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クレージーの花嫁と七人の仲間

1962年、青島幸男+赤坂四郎原案、富田義朗+芦沢俊郎+菅野昭彦脚本、番匠義彰監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

乗用車が、信号が赤になった交差点を突っ切って走って行き、そのすぐ後を白バイが追って行き停車を求める。

警官(伊藤素道)が信号無視をしたねと言いながら近づくと、車を運転していた男は頭を下げながら、女房がテレビに出演していて、間に合わないものだから、つい…と言い訳をする。

普段は、自動車のセールスをやっているので、交通ルールには人一倍注意をしていると言う男を、白バイのメーターを見せるために降ろしながら、20kmオーバーだねと指摘した警官は、やって来たタクシーを停めると、助手席に同乗していた女性をそちらに乗せて送りだすと、残された男に、きれいな奥さんだねと言う。

その頃、フジテレビでは、日曜お昼の12時半から始まる「森永スパークショー」の収録が始まっていた。

調整室から、ディレクター青山(青島幸男)が、スタジオのフロアディレクター和泉(石橋映太郎)に、生CMのタレントが遅れているのを叱っていた。

相手役を勤めるミッキー(ミッキー・カーチス)が、自分一人で二人分やりましょうと言いながら、ガラナ入りの「スパークコーラ」の生CMを始めていると、その相手役、浅川みどり(峯京子)が駆け込んで来る。

その後、スタジオでは、ザ・ピーナッツが「振り向かないで」を唄い始めたので、和泉がみどりに近づき、遅れた訳を聞くと、夜もバイトをしているのでつい寝坊して…と、みどりは謝るのだが、和泉は、青山には僕が謝っておくと優しく接するのだった。

一方、警官に絞られた後、寿司屋「にしき」に立ち寄った夫の植村三郎(植木等)は、妻みどりの兄である寿司職人の安治(ハナ肇)に、警官に捕まったいきさつをぼやきながら、何か食べさせてくれと頼み込む。

結婚する時、妹に働かせないと約束していたはずの義弟に文句を言いながらも、まだ半人前の新吉(谷啓)に、安いネタを握らせて、三郎に食べさせるのだった。

そこへ、亡き両親の後を注いで寿司屋の主人を勤めている杉本邦江(高千穂ひづる)が、妹の友子に弁当を届けてくれと言いに来る。

すると、新吉は急に張り切り、友子が踊っている劇場へ弁当を持って行くのだった。

友子(倍賞千恵子)は、レビューの踊子だった。

ちょうど、ラインダンスを終えて、袖に引き返して来た友子に、新吉は弁当を渡そうとするが、早変わりだからと、そのまま楽屋に連れて行き、踊り子たちに弁当を振舞うのと、呼びに来た演出助手のだ水上順一(山本豊三)にも食べさせるのだった。

舞台では、スマイリー小原が演奏する中、ロカビリー歌手が唄いはじめ、着替えた友子らもそのバックで踊り始める。

その頃、「にしき」にやって来た馴染みの芸者千代子(淡路恵子)は、安治に、ボウリングを始めたので一緒に行かないかと誘っていたが、あんなものは、若いのの遊びだと安治は興味なさそう。

その夜、平岡精二クインテットが演奏するクラブにみどりを連れて来た和泉は、踊りながら、今度ドラマに出てみないかと誘っていた。

その店の外で待っていたのは、夫の三郎だった。

みどりは、独身と言う事にしていた方が何かと便利だろうと言うので、周囲には結婚の事を伏せていたのだ。

店を出て来たみどりと和泉にさり気なく近づいた三郎は、白タクを装って二人を自分の車に乗せる。

自宅アパートの側まで送った三郎は、みどりを降ろすと、和泉を送って行こうとするが、横浜までと言われたので、ガソリンがないから他の車を拾ってくれと言い、300円を要求して降ろしてしまうが、和泉は値切って200円しか払わなかった。

