TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

トンマッコルへようこそ

2005年、韓国、チャン・ジン原案+脚本、パク・クァンヒョン共同脚本+監督作品。

この作品は、比較的最近の作品ですが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、御注意下さい。コメントはページ下です。

************************************

1950年9月、連合軍は仁川に上陸した。

人民軍は深い山奥に逃亡したが、その中には、民間人の村もあった。

一機の米軍機が、操縦不能になり墜落していた。

飛行士のニール・スミス(スティーブ・テシュラー)は、接近する山の上に、にこやかに手を振る一人の少女の姿を垣間見る。

不時着後、操縦席のスミスの近くに、どこからともなくモンシロチョウが飛んで来る。

一方、多くの負傷兵を連れた人民軍の一部隊が山奥に逃げ込んでいた。

途中、逃走の足手纏いになるその負傷兵たちを殺す、殺さないで、隊長と副隊長の言い合いが始まるが、そこに連合国側からの攻撃を受けてしまい、動けない負傷者たちは次々に撃たれてしまい、動ける者たちもチリジリバラバラになってしまう。

山の別の場所では、一人の韓国軍の衛生兵ムン・サンサン(ソ・テッキ)が部隊から脱走して来ていた。

そのサンサン、誰もいないと思っていた森の中で、木の下にしゃがみ込み、銃で自決しようとしている韓国兵を見つけ、思わず制止しようとする。

バラバラになった人民軍の隊長のリ・スファ(チョン・ジョヨン)は、部下三名と一緒にピョンヤン目指し、険しい崖道を登っていたが、途中で独り滑落してしまい、連れは今や、中年下士官のチャン・ヨンヒ(イム・ハリョン)と少年兵ソ・テッキ(リュ・ドックァン)だけになってしまっていた。

その頃、衛生兵サンサンはと言えば、自決しようとしていた韓国兵に同行して、山を登って行くしかなかった。

休息していた人民軍の三人は、思わぬ所で笑顔の少女と出くわし呆然とする。

その少女は、彼ら三人を恐れる風もなく、無邪気に「自分は、誰よりも早く走る事ができる」とか「そこは蛇出るよ」などと話し掛けて来る。

事実、木の上から蛇が落ちて来たので、思わず発砲し、慌てる三人。

しかしスファは、銃の音を珍しがる少女からからかわれていると思ったのか激怒するが、ヨンヒが、あれは、ただ頭が弱い娘だとなだめる。

むしろ、南の傀儡軍が近くにいるのではないかと危惧する部下たちに、この少女が銃の音さえ知らぬのなら、その心配はないだろうとスファは分析する。

その頃、サンサンは、一人の村びとらしき男を見つけ、銃を突き付け村に案内させる。

その途中、たくさんの道祖神のようなものが道ばたに置かれているのを見かける。

村びとが連れて来た村はトンマッコル(純粋)と言った。

事実、その小さな集落は、子供達が自由に遊び回り、村人たちも何等警戒色を見せない、桃源郷のような所だった。

ちょうどその村では、捕えられていたスミスの前に、村長を始め多くの村びとが集まって来ており、キム先生と呼ばれる男が、しきりに本を片手に「How are you?」と問いかけていたが、相手が何も答えないので首を傾げていた。

本によると、その英語の質問をすると、相手は必ず「Fine」と答えるはずだと言うのだ。

しかし、スミスは、その紋切り型の質問に呆れていただけだった。

そこへ、ダルスが誰かを連れて来たと報告が来る。

それは、サンサンと自決しようとしていた韓国兵ビョ・ヒョンチョル少尉(シン・ハジョン)の事だった。

村長は、彼ら二人を暖かく迎え入れ、スミスの事を、数日前に空から落ちて来たと説明する。

女たちなど、何か良い事があるのでみんなが集まって来たのだろうかと、呑気に話し合っている。

男たちも、日本化中国が攻めて来たのかと話し合っていたが、どうやら、南と北が戦っているらしいと誰かが教える。

彼らは、戦争が起こっている事自体を全く知らなかったのだ。

そんなトンマッコル村の近くまで来ていた人民軍の三人と出会ったキム先生が、彼らを村に連れて来る。

村に先乗りしていた韓国兵二人の姿を観た人民軍の三人は、とっさに銃を向けるが、すでに弾は撃ち尽くしていることに気付いたので、持っていた手榴弾を取り出し、ピンに手をかけたまま、睨み合いが続く。

