TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

風が呼んでる旋風児
銀座無頼帖

1963年、川内康範原作、織田清司+保坂潔脚本、野口博志監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

仕事の帰り、二階堂卓也(小林旭)と羽田に寄っていた情報屋政吉(高品格)は、滑走路内を走る救急車を見つけ、何事かと好奇心をむき出しにする。

出発したばかりの飛行機がすぐに戻って来たので、どうやら急病人が出たらしい。

その飛行機から、到着した救急車に担架で運び出されたのは、盲腸の急患らしい。

しかし、二階堂が興味を示さないので、政吉は、帰りは自分が運転して帰ろうと言い出す。

政吉は、無免許歴三年と言うとんでもない男だったので、二階堂は断わるが、政吉は頑として自分が運転すると言って聞かない。

仕方なく、政吉が運転する車に乗り込んだ二階堂は、しばらく後ろを走っていた車に乗っていたのは、馴染みの中村警部ではないかと気付く。

その頃、救急車が患者を運び込んだ大森総合病院に、手術は行われたか確認の電話を入れた消防署員は、近くに知り合いの医者がいると付き添いの男たちが言い、患者をどこかに連れて行ったと病院から聞かされ、首を傾げていた。

その患者が運び込まれたのは、「田沼医院」と言う街の開業医だった。

付き添いの男二人から拳銃を突き付けられた田沼(清水将夫)と看護婦の宮原(松尾嘉代)は、強引に手術しろと迫られる。

田沼は、看護婦に目で合図をしながら、非常ベルを押させようとするが、相手に気付かれ失敗してしまう。

その頃、時価7億円相当のダイヤが盗まれ、サンフランシスコに持ち運ばれそうだと言う情報を聞き付け入国管理事務所に来ていた中村課長(梅野泰靖)らは、そのサンフランシスコ行きの旅客機から急患が降りたものの、その搬入先である病院から患者が消えた話を聞き、さっそく大森病院に向う。

田沼医院の手術室では、寝かされた患者が盲腸ではないと診断するが、拳銃を突き付けていた須田正次郎(深江章喜)から、患者の大腿部を開けと命じられる。

戸惑う田沼は、さらにこれを入れろと、ビニールに包まれた棒状の物を見せられたので、そんな消毒もしていないようなものは入れられないし、看護婦も今手術の手伝いで出来ないと断わると、平山は、自分で消毒すると言い出す。

その時、玄関にチャイムの音が聞こえ、慌てた須田が、玄関に出てみると、交通事故で腕を骨折した患者がいるので手術してもらいたいと、救急車の隊員が言う。

担架に乗せられていたのは政吉で、付き添っていたのは二階堂だった。

しかし、須田は、今、胃ガンの手術中で、1時間くらいかかりそうなので、他に回って欲しいと断わる。

その話を聞いた二階堂は、電話を借りると言いながら、それとなく手術室を覗き込み、帽子掛けにかかっていた帽子を確認した後、近くの病院に連絡を済ますと、素直に病院を出て行く。

一方、その手術室の様子を、窓の外から伺っている外国人の姿もあった。

そこへ、玄関から子供が入って来たので、又須田が、追い出そうとすると、この家の子供なのだと言う。

その頃、警察では、宝石強盗の三人組の名前を特定していた。

須田正次郎、盲腸の患者だと思われる秋田浩介(里実)、そして平山八郎(山田禅二)だった。

高橋病院と言う病院で診察を受けた結果、腕は別に骨折していないと判明した政吉に同伴していた二階堂は、偶然、盲腸炎の患者と二人連れの男が来ていないかと問い合わせる警察からの電話に看護婦が答えている声を聞く。

すぐに、先ほど断わられた病院の事を思い出した二階堂は、大田区大森の田沼医院に戻るが、そこには、憔悴した田沼と、自宅から駆け付けて来たと言うその妻美代子(高橋由美)がいた。

先ほどの患者はどこにいるのかと聞いた二階堂だったが、田沼は何も答えようとしない。

しかし、由美子の方は、厚志(佐藤公明)はどうなるのかと夫に詰め寄る。

どうやら、二人の長男である小学五年生で9才の厚志と言う少年が誘拐されて、消えた患者の事を口止めされているらしかった。

しかし、田沼は、盲腸の手術をしたが、信用しなかったのだろうと言うだけ。

その後、銀座の二階堂事務所では、京子(松原智恵子(と政吉が、田沼医院の誘拐事件に関して話し合っていた。

田沼は、あと一週間の辛抱だと誘拐犯に言われたと言うのだ。

政吉は、それは抜糸をするまでに一週間かかると言う事だろうと、鋭い指摘をするが、実はそれは、二階堂の受け売りだった。

そこに、盲腸の男が見つかったとの電話が入る。

出入国管理事務所で尋問を受けていた秋田は、何もしゃべろうとしない。

咽が乾いたと言う風なジェスチャーを観た中村課長は、ボーイに水を持って来させるが、コップを置いて部屋を出たボーイは、そこで待機していた二階堂とぶつかり、盆を落としてしまう。

