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トム・ヤム・クン!

2005年、タイ、プラッチャヤー・ピンゲーオ脚本、プラッチャヤー・ピンゲーオ監督作品。

この作品は、比較的新しい作品ですが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので御注意下さい。コメントはページ下です。

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タイの少年カーム(子役時代-ナッダナイ・コーン)は、山奥の村で、父コイ(ソートーン・ルンルアン)から、古来戦う象を守る兵たちが身につけていた独特のチャトゥラバートと言う武術を教わりながら、国王護衛軍に献上するために調教していた雄象のポーヤイと兄弟のように育てられて来た。

カームはコイから、チャトゥラバートの話を聞かされる時、象にだって弱点はある事を忘れるなと教えられて来たが、その弱点とは何なのかと言う肝心の部分については聞かされなかった。

ポーヤイは、ある日、メス象と森の中に入って行き、やがて時が経つと子象を連れて戻って来た。

その子象はコーンと名付け、カームは弟のように可愛がるのだった。

ある日、そのポーヤイとコーンを捕まえようとする謎の密猟者たちが現れ、それを助けようと現れた母象は撃殺されてしまう。

ある日、ポーヤイを王に献上したいので審査会に参加するよう連絡があったので、それは名誉な事だとコイは喜ぶ。

ところが、4月13〜15日に行われるソンクラーン(水かけ祭り)の最中、審査会にポーヤイを連れて来たコイは、場内に、かつて出会った密猟者がいるので怪しみ、ポーヤイを渡すのは止めると言い出すと、突然、密猟者たちから発砲されてしまう。

その頃、コーンを連れて祭りを観ていたカーム(トニー・ジャー)は、コーンに付けてやる幸運の鈴を40バーツで買う事にする。

鈴を付けてもらったコーンは、子供達から水鉄砲で水をかけられたので、その後を追い掛けて行く。

コイの様子を観に来たカームは、父が撃たれて倒れているので、驚き駆け寄るが、逃げたポーヤイを追えと言われ、すぐ象の後を追う事にする。

しかし、その頃、ポーセイとコーンは、密猟者たちが用意していたトラックに積み込まれていた。

後日、パーティをしていた密猟グループの席上に、カームが突然殴り込んで来る。

下っ端にポーヤイとコーンをどこにやったと問いつめると、ジョニー(ジョニー・グエン)と言うベトナム人が連れて行ったと言う。

その後、密猟者グループは、人質を連れて、モーターボートに乗り移り川を逃げ出す。

カームもボートで追跡するが、途中で、人質が川に飛び込み、密猟者たちが乗っていたボートは、接近して来たヘリとぶつかって大破してしまう。

その頃、オーストラリアのシドニーでは、NGOのウィッタヤ氏が殺害されたと言うニュースが流れていた。

その背景に、中国人マフィアとの関係が取りざたされていると言う。

そんなシドニーで働くタイ人警官マーク巡査(ペットターイ・ウォンカムラオ)は、テレビクルーの取材を受けていた。

役得で、馴染みの床屋でただでヒゲをそってもらっていたマークを、相棒のリック警部(デイヴィッド・チャッチャワン・アッサワノン)が呼びに来る。

パーウッド街で強盗事件が発生したと言うのだ。

早速パトカーで駆け付けると、コンビニで女店員を刃物で脅していたのは、マークが顔見知りのトゥイだったので、説得して逃してやる事にする。

その頃、シドニー市内のとあるカジノでは、売春を強要しようとする店を辞めようとしたタイ人女店員プラ(ポンゴット・コンマライ)が、この国でタイ人女性が働くとしたら、ウェイトレスかコールガールしか選択肢はないぞと、新しく店長になったジョニーから脅かされていた。

厳重な警戒の中、中国人マフィアが、自ら経営するレストランのオーナー会議を行なっていた。

自慢のアワビの料理を出したマネージャーのマダム・ローズ(チン・シン)は、その味をボスのシムから言下に否定される。

そんなシドニー空港に、独り降り立ったカームは、タクシーに乗り込むと、「トム・ヤム・クン」と言う店に行ってくれと告げる。

ところが、市内に入ったタクシーはパトカーから追跡される。

そのパトカーに乗っていたのは、リックとマークだった。

何とか、パトカーを振り切ろうとしたタクシーの運転手ジミーだったが、行き止まりに追い詰められたと気付くや、急に銃を取り出すと、客のカームを人質に取り、パトカーから下りて来たマークらを牽制する。

