1958年、東映東京、川内康範原作+脚本、小林恒夫監督作品。
※この作品の後半で、どくろ仮面の正体が明かされますが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、御注意下さい。コメントはページ下です。
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追尾して来た月光仮面を振り切り、中山博士の自宅にやって来たどくろ仮面は、警備していた警官を撃つと、邸内に侵入し、あや子(峰博子)を見つけると、その首に下げていたロケットを奪い取って逃げる。
その直後やって来た祝十郎(大村文武)は、門の近くで負傷して倒れている警官を見つけ、一緒に帰って来た中山(宇佐美淳也)と木の実ちゃん(藤井珠美)が、自宅内で倒れていたあや子を見つけ介抱する。
彼らの前に来た祝は、盗まれたロケットはあらかじめすり替えていたもので、大丈夫だと伝える。
中山はそれを聞いて一安心したようだったが、自分の実験をきっかけに次々と血なまぐさい事が連続しているので、もう、その機密事項は祝に持っていてくれないかと頼む。
しかし、祝は、かえってこの方が安心だと言って、又、ロケットをあや子の首にかけながら、今はどんなに危険でも、戦うしかないのだと説明する。
その後、新しいアジトであるどくろ丸に戻っていたどくろ仮面は、何としてでも、設計図を手に入れろと息巻きながら、捕まったタイガーとユリは始末するよう部下たちに命じていた。
それを聞いたバテレンお由(原泉)は、ユリは自分が始末すると言って出かけて行く。
和服姿の婦人に化けたお由は、ユリが捕まっている警察署に、母親だと称して差し入れを持って行く。
松田警部(須藤健)と共に、ゆりを尋問していた祝は、警官がその箱を持って来ると、その母親なる人物を探しに行くが、もう待合室には誰もいなかった。
急いで、尋問室に戻った祝が、その箱を開けると、中につめられたカステラの中央部に時限爆弾が埋め込まれており、急いでそれを取り出すと、窓から庭に放り投げ大爆発からユリを間一髪で助ける。
その頃、タイガー(長谷部健)は病院に入院していたが、その身の回りの世話は、五郎八(柳谷寛)とカボ子(若水ヤエ子)が熱心に見てやっていた。
そんな中、警察から電話が入り、今、爆弾でユリが狙われたと連絡があったので、怯えた五郎八とカボ子は、看護婦が持って来た果物駕篭を怪しみ、ベッドの下に潜り込むのだった。
しかし、そこへユリを連れてやって来た祝探偵が、果物駕篭の中に入れられていた月光仮面からの手紙をタイガーに渡す。
そこには「タイガーよ 勇気を出して生き抜きたまえ」と書かれてあった。
それを読んだタイガーは改心し、ユリの止めるのも構わず、どくろ仮面の正体を明かすと言い出すが、その声を窓の外から聞いていたどくろ仮面の配下(山本麟一)が、廊下から射殺してしまう。
その後を追った祝探偵は、病院の螺旋状になった屋上まで追い詰めるが、敵は自ら飛び下りて墜落死してしまう。
下に降りて来た祝は、死体が消え失せている事に気付き不思議がるが、そこに駆け付けた来た五郎八とカボ子が、タイガーが息を引取った事と、ユリの姿が見えなくなった事を報告する。
中山邸にやって来た祝から、その報告を受けた中山博士は、「HOジョー発爆弾」は、もう自分の手ではどうしようもなくなってしまったと嘆く。
そこに、あや子が、赤星博士(佐々木孝丸)と田坂(永田靖)の来訪を告げに来る。
二人が言うには、両三日中に、設計図を渡さなければ、宇宙科学研究所を爆破すると、どくろ仮面から連絡があったらしい。
田坂は、この際、中山博士は失踪したと言う事にし、自分の兜岬の別荘に身を隠してはどうかと提案する。
翌朝、兜岬に向う飛行場にやって来た中山とあや子は、待ち伏せていたどくろ仮面の一味に捕えられ、二人はセスナに乗せられると、どこかへ連れ去られようとする。
そこに駆け付けて来たのが月光仮面で、彼は離陸しようとするセスナの後をバイクで追跡すると、離陸の直前、バイクを近づけ、離陸したセスナの車輪に飛び移ると、主翼のシ谷まで登り、拳銃で操縦士を脅すと、途中でセスナを着陸させるのだった。