意味が分からないながら、村人たちは、スファに命じられて、全員手をあげる。

そんな緊迫した状態のトンマッコルに、一人の男がふらりと訪れて来る。

ジャガイモ畑を荒しに来る猪の様子を見に行っていたヨンポンだった。近くに大きな蜂の巣ができていたと言う。

村人たちは、一斉にヨンポンの周りに集まると、畑の心配をし始める。

事情が分からないニールも外に出て来るし、うるさがって起きて来た老婆が、便所へ歩いて行く。

そんな中、必死に睨み合っているのは、韓国兵二人と人民軍の三人だけだった。

もう村人たちは、彼らの事など関心がない様子。

スファは、そんな村人たちに、一ケ所に座っているように命じる。

村人たちは、素直に、その命令にしたがうが、朝になると、まず子供達から勝手に動きだし、村人たちも、畑の近くにできたと言う蜂の巣を観に、勝手に立ち上がって出かけて行く。

やがて、雨が降り出して来たので、残った村人たちも、一斉に、軒下に雨宿りに移動してしまう。

それでも、兵隊たちだけは、睨み合いを続けていた。

そんな中、あの少女ヨイル(カン・ヘジョン)が、少年兵テッキの側に近づいて来て、雨に濡れた顔を拭いてやりながら、あっという間に手榴弾のピンを抜いて持っていってしまう。

