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チャンチキおけさ

1958年、日活、池田一朗+小川英脚本、小杉勇監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

佐渡島

漁から戻って来た漁船の一つの上で、捕れた魚の扱い方が乱暴な三男サブこと三郎(沢本忠雄)に、もっと大切に扱えと注意する長男源一(長尾敏之助)。

そこにやって来た千枝(香月美奈子)が幼馴染みのサブに、魚はたくさん捕れたかと声をかける。

そして、祖父(永井柳太郎)の船に上がり込むと、率先して魚降ろしの手伝いを始める。

その後、海岸で二人きりになったサブは、自分は漁師に合わないので、上京して、競艇選手から遊覧船の船長になった次男の太平みたいになりたいと洩らす。

一緒について来てくれないかと誘われた千枝だったが、祖父が60年も過ごしたこの島を離れるはずもなく、そんな祖父を独り置いて自分だけが島を離れる訳には行かないと答える。

それを聞いたサブは、自分と祖父のどっちが大切なんだと怒って帰ってしまう。

サブの家では、母親ふさ(紅沢葉子)が、網を修理していた源一に、サブにあまりつらく当らないでくれと注意していたが、源一は、あいつももう20になったのだから、もっとしっかりしてもらわなければと反論していた。

そこに帰って来たサブは、いきなり家を出ると言い出し、止める母親の言葉も聞かず、さっさと着替えを済ますと連絡船乗り場に出かけてしまう。

それを追おうとしたふさに、母さんからだと言って渡してくれと小遣を渡す源一だった。

サブに追い付いたふさは、源一兄さんの事を悪く思うんじゃないよと諭しながら、源一から預かって来た金を渡す。

港を出て行く連絡船の姿を、浜辺から千枝が哀しげに見送っていた。

東京、隅田川の水上観光バスの浅草発着場に到着した船から降り立った太平(二谷英明)は、受取った電報を読んで、弟のサブが自分を頼って上京してくる事を知る。

馴染みの焼き鳥屋台「大吉」の寄った太平は、先客の春さん(三波晴夫)が得意の咽を披露して「チャンチキおけさ」を唄っている横に座る。

後日、上京したサブは太平と一緒に乗った路面電車の中から見える東京の姿に浮かれていた。

サブを、浅草の共同アパートに連れて来た太平の部屋には、競艇時代もらった数々のトロフィーが飾られてあった。

そんな太平に、どうして競艇を辞めたのか、自分もやりたいと聞いたサブだったが、太平は嫌になったからだと答えただけで、競艇選手になるのだけはダメだと釘を刺してくる。

その後、兄の運転する遊覧船を見に行ったサブだったが、想像していたものとは違い小さな船だったので、大した事ないなと正直な感想を言ってしまう。

その後、一人で競艇場に出かけたサブは、近くの客たちが、太平が昔、八百長をして、ボートをひっくり返してしまったと話しているのを小耳に挟み、いい加減な事を言うなと突っかかり、喧嘩になってしまう。

喧嘩は、すぐに駆け付けた警官によって止められたが、その日、知り合いに弟の就職の事を頼み、鯛焼きを買って帰って来た太平は、先に戻っていたサブが何故か落ち込んでいるのを発見する。

鯛焼きを勧めても、兄さん!と言うだけで何も答えないばかりか、終いには泣き出してしまったので、困惑した太平は、泣いているサブに黙って鯛焼きを握らすのだった。

佐渡島では、早朝、千枝と一緒に魚を背負って家に戻っていたふさが、サブから手紙が来ないかと聞くので、千枝は、来ないが、きっとサブちゃんはその内帰って来るよと慰めて別れるのだった。

ある日、太平の水上観光バスに乗った春さんが気持ち良さそうに唄っていた。

下船後、そんな春さんに、何か弟の働き口はないだろうかと声をかけてみた太平だったが、自分はやっと長谷部組に就職が決まったばかりだから…と言葉を濁した春さんは、あんたも長谷部とは昔関係が合ったんだろうと言うので、太平は、そんな事はないと強く否定するのだった。