しかし、中山博士とあや子の失踪が、翌日の新聞紙上に踊った。
レストラン「オリオン」のステージでは、コーラスグループのフォア・コインズが唄っているのを五郎八とカボ子が聞いていた。
宇宙科学研究所の田坂の元には、警察の戸倉なる人物がやって来たと知らせがあったので、待っていると言う会議場へ向うと、そこにいたのはどくろ仮面だった。
どくろ仮面は、戦争中、二重スパイをして、軍事機密を敵国だったどくろ仮面の本国に渡していた田坂の過去の秘密を種に脅して来て、中山が今どこにいるか聞き出そうとする。
考えていた田坂だったが、やがて、5000万で情報を売ろうと言い出す。
明日夜8時までに、現金を用意しろと言うのを聞いたどくろ仮面は、約束を守らなかったら、この研究所を爆破すると告げて帰る。
その後、研究所に田坂を訪ねて来た祝は、所員から、田坂なら今旅行中だと言われて困惑する。
その頃、兜岬に向っていた田坂の車を、アダラ・カーン(沢彰謙)は、その様子を随時、どくろ仮面がいるどくろ丸に無線で連絡していた。
しかし、その尾行に気付いた田坂は途中でスピードをあげると、脇道に一旦車を隠し、カーンの車が通り過ぎたところで、別ルートを取る事にする。
田坂を見失った事に気付いたカーンからの報告を受けたどくろ仮面は、船を岸に近付けると、自らも部下たちと車に乗り、田坂の行方を探しはじめる。
兜岬の別荘に着いた田坂は、せ○しの爺や(大東良)に迎えられると、身を隠していた中山博士とあや子に再会する。
田坂は、中山博士に、正負と相談した結果、博士には一時国外で保養してもらった方が良いだろうと言う事になったので、今夜8時、政府が用意した船に乗り込んで欲しいと言い出す。
急な話に戸惑う中山博士だったが、そこに、裏切るつもりか?と田坂に言いながら、どくろ仮面の一味が乗り込んで来る。
田坂は銃を取り出し、中山博士に突き付けると、自分が連れ去ろうとするが、裏から入って来たカーンの銃弾によって倒れてしまう。
その際、テーブルに置いていた、あや子のオルゴールが床に落ち、メロディを奏ではじめる。
中山博士とあや子を拉致し、車で逃亡をはじめたどくろ仮面一味だったが、いつの間にか追跡して来た月光仮面によって、何とか、あや子だけは助け出される。
屋敷に戻って来た彼女は、待っていた松田警部から、どくろ仮面からの最後の挑戦状を見せられる。
設計図を、明日午後1時、月島の第三埠頭に持って来いと言うものであった。
翌日、約束の時間に埠頭に車で向ったあや子は、待ち構えていたどくろ仮面一味と会い、船に乗っていた父親の姿を確認すると、持って来た地図を渡すが、それが正しい地図だと確認する間では中山博士はまだ預かっておくと言い残し、船で出発しようとする。
遠くから、その様子を伺っていた五郎八は、思わず飛び出そうとするが、チャンスはまだいくらでもあると、それを止めた松田警部は、大勢の警官たちを従えて待機していた。
返してもらえると思っていた父親が、目の前で連れ去られるのを見たあや子は焦るが、彼女に近づいた賊の一人の顔を見て驚く。
それは、賊に成り済まし、マスクを被った祝十郎だったからである。
どくろ丸に乗り込んだ祝は、一人の船員につかまれる。
何と、その船員は、男に化けたユリだった。
彼女は、死ぬ寸前、兄が言いたかったどくろ仮面の正体とは赤星博士の事だと打ち明ける。
それを聞いて驚いた祝は、決して、軽率な事はしてはいけない。その内、時が解決してくれるとユリに言い渡して別れると、中山博士が閉じ込められていた部屋の見張りと交代し、部屋の中に「もうしばらくの辛抱です」と書いた手紙を投げ入れるのだった。
その直後、全員甲板に集合するようにとの指令があり、祝も上に上がる。
部下たちを整列させたどくろ仮面は、全員顔のマスクを取るよう命ずる。
みんながマスクをとった中、一番右側にいた男だけがマスクを取らず、お前こそそのマスクを取れ、赤星博士と言いながら、祝としての顔を現す。
それを見た全員は驚き、カーンがナイフを投げ付けようとするが、それを射殺したのは、隠れていたユリだった。
ユリも又、直ちに反撃され、死亡する。
祝と、どくろ仮面の一味と甲板上で銃撃戦を始めるが、形勢不利と見て、海上に身を投げる。