その日、帰宅した安治は、二人で暮している母親(飯田蝶子)に、自分は太っているかと聞き、痩せている方じゃないねと言われると、美容の為に良いと言っていた千代子のボウリングの事を考え直し、次の休みの日、千代子と一緒にボウリング場に出かけるのだった。

丸っきり下手な安治のボウリングをおかしそうに笑っていた千代子は、引っ越しをするので手伝いに来てくれないかと誘う。

そのまま千代子のアパートに出向いた安治は、コーヒーを入れてもらいながら、自分の店を持ちたいと言っていたが、今どのくらい溜めているのかと千代子から聞かれ、正直、まだ98万5000円しか貯まっていないと答える。

すると、千代子は、それに自分の貯金200万も足して、一緒に店を開かないかと言い出す。

そろそろ硬い仕事がやりたくなったのだと言う。

しかし、安治は今すぐには店を辞める訳にはいかない。亡くなった先代の遺言で、お嬢さんが婿をもらうまで今の店に勤めると約束したからと義理堅い事を言う。

ある日、競輪場から出て来る客に、白タクを装い声をかけていた三郎は、中学時代の同級だった谷口(犬塚弘)から植村じゃないかと声をかけられる。

不動産屋の社長をやっていると言う谷口を車の側に連れて来た三郎は、本業である車の売り込みを始める。

「にしき」には、修繕寺の叔父茂造(伴淳三郎)がやって来て、この間の返事を聞かせてくれと、邦江に聞いていた。

邦江は、断わろうと思うと言う。

相手は、旅館の次男坊で、良縁だと思うが…と、茂造は残念がるが、そこに帰って来た友子が、意外に身近な所に相手がいるんじゃないかと意味真な事を言う。

それは安治の事かと気付いた茂造が、板場を覗くと、確かに、安治と気安くやっているように見える。

その夜、平岡精二作曲の「赤坂小唄」を歌手の中島潤が唄っているクラブに安治を連れて来た茂造は、単刀直入に、邦江の婿になってくれないかと切り出す。

突然の話に面喰らう安治だったが、千代子との事があるので返事が出来ない。

その千代子本人が、テーブルにやって来たので、ますます、返事に窮する安治は、近づいて来た別のホステスの顔を見て驚いてしまう。

妹のみどりだったからだ。

聞けば、先月から働いていると言うではないか。

まさか、そこまでみどり夫婦の生活がひっ迫しているとは思わなかった安治は、いたたまれなくなり、明日も早朝から河岸に行かなければいけないのでと茂造に断わって、早々に帰ってしまう。

翌朝、アパート「寿荘」で寝ていた三郎を叩き起こしたのはみどりだった。

テレビ局のディレクター和泉が家について来たので、どこかに隠れてくれと言う。

その後、和泉が入って来て、一人暮らしだと思っているみどりに馴れ馴れしくして来る。

そこにやって来たのが、兄の安治だった。

その様子を見た和泉は、又来ると言いながら帰ってしまう。

ベッドに座った安治は、押入の方からくしゃみが聞こえたので開けてみると、カーテンの中に隠れていた三郎が顔を出して挨拶をする。

安治は、妹夫婦が、独身の振りをしている事も知らなかったのだ。

呆れた安治は、みどりが出しかけたコーヒーを嫌いだと言って帰ってしまう。

その後、再びベッドに潜り込もうとした三郎を押し退け、みどりが今度は私が寝る番だとベッドに横になる。

そして、夕べ、お店で儲け話を聞いたと三郎に話しはじめる。

谷口不動産に出向いた三郎は、あの車を買う事にしたと言う谷口にキーを渡し、自分が土地を買いたがっている人物を紹介したら、どのくらいマージンをもらえるか聞く。

すると、君なら、手数料の半分やっても良いと言うではないか。

その思わぬ好条件に喜んだ三郎は、自分の義兄の店の女主人の叔父さんが、東京で店を作りたがっていると教える。

すると、谷口は事務員の権田原(安田伸)に、ちょうど良い物件が会ったんじゃないかと聞く。

さらに、もし良かったら、今人手が足りなくて困っているので、ここで働く気はないかと、谷口は三郎に聞いて来る。

その足で「にしき」にやって来た三郎は、今度、不動産屋で働く事になり、修善寺の旦那が、千代子に店を持たせたがっていると聞いたので、その旦那に紹介して欲しいと安治に頼みに来るが、安治は断わる。