しかし、カームは、あっさりジミーを逆に捕まえて、マークらに差し出そうとするが、そこへやって来たヴィンセント部長刑事が突然発砲、その場でジミーを射殺してしまう。

その後、マークのパトカーに乗せられたカームは、マークもタイ人と知るや、ポーセイとコーンを探しにこの国に来たと説明するが、マークはその名前を人間と勘違いしてしまい、タイタウンに連れて来る。

そこでは、マークの知り合いの女性クン(アモンパン・コントラカン)が呼び止め、勤めている店の店長に、ジョニーと言うベトナム人がなったとプラと言う女友達から聞いたと教える。

それを聞いたカームは、そのプラに会いに来たジョニーがいる麻薬取引の現場に向うが、いきなりジョニーから倒されてしまう。

さらに、ジョニーが合図をすると、スケボーなどに乗ったストリートギャング達が集まって来て、カームに襲いかかって来る。

カームは、一人でそのストリートギャング達に立ち向かって行く。

その頃、警察の遺体安置所でジミーの遺留品から、写真を見つけだしたマークは、こっそり持ち出していた。

一方、店に戻って来たジョニーは、マダム・ローズから叱責されていた。

カームは、何とかストリートギャング達から逃れ、倒れていた所をジョニーを知る女プラに助けられていた。

傷付いて、女のアパートに寝かされていたカームは、王が乗った象を警護する兵士たちの夢を観ていた。

兵士たちは、象の弱点を守っていた。

女は、赤いスカーフをしたカームが指名手配になったと言うテレビニュースがが流れたので、窓から外の様子を見ると、すでに警官たちが近づいて来ていた。

その頃、マークは、ヴィンセントと共に、セグウェイに乗って、部長刑事のマンションを警護していた。

部屋の中では、中国人マフィアのボスシムと本部長が、呼ばれたコールガールたちと一緒に風呂に入っていたが、突然心臓発作を起こす。

その場に、金で雇われたトゥイが乱入して来たので、ヴィンセント刑事はいきなり射殺してしまう。

さらに、部長刑事は、その場にいた部下のリックまでも射殺してしまい、マークも連行されそうになったので、何とかその場を脱出する。

そんな浴室の影に隠れていた女の一人いた。

偶然、事件が起きる直前に、風呂から出ていたプラだった。

ヴィンセントは、その女を探すように、部下たちに命じるのだった。

マークが本部長殺害容疑者として指名手配されたと言うニュースが、テレビで流れる。

その頃、街を逃げ回っていたマークの元にクンから電話をもらい、プラから連絡があったので来て欲しいと言う。

しかし、その電話は、ジョニーに脅かされたクンが、マークを誘き寄せる為、無理矢理かけさせられたものだった。

その頃、マークに逃げられたヴィンセント刑事は、ジョニーから脅されていた。

プラはカームに、レストラン「トム・ヤム・クン」の奥には、別の部屋があるのだと教える。

それを聞いたカームは、単身「トム・ヤム・クン」に乗り込んで行く。

店の奥には、謎の料理店があり、そこにはジョニーがいた。

連れて行った象の親子はどうしたとカームが聞くと、ジョニーはニヤついて、コーンに付けてやっていた幸運の鈴を投げて来る。

カームは、一瞬にして真実を悟る。

世界各地から、象をはじめとする珍しい動物を連れて来て、この中華レストランで「食べていた」のだ。

怒りを込めてジョニーと戦いながら、店のさらに奥に忍び込んだカームは、捕まっていたマークと、麻薬中毒にされていた女達が閉じ込められた部屋を見つける。

何とか、マークを救い出し、店を脱出しようとしていたカームは、物陰から現れたコーンを見つける。

子象は、まだ無事だったのだ。

カームは、マークを外に連れ出すと、コーンと共にトラックに乗せ、店を逃走する。

その頃、中国人マフィアのボスシムの後継者を決める食事会を兼ねた親族会議が行われていたが、男でも女でもないローズは、全員からバカにされ完全に無視されていた。