その盆を拾ってやった二階堂は、二人の見覚えのある顔が、そこに写っているのを見逃さなかった。

田沼病院で出会った二人組だった。

運ばれて来た水を飲んだ秋田は、急に苦しみだしたので、毒を盛られたと気付いた中村課長は、ボーイの後を追わせると共に、救急車の手配をする。

救急車を先導して来たパトカーは、何者かが乗ったトラックにぶつけられ、襲撃を受けると、救急車も止められてしまう。

後から、その現場に駆け付けた中村課長は、救急車に乗っていた秋田の死体の大腿部から、何かが取り出された形跡を見つける。

その後、田沼医院を訪れ、秋田の手術内容に関して聞き出そうとした中村課長だったが、田沼は、息子の命の方が大切なので、その命を保証してくれるのなら…と言う条件付きで、ビニールで包んだものを、秋田の大腿部に入れた事を打ち明ける。

田沼に、逃走中の須田と平山の写真も見せ、三人組を特定した中村課長だったが、その後、警視庁に、ダイヤは、アンダーソンなる外国人が盗んだと言うタレ込みの電話が入る。

その事実を知らされた二階堂は、ダイヤを狙っているもう一組のグループがおり、そのタレ込みの電話は、秋田に埋め込んでいたダイヤを先に奪われた須田たちがかけて来たものだろうと推理する。


外国人の海外への高跳びを防ごうと、羽田に向った中村課長は、乗客として待機中だった外国人23名を拘束し、その夜は、殺人犯逮捕の目的のため、用意したホテルに宿泊するように依頼する。

貿易商社マンや外交官なども含まれた外国人乗客たちからは猛抗議が起こるが、すでに警官も含め4人も殺害している犯人がいるとして、中村課長は、一人一人の尋問を始めるが、残された時間は、後8時間しかなかった。

そのホテルにいた二階堂は、新聞記者などに混じり、羽田で見かけた男がいるのに目を付け、政吉に目を離さないように命ずる。

しかし、次の瞬間、ホテル内は停電になる。

電気はほどなく点灯するが、最後の尋問予定だったアボット(園部志郎)と言う黒人が姿を消した事が分かる。

その捜査をしていた中村課長は、エレベーターの中で倒れていた政吉を発見する。

政吉が監視を命じられていた男は、アボットを連れダスターシュートを使い、料理室に入り込むと、銃で脅し、そこにいたコックの服を脱がせ、それを自分が着ながら、運搬車を裏口に廻すように電話しろと命じる。

しかし、そこに、同じくダスターシュートを伝って降りて来た二階堂が、逃げかけたアボットを止めようとする。

アボットは、腹を殴られた時、何かを口から吐き出してしまう。

さらに、ハンチングを被って変装した卓也は、裏口にやって来た運搬車の運転席に乗り込むと、運転手に発射しろと命ずる。

運搬車に追走して来た車に気付いた二階堂は、運搬車を停めさせると、事情を知らない運転手に、後ろに乗っている男の事を警察に通報してくれと降ろした後、仲間が乗っていると思い込み近づいて来た車の男たちと格闘になる。

やがて、パトカーがその現場にやって来るが、その近くで、その一部始終を観ていたのは須田だった。

須田と平山は、田沼の息子厚志を自分達の隠れ家に幽閉していた。

銀座の事務所に戻って来た二階堂に、停電直後、頭を殴られた政吉が、その当時の顛末を説明していた。

二階堂に教えられ、政吉が見張っていた男とは、九竜の鉄(河野弘)と言う人物で、須田の子分だったのだ。

その男を誘導するため、停電は、二階堂自身が仕組んだ罠だったのだ。

気絶した政吉のポケットに、「ダスターシュートを捜せ」と書いた紙を忍ばせ、中村課長に知らせたのも二階堂だったと言う。

そこにやって来た中村課長は、逮捕したアボットは、香港で人間ポンプとしてショーに出ていた男だったが、調べた結果、ダイヤを飲んでいなかった事が分かったのだと言う。

それを聞いた二階堂は、事務所の扉を開き、その中に隠していたダイヤを取り出してみせる。

アボットの胃を殴って、吐き出したのを取っておいたのだ。

しかし、今もアボットが持っていると敵に思わせておいた方が良いので、これは警察に保管してもらおうと中村課長に託す。

その時、電報局から電話が入り、ダイヤと引き換えに子供を返す。16日午後7時、大森競艇場、平和橋のふもとの赤電話に持って来いとの伝言だった。

ダイヤを預かった中村課長が帰った後、一斉に、外で張っていた新聞記者が事務所になだれ込んで来るが、中村課長の姿はなく、途中ですれ違いもしなかったので、皆不思議がる。

