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大日本人

2007年、吉本興業、高須光聖脚本、松本人志監督企画+脚本作品。

※この作品は新作ですが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、御注意下さい。コメントはページ下です。

***************************

バスに乗っている大佐藤(松本人志)に、何故、折畳み傘を持っているのかと画面に登場しないインタビュアーが質問する。

必要な時だけ大きくなる所が好きだから、いつも持ち歩いている…と、大佐藤は答える。

夏川商店街に近い夏川神社前で降り、商店街を抜ける大佐藤に、降らなかったですねとインタビュアーが話し掛ける。

コンビニで買い物をすませた大佐藤は、独り住まいの自宅に帰ると、さっそく米を研ぎ、炊飯器のスイッチを入れると、食事の準備を始める。

大佐藤の家の塀には「死ね」だの、子供が描いたらしきウルトラマンのような落書きなどが書かれていた。

自宅の庭には、小さな祠の側に、朽ち果てた子供用のブランコが置いてある。

大佐藤は、一匹の野良猫と暮しているようだ。

一人で食事をはじめた大佐藤に、インタビュアーがいつも自炊するのかと問いかけ、食卓に置いてある袋は何だと聞く。

袋の中味は、乾燥ワカメだと答えた大佐藤は、必要な時だけ膨張するから便利で、何にでもかけて食べられると、冷や奴にかけてみせたりする。

結婚はしていないのかと言うインタビュアーの問いには、娘の事での考え方の違いで、今、一緒にはいないと言葉を濁す大佐藤。

娘がいると知ったインタビュアーが年を尋ねると、八つになると言う。

その瞬間、誰かが石を投付けたのか、大佐藤の背後の窓ガラスが大音量を上げて割れる。

しかし、そう言う仕打ちに慣れているのか、大佐藤は全く動ずる気配を見せない。

インタビュアーが、収入はどうなっているのかと聞くと、月20万に30万の副収入がある程度としぶしぶ答えたので、希望としたら、どのくらい欲しいのかと畳み掛けると、正直、もらえるなら、欲しい…、80万と具体的な数字を大佐藤はあげる。

その瞬間、又、窓ガラスが大きな音を立てて割れる。

タイトル

蕎麦屋に行き、力ウドンを注文する大佐藤に同行したインタビュアーは、店の主人に、良く来るのか、いつも力ウドンなのかと聞くと、週2.3回は来てくれるし、毎回、力ウドンだと言う。

その主人に、あの大佐藤が、大日本人だと言う事は知っているかと聞くと、別に大して関心なさそうに、すごいですね〜…との答えが帰って来る。

その後、公園のベンチに座った大佐藤に、良くここに来るのかとインタビュアーが尋ねると、娘がよちよち歩きの頃良く来ていたと大佐藤は答える。

本当は男の子が欲しかった…と言うので、何故なのかと聞くと、僕の代で終わらせたくなかったからだと答える大佐藤。

ただ諦めた訳ではなく、女の子でもダメだとは思っていないし、彼女もそう思っていると思うと大佐藤は言う。

娘とは、頻繁に会っているのかとの問いには、月1回くらいは会っていると答える大佐藤。

旅行とかには行かないのかの質問には、仕事の関係上、遠くには行けないし、海外旅行など、パスポート自体持っていないと打ち明ける大佐藤。

反米と言う程ではないが、日本を守らなければ行けないから…と、ちょっと言い淀んだので、反米なんですか?とインタビュアーが問いかけると、別にそう言う訳ではないが、アメリカには、少し抵抗感があると言うか…、そう言う教育を受けて来たので…と、ちょっと答え難そう。

その時、大佐藤のケイタイが鳴り、それに出た大佐藤は、ちょっと、インタビュアー撮影をストップしてくれないか、仕事になるかも知れないからと伝える。

しかし、ビデオはその後も回り続け、どう言う連絡だったのかとインタビュアーが聞くと、もしかすると「焼く」かも知れないと言う事らしく、今ちょっと、連絡待ちと言う所だと言うので、では、続けて良いのかと確認したインタビュアーが、ヨーロッパは好きか?と聞きかけた所に、又ケイタイが鳴り、「第二で焼く?」と大佐藤が確認するように答え、インタビュアーに、化けないと行けないので…と言うと、バイクに跨がり出発する。

