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家庭の事情
さイざんすの巻

1954年、宝塚映画、三木鮎郎原作、賀集院太郎脚色、小田基義監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

国会の大臣にメモの発表を要求追求する記者たち

靴磨きをしているうら若き女性に「下着を着ていないんですか?」と、不思議そうに聞く通りがかりの男性

「家庭の事情ざんす」と金ちゃん(三遊亭小金馬)が登場して来て答えると、「金ちゃん、まだタイトル前だよ」と注意するトニー谷。

タイトル

学生服姿の青年が、慌てて、地方の豪邸に駆け込んで行く。

臨終間際だった父親戸仁井谷之進(トニー谷)は、間に合った息子戸仁井谷夫(トニー谷-二役)の顔を確認すると、「谷夫か…、大人になったら、世間の人から見上げられるような偉い人になるのだぞ」と言い残し、形見の算盤を授けると、息を引取るのだった。

社会人になった戸仁井谷夫は、窓ふきになっており、親の遺言通り、毎日、通りを歩く人たちから見上げられる人物になっていた。

屋上から足場を上げ下げしてくれているのは、コンビの金ちゃんだった。

戸仁井が、いつも仕事をするビルに入っているのは、エステサロン「サミ美容院」、「バレエ研究所」、怪しげな金貸業「金満金融金庫」、「秘密探偵党」、 そして、戸仁井の恋人の夏子さん(竹屋みゆき)が働いている「兼梨産業」

その兼梨産業の社長石橋(荒木忍)は、今まで、闇金融などを一切頼りにしない清廉潔白な人物で、かねてより戸仁井も一目を置いていたのだが、その石橋社長が、重役たちを集めて、会社経営が行き詰まってどうにもならないので、この際、秘密探偵にでも頼んで、闇金融を探して欲しいと頼んでいた。

一方、「金満金融金庫」には、鹿島(千葉信男)なる人物がやって来て、江東社長(寺島雄作)から、兼梨産業を潰して乗っ取りたいので、力を貸してくれと頼まれていた、

さっそく、青木と人物の紹介で兼梨産業の石橋社長に会いに行った鹿島は、自分は、第八銀行、桜銀行、一六銀行などと関係があるので、いつでも金を借りてみせると自己紹介する。

リベートはどのくらい必要かと尋ねた石橋社長に、自分はそんなものをもらうつもりはないと言う鹿島の人柄に打たれた石橋社長は、その場で、経理課長として採用する事にし、茶を運んで来た夏子にも紹介する。

いつものように、窓ふき用足場で、兼梨産業の階に降りて来た戸仁井は、部屋に誰もいないのを確認すると、窓から勝手に入り込み、持って来た花束を、花瓶にに挿して帰る。

もちろん、愛する夏子さんの為である。

足場にしゃがみ込んで、帰って来る夏子さんの反応を聞こうとしていた戸仁井だったが、部屋に帰って来た夏子さんは、見慣れぬ大男と楽しそうに唄ているだけではなく、花瓶の花を観て、これは鹿島さんが挿してくれたのかと聞いているではないか。

図々しい鹿島が適当に返事を返したのを肯定と受取った夏子さんは、お礼にと言って紅茶を入れて来てサービスする。

窓際でその紅茶を飲みはじめた鹿島が、カップを窓枠においたのを見計らった戸仁井は、勝手に外から手を伸ばし、中身を飲むと、又元の窓枠に置いておく。

よそ見をしていて、その事に気付かなかった鹿島は、カップを再び取り、中身を飲もうとするが、紅茶が減っている。

不思議に思いながらも、もう飲む気をなくしたのか、窓から、残りの紅茶を捨てたのが、しゃがんでいた戸仁井の顔にかかってしまう。

怒った戸仁井は、窓から中に入り込むと、もう鹿島の姿はなく、夏子さんがいたので、嬉しくなって抱こうとしている所に、石橋社長が戻って来てくる気配がしたので、戸仁井は又、窓から外の足場に逃げ出そうとするが、慌てていたため、足を滑らせて足場から落ち、ビルの僅かな出っ張りにぶら下がるはめになる。

そんな事は知らない石橋社長は、心配そうな顔つきで、夏子に、古葉から電話がなかったかと聞く。

夏子が、御心配事でもおありなのですかと尋ねると、石橋社長は、窓から見える会社の工場を指差し、あそこでは、今でも、会社が潰れる寸前である事も知らずに、毎日懸命に働いてくれている社員がいるんだと呟く。

そんな石橋社長が、貧血でも起こしたようにしゃがみかけたので、身体を支えた夏子は、妙なものが見えたと言う社長の言葉を聞く。

そこへ鹿島が戻って来て、金は明日来る。抵当として工場とこの事務所を入れたと報告しながら、窓際に来て何気なく下に目をやる。

彼も又、ぶら下がっていた戸仁井が力つき落っこちて、さらに下の壁面に付いた大時計の針にしがみついている奇妙な光景を目にする事になる。

後日、いつものように、足場に乗って、各階を移動していた戸仁井は、金満金融金庫の会社が無人であるのに気付き、いつもの癖で、つい勝手に中に入り込むと、洋服掛けにかかっていた高そうなコートを着ながら、社長の机に座ると、一人、社長ごっこを楽しみ出す。

すると、そこに突然来客があり、逃げ遅れた戸仁井が焦っているのも知らず、彼を本当の社長と思い込んだのか、客は、これはいつかのお礼だと言いながら包みを置いて帰ってしまう。