一方、港で、外国船の船長らしい三人組に出会ったサブは、何か仕事はないかと聞いてみるが、サブが乗っていたのは漁船と聞くと、三人は笑いながら通り過ぎてしまう。

ある日、帰宅していた太平は、後ろで騒ぎ声が聞こえたので振り返ると、サブが長谷部組のチンピラ金公(近江大介)を助けて、他の男たちと喧嘩をしていた。

アパートで、傷の手当てをしてやりながら、こんな事をして、島で待っている千代とか言う娘に恥ずかしくはないのかと説教する。

しかし、すっかり金公と仲良くなったサブは、一緒にダフ屋を手伝うようになり、長谷部組のキャバレーに出入りするようになる。

そんなサブを見かけた長谷部(長弘)が、あいつは誰だと聞くと、驚いた事に田所の弟らしいですよと代貸の森(青木富夫)が答える。

それを聞いた長谷部は、隣で飲んでいた情婦で踊子の野見京子(横山美代子)に、あいつを思い出すか?と嫌味を言う。

カウンターで金公と飲んでいたサブは、踊っていたきれいな踊子が近づいて来て、自分に遊びにこいと囁き、名刺をくれたので舞い上がってしまう。

一方、太平の方は、焼き鳥「大吉」で、石川島造船所で修理工弟の仕事先が見つかったと、常連客相手に喜んでいた。

一緒に聞いていた春さんは、自分は長谷部一家の仕事でも良いかなと思っていた。何せ、あんたと親分とは仲が良かったと聞いたので…と、意味ありげな事を囁いて来る。

その言葉で、再び不機嫌になった太平は、雨が振り出したので、アパートへ帰ってしまう。

サブも、夜遅く、ぐしょ濡れになって帰って来る。

そんなサブに、太平は、お前、最近、ヤクザの子分になったそうだなと尋ねる。

そして、自分が探して来てやった石川島の修理工の仕事の話をするが、そんな動かない船なんて興味ないとサブが拒絶したので、思わず殴ってしまった太平に、サブは、自分だって八百長やった癖に!と怒鳴り!そのまま雨の中を飛び出して行く。

トンネルの中に走り込んだサブは、濡れた地面に落ちていた野見京子の名刺を見て、彼女の部屋に出向いて行く。

いきなり来たサブに驚いたような京子だったが、優しく迎えると、ベッドに腰を降ろす。

そんな京子に抱きつこうとしたサブだったが、きつくはねのけた京子は、私は長谷部の女だから、手を出すとどんな目に合うか分からないわよと脅して来る。

そして、競艇時代の太平の写真を見せ、自分は、兄のファンだったのだと告白して来る。

あなたを誘ったのは、太平に会いたかったからに過ぎず、そんな私を殴りたいのだったら、早く一人前の男になりなさいと突っぱねるのだった。

それを聞いたサブは、いたたまれなくなり、部屋を飛び出してしまう。

まだ雨が降りしきる中、軒下で雨宿りをしながら、サブは、佐渡島で楽しく過ごしていた千枝との想い出に浸っていた。

後日、サブは、森の運転する車に乗っていた。

親分のお声がかかり、船を使う仕事があると言うのだ。

その頃、いなくなったサブを探して、ダフ屋をやっていた金公を尋ねて来た太平だったが、自分は知らないが、親分か京子さんなら知っているかもと言われ、その京子の所へ出かける。

