む所を物色しながら街に出る。

目についたマンションの一室に決めた一郎は、その管理人(熊倉一雄)から家賃4万、敷金20万、権利金24万を請求されるが、金は持ってないと言い、呆れられる。

怒って、つかみ掛かって来た管理人を押し返した一郎は、すぐに新聞に投書しろと言い出す。

自分の暴力を訴えられるのかと怯えた管理人だったが、そうではなく、自分は定年を来年に控えた倉庫番だが、急に馘首され、今、一家六人で路頭に迷っていると書けと言うのである。

その通り実行した数日後、全国から励ましと、義援金が届きはじめる。

その金を、管理人と山分けし、一郎はまんまとそのマンションの住人になってしまう。

久々に会社に出社した一郎は、丸山がしくじったアポロ食品を担当しろと、山崎部長から命ぜられる。

さっそく、アポロ食品の宣伝担当、清水重役(千秋実)を訪ねた一郎は、重役が見ていたテレビドラマを、スターもいない古臭いドラマだと、口を滑らせてしまう。

ところが、その古臭いドラマこそ、伝広社が作っていた番組で、それに嫌気がさしてスポンサーを降りる事にしたと言うではないか。

スターの桜木ミミ子が出演してくれたら…とぼやく清水重役の言葉を聞いた一郎は、ミミ子なら兄弟みたいな関係なので、いつでも出演させられると言ってしまう。

それが出来たら、スポンサーを続けても良いと言う返事を受けた一郎は、すっかり御機嫌になり、パチンコ屋で遊んでから会社に戻る。

景品でもらったチョコレートを久美子に渡して、部長に報告に行った一郎だったが、すっかり話がまとまったと思い込んだ山崎は、今晩、自分が本社の森田局長が、柳橋の「はまかぜ」と言う料亭で、アポロ食品の清水重役と打ち合わせるので、君はもう良いと言うではないか。

手柄を一人占めするつもりなのだ。

その夜、先に料亭で待ち受けていた山崎部長は森田局長(北竜二)に、今回の話は自分がまとめたと吹聴していたが、そこにやって来たのが、日本一郎。

目の前に座った一郎を見た森田局長が、君は誰かと聞くと、アポロ食品の名を刷った名刺を差し出すではないか。

そんなものはデタラメだと、必死に否定しようとする山崎部長だったが、そこに清水重役が入って来る。

その清水重役にすり寄った一郎は、ドラマなんか作るより、ミミ子でコマーシャルを撮った方が良いと提案する。

そして、山崎らの目の前で、自分は立場がなくなって会社を首になったので、そちらの宣伝部に入れてくれないかと言い出す。

それを聞いた清水重役は、あっけに取られながらも、乗りかかった船と、一郎の要求を飲む事にする。

さっそく、撮影所にやって来た一郎は、偶然出会ったミミ子にコマーシャルに出てくれと頼むが、一郎のせいで女優なんかになった恨みがあるのに加え、コマーシャル嫌いのミミ子は、きっぱり拒絶するのだった。

その後、スタジオで撮影する賭場のシーンに向ったミミ子だったが、何と、その本番中、一郎が勝負すると出て来たではないか。

成りゆき上、壺を振ったミミ子だったが、何と、一郎が勝ってしまう。

そのまま、勝負は続けられ、その後も勝ち続けた一郎は、今日からこの姉さんの命は、自分が預かると啖呵を切ってしまう。

その後、ミミ子は、アポロラーメンのコマーシャルに出演せざるを得なくなり、売れ行きはうなぎ上りになる。

その功績が認められ、アポロ食品の宣伝部長に昇進した一郎だったが、毎日、机で寝ているばかり。

伝言を伝えようと起こそうとしても、頑として起きない一郎に業を煮やした秘書(松本めぐみ)は、電話で一郎を呼び起こすと、明日から、箱根で幹部研修会のセミナーに出席するように伝言する。

休息に行けると喜んで出かけた一郎だったが、そこで待っていたのは、二人の教官(二瓶正也、桐野洋雄)によるスパルタ特訓だった。

ウサギ跳びにトランポリンと、体力の全てを使い果たした一郎だったが、その夜、教官二人が、虐めて金がもらえるとは答えられないと喜んでいる姿を見て、思わず庭先から石を投げ付けるのだった。

