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二階堂卓也銀座無頼帖
帰ってきた旋風児

1962年、川内康範原作、織田清司脚本、野口博志監督作品。

※この作品はミステリ仕立てであり、通俗ながら謎解き要素がありますが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、御注意下さい。コメントはページ下です。

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銀座の銀座ホールでは、新作水着のファッションショーと二階堂卓也の歌謡ショーの二部構成が評判になっていた。

楽屋では、新聞記者たちが、助手の政吉(藤村有弘)に、いまだに劇場に姿も現さない二階堂卓也は本当に出るのかと質問していた。

政吉は、2時に羽田に到着する予定で、今ちょっと遅れているが、間違いなく先生は間に合うはずと伝えた後、ショーに使うライフルの点検をする。

その中には、間違いなく空砲が入っていた。

その頃、羽田空港で、卓也が乗って来るヨーロッパ航空の旅客機を待っていた花村京子(松原智恵子)は、その機が、東シナ海上に不時着したとのアナウンスを聞き、急いで、銀座ホールの政吉に電話を入れる。

ステージでは、第一部の新作水着ショーが始まっていたが、電話を受けた政吉は、ヨーロッパ航空の旅客機が墜落して、乗客の安否も分からないらしいと聞かされショックを受ける。

やがて、第一部が終了し、二部の開催を待ち受けていた観客たちは、開演の遅れに気付き、ざわめきだす。

今さら、ショーを中止する訳にも行かず、政吉が苦悩している様子を見かねた重松は、練習でも自分が代役をやっていたので、ばれないように自分が出ると言い出す。

その頃、銀座ホールに取材に向う東都タイムスの荒木記者が乗った車は、途中、渋滞にぶつかり身動きが取れなくなっていた。

やがて、サングラスをかけ、客席からは顔は分りにくくした重松が舞台に登場し、第二部の歌謡ショーが始まる。

ライフルを撃つ役者は、裏から舞台に向う途中、しゃがみ込んでいた見慣れぬ老人の足に蹴躓く。

そのライフルを持った役者が、歌謡ショーのセットの二階部分に登場し、唄っている卓也目掛けてライフルを撃つが、その瞬間、応戦しようと、銃を取り出した卓也の体は、舞台に倒れ込んでいた。

近づいた女優が、助け起こそうとすると、手に本物の血が付いている事に気付き、悲鳴を上げ出す。

芝居ではない雰囲気に気付いた客席はざわめきだし、政吉は急いで緞帳を降ろすのだった。

その頃、銀座ホールにようやく近づいていた荒木の車は、前方から、煙を吹き出しながらフラフラと電柱にぶつかった車を見つけ駆け寄る。

そのドアを開こうと手を近づけた瞬間、後ろから近づいて来た見知らぬ老人から、触るな!高圧電流が流れていると注意される。

確かに、中に乗っている人間は、焼け死んでいるようだった。

老人に声をかけようとした荒木だったが、もうその老人の姿はどこにもなかった。

銀座ホールの現場にやって来た中村警部(芦田伸介)は、ライフルの弾を確認した政吉から事情を聞いていた。

確認した時は、間違いなく空砲だったと力説しながら、ライフルを確かめていた政吉は、そのライフルが、二階堂のイニシャルが入った先ほどまでのものとは別の銃である事に気付く。

その時、楽屋の電話が鳴り、それを取った中村警部に、築地でも人が殺されていると言う匿名の連絡がある。

電話をしたのは、足の不自由な男だった。

中村警部と一緒に、その現場に付いて行った政吉は、車の中で焼け死んでいる男のかを観て驚く。

それは銀座ホールの舞台係の男だったからである。

その場にいた荒木記者から、発見当時、消えた老人の事を教えられた中村警部は、車の中の死体の側から、「19:30 サクラ丸」と書かれた紙を発見する。

警察に戻って、その謎の言葉を分析していた中村警部たちは、船の到着時間ではないかと推理し、入国管理事務所に向う。

その頃、その入国管理事務所から、一足先に出て来た足の不自由な男がいた。

警察から、19時30分着の船の所在の確認を受けた事務所の職員は、その船なら1時間前に香港からすでに到着して、乗客たちは皆下船してしまったと教える。

その「さくら丸」に乗り込んだ足の不自由な男は、船内を歩いている所を、残っていた船員に呼び止められるが、持っていたステッキで相手の腹を打ち、気絶させた後、下に降りて、そこに残っていた4人の男たちに、女をどこにやった?と聞く。