指輪になると思ったようで、嬉しそうにしている。

そんな事は知らないキム先生は、子供達に英語を教えている。

テッキが慌てて、その手榴弾を地面に落としてしまったので、兵隊たちは一斉に地面に臥せるが、何事も起きない。

不発だったのだ。

スファがちょっと怒ったように、それを拾い上げ後ろに放り投げると、それは一軒の小屋を吹き飛ばしてしまう。

その小屋は、食料備蓄用にトウモロコシが詰まった小屋だったので、大爆発の熱で、空に大量のポップコーンが雪のように飛び散る。

その様を観たヨイルは、無邪気に喜ぶのだった。

韓国軍と人民軍は、睨み合いの空しさを互いに悟り、同じ小屋で寝る事になる。

独り、スファは、食料としてもらったジャガイモを剥きながら、村長に、もう村で争い事はしないと約束していた。

そんな中、ヨイルは、寝ているテッキの頭に花を飾って楽しんでいる。

村長は、小屋が爆発したので、1年分の食料がなくなってしまったと説明していた。

スファは、仲間二人を起こすと、村の畑仕事を手伝いに行く事にする。

韓国兵二人も、自分達にも責任があると感じたのか、黙って畑に付いて行くと、ジャガイモ掘りを手伝いはじめる。

そんな様子を観ていた村人たちは、みんな良い人に見えると話し合うのだった。

しかし、スファとヨンヒたちは、互いに村を出て行けと牽制し合っていた。

その頃、連合軍の基地では、C802輸送機と偵察機が行方不明になったと報告が入っていた。

その近くに、人民軍のミサイル基地があるのではないかと色めき立っていた。

一方、その不時着したスミスの偵察機を、ドングと言う村の子供が興味深そうに見つめている。

彼の父親は、以前、家を出て行ったまま戻らなくなったそうだ。

トンマッコルの村では、又、韓国兵と人民軍が言い争いを始めたので、村長が、約束を忘れたのかと注意しに来る始末。

スミスは、不時着した飛行機の無線を使って、本部と連絡を取ろうとしていた。

そんなスミスに父親の姿を重ねているのか、ドングが近づいて来て、何かと茶々を入れて来る。

ドングは、スミスを森に連れて行くが、丘の向こうを見ると、ヨイルが嬉しそうに走って来る。

その後ろには猪が迫っているではないか。

たまたま近くにいて、その様子を目撃したのが、畑仕事を終えて帰って来ていた人民兵三人と韓国兵二人。

思わず、テッキが猪に石を投付け命中させたので、今度は、そのテッキが猪の目標になってしまう。

それをヒョンチョルが助けたので、今度は彼が標的となって猪に追われてしまう。

それを観ていたスファは、とっさにロープをヨンヒに投げる。

サンサンや村人も、駆け付けて来てロープを両端から掴む。

そのロープの上を、ヒョンチョルが駆け抜けた次の瞬間、両方からロープを引っ張りあげたので、すぐ後を追って来た猪は足を取られ、転んで空中に舞い上がる。

その時、スミスが投げて来た斧を受取ったスファが、空中に飛び上がり、猪を刺して、とどめを刺すのだった。

その連携プレーを観ていたみんなは大喜び。

ドングの母親が近づいて来て、スファに礼を言う。

その後、死んだ猪を埋めてしまった村人の様子を観ていたヒョンチョルは、素朴な疑問を口にしていた。「何故、肉を喰わないのか?」と。

トンマッコルの村人たちには、肉を食べる習慣がなかったのだ。

その夜、その猪を埋めた場所にやって来たヒョンチョルとサンサンは、すでに焚き火を熾し、掘り出した猪を焼いてむさぼり喰っている人民軍三人を見つけ唖然とする。

気の良いヨンヒに勧められ、立ち尽くし、しばらくためらっていた韓国兵二人も、肉を受取ると、黙って食べはじめる。

そこへ、スミスもやって来る。

全員、肉を頬張りながら、笑いあうのだった。

その後、雨が降って来て、全員服を濡らしてしまったので、翌日は、全員、同じ民族服姿になって、農作業に出かける事になる。

昨夜食べた猪肉のせいか、農作業の途中、催してきたヒョンチョルは、野グソをしに人から離れた場所に行きしゃがみ込むが、気が付くと、すぐ側でスファも同じ行為をしているではないか。