しかし、その後継者たちに目されていた者たちは、その場で苦しみ出す。

ローズが、全員に毒を盛っていたのだ。

その後、独り入浴したローズは、マークを逃したジョニーを叱りつけていた。

その後、ローズはヴィンセントと抱き合っていた。

二人は協力して、各々中国人マフィアと警察を自由にする立場についたのだった。

マークとカームは、とある寺院に匿われていたが、このままいても迷惑がかかるからと、一旦、寺を出る事にする。

その直後、ヴィンセントが寺院を嗅ぎ付けて来る。

心配して、独り寺院に戻って来たカームは、放火され、拷問を加えられ倒れた僧侶たちの姿を発見する。

そこには、カームを待っていた三人の刺客達がいた。

スプリンクラーの水が溜まった寺院の中で、カームは、様々な技を持った三人と壮絶な戦いを繰り広げる。

三番目の大男を倒した時、パトカーを連れてマークが戻って来る。

その後、マークはカームに、国に帰るよう説得するが、子象のコーンが何時の間にかいなくなっていた。

その頃、中国人マフィアのボスの地位についたマダム・ローズは、部下たちの前で着飾り演説をしていた。

そして、その場で、ヴィンセントを射殺してしまう。

そこへコーンを探してカームが現れる。

カームは、マダム・ローズの後ろに飾られた巨大な飾り物が、探し求めていたポーヤイの遺骨をベースにしたものだと気付く。

象牙を力の象徴とするローズがやった事だった。

カームは、怒りにかられ、中国人の部下たちやジョニーや用心棒達と壮絶な戦いを始める。

ローズも、鞭で、向って来るカームに応戦する。

そこに、コーンが助けに来る。

カームは、依田異な用心棒から投げ飛ばされ、ポーヤイの遺骨にぶつかった時、象の弱点とは、足の健の事だと悟る。

健を斬られたら、さしもの象も倒れてしまうのだ。

愛するポーヤイの足の骨を手に括り付け、カーンはさらに戦いはじめる。

大男を倒し、逃げ出したローズを追ってビルの屋上まで追って来たカームは、折しも、先に逃げ出した中国人が飛び立とうとしていたヘリに捕まって浮上しはじめたローズの姿を見つけ、ビルの屋上から飛び出すと、ヘリにぶら下がったローズ目掛けてジャンプキックするのだった。

その後、ジョニーに捕まっていたクンは助けられ、警察に復帰したマークは新しいパートナーを紹介されていた。

ビルの屋上からジャンプしたカームは、愛するポーヤイの遺骨の上に落ちて助かっていた。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「マッハ!」(2003)と同じ主役、監督で作られたムエタイ・アクション映画の第二弾。

おおらかな大自然の森の中から始まり、水掛け祭りの最中の街の中、水上チェイス、そして、舞台はオーストラリア、シドニーへと、目まぐるしく変化して行き、ノンストップ・アクション風に楽しめる快作になっている。

アクションも、各種乗り物に乗ったストリート・ギャングとの戦い、「トム・ヤン・クン」の奥にある巨大レストランでの立体的な戦い、水に漬かった寺院での戦い、そしてラストの戦いと、各々、工夫が凝らされ、迫力満点の見せ場が用意してある。

ただ、主人公を演じている青年が、どことなく吉本のほっしゃんを連想する濃い東南アジア系の顔つきなので、「戦うほっしゃん映画」のように思えてしまう面もある。

象の親子をオーストラリアに連れて来た理由と言うのが意外性があり、かつ、何となく現実性もありそうで、面白かった。

「男でも女でもない」と言うマダム・ローズの正体が、いわゆる「ゲイ」と言う事なのか、「生物学的に」と言う事なのか、最後まではっきりしないのが、ちょっと気になったりもするが、主人公が立ち向かう事になる、敵のキャラクター達も、皆、各々強そうで見ごたえがあった。