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東京よいとこ

1957年、東京映画、関沢新一原案、池上金男脚本、西村元男監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

神戸 1956年…

海を進む船

港で待っていた外国人に、子分が「異常ありません」と報告した直後、警官隊が乗り込んで来て、麻薬一味と銃撃戦が始まる。

その後、外国人は再び港に現れる。警察に捕まらなかったのだ。

彼、国際的麻薬組織の主犯フリスコ・デイリー(E・H・エリック)は、その後東京に潜入したとの噂が流れる。

翌日、東京のプロ野球チーム「東京アンギラス」の事務所では、スカウトの三平(南道郎)が、帰りかける球団関係者(トニー谷)に、今度こそ、ハワイのおじさんから紹介されたすごい三割バッターを連れて来ると説得していた。

三平は、ハワイのおじさんと言うのは、野球場で働いている人物だから間違いないと言う。

ただし、働いていると言っても、そのおじさんは球場内のアイスクリーム売りだと言うので、関係者は呆れて帰ってしまう。

その直後、取り残された三平の目の前から、背の小さなブローカー(空飛小助)が、有力選手を独り引き抜いて去って行くのだった。

その頃、東京の空の下…

ヤクザの親分砂川吉三(三井弘次)が情婦のラン子(伊吹まり代)を連れて組に帰って来たのを、渡来(加藤春哉)ら子分が出迎えていた。

砂川は子分たちに「フリスコ・デイリー」の写真を見せ、ここに匿おうと思っていると打ち明ける。

こんな大物に取り入っておけば、今後、組の発展に役立つと思うと言うのだ。

そんな砂川、子分の一人、坂井の姿が見えないのに気付き、訳を聞くと、キャバレー「アトランタ」の女スカーレットと、風と共に去ったと言うではないか。

砂川は、すぐに坂井を連れ戻す手配をするように、健(海野光一)に命ずる。

その頃、横浜港に来ていた三平は、来日したはずの外国人選手ウイリアム・ラドンの写真を片手に探していたが、なかなか見つからない。

探し倦ねてビット(繋船柱)に腰掛けていると、一緒に腰をかけていた外国人が三瓶が目にしている写真を覗き込み、それは自分だと話し掛けるが、英語が理解できない三平は不機嫌になりその場を去る。

その後、三平がタバコに火を付けようとしていると、先ほどの外国人がまた近づいて来て、いきなりピストルを突き付けて来る。

三平がびっくりしていると、そのピストルはライターだった事が分かる。

その外国人が、又、三平の持っている写真を示しながら懸命に話し掛けて来るので、ようやく彼が探していたウイリアム・ラドン(E・H・エリック-二役)だと三平にも理解出来る。

その頃、三平が下宿している「寿司幸」では、親父の宗吉(宮田洋容)が、今度の外国人を球団と契約させたら、100〜150万くらいは手に入るだろうから、その3割くらいは、こちらがもらえるかも知れないと、娘のお妙(光丘ひろみ)と、捕らぬ狸の皮算用を楽しんでいた。

ラドンをタクシーに乗せた三平は、店に戻る途中、東京見物もかねて、通り過ぎる皇居等を説明していたが、英語がからっきしなので、互いにチンプンカンプンの掛け合いになる。

急に車を止めさせ、外に降りたラドンが、橋の欄干についた擬宝珠の事を知りたがるので、それを英語でどう説明したら良いか迷っていた三平は、ちょうど通りかかった刑事の笛木(天津敏)と出会い、ラドンを紹介するのだった。

一方、寿司幸の近くでは、この辺一帯の立ち退きを迫っている砂川吉三一家に、強引に立ち退きをさせられている家があったので、義憤に駆られた宗吉も、何とか止めようとするが、結局、相手の迫力に負け、黙って観ているしかなかった。

そんな所に戻って来たのが三平とラドン、店に到着するとラドンを二人に紹介するが、そこに先ほどの砂川一家の子分三人がやって来て、お前の家も立ち退きだと脅して来る。

お妙の手前、良い所を見せようと、一応三平が前に立ちふさがるが、あっという間に表につまみ出されてしまう。

カウンターに座っていたラドンにも因縁を付けようと近づいた子分たちだったが、ラドンがピストル型のライターをいじっているのを見つけると、その顔と見比べながら、驚いたように黙って帰ってしまう。