インタビュアーたちも、その後を車で追う。

「大佐藤はくたばれ」と書かれた横断幕が道路に張られた下をくぐり、目的の「第二電変場」と書かれた施設に到着した大佐藤は、守衛の山城に声をかけ、防衛庁の命により出頭しましたと敬礼する。

中に入って行く大佐藤を追おうとしたインタビュアー撮影隊だったが、守衛にここまでと入口で止められる。

その後、施設の中の廊下を、防衛庁の人間と共に、神職のような白衣姿になって通り過ぎて行く大佐藤の姿が見えた。

その建物に、放電音が響き渡る。

変型する大佐藤の肉体。

「焼く」と言うのは、特異体質の大佐藤の肉体に電気を流し、巨大化させる事だった。

背中に丸に大の字など刺青風の模様が入り、左手に金棒を握り、紫色のパンツ一丁の裸で、髪の毛が逆立った大日本人が出現する。

秋葉原に出現した巨大生物は、輪っかになった腕にビルを挟み、締め上げる特長がある「絞メルノ獣」(海原はるか)だった。

絞める之獣は、高層ビルを腕で締め上げ地面から引き抜くと、その下に現れた地面に、尻から針状の器官をだして地面に突き刺すと、産卵を始める。

その獣と対峙した大日本人は、輪っかを体にはめられ、バックドロップの要領で、高速道路に叩き付けられる。

大日本人が、倒れている間、絞める之獣は、さらに巨大な高層ビルに、輪っか状の腕を巻き付け、締め付けようとするが、そこに立ち上がって戻って来た大日本人が、背後から金棒で殴りつけ、天からさして来た光の中に、獣は昇天していく。

戦いの後、大日本人の巨大な色紙が飾ってあるとある料亭では、防衛庁関係者と講演会の人たちなのか、集まった人たちが宴会騒ぎをしていた。

インタビュアーが、2002年頃から4、5年付き合っていると言う大佐藤の女性マネージャー小堀(UA)に、最近、視聴率が悪い事を指摘しながら、どうやったら、大佐藤は元に戻るのかと質問する。

すると、自分達には別に何も出来ないので、放っとくと、体調にもよるけど、2〜3日で元に戻ると言う。

ただし、元の大きさに戻ってしばらくは鬱状態になるとも。

宴会に連れて来られていた子供らが好奇心で隣の部屋の襖を開けて中に入ると、そこには、まだ巨大なままの大佐藤が部屋一杯に眠っていた。

小堀マネージャーは、そんな大佐藤に食事を持って来て近づくと、胸にスポンサーが付いたから、今度から腕を組むなと伝える。

インタビュアーは、大日本人について、町の声を拾いはじめる。

「ありがた迷惑」「前の方が、動きにキレがあった」など、無責任だが鋭い発言が続く。

その後、又、自宅に大佐藤を訪ねたインタビュアーが、もう元に戻ったのかと聞くと、猫が騒がないから、そうなのだろうと答える大佐藤。

次の獣(じゅう)が出るまでは休みですねと問いかけると、又いつ出現するか分からないから、休みと言えるのかどうか…と口籠る大佐藤。

インタビュアーが、部屋の鴨居にかけてある何枚かの写真の額を発見し、あれは誰かと聞くと、4代目の写真だと言う。

つまり、大佐藤の祖父に当る人物だと言うのだ。

4代目の頃はたいそう羽振りが良かったと言う話になる。

芸者衆を上げて、毎晩どんちゃん騒ぎだったそうだし、屋敷にも使用人が50人もいたらしいと大佐藤は話しはじめる。

今、使用人は?と不躾な事をインタビュアーが聞くので、ちょっとむっとして大佐藤は、今は一人もいないと言う。

収入はどのくらいあったのかと聞くと、花見なんかに行くとすると、お付きの者たちがみんな付いて来て、その連中が金を払ってくれるので、4代目自身は財布なんか持った事がなかったらしいと言う。