安治は、その日、千代子のアパートを訪ねると、修善寺の旦那との事を聞きただす。

すると、千代子は、杉本の旦那は私の腕を見込んでくれたようだが、私としては自分でやりたいときっぱり言う。

逆に安治は、あなたとお嬢さんとの話の方が心配だと千代子から切り返されるのだった。

その邦江は、電源会社に勤める三木照夫(水原弘)と会っていた。

三木から、近々、四国の方に転勤になりそうだと呼出されたからだ。

行けば、電源工事で、3年くらいは戻って来れないのだと言う。

その後、茂造と千代子を六本木の候補地に案内して来た三郎は、茂造から手付け料として三百万先渡しすると、商談があっさりまとまる。

一方、その日も友子の弁当を持って劇場に来ていた新吉は、舞台で「国定忠治」を演じている二人の役者(三木のり平、八波むと志)が、月が出ていないと目で合図して来たので、急いで用意しに行く順一に代わり、舞台袖で効果音を任される事になる。

ところが、慣れない新吉は、雁が鳴いて…と言う所で、牛の鳴き声を出してしまったり、チャルメラを吹いたり、後ろの緞帳を上げてしまったりと、台なしにしてしまっていた。

その失敗で落ち込んでいた順一を慰めていた友子は、うちの姉と安治が結婚するようなので、そうなったら、自分は家を出ようと思っていると告白する。

それは、自分と結婚してくれと遠回しに言っているプロポーズと気付いたので、順一は嬉しくなってしまう。

その頃、店を終わって来たく仕掛けていた安治を呼び止めた邦江は、お銚子を用意したと言う。

バツが悪い安治が、遠慮しながら手酌で飲もうとすると、邦江は、あなた、いつまでもここで働いてくれるかい?と聞いて来る。

ますますいたたまれなくなった安治が、早々に店を出ると、そこに帰って来た友子は、二人の姿を見て、勝手に気を廻し、姉を冷やかすのだった。

そんな友子に、新吉は手作りの夜食を手渡すのだった。

ある日、谷口不動産に出社した三郎は、警察が乗り込んでいるのに気付き、ドアの外から、中の様子を伺う。

すると、事情を聞かれていた女性が、この会社には、谷口と権田原と言う二人の他に、最近もう一人、植村と言う、ちょっとハンサムな男も加わっていたと話しており、それを聞いた刑事が、すぐその男を手配してくれと言っているではないか。

自分の事だと気付いた三郎は、とっさにその場を逃れると、テレビ局のみどりの元に駆け付ける。

ちょうど、森永コーヒーガムの生コマーシャルをやっていたみどりを連れ出すと、訳を話す。

その後、みどりは「にしき」にやって来て、兄に「数千万の詐欺事件」と報道されている新聞を見せながら、夫が今、警察に追われていると打ち明けに行く。

夫は完全に騙された口で、5000円をもらっただけで、谷口らに車まで取られてしまったと言うではないか。

それを聞いた安治は、あんな男とは別れちまえと叱るが、結婚してない兄さんに夫婦の事なんか分からないだろうとみどりに言われてしまう。

その夜、安治からその顛末を聞かされた母親は、修善寺の旦那には迷惑をかけたので、詫びを入れなければいけないだろうと言う。

バタ屋に身を落とした三郎は、酔った連中がスーダラ節を唄ってはしゃいでいる安宿で、隠れるように寝泊まりしていた。

一方、千代子のアパートを訪ねて来た安治は、この前の約束はダメになったと、義弟が紹介した六本木の土地はペテンだったと打ち明けると、これから修善寺の旦那の所に、足りないがこれを持って詫びに行くと、98万5000円の貯金を出してみせる。

