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化け猫御用だ

1958年、大映京都、香住春吾原作、民門敏男脚本、田中徳三監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

お多福人形が置いてある茶店で、歌の得意なおとし(楠トシエ)が、ペットの白猫おぎんを抱いて明るく唄っている。

そこへ、御高祖頭巾姿の腰元がやって来て、団子の小さな折詰をくれと言う。

おはるに注文の品を持って来させ、自分も奥に引き下がったおとしだったが、おはるの驚いた声で店先に向うと、今までいた白猫おぎんの姿がない。

おはるが言うには、今の客が持って行ったと言うので、すぐに後を追ったおとしは、ラケット町の目明かし鶴吉(中田ラケット)と、その子分ダイマル屋の亀三(中田ダイマル)にばったり出くわしたので、事情を説明する。

最初は、盗まれたのが飼い猫だと聞いて笑ってやり過ごそうとした二人だったが、盗まれたのは白猫ではないかと聞き返し、それだったら、今、自分達が追っている連続白猫泥棒と同一犯だろうと気付き、慌てて一緒に腰元を追い掛け始めるが、腰元は駕篭に乗って逃げる。

駕篭が向った先が、三田の屋敷町だと気付いた鶴亀コンビは、先回りして、駕篭を待ち受ける事にする。


予想通り、駕篭は三田の土屋邸の前に止まる。

土屋とは、今、長崎奉行をしている土屋羽前の屋敷であった。

ところが、駕篭を降りた腰元は、その屋敷には入らず、隣の稲荷神社へと入って行く。

不思議に思い、後をつけた鶴亀コンビだったが、どうした訳か、稲荷神社の中には誰の姿もなかった。

向こう側に逃げたのかと鶴吉は推理するが、向こう側は崖だと否定する亀吉。

薄暗くなった中、訳が分からない二人は、目の前の祠の扉が無気味な音を立てて開くのを観て震え上がる。

中から現れたのは、一人の若侍だった。

鶴吉が誰何すると、自分は土屋家部屋住みの千之助(梅若正二)だと名乗り、腰元など見かけなかったと言い残し去って行く。

その夜、土屋邸では、連れて来た白猫に、土屋家の世継ぎ竹丸(稲垣ジニオ)に出す夕食用の焼き魚を、腰元たちが食べさせていた。

その腰元の一人こそ、白猫のお銀をさらって来た浪路(近藤美恵子)だった。

しかし、それを観ている竹丸の母、お愛の方(橘公子)は、魚の生臭さが嫌だと顔をしかめてすぐに部屋を出て行ってしまう。

猫が何事もなく食べているので安心した腰元たちは、食事を竹丸に勧めるが、竹丸は、毒味で死んだタマの事が思い出され、不憫で食べる気がしないと拒絶する。

それを聞いた浪路は、タマが死んだ事件の事を思い出していた。

それは、長崎から、羽前の使いとして田島十太夫(伊沢一郎)が屋敷にやって来た時であった。

その田島が伝える所では、抜け荷の首謀者だった海賊、竜神武左衛門を捕まえた後、体調を崩したので、お役御免を老中に願い出たが、聞き入れられないので困っている。

何とか、そちらで手配してくれないかと言うものだった。

それを聞いたお愛の方は、御用人、手島喜内(清水元)と協力してやってくれと伝える。

その夜、竹丸が食べかけていた魚に急に飛びついて食べたタマが血を吐いて死んでしまう。

それを目撃した腰元たちは、犯人を見つけだすために、すぐさま手配しようと立ち上がりかけるが、それを押しとどめたお愛の方は、家名に傷がつくので一切口外無用、今後は自分が命をかけて竹丸を守り抜くと宣言する。

その時、部屋の外に気配がしたので、障子を開けてみた浪路と萩乃(大和七海路)は、立ち去って行く千之助の姿を目撃する。

それを聞いた老女三好(大美輝子)は、妾腹の子ながら羽前の弟に当るので、万一の時は、竹丸に代わって世継ぎになる人物だけに、竹丸を狙う可能性はあると疑いを口にする。

しかし、お愛の方は、殿が帰るまで騒ぐでないと、側近たちをたしなめるのだった。

その後、屋敷を出ようとする千之助を観た浪路は、猫が死んだ時、何故、部屋の外で聞き耳を立てていたのか問いつめるが、千之助は人違いだと主張し、そのまま外出してしまう。

その後、長崎より早馬が到着したと喜内が、竹丸と遊んでいたお愛の方の部屋に報告に来る。

後日、氏神様に、竹丸の身の安全を祈願に出向いた浪路は、町中で千之助を見かけたので後をつけてみると、彼はいくつもの薬問屋に立ち寄っていた。

途中、姿を見失ったので足を速めると、物陰で隠れていた千之助が現れ、つけて来ていた事を知っていたと告げる。

義姉から言い付けられたのかと言われた浪路は否定するが、立ち去りかけた千之助が印篭を落としたので、思わず拾おうとするが、戻って来た千之助に奪い取られてしまう。

その夜、又、竹丸の夕食に毒が盛られていたらしく、毒味させていた新しい白猫が死んだので、竹丸が怯えて泣き出していた。

そこに外から戻って来た千之助だったが、座の雰囲気がおかしいのを見て取ると、やっぱり帰って来るのではなかったと言いながらも、土産に花見団子を買って来たので皆で食べるが良いと腰元たちに渡して帰る。