突然洗われた侵入者に驚く船員たちは、相手を倒そうと立ち向かって来るが、難なく倒され、最後に残った船員は、いくらで買収されたか知らんが、その倍を出すから女を連れて行った先を教えろと、首を締められ、苦し紛れに「第三かもめ丸」だと教える。

入国管理事務所に到着した中村警部らは、「さくら丸」の乗員名簿を調べていたが、23人いた乗客は全て男性だと分かる。

それを観ていた職員は、さっきも同じ質問をして行った男がいると教える。

そこへ、一人の警官が飛び込んで来て、今、泳いで逃げて来たらしい女を一人発見したと報告する。

その女性の元に駆け付けた中村警部は、香港から二階堂卓也に乗せられたと呟く彼女の証言を聞く。

後で分かった事だが、彼女はファッションモデルの三谷正子(橘田良江)で、間もなく息を引取ってしまう。

「銀座と築地で殺人事件」「ファッションモデル死亡」「ジェット機墜落」大きなニュースが新聞に載ったが、二階堂事務所にいた政吉は、この三つの事件には関連性があると推理し、京子を感心させていたが、どうやらそれは、二階堂の推理の真似をしているだけのようだった。

その政吉、帽子掛けにかかっていたはずの卓也の帽子が、いつの間にか消えているので不思議がる。

京子も同じく首をかしげるが、一人だけこの事務所に出入りできる人物がいる事ができる人物がいると政吉から聞かされ、二階堂卓也が生きて戻って来た可能性に気付く。

その時、表で車の急ブレーキの音が聞こえたので、窓から下を覗いてみると、車に接触されたらしい女性が一人路上に倒れていた。

急いで、下に降りて行った政吉と京子は、その女性を助け起こし、救急車を呼ぼうとするが、それを止めた女性は、二階堂事務所に連れて行ってくれと頼む。

二人に事務所に連れて行かれ、傷の手当てをしてもらった女性は、あの車の男には、これまでにも二度も殺されそうになったと言う。

そこへやって来た東都タイムスの荒木記者は、調査の結果、二階堂卓也は、墜落したジェット機には乗っていなかった事が判明したと、政吉らに教える。

やはり、先生は生きていたのかと喜んだ政吉と京子の元に電話が入り、それは、その二階堂卓也本人からの連絡だった。

顔に傷のある船乗り姿に変装して、「第三かもめ丸」が見える海岸の側の赤電話からかけて来た二階堂の伝言は、三浦海岸の造船所近くにある「第三かもめ丸」に来いと言うものだった。

政吉は、ファッションモデルの三谷正子が殺された事を教えると、二階堂は知らなかったらしく驚き、何かを悔やんでいる様子。

その電話の内容を政吉から聞かされた京子は、先生は何か海外で事件に巻き込まれたのではないかと推理する。

二階堂は、都映画の波山とみ子もいるはず…と呟き、堂々と「第三かもめ丸」に乗り込んで行く。

乗っていた四人の船員たちに、女を貰い受けに来たと告げるが、抵抗され、船上で乱闘している最中、船室の無線が鳴りだし、それに出た船長は、侵入者を腰越海岸に連れて来いと指令を受ける。