久々に再会した京子は、あの時、長谷部があなたに八百長を頼んでいたとは知らなかったのだと打ち明ける。

そして、何故あの時、ボートをひっくり返したのかと聞く京子に、太平は、わざとやったんじゃない、怖くなったからだと答える。

そして、サブには同じ道を歩かせたくないんだと言う多平だったが、京子は、もう船は出てしまったと告げる。

船着き場に戻った太平は、知人のモーターボートを借り受けて、すぐに出発する。

その頃、サブが操縦する船は、沖合いで停まっていた貨物船に近づいていた。

貨物船は、船からの合図を受けると、いくつもの木箱を海に流しはじめる。

それを回収しはじめたサブたちの船に近づいて来たのが、太平のモーターボートだった。

太平は、サブの船の周囲を旋回し、後部に立っていた組員たちを海に落とした後、接近して自らサブの船に乗り込んで来る。

そして、サブに船を走らせるように言うと、組員たちと取っ組み合いの喧嘩を始めるが、結局、相手に捕まってしまう。

倉庫に連れ込まれ、鎖で縛り上げられた太平、サブ兄弟の前にやって来た長谷部は、子分たちに、二人を沖で始末しろと命じて帰ろうとする。

扉を開いて外に出ようとした長谷部が見たものは、水上保安官の制服姿の春さんと整列して待っていた大勢の保安官たちだった。

乗り込んで来た保安官たちに一斉検挙される組員たち。

そんな中、鎖を解かれた太平は、春さんの意外な姿を見て驚く。

密輸調査の為に長谷部組に潜入していたのだと打ち明けた春さんは、あんたも、仲間じゃないかと疑っていたのだと話す。

一方、覚悟を決め、神妙に手を差し出して来たサブに、君は悪人じゃないよと肩を叩く春さんだった。

無事、一緒に解放された太平は、春さんの恩を忘れるんじゃないぞ、千代ちゃんが泣くぞとサブに釘を刺すが、改心したサブは、千代ちゃんじゃなくて、千枝ちゃんだよと訂正し、俺ってばかだな…と呟くのだった。

その後、佐渡島に渡る連絡船にサブが乗っていた。

近くの客が、今日は祭りだから、おけさ踊りを見に行こうと話し合っている。

島では、あちこちで踊りが始まっていた。

浜辺で踊る輪を見ておいた見物客の中に、ふさ、千枝とその祖父の姿もあった。

千枝は、着物姿で帰って来たサブの姿を発見し走り寄ると、サブはやっぱり島が良いと言うので、そうよ、安心した!一緒に踊ろうと誘う。

ひさも、踊り始めたサブの姿を見て喜ぶのだった。

その頃、浅草の焼き鳥屋台「大吉」では、いつもとは様子が違い背広姿になった春さんが、「チャンチキおけさ」を披露していた。

その歌を聞きながら、隣に座っていた太平が佐渡のおけさを思い出すと言うので、常連客たちは、そっちが佐渡おけさなら、こっちはみんなで「チャンチキおけさ」だとまぜっ返し、又、春さんを中心に全員で歌い始める中、太平は屋台を出て、帰路につくのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

三波晴夫のヒット曲「チャンチキおけさ」をベースにした歌謡映画。

上映時間47分の中編で、内容自体もどうと言う事もないものだが、当時の佐渡島や浅草近辺の下町風景などを楽しむ事ができる。

正直な所、小柄で陽気な顔だちの三波晴夫のヤクザ姿や、後半の制服姿は、あまりにも似合わず、かなり滑稽にも見えるのだが、その辺は御愛嬌と言う所だろう。

過去を背負いながらも、さり気ない毎日を生真面目に生きている兄役の二谷英明と、野心を抱いてひたむきに突っ走ろうとする弟を演じている沢本忠雄の対比が見物と言った所だろうが、華のある役者が一人もいないので、かなり地味な印象なのは否めない。

その分、三波晴夫の歌声で、持たせようとする狙いだったのだろう。

それでも、ラストの佐渡島での祭りの様子や、海上アクションなどはきちんとロケで行われており、小品ながら、手を抜いた感じはあまりしない所が、映画全盛期の作品である証だろう。