その直後、腰元が食べた団子に毒が入っていたと知らせが走る。

三好が駆け付けると、団子を食べた腰元の一人が死んでいた。

浪路は、独り、千之助の部屋に出向くと、本人がいないのを確認して、部屋の文箱の中から薬瓶を見つけだすと、その中の液体を、部屋の金魚鉢に流し込んでみると、観る間に金魚が死んだので、それが毒である事を知るのだった。

ある日、再び白い猫をさらって来て、田島十太夫に手渡そうとしていた萩乃は、もう白い猫はいらないと言われる。

その現場を鶴吉と亀三に観られた十太夫は、刀を抜いて、二人を脅かす。

一方、三好は、夕食の膳が運ばれた部屋の外から、障子を少し開けて、中を監視していたが、何者かが椀の汁の中に毒を流し込む手元を確認する。

お愛の方の部屋には、猫を抱いた十太夫がやって来るが、お愛の方は、今後、毒味は自分がすると言い出す。

その時、三好が入って来て、今、毒を入れている現場をはっきり目撃したと報告し、その犯人の名を告げようとした瞬間、倒れて息絶える。

直後、千之助がやって来て三好の首筋を改めると、首の後ろの盆の窪に含み針が刺さっているではないか。

その場にいた喜内は、あなたも今、そちら(三好の背後の方)から来られましたな?と、意味ありげな問いかけをするのだった。

その夜、土屋邸の前で監視していた鶴亀コンビは、火の用心を告げて歩く、妙に男前の夜回り(市川雷男)とすれ違う。

その時、屋敷の通用門から、黒頭巾姿の怪しげな男が何かを抱えて隣の稲荷神社の方へ走り去るのを見かける。

その頃、竹丸の姿が見えなくなった事に気付いた浪路は、その部屋の中で千之助の印篭が落ちているのに気付き、表に飛び出したところで鶴亀コンビと出会う。

二人が、目明かしとその子分と名乗るのを聞いた浪路は、今、若がさらわれたと教える。

屋敷内では、竹丸の誘拐を知ったお愛の方が泣き伏していた。

同情して何も言えない腰元たちの前で、ズルズルと奥の部屋の着物がかけてある背後に移動したお愛の方は、しばらくすると、化け猫のような異様な姿になって現れると、これから竹丸の部屋に参ると言う。

翌朝、浪路たちが、お愛の方のいる竹丸の部屋に朝食を持って行くと、障子を開くな。少しだけ開けて、お膳だけを差し入れて行けと奇妙な事を言うお愛の声が聞こえて来る。

さらに奇妙な事に、あれ程嫌いだったはずの魚を存分に加えた食事を、量も二倍にして持って来いと言うのだ。

後日、その話を浪路から伝え聞いた鶴亀コンビは、白猫のたたりではないかと怯え出す。

そんなある日、かぶりものをした姿で川べりを歩いていた十太夫は、千之助から呼び戻され、すぐそばに繋いであった船に乗って一緒に酒を飲もうと誘われるが、自分は船が大の苦手なのだと断わって、一緒に歩きながら話す事になる。

二人が立ち去った船の中から、何故か萩乃が顔を出す。

千之助は、最近様子がおかしくなったお愛の方の事を聞くと、それは竹丸がいなくなって、猫となったと言う事ではないのかと謎掛けのような事を言う。

千之助が立ち去った後、その言葉を思い返していた十太夫は、そうか!と何事かに気付いたようだった。

その夜、奥方の様子をうかがいに竹丸の部屋の前に来た十太夫は、部屋の中の行灯の油を嘗めている奥方の姿を目撃する。

障子を開け放ち、その化け猫を切ろうと刀を抜いた十太夫だったが、その瞬間、何故かその場に倒れてしまう。

気がつくと、千之助が介抱しており、まさか、人を使わず、直接手を出すとは思わなかったと言う。

何の事かと十太夫が問いかけると、萩乃がいるではないかと又しても謎めいた言葉が返って来る。

そこへ、長崎の殿から早飛脚が到着し、明晩、御帰宅為さるとの知らせが届く。

翌日、鶴亀コンビは、屋敷の秘密を知り過ぎたと萩乃と十太夫から刃物で脅され、ある依頼を受けていた。

その依頼とは、土屋邸の床下に潜り込み、屋敷の内部の様子を監視して来いと言うものだった。

仕方なくそれに従い床下に潜り込んだ鶴亀コンビは、どこからともなく聞こえて来る子守唄に気がつき、その声がする部屋の畳を上げて上がり込んでみる。

すると、誰もいない部屋の奥の壁が回ったかと思うと、そこから化け猫と化したお愛の方が現れたので、二人は腰を抜かしてしまう。

何とか逃げようとした二人だったが、迫って来る化け猫の形相のすごさを観て、ついに気絶してしまう。

その後、何故か、稲荷神社の境内で気がついた二人は、介抱してくれた千之助を見る。

千之助は二人に、土屋家のために大手柄をたてるつもりはないかと何事かを耳打ちした後、実は、稲荷と隣の土屋家の間には抜け道があり、それを知っているのは兄夫婦と自分と浪路だけなのだと教える。