中を見ると、新品のカメラ。

嬉しくなってそれをいじっていると、本物の江東社長と鹿島たちが戻って来たので、戸仁井はとっさにカーテンの影に隠れる。

しかし、気配を鹿島に察知されたので、思わず窓から足場に飛び出すと、屋上に向って登り出す。

屋上で足場の綱をウインチで動かしていた金ちゃんに、今見た、兼梨産業の経理課長と金満金融の社長が仲良く話していた事を伝えた戸仁井は、何か裏で良からぬ事が起きているのではないかと相談し、聞いていた金ちゃんも、これは、石橋社長に知らせた方が良いのではないかとアドバイスする。

さっそく、金ちゃんと二人で兼梨産業に出向いた戸仁井は、ちょうど、石橋社長が鹿島と話している所だったので、この鹿島と言う人物は、金満金融と繋がっている男だと忠告するが、石橋社長は全く聞く耳を持たない。

鹿島本人も全く動ずる気配を見せず、この人たちは何かヤキモチを焼いているようですなと受け流すと、この際、会社拡張の為、社員募集をしてはどうかと石橋社長に提案し、一六銀行の方は十日に来ると付け加える。

それを聞いていた戸仁井は、金ちゃんと二人で、後日行われた兼梨産業の社員募集に参加してみる事にする。

社員になって、内部から告発しようと言う作戦だった。

当日は、ビルの階段を埋め尽くすほどの人が集まり、就職難の世相を良く現していた。

列に並んで、ようやく審査が行われている部屋にやって来た二人は、就職希望者たちが下着姿にならされて、怖い顔つきの審査員たちから、軍隊式のスパルタ的指導なのか、殴られたり、どつかれたりしている様子を見てビックリ。

それでも、何とか、二人とも「合格印」を胸に押してもらう事が出来た。

戸仁井たち二人が、これで兼梨産業の社員になったと喜んでいると、それを聞いた審査員が、これは「第31期国際ビルヂング守衛隊」の審査会だったのだと言い出したので、驚いて窓から飛び出して逃げ出す。

ちょうど、ヌード撮影会をしている部屋に紛れ込んだ戸仁井たちだったが、先ほどの守衛たちが追って来て二人を探しはじめる。

さらに逃走して、別の部屋で行われていた「ファッションモデルの試験場」に紛れ込む二人。

その頃、金満金融の江東社長は、自分の会社がブラックリストに載ったと聞いたので、もみ消しをよろしく頼むと、政治家に金を渡していたが、ちょうど、その部屋に紛れ込んでいた戸仁井は、持っていたカメラで、その現場写真を撮ってしまう。

しかし、その気配を江東社長に勘付かれ、金満金融の社員たちからも追い掛けられる事になる。

戸仁井は、「サミ美容院」に入り込み、女に化けて、サミ(八代洋子)本人からエステを受ける。

部屋の外に出て来た戸仁井は、江東社長や守衛の前に女装のまま現れて、気付かぬ彼らを嘲るように去るが、一瞬後に、今のが戸仁井だと気付いたと守衛や江東社長たちは、慌てて追い掛けはじめる。

さらに、バレエ教室に紛れ込んだ戸仁井は、女性たちに混じって練習をしたりするが、追っ手が迫って来ると見るや、大きな金庫室の中に逃げ込んでしまう。

そこには大量の札束が収納されており、うらやましくなって、札束を手に取ってみた戸仁井だったが、その札束は全部偽札だった。

戸仁井は、その後、一切を報告するために夏子の元に駆け付けて来る。

その頃、石橋社長は、江東社長と一緒に来た鹿島から、自分が融資した金をすぐに返済しろと先方が言って来たと脅迫されていた。

2000万の融資に対し、十日間で500万の利子が付くのだと言う。

払えなければ、工場と会社を抵当として頂くと言われた石橋社長は、その時になって始めて騙されていた事を悟るのだった。

しかし、そこに戸仁井がなだれ込んで来て、鹿島や江東社長と大立ち回りを始め、ほどなく、警察隊も乱入して来る。

後日、戸仁井が撮っていた政治家との裏取り引きの現場写真が動かぬ証拠となり、江東社長は詐欺師として逮捕されたと言う新聞を記事を石橋社長は読む事になる。

その窓の外では、窓拭き用の足場に乗った戸仁井と夏子さんがキスをかわしていた。

それを見つけた石橋社長が文句を言うと、足場はスルスルと上に登って行く。

しかし、途中で、うっかり金ちゃんが、ウインチから手を離してしまったものだから、足場は急降下。

すぐに自分のミスに気付いた金ちゃんが、慌てて屋上から下を覗いてみると、ビルの出っ張りに片手でしがみついた戸仁井と夏子さんが、もう片方の手で抱き合ったまま、キスを続けているのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「家庭の事情 馬ッ鹿じゃなかろうかの巻」に次ぐシリーズ第二弾。

今回は、一つのビルの中で起きる事件にエピソードがまとめられている事もあり、一作目に比べると、スケール感や奇想天外さが、かなり若干少なくなっている。

ヒロイン役の夏子も、一作目のヒロインに比べると地味な印象。

ギャグの基本は古風な「追っかけ」であるが、トニー谷があれこれ女装してみせるのが、今回の見所かも知れない。

あまり活躍している風ではないが、ニコニコと屈託のない笑顔が可愛い三遊亭小金馬の参加も楽しい。

元祖デブタレの千葉信男が、今回は珍しく、知能犯役を真面目に演じているのも珍しい。