海面を機銃掃射したどくろ仮面たちだったが、やがて、警察が乗った巡視艇3隻が近づいて来た事に気付くと、油を海に撒かせ、口から吹いた火で海面を火の海にするのだった。
地図に印された島に降り立ったどくろ仮面やバテレンお由は中山博士を連れ、地図に書いてある洞窟内に入り込むと、どこからともなく笑い声が響いて来て、遅かったな、赤星博士と言うではないか。
それを聞いた中山博士は、どくろ仮面の方を向いて驚いた顔をする。
設計図は、月光仮面が頂戴したとの声の出元を探していたどくろ仮面たちは、洞窟の奥で回っている録音テープを発見する。
罠だと気付き、外に出た彼らは、上陸して迫って来る警察隊の姿を発見する。
どくろ仮面の一味が続々逮捕されて行く中、中山博士を連れたバテレンお由とどくろ仮面は、必死に逃亡を続け、崖下に身を潜める。
しかし、そこに飛来して来たのは、月光仮面が操縦するヘリコプターだった。
そのヘリからの合図で、どくろ仮面たちの位置を知った松田警部、あや子、五郎八たちも駆け付けて来る。
こうして、お由も捕まり、無事、中山博士は保護される。
ただ独り、海岸の岩場を逃走するどくろ仮面を月光仮面のヘリが追跡する。
どくろ仮面は、又岩陰に身を隠し、ヘリをやり過ごしたところで、海岸側の崖まで逃げて来るが、そこに現れたのが月光仮面。
拳銃を撃とうとしたどくろ仮面だったが、もう弾倉は空だった。
正義の前にひれ伏せと月光仮面から言われたどくろ仮面が、お前は何者だと言うので、月光仮面はサングラスを外してみせる。
その顔を見て「あ!お前は!」と叫んだどくろ仮面は、足を踏み外して海に墜落して行く。
その後、どくろ仮面の行方を探していたあや子や五郎八の元にやって来た祝は、どくろ仮面なら、今頃海の底で眠っていると教える。
五郎八が、こんなものを預かったと祝に見せた手紙には、「HOジョー発爆弾」の秘密は自分が預かっておく事にすると言う月光仮面からのものだった。
▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼
二部構成である「月光仮面」(1958)の後編に当る。
この回では、どくろ仮面の正体が暴かれるが、彼の国と日本は戦争をしていた元敵国関係だった事が明かされる。
どくろ仮面の正体は、どう見ても西洋人ではないので、それがどの国を暗示しているのか大体推測できる。
この時代のヒーローものでは、まだ、諸外国に対し、日本人の同胞意識に訴えるような主張が込められているものが多く、それが正義だったりするのだが、本作も例外ではなく、日本人でありながら、敵国スパイに協力するタイガー、ユリ兄妹への説得として「同じ日本人じゃないか」と言うような言い方をしていたりする。
又、この頃のヒーローは、正義の味方であるだけではなく、貧しいものの味方でもあったりして、やはりその辺の感覚には、国全体が貧しかった時代背景を感じる。
ラスト、どくろ仮面に、月光仮面がサングラスを取って正体を現す所があるが、ここはもちろん、月光仮面の主観表現になっており、観客には正体が分からないようになっている。
まあ、子供が考えても、祝十郎しか考えられないのだが。
この後編でも、船から祝が海に飛び込んだりするスタントシーンがあり、それなりに見ごたえ感がある。
又、大掛かりなものではないにしろ、冒頭の実験場のシーンや、追跡する月光仮面が破壊された橋の上をバイクごと跳躍するシーン、セスナに月光仮面がしがみついて飛行しているシーン、海上巡視艇が火炎に襲われる所、どくろ丸の外観などのシーンは、全てミニチュア特撮である。
テレビ版での月光仮面は、たとえ敵であっても殺すような事はなかったはずだが、映画版では、やはり、逮捕で終わってはすっきりしないので、それなりの大団円を用意している。
どくろ仮面の配下の一人は、たえず口元をマスクで隠しているにもかかわらず、目元だけで山本麟一だと分かるのがすごい。
晩年の痩せこけた老婆のイメージしかないバテレンお由役の原泉なども、この頃はまだ、島の岩場を走り回ったりしており、和服姿になると40代くらいの奥さんにしか見えなかったりして、こういう時代もあったのかと驚かされたりする。