今は?と、又、無遠慮な質問をされたので、大佐藤は自分で出しているよと、ぶ然とした表情で答える。

昔は、獣(じゅう)の数も多かったし、こういう稼業も、自分の家以外に、2、30あって、活気がすごかったらしいが、今は獣も出なくなったからね…と、大佐藤が、少し寂しげに続ける。

昔は視聴率も良かったそうですね?とインタビュアーが聞くと、ゴールデンタイムにやっていたらしいから、視聴率も良かったんだろうと答える。

今は、深夜にしかやってないですからね…と、全盛期を知らないらしいインタビュアーは呟く。

事実、新聞のラテ欄には、深夜枠に「大日」としか書かれていなかった。

ある日、東京駅から新幹線に乗り込む大佐藤に、インタビュアーが同行する。

今日はこれからどこへ行くのかと車内で聞くと、中部地方に獣(じゅう)が出そうなので、三河の方の電変場に向うのだと言う。

電変場は他の場所にもあるのかとインタビュアーが聞くと、今は、青森の八戸にもう一か所残っているが、ほとんど使ってないと言う。

昔は、全国に52箇所もあって、都内にもいくつかあったらしいと言う大佐藤に、都内だったら、わざわざ、あちこちに移動して変身する必要はなく、一か所で巨大化して向えば済む事ではないかとインタビュアーが突っ込んだので、大佐藤は口をつぐむ。

そもそも、何で「獣」と言うようになったのか?通常「怪獣」と呼ぶんではないかと聞くと、我々にとって、彼らはしょっちゅう出会う相手であり、別に怪しくも何ともないから、高校時代にそう思ったと言う。

すると、又、思っただけで、確認はしていないんですね?…と突っ込む。

世間では、自衛隊が出動した方が良いのではないかと言う意見もあるがと水を向けると、そんな考えだからダメなんだ。伝統と言うものをどう考えているんだと、大佐藤は反論して来る。

生き物と生き物が闘って、弱いものは死んで行くと言う所を見せなきゃダメなんだ、特に、甲虫を玩具みたいに思っている世代には…と力説するので、それは、子供達にですかとインタビュアーが確認すると、子供なども含めてだよと、珍しく強い口調で語る大佐藤。

インタビュアーは、自分はゲームやんないので良く分からないと、突っぱねる。

三河の電変所に到着した大佐藤に、今度は仲間で同行して良いかとインタビュアーが聞くと、大丈夫だと思うけどと言いながら、一応、守衛に確認して、OKを取る事ができた。

「魂入れの儀」と称する儀式が行われる部屋では、神主のような姿をした人物が、大きな太鼓を打鳴らし、えい!と、白衣に着替えた大佐藤に気合いを入れると、「入りました」と大佐藤は言う。

それを胡座をかいて観ている防衛隊員二人は、最近、儀式が堕落していると言う。

大佐藤は、防衛隊員が用意した書類に、何やら事務的に印鑑を押している。

先程出会った守衛にもインタビューし、変身する場所はここでなくてはならないのかと聞くと、別にそうでいう訳でもないと気のない返事。

儀式は必要なのかと聞くと、それも別に必要ないらしい。

それでは、何でやっているのかと畳み掛けると、4代目の頃が一番良かったから…と、意味不明な返事が返って来る。

詔を呼び上げかけた神主に、もう一度、今の儀式を最初からやってくれないかと頼むと、神主は、一瞬戸惑いながらも、素直に言われた通りにやろうとする。

つられて、大佐藤も「入りました」を、もう一度再現する事になる。

インタビュアーが、座っている防衛隊員二人に、正義とは何だと思うか?とか、命とは何か?と抽象的な質問をぶつけたので、聞かれた方も、真面目に答えようとしながらも、結局、意味不明なしどろもどろの答えを返して来る。