その夜、町内会による宗吉たちへのお礼を兼ねたラドン歓迎会が催される。

町内会の面々は、 砂川一家を追い払ったのは、てっきり宗吉だと思い込んでしまったのだ。

歌を披露し終わった芸者の豆千代(白鳩真弓)は、ラドンにお酌しながら、ちらちら目配せをしている。

どうやら、彼の事が気に入ったようだ。ラドンの方も、豆千代の事が気に入った様子。

偶然、その同じ料亭に、砂川と子分の鉄(中村是好)らも来ていた。砂川は豆千代に目を付けていたのだ。

その砂川、鉄から、フリスコ・デイリーが寿司幸にいるらしいと報告を受けると、さすが大物は違う。

自分達の厄介になって、弱味を見せたくないのだと、勝手に解釈して感心していた。

翌朝、ランニングに出かけたラドンと、それに自転車で付き合っていた三平の様子を、近くに停めた車の中から観察していた砂川たちは、三平の正体が分からず怪んでいた。

そんな事は知らない三平は、馴染みの流水屋酒店の店員(有島一郎)にばったり出会ったので、ラドンに強引に御用帳にサインを書かせて渡す。

そんな様子を観ていた砂川は、三平の顔つきからすると、とてつもない悪党かも知れないと、またまた勝手に解釈していた。

その後、球団に契約に行こうと寿司幸の店を出た三平とラドンは 、迎えに来たと言う鉄と戸渡に出会う。

てっきり球団からの迎えと思い込んだ三平たちは、何の疑いもなく鉄ら車に乗り込むが、車中でラドンに「がくんと一発お見舞いすりゃ良いんだとか、軽く殺しちゃえば良いんだ」と言う野球のアドバイスを聞いていた哲たちは、本物の殺しの話と勘違いし、運転席で縮み上がるのだった。

やがて車が到着したのは、野球場とは何の関係もない倉庫街だった。

それでも、三平は、マスコミの噂になっては困るから、わざとこんな所に呼び寄せたのだろうと解釈して、ラドンを安心させるが、やがて、どう観ても球団関係者とは思えない強面連中が近寄って来たので、はじめて異変を感じる二人だった。

二人を砂川の元に連れて来た鉄は、あの外国人は殺しの名人のようだと、車中で聞いた言葉から受けた印象を伝える。

砂川がタバコを取り出したので、素早くラドンがピストル型のライターを取り出すと、さすがに砂川もビビり、三平に通訳を頼むと、自分達はチャンの組織のもので、銃を各種持っているのだが、この倉庫の地下に試射場も用意するので、その試射をやって性能を確認してみてくれないかとラドンに頼む。

三平とラドンは、倉庫内に用意された部屋に案内され、そこで半ば軟禁状態になってしまう。

砂川は、その部屋の洋服ダンスの奥に作られていた秘密通路など披露するので、三平は何とか逃げ出したくて、明日出直して来るなどと言い訳しようとするが、聞き入れられるはずもなく、そこへ女と逃げていた坂井が連れて来られる。

砂川らが坂井と女を連れてタンスの奥から別の部屋に移動してしまった後、残された三平は部屋をうろつくしかなかったが、突然、ラドンが日本語で話し掛けて来る。

聞けば、もともと日本語ができたのだが、日本で甘く観られないように英語で通して来たのだと言う。

二人は、逃げ道を探していたが、部屋にあった花瓶を動かしたはずみに、ソファーの下に新たな秘密通路が出て来たので、これ幸いとばかりにそこから逃げ出そうとするが、出口と思った先は、砂川の子分で凶暴そうな面構えのモロッコの竜(パン猪狩)が、坂井を痛めつけている部屋だった。

逃げ出そうとした事をごまかし、元に戻ろうとした三平とラドンは、通路に仕掛けられている外敵退治用の罠のロープにひっかり、子分たちに注意するよう指摘される。

その後、砂川は、いつもの料亭に出かけ、豆千代を呼び寄せると、強引に口説こうとしていた。

一方、同じ料亭に付いて来ていたラン子は、別部屋で接待されていたラドンを気に入ったようで、自分をアメリカに連れて行ってくれないかと媚びを売っていた。

三平もヤケになって、鉄らに勧められるまま、三味線に合わせて踊り始める。

やがて座が盛り上がったところで、ラドンと示し合わせて外に逃げ出そうとするが、すぐに鉄に気付かれ、適当にごまかしていたが、その時、砂川から逃げ出して来ていた豆千代の姿を見る。