ヒョンチョルは、昨日、猪から助けてもらった礼を言うと、自分の名前を名乗り、仲良くしようと話し掛ける。

そして、この村で一緒に寝た時、何故、自分達を殺さなかったのだと聞く。

しかし、スファは何も答えなかった。

その頃、連合国基地では、人民軍がいる以上、山を攻撃をすべきだと作戦会議が行われていたが、参加した韓国兵は、もっと現地の様子を調査すべきだと進言していた。

しかし、米兵側は、今、補給路を失ったら戦争が長引くと、強硬論を主張するのだった。

トンマッコルの村では、スミスが提案し、急ごしらえのボールを使ってフットボールごっこをやりはじめていた。

ドングは、墜落した輸送機の残骸を見つけ、その中から、撮影用の16mmキャメラなどを見つけだしていた。

その場所にも、不思議な蝶が舞っていた。

一方、スファは村長に、どうやったら、怒鳴りもせずに、みんなから慕われているのかと聞いていた。

村長は、ただ、みんなにたくさん食べさせる事と答えるだけだった。

ヒョンチョルは、部隊を脱走するきっかけとなった日の事を思い出していた。

まだ大勢の避難民が渡っている最中の橋の爆破を命令されていたのだ。

ヒョンチョルには、どうしても、その命令にしたがう事が出来なかった。

連合国基地では、スミス救援部隊機が飛び立っていた。

24時間後に、偵察機が墜落した付近一帯を爆撃する作戦だった。

そんな危険が迫っているとも知らないトンマッコル村では、サンサンが、仲良くなったヨンヒに、これからは兄貴と呼んでも良いかと聞いていた。

もうサンサンには、帰る場所がなかったのだ。

少年兵テッキはと言えば、雨の中、嬉しそうに空を見上げているヨイルの姿に見とれていた。

そして、大切に持っていた人民旗を少女に渡すのだった。

その夜、トンマッコルでは祭りが行われ、蝋燭で上がる気球を浮かべていた。

ドングの母親とスファは、何となく親しくなっていた。

スファは、ヒョンチョルに酒を渡し、互いに飲みあう。

そんな和気あいあいな祭りの様子を、スミスは16mmで撮影していた。

スファは、もう、食料もできたし、自分達は帰投しなければいけない時期になったと打ち明けていたが、聞いていたヒョンチョルの方も事情は同じだった。

戻れば、自分は銃殺される。

もう会えなくなると互いに感じていた。

スミスは、早くも寝入ってしまった老婆を背負って、家に入れてやる。

そんな中、トンマッコル近くの山に接近して来たスミス救援部隊機から、落下傘部隊が飛び出す。

ヨイルは、空に飛び立つ蝶の群れを発見する。

村人たちは、踊りの最高潮に達していた。

落下傘部隊は、突然襲って来た蝶の大軍に巻き込まれ、目標を失い、無事着地出来た生存者は五人だけだった。

祭りで賑わう村に、重装備をした異様な姿の連合兵たちが乗り込んで来る。

子供がまずその姿を発見し、続いて気が付いた村人が親しげに挨拶するが、その村人はいきなり相手に殴り倒されてしまう。

そんな連合兵にヨイルが飛びかかって頭つきをしたのを観たテッキは、思わず、頭のおかしな娘だから放っとけと声をかける。

すると、今度は、そのテッキが捕まり、こいつの親は誰だと、村人たちに尋問する。

すると、村人の一人が手を上げる。

スファも怪しまれるが、とっさにドングとその母親が、自分の夫だと名乗り出るのだった。

そんな連合兵の前に進み出た村長が、何をそんなに怒っているのかと問いかけるが、有無を言わさず、アカや対空砲を見かけた奴は前に出ろと命令しながら、連合兵は村長を殴り倒す。

正直に言わないと、一人づつ殺して行くと連合兵は脅し付けて来る。

ヒョンチョルは、ナイフで、次々と連合兵を刺し殺す。

次の瞬間、連合兵の後ろから忍び寄っていたスミスが、頭を殴りつけて最後の一人を倒していた。

しかし、その直後、ヨイルが腹を撃たれている事に全員が気付く。

ヨイルは、村人や兵隊たちが見守る中、腹を押さえ、「ここが熱い、すごく痛い」と言葉を残した後、静かに息を引取って行く。

テッキは、頭を殴って人質にした連合兵を殴りつける。

サンサンは、その捕虜を調べるが、何も言わない相手に銃を向けただけで結局、その銃を捨ててしまう。

捕虜は、目の前にいるスミスが、自分達が探していた人物だと知るや、間もなく、ここが爆撃されると言う作戦を打ち明ける。

その話を聞き終わったスミスは、みんなに見せたいものがあると言い出す。

そして、人民兵と韓国兵を墜落した輸送機の所に連れて行くと、その中にあった重火器類を見せる。

それを観たヒョンチョルは、みんなで力を合わせれれば何とかなるのではないかと言い出す。

敵の目からトンマッコルを守ろうと言うのだった。

しかし、サンサンは自分は死にたくないと反論する。

スファは、自分には、負傷者を殺した負い目があるので、罪滅ぼしすると、銃を取る。

スミスも銃を取る。

その姿を観たサンサンも、結局、銃を取るのだった。

やがて、雪が舞い降りて来る。

スファは、自分はこんな武器は観た事ないので、指揮は少佐に任せるとヒョンチョルに話し掛ける。

一旦、村に戻った五人は、村びとに別れを告げる。

それを観ていた老婆が、帰るのなら、来なきゃ良かったと別れを惜しむ。

スミスは、ドングに手製のフットボールを手渡す。

その後、捕虜を連れ、トンマッコルからなかり離れた山にやって来たヒョンチョルは、この捕虜を連れて本部に帰れとスミスに勧め、やむを得ないと感じたスミスは自分の時計を相手に渡して、山を降りる事にする。