庭に張られた紫の布地。

それは、巨大化した大日本人がはく事になるパンツだった。

その巨大パンツの中に入り、中で白衣を脱ぎ捨てた大佐藤に、電流が流される。

パンツの中に、大佐藤の絶叫が響く。

巨大化した大日本人の胸には、先日マネージャーが言っていたように、「カトキチ」の広告が描かれていた。

出現した獣は「跳ねる之獣」(竹内力)だった。

セイ!セイ!と叫びながら飛び跳ねる、知能は8才児程度の獣だった。

夜のビル街で暴れていた跳ネルノ獣の、手の形をした足を両手でつかんだ大日本人だったが、マネージャーから言われていた「両手を組むな」と言う言葉を思い出し、つい手を離してしまう。

逃れた跳ねる之獣は、巨大観覧車の上に乗り、それを回転させはじめる。

近づいた大日本人は、金棒で殴りつけ、その勢いで吹き飛んだ獣は、ビルトビルの間に挟まれ昇天する。

その後、元の体に戻った大佐藤は、名古屋の馴染みのカラオケスナックで、ホステスたち相手に陽気に唄っていた。

インタビュアーが、その店のあずさママ(中村敦子)に、大佐藤とはどう言う付き合いなのかと尋ねると、昔からの友達だと言う。

ママの年を尋ねると、いくつに見える?とつまらない返事が返って来たので、正直に54、5くらいですかとインタビュアーが答えると、ママはちょっとむくれる。

かなり痛飲した大佐藤は、ママに担がれて車に乗ってどこかへ向う。

翌日、夕べのママが、自分の車から大佐藤を降ろす所を見つけたインタビュアーが、帰りかけたママを呼び止めると、ママは、思わぬ所を観られたと気恥ずかしそうに挨拶して走り去って行く。

都会は春を迎えていた。

大佐藤は、老人ホーム「安らぎの里 白樺ハウス」を訪れていた。

4代目が入院していたのだ。

看護士にインタビュアーが4代目の容態を聞くと、少し認知症が出ていると言う。

一人での食事もままならない4代目の様子を、大佐藤は複雑な表情で見つめていた。

自宅に戻って来た大佐藤は、4代目の事を聞くインタビュアーに、電機のかけ過ぎかな〜…と答える。

実は、5代目、つまり大佐藤の父親が、より大きくなるため大量の電気を浴びてしまった事で、ショックで早く亡くなったため、そん穴埋めをするために4代目が無理を重ね過ぎたのだと言う。

何故、5代目がより大きくなろうとしたのかと言うと、粋だったと言うか、要するに目立ちたがりだったからだと言う。

当時は、同じような稼業がある中、頭一つ大きくなりたかったのではないかと、大佐藤は推測する。

実際、電気を大量に浴びると、より大きくなるのか?とインタビュアーが聞くと、大佐藤の、ならないよと瞬時に答えが帰って来る。

その時、電話が入り、施設にいた4代目が自分で勝手に電気を浴びて巨大化したと言う。

東京タワーと睨み合う4代目大日本人。

羽田で、握ったプロペラ機を扇風機に見立て、あ〜〜と声を震わしてみる4代目。

銭湯の煙突を笛代わりにして吹いて、近所迷惑を起こした4代目。

ガスタンクを殴りつけようとして、わざと外してみせる4代目。

こうした4代目の姿が新聞紙上に踊り、大日本人に体する大批判が巻き起こる。

その新聞を持ち込んで来たマネージャー袴田は、大佐藤にどうするんだと突き付ける。

大佐藤は、苦々しそうな表情で、家の事情があるんだと答える。

マネージャーが、今度、腰の所に広告を入れる事になったからと言うのを聞いた大佐藤は、胸までは仕方なくOKしたが、腰だけはダメだと強い調子で反発する。

俺のマネージャーである以上、この禁忌だけは肝に命じておいてくれと力説する大佐藤。

しかし、次に巨大化して睨む之獣と闘う事になった大日本人の腰には、しっかり「白い恋人たち」の広告が付いていた。

睨ムノ獣は、暗い所では眠ると言う習性がある、一見、鳥に似た獣だった。

工場地帯で闘う大日本人に、ペニスの先に大きな眼球が付いたような獣が、攻撃を仕掛けて来るが、振り回した眼球が鉄塔に引っ掛かってしまったので、強く引っ張って戻そうとした獣は、勢いあまって、暗い倉庫の中に眼球が入ってしまったため、即座に眠りはじめる。