船員たちをあっという間に叩きのめした二階堂は、船長のポケットからこぼれた麻薬の小袋を発見し、彼らの本当の正体を知る。

変装を解き正体を明かした二階堂卓也に、女は海賊船「海龍丸」に乗せたと答えた船長は、二階堂に言われるまま船を発進させる。

その際、二階堂は、帽子の中に何かを入れて海岸に放るのだった。

その三浦海岸に到着した政吉と荒木は、「第三かもめ丸」の場所を、地元の漁業組合長に聞いてみるが、そんな船は知らないと言う返事。

仕方なく、海岸をうろついていた二人は、海岸の棒にかかっていた卓也の帽子を発見する。

その中には、「腰越海岸へ来い」と書かれた二階堂のメモが挟み込まれていた。

腰越海岸に向っていた船長は、二階堂に、女を渡す代わりに、自分達の麻薬の事は秘密にしてくれと頼み込んでいた。

やがて「海龍丸」から無線が入り、それに出た二階堂が、侵入者は甲板に縛り付けていると嘘の報告をすると、そのまま直進しろと指令を受ける。

おびえる船長の様子を観た二階堂は、指令通り船を直進させると、乗組員たちに海に飛び込むよう命じ、自分も最後に海に飛び込む。

ある地点に接近した「第三かもめ丸」は、海中に仕掛けてあった機雷に接触し大爆発を起こす。

そこに接近して来た「海龍丸」に、頭から海草を冠った二階堂が、仲間の船員を装って乗り込む。

「海龍丸」に乗っていたのは、香港の秀(高品格)とその子分らであった。

彼らは、海草を取って目の前に現れた男が、銀座旋風児と知り、殴り掛かるが、あっという間に叩きのめされる。

船室に閉じ込められていた女性3人を発見した二階堂は、甲板に連れて行くが、隠れていた敵の子分から銛を打ち込まれる。

その銛は、仲間の一人に刺さってしまうが、避けた拍子に、二階堂は海に転落してしまう。

その二階堂を押しつぶそうと、秀は「海龍丸」を旋回させ、突進して来る。

海面で泳いでいた二階堂目掛け、投網を投付けた秀らだったが、二階堂はそれを逃れようと、海中深く潜って行く。

麻薬ブローカー一味が乗った高速船に、二階堂が押しつぶされたのではないかと言う情報を得た新聞記者たちは、二階堂事務所の政吉を質問攻めにしていたが、そこに、どこからともなく口笛が聞こえて来て、当の二階堂卓也が入口から入って来る。

記者たちは、その二階堂に、女性たちを香港から船に乗せた理由を聞き出そうとするが、二階堂は、基本的人権を守るために答えられないと言う。

さらに、死んだ三谷正子とは、仕事で知り合っただけと答えた二階堂は、一週間後の「ミスインターナショナルコンテスト」の司会は予定通り行うと発表する。

記者たちが帰った後、二階堂は、事務所の助手として働く事になったと言う村瀬安子(上月左知子)を、政吉から紹介される。

自動車に接触された女性だった。

二階堂は、これ以上犠牲者は出ないだろうし、出るとすれば、自分だろうと告げる。

そこへ電話が鳴り、出た二階堂に「事件から手を引け」と忠告があるが、女は誰であろうと守ってみせると二階堂は答える。

久々に政吉を連れて銀座の街に出た二階堂は、途中で荒木にも出会ったので、三人で連れ立って喫茶店に入る。

今度の「ミスインターナショナルコンテスト」を主催しているのは、荒木が勤める東都新聞なのだ。

その荒木が出してみせた出場者の一人、堂本リカ(水森久美子)の写真を観た政吉は、一目で気に入ってしまう。

三人が店を出たところで、どこからともなくナイフが飛んで来る。

二階堂は、そろそろおいでなさったぜ…と呟くのだった。

「'62ミスインターナショナルコンテスト」を主催する東都新聞の荒木の元に、警察から、銀座ホールの私用は中止するよう事業部に電話があるが、その伝言を聞いたデスクは、かえって宣伝になるから、予定通りやろうと言い出す。