その時、千之助に近づいて来た浪路は、若の部屋であなたの印篭を拾ったが、どう言う事なのかと問いつめて来る。

しかし、その事を他の者の耳に入れなかったと言う事は自分を本心から疑っている訳ではないと知り、後、半時で兄が帰って来るので、今は何も聞くなと答える。

その頃、御用人手島喜内一人が、殿の到着を先回りして迎えていた。

事の次第は、十太夫からうかがっていると言う喜内の言葉を聞いた羽前は、何故か驚く。

その時、隠れていた十太夫が姿を見せると、その顔を観た羽前は、思わず偽者!と叫ぶのだった。

偽十太夫の背後には、大勢の賊が姿を現す。

十太夫が、鎖を羽前に投付けたその時、手元にこづかが飛んで来る。

それを投げたのは千之助だった。

十太夫の前に現れた千之助は、道中、本物を暗殺して十太夫に成り済ませたお前の本名は、海賊武左衛門の子分、小島喜平太だろうと指摘する。

お前の二の腕に掘ってある、金を刷り込んだ独特の竜の刺青が何よりの証拠だと言う。

招待を見破られた十太夫だったが、仲間の賊たちが銃を千之助に突き付けている間、運び込んだ荷車に、羽前の身体を縛り付けると、親分を磔にした仕返しだと叫びながら、そのまま他の賊たちと一緒に屋敷の方に走り出す。

土屋家の門の前まで来た彼らは、羽前を縛り付けた荷車ごと門にぶつけ、中に乱入する。

屋敷の中では、浪路の前に来た萩乃が含み針を口に含んでいた。

彼女こそ、十太夫と組んで、数々の暗殺を繰り返していた張本人だったのだ。

浪路は、三好の仇と言いながら懐剣を抜くと、萩乃に立ち向かって行く。

屋敷に上がり込もうとした賊たちは、そこに巨大な化け猫の姿を観て立ち止まる。

黒い巨大な猫の姿を観た賊たちは、さすがに怯んで退却しかかるが、その黒猫の中に入っていたのは、肩車した鶴亀コンビだったと知ると、すぐに反撃して来る。

十太夫が、浪路と鶴亀コンビを斬ろうと迫って来た時、又してもこづかが飛んで来る。

千之助が駆け付けて来たのだ。

二刀流の剣で、獅子奮迅の働きを見せた千乃助に斬られた十太夫だったが、最後の力を振り絞って、荷車に縛り付けていた羽前を襲おうとする。

しかし、それに気付いた千之助によって、間一髪の所でとどめを刺されてしまうのだった。

荷車から鎖を取って介抱された羽前は、弟、千之助に礼を言うと、出迎えたお愛の方と無事だった竹丸を抱き締めるのだった。

その事件の顛末を、後日、自慢げに、おとしに聞かせていた鶴亀コンビは、自分達も褒美として30両もらったと嬉しがっていた。

いなくなったおぎんの事を思い出しながら、もう土屋様は猫の事なんか忘れてしまっただろうと、おとしが寂しげに呟いていた所に、連れ立ってやって来た千之助と浪路が、おぎんに良く似た猫を身替わりとして探して来たと手渡しながら、詫びを言うと、香典だと言って金の包みも渡すのだった。

天気も上々、すっかり嬉しくなった鶴亀コンビは、飲みに行こうと群集の中を歩き始めるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

上映時間59分の中編ながら、田中徳三監督の記念すべき第一回作品である。

コミカルスリラーと紹介されているが、冒頭、ビンちゃんこと楠トシエが明るい歌を披露し、漫才コンビのダイマル・ラケットが狂言回しとして随所に登場する以外は、ごく普通のサスペンス仕立てになっている。

主役を演ずるは「赤胴鈴之助」でお馴染みの若宮正二。

田中監督の初監督作品を祝って、市川雷造が夜回り役でワンシーンだけ登場している所も見物。

謎解きものとしては、千之助が持って帰って来た団子に仕込まれた毒薬の謎とか、腰元たちの目の前で化け猫に変化する奥方の手品の種とか、説明不足の箇所も多いが、その辺は、中編という条件下では難しかったのかも知れない。

化け猫とタイトルに謳っている割には怪奇ものとしても弱いのが、その手のマニアとしては物足りない部分ではあるが、クライマックスの立ち回りはなかなか。

短いながら、あれこれ要素が詰まった、子供から大人までそれなりに楽しめる作品に仕上がっていると思う。