その肛門部分に金棒を突き刺して昇天させた大日本人だったが、背後からいきなり、何者かに蹴飛ばされてしまう。

見ると、赤尾に似た観た事もない獣が出現しており、その獣が、力に任せて、倒れた大日本人の顔面をこれでもかと踏み付けて来る。

何とか、立ち上がった大日本人は、スタコラ逃げだしてしまう。

数日後、鼻に大きな包帯をあてた大佐藤が、インタビュアーから前回は、通常、1、2%くらいしかない視聴率が、7%に跳ね上がったそうですねと話しかけれれていたが、いかにも不機嫌そうだった。

その後。マネージャーの小堀女子に会ったインタビュアーは、彼女が500万もする新車を購入しているのを知り、儲かっているのかと聞くと、それなりにと答えが帰って来る。

車内には、新橋とデリカシーと言う名の二匹の犬まで連れているではないか。

その犬連れで、喫茶店で大佐藤に会ったマネージャーは、前回は逃げたのが良かった。腰の広告が良く見えたからと言う。

それを聞いた大佐藤は、あれは逃げたんじゃなくて、ああするしかなかったんだと弁明する。

未知の赤鬼のような獣の事は調べてくれたのかと聞くと、良く分からないが、外国のらしいと投げやりに答える小堀マネージャー。

しかし、朝鮮放送は、日本人に天罰が下ったと放送するし、電車の車内吊りにも、「大日本人職場放棄」と大きく書かれた週刊誌の文字が踊っていた。

だが、その車内吊りがある電車に乗っていた大佐藤は、妙に上機嫌だった。

その日は、久々に娘に会う日なのだった。

「BIG BOY」と言うファミレスでインタビュアーと共に、明らかにハイテンションな様子で娘と元妻が来るのを待っていた大佐藤は、入口にやって来た二人が近づいて来ないのに気付き、どうしたんだと元妻に聞きに行く。

すると、元妻(街田しおん)は、取材が来ているとは知らなかったので、娘を連れて来てしまったが、親の事が知られると学校でいじめられるので、写すのだったら、顔にモザイクをかけてくれと言う。

それを聞いて困惑する大佐藤。

何故、モザイクなんかかけないといけないのかと、妻と口論になる。

結局、娘と公園に行った大佐藤の映像の、娘の顔にはモザイクがかけられる事になる。

娘に父親が欲しいかと尋ねると、どっちでも良いと言う投げやりな答え。

その後、妻の住むアパートでのインタビューがある。

大佐藤氏とは離婚していないのかと聞くと、自分は離婚しているつもりと言う。

娘とは、今は月に一回会わせているが、本当は、半年に一度くらいにして欲しいとも言う。

娘に後を継がせる気はないのかと聞くと、あんなものが体に良いとも思わないし、自分の娘に電気を流させる気など全くないと言う。

今、何をしているのかと聞くと、知人の店を手伝っているが、そこの社長がとても良くしてくれるし、娘のセリナもなついていると嬉しそうに話す妻の部屋のタンスの上には、その社長らしき男性と一緒に写っている写真が飾られていた。