それを聞いた千代子は、何で、弟の不始末の詫びをあんたがしなけりゃいけないのよと、その浪花節振りに呆れ止めようとする。

しかし、それが俺の気性だもの…と言う安治は、11時の準急で出かけるからと出て行く。

列車に乗った安治は、いつの間にか隣の席に座って来たのが千代子だったので、ちょっと嬉しくなってしまう。

その頃、三木は、邦江に、今月末までに高知に行かなければいけないと報告していた。

それを聞いた邦江は、明日にも、修善寺の叔父の所に行って、事情を説明して来る答える。

3年もあなたを待っていると、自分は27になってしまうと言うのである。

修善寺に到着した千代子は、いきなり二人で会いに行ったのではまずいから、あなたは一旦近くの旅館に泊まって、私からの連絡を待ってくれと言い残して、先に茂造に会いに行く。

茂造の家は「去留庵」と言う旅館だった。

応対した番頭(桜井センリ)は、あいにく今部屋は塞がっていると断わろうとするが、千代子の姿を見つけ出て来た茂造は、鼻の下を伸ばし、すぐに先客予定のある「鶯の間」にお通しするようにと命ずる。

その旅館では、ガチョウをたくさん飼って池に放していた。

夜、約束通り千代子から電話を受けた安治は、ペテンの事を話したら、300万の事はショックだったらしいが、奥さんに内緒の話だけに、旦那は諦めてくれたらしいから安心しろと教えられる。

それに、今、旦那は組合の用事で出かけていないから、今日一晩そこに泊まって、明日東京に帰れば良いではないかと言う。

それもそうだと思い、安治はその宿で泊まる事にする。

その頃、安治の家にやって来た邦江は、出かけた修善寺から安治はまだ帰らないと母親から聞かされていた。

組合の用事を終え、その夜遅く旅館に戻って来た茂造は、「鶯の間」にいる千代子を訪ねて声をかけるが、もう布団の中に入っていた千代子が無視をしていると、何とか部屋の中に忍び込もうと、踏み台代わりにしたガチョウ小屋の屋根を踏み抜いて大騒ぎになり、番頭らが駆け付けてしまったので、ガチョウ泥棒がいたとごまかすのだった。

そんな外の様子を聞きながら、千代子は独り笑っていた。

その晩、安治が布団の枕元に入れて寝ていた鞄から、現金を盗み出すものがあった。

翌朝、千代子は散歩に出かけると旅館を出る。

その後、茂造を訪ねて「去留庵」に来た安治は、自分の貯金を受取ってくれと、鞄から風呂敷包みを取り出そうとしていたが、そんな金は受け取れないと茂造から固辞されていた。