二階堂は愉快そうに、この事務所には隠し扉や裏階段もあるのだと説明するのだった。

その時、警視庁から電話が入り、中村課長はそちらにいないかと聞いて来たので、まだ戻っていないのかと不審に感じた二階堂が裏口に降りてみると、そこに置いてあった覆面パトカーの横で付き添っていた刑事が倒れているのを発見する。

さらに、車の後部トランクの中に閉じ込められていた中村課長も発見する。

中村課長は、預かったダイヤを奪われてしまったが、盗んだ外国人アンダーソンの顔をしっかり見たと言う。

その顛末は、一斉に新聞に載り、厚志少年の安否を気づかう記事が踊った。

警視庁にやって来た田沼は、そこで二階堂と出会うと、16時午後7時、大森競艇場、平和橋の袂の赤電話にダイヤを持って来いと書かれた手紙を見せ、あれほど、息子の命を保証してくれと頼んだのに、こんな事になるのなら、最初から警察等に話さなければ良かったと責める。

その頃、中村課長は、捕まえていたアボットを尋問していたが、アンダーソンが恐ろしい男だと言い、何もしゃべろうとはしなかった。

政吉は、テレビで、引き渡しの日日を伸ばすよう、説得する放送をしてみたらどうかと提案し、中村課長も、こうなったら、偽物のダイヤを持って行くしかないだろうと言い出すが、二階堂は、失敗した時に、とんだ事になってしまうと反対するのだった。

そんな二階堂の元に、警官が手紙を持って来て、その中には「ダイヤが偽物だったら、子供を殺す」と書かれてあった。

その直後、拘留中のアボットが自殺を計ったと言う知らせが届く。

しかし、警視庁に残っていた二階堂は、自殺ではなかったかも知れないと呟く。

警察病院に輸送される途中のアボットを、トラックになって待ち受けていた須田たちが襲撃する。

アボットは、逃走するため、わざと自殺に見せ掛けたのではないかと気付いた二階堂が現場に駆け付けた時、救急車から逃げ出そうとしていたアボットは、何者かに狙撃されてしまう。

その身体を抱き起こした二階堂が、アンダーソンの居場所を聞くと、館山港…香港と答え、アボットは息絶えてしまう。

中村課長、二階堂、政吉らは、ただちに館山港に向うが、二階堂は、自分達の不手際を攻める田沼の言葉を思い出していた、

テレビでは、広瀬アナウンサー(藤村有弘)が、厚志の事を報道していた。

館山港に到着した中村課長らは、地元警察から、今港に停泊中なのは、外航船2隻と内航船5隻で、どれも異常なしとの報告を受けるが、念のため、香港からシンガポールに向う予定だと言う鉱石運搬船に乗り込んでみる事にする。

二階堂も同行する事にしたが、何かを耳打ちして政吉には別行動を取らせる。

地元署の刑事に案内され、その船に乗り込んだ中村課長と二階堂だったが、いきなり、とある船室に入った二人は、その刑事と思われた男からドアに鍵をかけられ、閉じ込められてしまう。