コンテスト当日、銀座ホールは、厳重な警察の警備下で行われる事になる。

日本各地から集まった出場者たちが一旦控え室に戻った後、政吉は、お気に入りの堂本リカの部屋の前をうろついていた。

その頃、舞台で、演出の仕上げをしていた二階堂の頭上に、シャンデリアが落下して来るが、間一髪、椅子を立ち上がった二階堂は助かる。

一応、その事を、中村課長に報告するように命じた二階堂だったが、そこに3階の応接室で、その中村課長が会いたいと伝言が来る。

その応接室のドアの鍵穴に、何者かが何かを詰め込んでいた。

応接室へ向っていた二階堂は、マネキンを取り替えに来たと言う東洋マネキンの一行とすれ違う。

応接室に到着し、そのドアを開けようとした時、中村課長が呼んでますと言う警官が近づいて来たので、二階堂は、課長ならこの中にいるのでは?と、不審がる。

それを聞いた警官も首を傾げ、この中にいるはずがありませんと言いながら、自らドアを開くと、その瞬間ドアは爆発し、警官は倒れてしまう。

そこへ、堂本リカがいなくなったと荒木が駆け付けて来たので、罠だと気付いた二階堂は、非常警戒を張るよう命ずると、堂本リカの部屋に向う。

部屋では、政吉と村瀬安子が倒れていた。

そこへ、堂本リカの父親が駆け付けて来て、今回のイベントを中止しなかった二階堂を、厄病神だと非難しはじめる。

やがて、気絶していた政吉が気づき立ち上がるが、ふらついて側に立っていたマネキンに抱きついたのを観た二階堂は、先ほどすれ違ったマネキン会社の人間たちが、リカをマネキンに見せ掛け、担架に乗せて逃げ出したトリックを見破る。

ただちに、警視庁は、マネキンを乗せた車を発見するよう指令を出す。

二階堂は、政吉が無意識に握りしめていた船員手帳に気付き、そこに船の名前が記してある事を読むと、ただちに政吉を連れて、近くの川からモーターボートで、品川お台場に向う。

一方、司令所に詰めていた中村警部は、銀座ホールから連絡を受け、気がついた村瀬安子の証言によると、マネキン会社の人間の顔に見覚えがあり、日本橋辺りに住んでいる人間ではないかと教えられる。

その頃、興陽建設のジャリトラが、警備中のパトカーとすれ違いながら都内を走っていた。

お台場に着いた二階堂は、政吉に今後、何が起こってもビックリするなと言い、港で待機する事にする。

そこへ、ジャリトラが近づいて来たので、道路脇に身を潜めていた二階堂は、側にあった車輪を道路に投付け、トラックを停車させると、女をどこにやったと問いつめながら、乗っていた男たちと格闘を始める。

運転席に乗り込んだ二階堂は、荷台を傾け、積んでいたジャリを落としはじめる。

すると、その中に埋めてあった棺桶も一緒に道路に滑り落ちる。

その棺桶の蓋を開けてみると、中に堂本リカが眠らされていた。

そこへ、中国船オキシン号で待ち受けていた香港の秀たちが、異変に気付き駆け付けて来る。

その子分の一人が、二階堂にナイフを投付けて来る。

一方、その乱闘を隠れて観ていた政吉は、電話を見つけ、警察に連絡をする。

秀の子分たちに捕まり、トラックの荷台結合部に押し付けられ、元に戻る荷台に押しつぶされそうになった二階堂だったが、その時、抵抗を止めろ、お前たちはすでに包囲されていると言う声が聞こえて来る。

それは、政吉がマイクを使って流していた声だったが、その直後、本物のパトカーのサイレンが近づいて来る。

捕まえた子分の一人に案内させオキシン丸に向った二階堂は、その中に幽閉されていた三人の女性を見つけると、僕の手違いでこんな事になってすまなかったとと謝罪すると、外に救出するのだった。

荒木と、堂本リカの父親も現場に駆け付けて来て、気がついたリカを助け起こしていた。

女性たちは、日本で誘拐された有名人たちで、香港で高級コールガールにさせられていたのだった。

有名人であるほど、向こうでは高く売れるのだと、二階堂は荒木に説明する。

事件が解決し、事務所に戻って来た二階堂は、当初乗る予定だったヨーロッパ航空機は、途中で尾行に気付いたので、用心のためキャンセルし、オランダ航空機に急遽変更したため、東京着が2時間遅れた次第を説明していた。

村瀬安子が、そんな二階堂に飲み物を持って来る。

二階堂は、事件の詳細を記したと言うメモを帰る荒木に託す。

政吉は、腹が減ったと言いラーメンを食べに出かけたので、二階堂は、京子にタバコを買って来るよう頼む。

しばらくして政吉が事務所に帰って来ると、床に二階堂が倒れているではないか!