それでは自分の気がすまないと、風呂敷包みを開けてみた安治は、その中身が新聞紙の束に替わっている事を知り驚く。

取りあえず、その場は、茂造の言葉に甘える形で引き下がった安治だったが、一応、地元警察に被害届を出しに行く。

散歩に出ていた千代子はサングラス姿の男と落ち合っていた。

それは詐欺師の谷口で、 二人は最初からグルだったのだ。

谷口は、夕べ安治の鞄から抜き取って来た98万5000円を千代子に渡すと、まだし残している事があるので、俺は東京に戻るが、お前も捕まるなと言い残して別れる。

川っぷちで呆然としていた安治を見つけタクシーを停めたのは、修善寺の叔父を訪ねて来た邦江だった。

とんだ所で邦江から声をかけられた安治は動揺するが、義弟の不始末を詫びると、最近水臭くなったが、自分はあなたの事を他人のような気がしないのだと邦江から言われる。

ちょうど、そこに来合わせたのが千代子で、その顔を見た安治は、思いきって、実はあいつと結婚するつもりなので、近々店を辞めさせてくれと邦江に切り出す。

すると、それを聞いた邦江はあっさりと納得し、そのままタクシーに乗って「去留庵」へ走り去ってしまうのだった。

残された千代子は、私なんかより、あの人と一緒になった方が良かったんじゃない?と安治に囁く。

茂造に会った邦江は、実は今度結婚する事にしたので、思いきって店を辞めたいと切り出す。

それは、安治とかと聞く叔父に、そうではなく、電源会社に勤めている三木照夫と言う相手だと答えた邦江は、そう言えば、安治も千代子と言う芸者と結婚すると言っていたと伝える。

それを聞いた茂造は、寝耳に水の話でぶ然としてしまうのだった。

ある日、いつものようにクズひろいを一段落し、道ばたで握り飯を食べていた三郎は、自分の車を運転して通り過ぎて行く権田原の姿を目撃し、急いでタクシーを停めると、あの車を追ってくれと運転手(世志凡太)に頼む。

しかし、三郎の身なりを見た運転手は、警察の旦那かと聞いて来たので、思わず、持っていた手帳をちらりと見せて、そうだと嘘をついて乗り込むのだった。

権田原がやって来た場所には谷口が待ち構えていた。

これまでだまし取った現金を詰めたバッグを下げて来た権田原と落ち合うと、合流するはずの千代子の到着を待ち構えるが、そこに入って来たのが三郎で、二人と取っ組み合いになる。

その様子を目撃したのが、料金の支払いを心配して様子を見に来た運転手で、異変に気付くとすぐに引き返して行く。

その頃、そこにタクシーで近づいていた千代子だったが、何かを思い付いたように、東京に戻ってくれと言い出していた。

谷口らに縛られてしまった三郎だったが、そこに、運転手から連絡を受けた二名の警官が駆け付けて来る。

事情を聞かれた谷口らは、又、嘘を並べ立てて、その場を立ち去ろうとするが、口に咬ませられていたタオルを外してもらった三郎は、そいつたちは詐欺師で、あいつらが持っている鞄が証拠だと声をあげる。

警官がその場で鞄を開けてみると、確かに大量の札束が詰まっている。

三郎も含めた三人は、警察に同行を求められる。

「にしき」では、安治を呼んだ邦江が、自分は結婚して高知に行く事になったので、今日限り店を閉めると打ち明けていた。

そこに、三郎が駆け付けて来て、谷口を警察に突き出したので、自分への疑いを晴らす事が出来、金も車も戻って来る事になったと報告する。

その話の内容よりも、変わり果てた三郎の身なりに驚く安治。

三郎は、明日にでも、みどりを連れて、修善寺の旦那に詫びに行くつもりだと言うと、いつものように腹が減っているので何か喰わせてくれと言い出す。

新吉が見繕っているのを見ていた邦江は、今日は、お馴染みさんを招いて、ただで振舞う事にしようと提案する。

その夜、お馴染みさんで賑わう「にしき」では、手伝っていた三郎、新吉、そして安治が交互に「五万節」を唄うのだった。

そんな宴席から抜け出て来た邦江が寂しそうにしているので、妹の友子は、自分はむしろさっぱりした、姉さんは亡き両親の重荷をようやく今、肩から降ろしたのよと慰めるのだった。

その夜帰宅した安治は、母親から、さっき手紙を持った女の人が来たと封筒を渡す。

中を開いてみると、自分は訳あって金持ちと結婚する事になったので、もう今頃は東京にはいない…と書かれた千代子からの手紙が、100万円の小切手と共に入れられていた。

事情を知らない母親は、千代子さんって誰だいと嬉しそうに迫って来るが、複雑な心境の安治は邪見に追い払うのだった。

その頃、その千代子は、青森行きの夜汽車にゆられて、物思いに耽っていた。

ある日、劇場の順一を呼出した友子は、彼が大学の経済課を出ているのを確認すると、畑違いの演出助手なんか続けて行くより、この際、商売をやらないかと持ちかけていた。

修善寺の「去留庵」では、みどりと共に謝罪に来ていた三郎を、茂造がねぎらっていた。

そこへ茶を持って来た茂造の妻(高橋とよ)は、夫がペテンに引っ掛かった事を何も知らないので、自分にも頭を下げる三郎の意味が分からず、宿泊代を半額にしてやった礼だとごまかす夫に、ただで泊めて差し上げろと勧めるのだった。