この取材テープを、大佐藤本人に見せても構わないかと確認すると、別に構わないと言うので、後日、その映像を見せると、大佐藤の顔は影で隠れていた。

夏が来る。

理髪店で、心持ち髪を切った大佐藤を迎えに来たインタビュアーが、獣が出現した事を知らせる。

新宿の都庁前に出現したのは、匂ウノ獣(板尾創路)と言う、万人分の人糞と同じ悪臭を放つメス獣だった。

都庁にもたれ掛かっていた獣に近づいた大日本人が抗議すると、相手は相手にしない様子で、足元の車を蹴ったり、都庁の窓ガラスをいたずらっぽく割ってみせたりする。

そう言う事は止めろと、大日本人が口を荒げると、あいつがずっと、池袋から付いて来て鬱陶しいと言う。

何の事かと背後を見ると、妙な動きをしているもう一匹の獣がいるではないか。

そうやら、匂ウノ獣のオス(原西孝幸)らしく、その動きからすると、発情期の求愛行為らしい。

こんな所で、そんな事をされたら大迷惑と大日本人が抗議すると、匂ウノ獣は、あんな子供を相手にするはずがないやろと笑う。

しつこいから、あんたが説得してくれと言うので、仕方なく、大日本人が、求愛中の獣に説得に向い、いくらそんな事をやっても、相手は全くその気がないそうだから…と振り向くと、匂う之獣は、こちらにケツを向けかけていた。

思わず、何なんだよ!お前…と絶句する大日本人だったが、二匹の獣の交尾が都心のど真ん中で始まってしまい、それを阻止するどころか、斡旋した形になった大日本人はまたもや、マスコミの餌食になる。

その後、東京ドームの上に寝て出現したのは、童ノ獣(神木隆之介)と言うおとなしい子供の獣だった。

その獣を静かに見守っていた大日本人は、獣が呟くお母さんとのかけっこの話にちょっと感動していた。

そっと、その子供獣を抱き上げた大日本人だったが、獣は無邪気に乳首を吸って来る。

思わず、及び腰になった大日本人は、次の瞬間、乳首を咬まれてしまったため、痛さで思わず手を離してしまったため、地上に落ちた獣は、すぐに昇天してしまう。

数日後、飲み屋で立ち飲みしていた大佐藤を見つけたインタビュアーが、すごい事になっていますねと声をかけると、大佐藤は不機嫌そうに飲み続ける。

いたいけのない子供の獣を、たかが乳首を咬まれたくらいで、手を離して殺してしまった大日本人への批判と、亡くなった子供獣への同情から、追悼集会が行われる騒ぎにまでなっていたのだ。

その会場にいた小堀マネージャーは、何故、大佐藤がこの場にいないのかと自ら演説していた。

その事を言うと、乳首は大切なんだと、ぶ然とした表情で答える大佐藤。

最近、視聴率が良いんで、近々、ゴールデンで特番が組まれるかも知れないとインタビュアーが伝えると、そんな事はどうでも良い。自分は興味がないと答える大佐藤の酒量は増えていた。

あの赤鬼のような獣にビビってます?との問いには、ビビってなんかいない。だが、もし、自分に何かあったら。4代目の面倒は誰が見るんだと大佐藤は反論する。

老人の面倒はホームが見るのでは?と言うと、これは、気持ちの問題、自分は祖父から恩義を受けているのだと言う。

ところで、大佐藤さんの子供時代はどんなだったのかと質問を変えたインタビュアーに、肥満気味だったと答える大佐藤。

まだ体ができていなかった子供時代、デブだった大佐藤少年を無理矢理蔵の中に連れ込み、両乳首に電気を通したのは、亡き父親だったと言う。

それを途中で止めてくれたのが、7代目の祖父だと言うので、インタビュアーは、スイッチ入れてから止めたんじゃ、意味ないのでは?と、又突っ込む。

実際、電気を通された大佐藤少年の両胸は、火山のように腫れ上がっていた。

雨が降って来たとインタビュアーが告げると、いつも持っているからと、折り畳み傘を見せて、大佐藤は店を出て行く。

その後ろ姿を確認したインタビュアーは、今、出たと、どこかにケイタイで知らせていた。

そぼ降る雨の中、帰宅する大佐藤は、これまで4代目と過ごして来た日々を思い出していた。

そんな大佐藤家の近くには、防衛庁の中継車両が待機していた。

そんな事も知らず、自宅で寝てしまう大佐藤。

その家に、防衛庁の特殊部隊が侵入し、大佐藤に、巨大パンツをかぶせると、外の電柱から引き込んだ電変装置を仕掛けて行く。

そこから、特番用の緊急放送が始まる。

防衛隊がスイッチを入れると、電気が寝ている大佐藤の体に走り、巨大化した大日本人は、自宅を突き破って、訳も分からない状態のまま目覚める。

すると、一緒に抱いて寝ていた猫も巨大化しているではないか!