その側には、飲みかけのコップが転がっており、机の上には、二階堂卓也の位牌が置かれている。

驚いた政吉が医者を呼びに出て行った後、 タバコを買って戻って来た京子は、拳銃を持った安子が、隣の部屋から入って来たので驚く。

飲み物に毒を入れたのは自分だと告白した女は、香港のコールガール組織の元締め李芳麗だと名乗る。

その李芳麗は、京子に、今日から自分がお前のボスになると脅すが、その時、どこからともなく口笛が聞こえて来て、事務所の入口から二階堂卓也が入って来る。

驚いた李芳麗が、床に倒れていた男を見ると、ムックリ起き上がったその男は、二階堂の服を着た荒木だった。

先ほど渡された二階堂のメモに書かれた通り、変装して芝居をしていたのだった。

二階堂から、かもめ丸の時から疑っていたと聞いた李芳麗は、思わず、拳銃を発射しようとするが、弾は出なかった。

君の後ろにはずっと監視がついていたのだと説明する二階堂の言葉通り、すぐさま警官数名が部屋に入って来て、李芳麗を逮捕する。

そこに、医者を連れて政吉が戻って来るが、二階堂が無事だったので唖然とする。

無駄足を運ばされて不機嫌になった医者に、詫びの金を渡した二階堂は、むくれる政吉と、京子、荒木を連れて、久々に銀座の街にくり出すのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「月光仮面」の原作者でもある川内康範原作「銀座旋風児」シリーズ第5弾。

基本的には、銀座に事務所を構える二階堂卓也が、情報屋の政吉や助手の女の子と共に、かかわり合った事件を解決すると言う通俗アクションミステリであり、政吉は、宍戸錠、小沢昭一、近藤宏などが演じ、助手役は、4作目までは浅丘ルリ子が演じていた。

今回は、海外に行っていた二階堂が久々に新作ショーをやると言う会場内で、二階堂の代役を勤めた男が殺され、その容疑者も又、電流を流された車の中で焼死すると言うショッキングな出だしが、まず目を惹く。

ただし、通俗活劇だけに、怪奇な事件の謎解きは曖昧なまま。

どうやって車に高圧電流を仕掛けたのかとか、何故、そんな面倒な殺害方法を取ったかについては一切説明はない。

おそらく、ただ派手な導入部を作りたかっただけなのだろう。

そもそも、有名なファッションモデルや映画女優が誘拐されていたのなら、大事件になっていないはずがなく、警察がそれらの情報を全く入手していないと言うの状況もおかしい。

とは言っても、この手の作品は、本格的な謎解きを狙っている訳ではないので、そうした点を突っ込むのはヤボと言うもの。

川内康範が作り上げたもう一人のテレビヒーロー「七色仮面」も、多羅尾伴内の影響が明らかな設定だったが、本作でも、その多羅尾伴内ばりの様々な変装を小林旭が披露しており、彼が後年、二代目多羅尾伴内を継いだのも当然だったように感じる。

この作品も、全体に、多羅尾伴内風のケレン味の強い内容になっており、主人公は、陸に海に大活躍をしてみせる。

もう、あまり「銀座」は関係なくなっているし、香港の海賊秀が、二階堂の顔を観ただけで「旋風児!」と知っているのも滑稽と言えば滑稽だし、何故、ピンチだったはずの二階堂卓也が、次の瞬間には、口笛を吹きながら事務所に姿を現すのかなども、理屈で考えるとチンプンカンプンなのだが、そうした御都合主義、バカバカしさも含めて、おおらかな時代の通俗作品を楽しむべきだろう。