その後、自前でフィットネスクラブに通い、体を鍛えていた丸山の所に来た一郎は、もっと良い商売が見つかったから、自分と一緒にやらないかと誘って来る。

しかし、今の会社を辞めるつもりのない丸山はきっぱり断わる。

その返事を聞いた一郎は、何か手紙を書きはじめるのだった。

翌日出社した丸山は、山崎部長から、速達で退職願を受取ったが、かねがね一人人員整理してくれと本社から言われていただけに助かったと言われ、呆然とする。

そんな丸山にかかって来たのが、一郎からの電話で、すべて太郎がやった事だと気付いた丸山は、お前なんかと一緒に仕事ができるかと怒鳴るが、結局、退職金をはたいて「日本経営研究会」なる会社を始める事になってしまう。

そこへ、久美子が訪ねて来たので、張り切って仕事の内容を説明しはじめた丸山だったが、一郎がスイッチを入れた8mmから映し出された映像が、ブルーフィルムである事を知った途端、逃げ出してしまう。

太郎が考え出したセミナーの内容と言うのは、幹部候補生たちを集めて、賭博やブルーフィルムを見せ、遊びを覚えさせる事だった。

たちまち、そのセミナーは人気を呼び、会社は繁昌し出すが、ちょうど花札賭博をやらせていた丸山の所に、誰の許しを得て、賭場を開いているんだと乗り込んで来たのが、その辺一帯を仕切っていた北斗組の代貸、ドモ岸こと岸井(藤木悠)だった。

その岸井らを従え、そっちの代貸しは誰だと、寝ていた一郎の所にやって来たのが北斗組の親分、土井(ハナ肇)だったが、日本刀を突き付けても、寝ぼけたまま動こうとしない一郎の度胸を気に入った土井は、うちの客人にならないかと誘って来る。

飲んで喰ってゴロゴロしているだけで良いと聞いた一郎は、即座に了承するのだった。

一方、経営セミナーの会社の方は傾いてしまい、独り残っていた丸山の元にやって来た久美子は、変な事をして儲けている頃よりも、今のあなたの方が良いと励ます。

そこに、ミミ子もやって来て、コマーシャル嫌いの自分が、アポロだけに出た事で、変な噂を立てられ、週刊誌に追われている所だと言う。

その頃、北斗組でのんびり酒など飲んでいた一郎は、今から、関東組に殴り込みに行くと聞かされ、怖じ気付いて、勝手口からそっと逃げ出そうとするが、出てみたら、そこには親分の土井以下、組の全員が揃っている所だった。

土井が言うには、今正に、浜の十字組と関東組が組む、固めの盃をかわしている最中だと言う。

成りゆき上、一人で向うしかなくなった一郎だが、ドモ岸もお供について行く事になり、ますます逃げられなくなる。

その途上で出会ったのがミミ子で、週刊誌に追われているので、あんたが私と結婚してくれなくては辻褄があわなくなると迫って来るが、一郎は、今こそ、俺を男にしてくれと見栄を張る。

気を利かして、少し離れたところで、その二人の様子を見ていたドモ吉は、仁侠映画の名場面を連想して思わず涙するのだった。

ミミ子を振り切って、再び、ドモ吉と共に、手打ち式の会場前までやって来た一郎は、一旦、近くの材木置き場に引き返すと、大物を気取って、立ち小便をし、ドモ岸にもすすめる。

その度胸の良さに感心しながら、ドモ岸が連れションを始めた後ろから、一郎は殴りつけて気絶させるが、逃げ出そうとして振り向くと、目の前に警官(二見忠男)が立っているではないか。