二階堂は、ステッキで、ドアの窓ガラスを割り、そこから手を伸ばして、外の鍵を開けようと試みるが、それを妨害する銃撃が外で始まる。

中村課長は、東京までここから1時間はかかるので、急がないと、須田たちとの約束の間に合わなくなると焦る。

そこへ、敵は室内の二階通路部分からマシンガンを撃って来る。

さらに、部屋には、土砂が流れ落ちて来て、二階堂たちを生き埋めにしようとする。

二階通路に、ボスのアンダーソンの姿を認めた二階堂は、素早く二階通路に飛び上がり、アンダーソンを捕まえてしまう。

ダイヤの在り処を聞いた二階堂だったが、揉み合っている内に、アンダーソンのベルトに付いていた小物入れにダイヤを発見する。

中村課長が下から、後2時間だと叫ぶ。

二階堂は、ステッキで敵を倒しながら、甲板までやって来るが、組み付いて来た相手と揉み合ったまま海に落下してしまう。

そこへ近づいて来たのが、先ほど打合せを耳打ちされてやって来た政吉のモーターボートだった。

海に漂っていた二階堂を引き上げようとした政吉だったが、はずみで自分の方が落ちてしまう。

一方、ボートに這い上がった二階堂は、政吉を助ける事もなく、そのまま、東京へ向ってボートを走らすのだった。

時刻は6時半になっていた。

空はにわかに、雲に覆われ出して来る。

6時45分、須田たちが近くの小屋から監視していた、平和橋袂の赤電話の所にタクシーが乗り付け、そこから京子と田沼が降り立つ。

その周囲には、警察も張込んでいる事を、須田たちは悟っていたのだ。

やがて、雨が降り出し、赤電話が鳴り出す。

それを取った店のおばさんが、田沼と言う名前を言ったので、そこにいた本人が受取る事にする。

電話から聞えて来た須田の声は、持って来たダイヤは偽物じゃないだろうなと言う確認だった。

田沼は、思わず返事を躊躇する。

返事は十秒だけ待ってやると言う須田の声が聞えた時、近くの川岸に、二階堂が乗ったモーターボートが到着し、降りた二階堂が駆け寄って来て、電話を替わる。

ダイヤは間違いなく本物だと伝えると、店のおばさんに預けたものを受取れと須田は言う。

包みを開くと、それはトランシーバーだった。

それを持って、お前一人でタクシーに乗り込めと指示した須田は、おかしな真似をするな。皆見ているのだと言う。

やがてm、近づいて来たタクシーを止め、乗り込んだ二階堂だったが、その後を、刈り込んでいた刑事たちが乗った車が尾行して来る。

タクシーに乗った二階堂のトランシーバーから聞えて来た須田の声は、刑事の車をまいた上で、30分後に東京タワーの駐車場まで来いと言う。

二階堂は、後ろの車をまいてくれと運転手に託してそのタクシーを途中で降りると、土砂降りの雨の中、徒歩で移動して別の道に出ると、新しいタクシーを止めて東京タワーに向う。

駐車場にやって来た二階堂だったが、トランシーバーから聞えて来る須田は、お前は信用できないと言う。

後ろを振り返ると、まいたはずの刑事二人が近づいていた。

トランシーバーの声は、刑事を完全にまいた時に連絡しろと言う。

二階堂は、刑事を一旦やり過ごすように身を隠し、二人とすれ違った瞬間、腹を殴って気絶させてしまう。

トランシーバーにその事を知らせると、築地の勝鬨橋の手前に来いと言う。

そこへ向った二階堂は、さらにトランシーバーの声に、晴海に向って左に食品会社があり、その隣に倉庫があるから、そこの階段を昇って来いと指令を言う。

その通りに実行する二階堂の姿を拳銃で狙っている手があった。

係留してあるダルマ船の上まで誘導された二階堂は、何者かに狙撃され、海に転落すると、そのまま海面に漂い出す。

そこに近づいて来た須田と平山が、二階堂の身体を岸に引き上げてみると、死んだと思っていた二階堂がムクリと起き上がり、二人に立ち向かって来るではないか。

二階堂は、持って来たダイヤを船の底に投げ捨て、子供はどこかと須田たちを攻める。

須田は、苦し紛れに、このダルマ船の底にいると教える。

底に向った二階堂は、そこにいた厚志を抱きかかえるのだった。

後日、政吉、京子らと銀座を歩く二階堂は、今日は久しぶりに飲みたいが、京子ちゃんがいるので、お茶とお菓子にしておこうと言い、政吉をがっかりさせるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「銀座旋風児」シリーズ第6弾。

ストーリー的には、ダイヤ密輸と誘拐を絡めた、かなり複雑な趣向になっている。

タイトルも、雷光が文字に変化したりする派手な演出になっているのがまず目に付く。

印象的なのは、毎回のように入れ替わる政吉役が、今回は何と、高品格になっている事。

高品格は、このシリーズでも、悪役として登場する事が多かっただけに、コメディリリーフ役を演じていると言うだけで、最初はちょっと違和感がある。

さらに、印象に残るのは、人間ポンプの芸で、テレビなどでもお馴染みだった 園部志郎さんが黒人役で登場している事。

役者としてはずぶの素人だと思うのに、チョイ役と言うより、かなり出番が多く、しかもかなり重要な役所を演じているので驚かされる。

劇中でも、婦人用のネックレス時計のようなものを飲み込んで、又、吐き出す芸を回想しーンで披露している。

京子役の松原智恵子の出番が少ないのが、ちょっと寂しい感じもするが、主人公を演じる小林旭は、今回も土砂降りの中のアクションと言う過酷な芝居を披露してくれる。

土砂降りの銀座を歩くシーンは、おそらく、日活撮影所内に作られていた「日活銀座」のセットを使っているのではないかと思われる。

ミステリと言うより、サスペンス味が増した本作だが、なかなか後半は見ごたえのある展開になっていると思う。