何事かと起き上がると、近くに、例の赤鬼のような獣が出現している。

町中に向った獣と大日本人との再戦が始まるが、力の差は歴然としており、大日本人は自分の金棒を相手に奪われると、それで殴りつけられそうになる。

その時、赤鬼獣の背後から口笛の音が聞こえる。

振り向くと、そこに立っていたのは、締め込み姿の4代目だった。

4代目は勇敢にも、獣に立ち向かって行くが、赤鬼の一蹴りで、あっさり高速道路にぶつかり、瞬間、昇天しかかる。

その姿をぼんやり観ていた大日本人だったが、助けようと近づいた所で、又、赤鬼が近づいて来たため、思わず、死にかけていた4代目を蹴飛ばして逃げたので、あっさり4代目は昇天してしまう。

赤鬼獣は、背後から炎を吹き掛けて来る。

その時、辺りが光で満ちあふれ、あの猫の声が響く。

「ここからは実写で御覧下さい」の文字が入る。

スーパージャスティス(宮川大輔)、スティウイズミー(宮迫博之)をはじめとする巨大スーパーヒーロー一家が出現したので、ビルの影で観ていた着ぐるみ大日本人は唖然としてしまう。

目の前を、ピアノ線で吊ったメカが飛んで行く。

地上には、スーパー防衛隊のようなメンバーが、どこかの組織名を書いたスーパーカーから颯爽と飛び出して来る。

病院では、目の手術を終えたばかりの少女の、胸にかけられていたペンダントが、光を放ちながら空中に浮かんでいた。

巨大ヒーローは、いきなり地上にあったバスをつかみあげると、それで、斬ぐるみの赤鬼の顔面を殴りつける。

さらに、妹ヒーローが新聞紙を切って、丸めたものを渡されると、それで思いっきり赤鬼を叩きはじめる。

やがて、ヒーローファミリーたちは「ベイビー・オア・ダイ!」と叫ぶと、抱いていた赤ん坊ヒーローを、サッカーボールのように、各自が蹴ってリレーでつなげると、最後には、そのベイビーヒーローを、赤鬼に蹴りつける。

よれよれになった赤鬼の、着物を無理矢理剥ぎ取るヒーロー兄弟たち。

さらには、着ぐるみがはいていたパンツまで無理矢理破りとってしまう。

「ネバーエンディング・フリー!」と叫んだかと思うと、「ゼア!」「ゼア!」と各自声を上げながら手を重ねて行く。

そのして、ビルの背後に隠れている大日本人の方を向いて呼ぶので、一応遠慮していた大日本人は近づき、父親らしきヒーローが「ゼヒ」と言うので、仕方なさそうに、自分もそこに手を合わせる。

すると、ファミリー全員が重ねた手のひらから、虹色の光線が発射され、それが当った赤鬼は、大爆発を起こしてしまう。

その後、今度は空に向って「ゼア!」「ゼア!」と言い出した後、大日本人にも言えと言うような仕種をして来るので、いやいや、自分は空、飛べないし…と言うと、遅々らしきヒーローが「ゼヒ」と言うので、仕方なく彼らと並ぶと、みんなが大日本人も支えて空に飛び去って行く。