万博前だから、軽犯罪法を厳しくすると言う警官に、そんな小事で点数稼ぎするより、もっと大物を捕まえる気はないかと太郎は耳打ちする。

会場では、ちょうど、関東組と十字組が盃をかわしている真っ最中だったが、そこに乗り込んで行った一郎は、いきなり関東組の親分(清水元)の首にドスを突き付ける。

その場に列席していた組員たちは、部屋の隅に隠していた大量の武器を出して応戦しようとするが、そこへ太郎の合図によって、警官隊が乗り込んで来る。

ところが、その場にいた国会議員の大須賀(富田仲次郎)が、警官たちを威嚇しはじめたから、立場は急に逆転してしまう。

ここにある武器は皆玩具だと言い包めようとしたので、マシンガンを手に取った太郎は、それで天井を丸く撃ち抜いてしまう。

その後、追われる立場になった一郎は、必死に木場周辺を逃げ回るが、そこに、巨大なコンニャク製の風船を作っている、貧乏発明家の小山(谷啓)の家があった。

長年、研究を進めていたが、まだ一度もとんだ事がないと言う代物で、子沢山の妻(春川ますみ)から、今日の食い扶持を何とかしてくれと催促されていた。

そんな風船置き場に逃げ込んだ一郎は、足を、風船を留めてあった紐に引っ掛けてしまい、ユラユラと浮上しはじめた巨大風船にしがみついて、そのまま空に逃げてしまう。

このニュースは大々的に新聞に載り、たちまち発明者小山は、風船で儲けて会社の社長になる。

その小山から、宣伝に貢献してくれたお礼に、わが社の重役として来てくれないかと誘われた一郎だったが、会社勤めなんかには興味ないと断わってしまう。

礼をしてもらえるのなら、誰もいない静かな土地を一坪か二坪で良いから買ってくれないかと申し出る。

その夢が叶えられた日本一郎は、広々とした草原のど真ん中に自分の地所を手に入れ、そこでようやく寝ようとした瞬間、近くから時ならぬ悲鳴を聞く。

何事かと起き上がると、近づいて来た山男風の男下村(安田伸)が、実は、30年間研究して、この近くに石油が出る土地を発見したので買ったのだが、実はそれは計算違いで、本当の候補地は、今正に、一郎が買った土地にあるのだと言う。

何とか、自分の土地とこの土地を交換してもらえまいかと頼み込んで来たので、欲のない一郎はあっさり承知する。

そうして、より広い土地と、礼として握り飯を手に入れた一郎は、適当な所に寝っ転がって食べはじめるが、そこにやって来たのがミミ子で、もうスターを辞めて来たのだと言う。

又、面倒な事になったと、ミミ子からマッチを借りて、一郎が歯を掃除しはじめた時、彼が寝ていたすぐ脇から大量の石油が噴出して来る。

やはり、石油の鉱脈があったのはこちらの土地に方だったのだ。

噴出する石油を遠くから見て、愕然とする下村。

その石油を元に、「日本一石油会社」の社長と社長秘書になった一郎とミミ子だったが、太郎は、頻繁にかかって来る電話の対応に嫌気がさしていた。

ヤケになって、一郎が電話線を引っこ抜いた時、やって来たのが丸山と久美子で、今度結婚する事にしたので、仲人をして欲しいと言う。

それを聞いた一郎は、何か、結婚祝をやろうと言い出し、二人にこの会社をそっくりやると言い、自分はさっさとエレベーターに乗って逃げ出す。

しかし、ミミ子だけは、そんな一郎をしつこく追い掛けて行くのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「日本一〜」シリーズ第7弾。

監督が、初期の古沢憲吾から須川栄三に変った事もあるが、明らかに時代が変化しており、初期の頃とはがらりと雰囲気が違う内容になっているのが興味深い。

何よりも、主人公が、出世を夢見るサラリーマンではなく、会社や出世などに全く興味ない怠け者になっている事。

女性にも全く興味がない…と言うよりも、はっきり女嫌いだと言っている。

丸山の恋人、久美子が会社に来た時など、わざと彼女にブルーフィルムなど見せて追い出すなど、その女嫌い振りは徹底している。

これは、初期の頃の設定とは180度方向性が違う。

主人公が、職を転々とし、その度に調子良く地位や金を手に入れるアイデアマンである所は初期設定に似ているのだが、主人公の望みは、金とか名誉ではなく、ただゆっくり惰眠をむさぼる事だけ。

すでに、欲望の対象がすっかり変ってしまっているのだ。

時代は学生運動が終盤を迎えている時代であり、映画は仁侠映画が全盛期を迎えている。

もはや、サラリーマンなどに憧れる風潮はなくなっており、かつての脳天気なサラリーマンヒーロー像も変化せざるを得なかったのだろう。

挿入される歌のシーンなども、おとなしいフォーク風のものに変化しており、 全体的に、元気みなぎるエネルギッシュさを誇っていた初期のイメージとは明らかに雰囲気が違うし、ヒロインを演じている緑魔子も、典型的なヒロイン像と言う感じではなく、かなり癖があり、好みの分かれる女優だと思う。

調子良さ、ナンセンスと、醒めた時代風潮の両方を取り込んだ、相変わらず盛り沢山なストーリー展開なのだが、それが面白さに直結しているかと言うと、微妙な感じがする。

冒頭に登場する、アポロ11号の月着陸シーンを彷彿とさせるパロディや、建設中だった大阪万博の工事現場の様子が興味深い。

ちらりと顔を見せる、アポロ食品の秘書役を演じているのは、加山雄三夫人、松本めぐみであり、ハナ肇の付き人だったなべおさみが、準主役を勤めているのも時代の変化を感じる部分である。