そこへ、番頭が東京からの電報を持って来て、読むと、邦江と君の新婚夫婦が、3時半に到着すると書いてあるではないか。

駅で、二人を出迎えたのは、去留庵のハッピを着た三郎と茂造だった。

邦江が訳を聞くと、今度、この旅館で働かせてもらう事になったと言う三郎は、同じ列車から降りて来る乗客たちに宿の案内をし始める。

その姿を見ていた茂造は、あいつはきっと良い番頭になると太鼓判を押すのだった。

家でごろごろしていた安治は、自分を迎えに来た新二の姿を見て驚く。

何事かと思ったが、新二が強引に引っ張って行ったのは、閉ったはずの「にしき」だった。

中に入ると、友子がいるではないか。

聞くと、今度、自分がこの店をやってみる事にしたと言うではないか。

板場には順一の姿もあり、新しい見習が独り増えたので、安さんには、結婚をもう少しまってもらって、この人をみっちり仕込んで欲しいと言われた安治は、急に元気になり、さっそく着替えはじめる。

そんな安治が、景気付けに一杯と酒を友子から勧められた所に入って来たのが茂造だった。

その顔を見た安治は、千代子の事を思い出しいたたまれなくなるが、千代子がいなくなった事を知らない茂造は、自分は気にしてないと安治を励まし、その言葉を聞いた安治は、無理に笑ってみせるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

後に「乱気流男」とタイトルを変え再映されたクレージーキャッツ総出演の映画だが、どちらかと言うと、主演は、昔気質で生真面目男を演じているハナ肇の方であり、準主役を演じている植木等の方は、大ヒットした東宝の「ニホン無責任時代」(1962)の直前、松竹と言う別会社の作品と言う事もあって、東宝のイメージとは全く別人のように見える。

演出家が違うと、こうも役者のイメージが違うものかと驚かされるくらいである。

東宝の無責任男のイメージと決定的に違うのは、植木等がヘラヘラとした笑顔を一切見せない事。

これだけで、植木等は、どこか暗い感じがする二枚目にしか見えなくなる。

谷啓も、この作品では脇を演じていると言った感じで、むしろ石橋映太郎(エータロー)などの方が目だっている感じすらする。

全体的には、喜劇と言うよりも、松竹お得意の下町人情劇に近い印象。

基本的に、東宝クレージー物のようなドタバタやナンセンス要素はないと言って良い。

笑いの要素としては、途中ゲスト出演している三木のり平と八波むと志のコント部分くらいか?

それよりもこの作品の見所は、フジテレビの「森永スパークショー」が出て来る所だ。

ちゃんとフジテレビの名前も出て来る。

ナベプロ作品だけに所属タレント総出演と言った感じで、ザ・ピーナッツ、渡辺晋とシックス・ジョーズ、スマイリー小原とスカイライナーズ、中尾ミエ、スリーファンキーズ、ミッキー・カーチス、最後の宴会のシーンでは伊東ゆかりまで出て、中尾ミエと一緒に踊っている。

後に「スパーク三人娘」を組む事になる園マリの姿は確認できなかったが…。

特に「水戸黄門」のうっかり八兵衛こと高橋元太郎がスリーファンキーズの一員として唄っている姿は貴重だと思う。

珍しいと言えば、SKDを思わせるラインダンスをはつらつと披露している倍賞千恵子の若き日の姿にも驚かされる。

東宝のクレージーや植木等しか知らない人には、ぜひ一度、見比べて欲しい意外な初期作品である。