空中で、靴が脱げてしまった大日本人が慌てて「靴が脱げた!」と叫んでも、ヒーローたちは無視して飛び去って行くのだった。

エンドロール。

ヒーローファミリーの国の自宅に招かれたらしき大日本人に、父親らしきヒーローが、しきりに「ゼヒ」と言いながら酒を勧めている。

その横では、母親らしきヒーローが、今日の息子の戦い方をダメ出ししていた。

いきなりバスで殴るのは、ブッ細工だったと言うのである。

息子が反論している内に、最後には、大日本人の絡み方がなってなかったと言う事になる。

最初は、客と言う事で遠慮していたようだった母親も、とうとう、大日本人攻撃になる。

みんなが手を合わせた時、誘ったのに、もたもたしていたり、空を飛んでいる時に、靴が脱げただの、きょろきょろするのはブッ細工と言うのである。

そんな最中も、父親ヒーローだけは、「ゼヒ」と言いながら、大日本人に酒を継ぎ続けていた。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

テレビの人気者、松本人志の初監督作品。

正直、観る前は、「怪獣映画氷河期である現在と言う時代を見誤った勘違い作品ではないか」と心配していたが、実際に観てみると、実にしっかり現実を捉えながらも、一方で、尽きぬ特撮ヒーローへの愛情が感じられる見事な作品になっていると思う。

普通のおっさんが巨大ヒーローだったら、その生活振りはどうなるかと言う素朴な疑問を、インタビュー形式を織り込みながら、半ばドキュメンタリー風に、一方では、CGを駆使した不思議なリアリティのある怪獣映画として描いた独特の世界で、一見「ウルトラマン」など巨大変身ヒーローものをパロディ化したオタク作品のように見える。

ただし、いわゆる平成の怪獣映画や巨大ヒーローもののような、オタクが作ってオタクが観るだけと言った、懐古趣味だけで結ばれた閉じた世界観とは少し違った感性だと思う。

何が一番違うのかと言うと、松本監督は「巨大ヒーローものが成立した時代は、とっくの昔に終わっている」と言う現実を、大人としてきちんと把握した上で作っている点だろう。

その「終わっているものへの哀愁」が最初から最後まで貫いているので、一見、ハチャメチャに見える世界観でも、大人の空想話として最後まで付いて行く事ができるのだ。

松本監督自身が、特撮全盛期世代ではなく、少し遅れて来た第二期以降の世代であると言う事を良く自覚しており、その遅れて来た世代なりの素直な気持ちを描いている事も、観ていて無理がない理由だと思う。

従来の平成特撮ものは、基本的に幼児対象として作られている事もあり、こうした「終わったものへの哀愁」などと言う大人の感覚がないだけではなく、作っている側、観ている側の双方に、どこか「今とは全く違う時代背景だからこそ成立した、遠い昔の全盛期を目標にする」と言う幻想と言うか、世代的な無理があったと思う。

今思うと、それは「すでに終わっているものを終わったと認めたくない。まだ盛りかえせるはずだ」…と信じたがる「子供っぽい未練」だったと思う。

大人として、そうした無理な部分に半ば気付きながらも、心のどこかでごまかしながら観ていたので、空しさが残ったのだろう。

その点この作品は、最初から醒めた視線で描いているだけに、大人向けのウルトラマンを目指して作られた本家「ネクサス」や「ネクスト」以上に「大人向けのウルトラマン風作品」になったのだと思う。

老いた親との付き合い方とか、家族への幻想を抱きたがる男の甘さなど、暗喩も色々含まれているように感じるが、ごく単純に、怪獣映画としても十二分に楽しめる作りになっている事だけは確か。

怪獣デザインが、どちらかと言えば妖怪に近いが、久々に怪獣映画の面白さを堪能できたのは嬉しい。

笑いに関しては、正直微妙な所だと思う。

観る人の感性次第で、かなり受ける所は違っているのではないか。

視聴率に基づいた利益追求が高じて、スポンサー便りになってしまうヒーロー像とか、後半、唐突に登場するウルトラファミリーのようなヒーロー一家の行動が、何故か残虐な「ヤクザ一家の暴力」のように描かれている所、そうした「多数派グループ」に否応なく参加させられてしまう個人など、現在のヒーロー番組の歪みや、国際社会や一般社会の中での自立の難しさ、皮肉などが、あれこれちりばめられているので、そうした裏読みをする楽しさもある。

お笑いファンや松本ファンよりも、まず、特撮ヒーローファンに観てもらいたい一本。


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