捕虜の話から、18時頃、上空にやって来ると分かった五人は、この山に対空砲があるかのように見せ掛けるよう、色々仕掛けをし始める。

多くの灯を焚いて、村に見せ掛ける事にする。

スファは、適格な指揮をするヒョンチョルを誉めた後、自分は指揮官の器じゃないと呟くのだった。

そんな五人が待つ山に、爆撃機が接近して来る。

ヨンヒは、近くにいたがるサンサンに、何時か聞いた唱歌を唄って聞かせてくれと頼む。

サンサンは、こんな時に歌えるはずがないと一旦は断わるが、やがて、唄いはじめる。

テッキは、みんなに向い、おれたち南北連合軍ですよねと言い出したので、ヒョンチョルは、別の場所で会えたら楽しかっただろうと答える。

やがて、灯を発見した爆撃機が接近して来たので、バズーカで攻撃を開始する。

さらに、仕掛けを駆使して、そこに対空砲があるように見せ掛ける。

一機、墜落させる事に成功するが、五人は、すぐに第二次攻撃部隊が来て、自分達は助からない事を知っていた。

ヨンヒは、コードの一部が切れて、仕掛けが巧く行かなかった部分を修理している途中、近くに爆撃を受け死亡、サンサンは、そのヨンヒが担当していた機銃を自ら撃ちまくり、空から銃撃されてしまう。

やがて、予想通り、第二次爆撃隊が飛んで来て、残された三人目掛け、凄まじい爆撃を仕掛けて来る。

そんな中、互いを見合ったスファとヒョンチョルは、ようやく死に場所を見つけたかとでも言うように、笑いあうのだった。

猛烈な爆撃の中、テッキ、スファ、ひョンチョルは死んだ。

遠くの山陰に見えるその爆撃の様子を、トンマッコルの村人たちは見つめていた。

捕虜を連れ、山を降りていたスミスは、別れた連中の死を悟り、静かに泣き出すのだった。

不思議な蝶が、雪の上を舞っていた。

そこは天国なのだろうか?ヨイルは、眠っているテッキの頭に花を飾っていた。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

朝鮮戦争を部隊に、ある山の奥で起きた奇跡のような出合いを描く反戦ファンタジー。

戦争が起こっている事さえ知らない、浮き世離れした村が山奥にある…と言う設定だけだったら、ひょっとしたらあり得るかも?と思わせるようなアイデアだが、近づいた戦闘機などを襲う不思議な蝶が出現する所などを見ると、純粋なファンタジーと考えた方が良いだろう。

理想郷を描いた「失われた地平線」(1937)なども、ちょっと連想させたりする。

何より、頭が弱く、純真無垢で無邪気な少女を演じているヨイルの姿や、素朴な村人たちの姿が、そのまま「戦争」の無意味さの象徴のようになっているのが素晴らしい。

村長は、村に入り込んで来た兵隊たちに問いかける。「何を、そんなに怒っているのか?」

怒りの愚かさ、憎しみ合いの連鎖の愚かさを根底から問いかける言葉だ。

ただ、十分に食べさせていれば平和が保たれる…と考えているような村長の言葉には若干違和感を感じないでもない。

それは、世間と情報が隔絶されている集落だからこそ可能であって、一旦、各種、情報が村にも届くようになると、人間は欲望を覚え、それを満たそうと外に出て行くものだ。

実際、ドングの父親などは、この理想郷のような所から出て行って戻らない事になっている。

北と南が戦っていると言う情報なども、どこからか風の噂で届いていたりもする。

この村も、全くの理想郷と言う訳ではないと言う事なのだろう。

その辺が、単純な夢物語とは一線を画している所だと思う。

一見、救いがないラストのようにも思えるが、後味は決して悪くない。

着想が素晴らしく、ユーモアもあり、展開も面白く、CGの出来もまずまず。

近年の韓国映画の実力を思い知らされる一本である。