豆千代の方も気付き、三平に気やすそうに声をかけて来るが、側にいる鉄に正体がばれるのを恐れた三平は知らん顔をするのだった。

翌日、寿司幸にみやげ持参でやって来た豆千代は、三平に会おうとするが、お妙から、最近帰って来ないのだと聞かされ、夕べの人物は人違いだったのかと不思議がるのだった。

その頃、倉庫内では、射撃場が完成していた。

ラドンは、ピストル型ライターを弄んでいる内に、今日、射撃をさせられるんだと言う事を思い出し焦る。

やがて、ラン子が三平を呼出す。

同じ頃、緑ヶ丘駅に降り立ったのは、ラドンとそっくりな外国人。

彼をラドンと思い込み声をかけて来たのは笛木刑事だったが、ちょうどそこにやって来たのは、豆千代とお妙だった。

しかし、外国人は、懐から拳銃を取り出し笛木に突き付けると、タクシーに乗り込んでそのまま逃走してしまう。

その外国人こそ、指名手配中のフリスコ・デイリーだったのだ。

倉庫の外に三平を呼出したラン子は、逃走用の船を用意しておくから、ラドンに自分を連れて行くよう説得してくれと言う。

そのラドンは、銃器類の試射をやらされるため、射撃場に連れて来られていた。

一方、外にいた鉄は、ラドンを見つけ声をかける。しかし、それはラドンではなく、本物のデイリーだった。

他の子分たちも、日本語で居丈高な言葉をかけて来るデイリーの様子を不思議がるが、命じられるまま、砂川が待つ地下の射撃場に連れて行く。

全く銃を撃った事がないラドンは、困惑しながらも、用意されていた的目掛けて銃を構えるが、ちょうどその時、大きな箱を挟んで反対側に入って来たのがデイリー。

彼は、鉄たちに自分の正体を証明してみせるため、銃を取り出し、的目掛けて撃つが、見事に命中。

びっくりしたのは、同じ時に銃を発射したラドン。

自分が撃った弾が、的に命中したと思ったからだ。

ラドンの横に控えていた砂川は、さすがにデイリーだと感心する。

その後も、半信半疑でラドンが、当らな銃を試し撃ちすると、箱の反対側にいるデイリーも、偶然、同じ的を目掛けて銃を撃つものだから百発百中。

調子の乗ったラドンが、最後に撃った銃は、さすがにデイリーが同時に撃たなかったので、外れたように見えてしまうが、銃のせいだろうとごまかしてしまう。

しかし、箱の反対側にいたデイリーが、砂川の元にやって来たから万事窮す。

本物が現れた事を知った三平とラドンは、もはやこれまでと、その場から逃げ出す事にする。

かくて、倉庫内は追うもの、追われるもので大混乱となる。

独り、混乱を裂け、とある部屋に逃げ込んだ鉄は、そこに閉じ込めていた坂井と女からこてんぱんにやられてしまう。

デイリーに追い詰められたラドンは、苦し紛れにピストル型ライターを取り出して威嚇しようとするが、力を入れて火が付いてしまったので、ライターとばれてしまう。

逆にデイリーが拳銃を発射した所、弾が、仕掛け用のロープに当って切断してしまい、白い粉が天井から振って来る。

それを観た三平は、仕掛けのロープが多数仕掛けられている事を思い出し、自ら、どんどんロープを斬ると、砂川の子分たちは、天井から降って来た粉で真っ白な粉まみれになって行く。

倉庫の外に逃げ出した三平はラドンを見かけたので近くに招くが、そのラドンはデイリーで、本物の券銃を突き付けて来る。

しかしその時、パトカーが接近して来て、デイリーは捕まってしまう。

後日、無事、東京アンギラスに入団したラドンは、相手側にリードを許していた初試合の9回裏、期待されてバッターボックスに向うが、応援席にいた三平らの応援も空しく、あえなく三振をして、アンギラスは敗退してしまう。

試合後、取材陣からインタビューを受けたアンギラスの大西監督(小西得郎)は、「あんな、しろうとが出て来ると言う所が、プロ野球の面白さじゃないでしょうか」などと、名調子で答えるのだった。

バッターボックスでへたり込んでいたラドンは、三平たちの呼ばれ、すごすごとベンチの方に戻るのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

上映時間55分の中編作品。

主演の南道郎とE・H・エリックは、一時期漫才コンビを組んでいた仲で、この映画はその時代の作品と思われる。

この後、性格の悪い兵隊役等で有名になる南道郎が、全編、早口の漫才口調で喋っているのが珍しい。

ファンファンこと岡田真澄の兄であるE・H・エリックは、この後、俳優と言うよりも、ボードビリアンとして活躍するようになるが、この頃は痩せて若々しく、角度によっては、顔も岡田真澄そっくりである。

この映画の見所は、やはり、東京アンギラスとかラドン等と言う怪獣映画のネーミングが登場する所。

後半、球場で実況中継しているアナウンサー(近江正俊)が、「バッターボックスに向うは、怪人ラドン!怪物ラドン!この番組の提供は東宝映画です」などと喋っている。

東京アンギラスのユニフォームの左袖に貼られたワッペンには、はっきりアンギラスの横顔のシルエットが付いている。

最後、試合が終わって、立ち上がった敵チームのキャッチャーは森繁久彌だったり、意外なゲスト陣も多数出演している。

妙にかん高い作り声で登場している有島一郎とか、指にはめた指輪に息を吹き掛けながら、相手を殴る癖のある強面のモロッコの竜を演じているのは、「レッド スケーク カモン!」でお馴染みだった東京コミックショーのショパン猪狩の実兄パン猪狩だし、アンギラスの監督をやっているのは「何と、申しましょうか〜」の名調子でお馴染みだった野球解説者の小西得郎。

トニー谷や、若き日の天津敏の姿を見る事ができるのも嬉しい。

他にも、おそらく、当時の人気者たちが多数出演していると思われるが、さすがに今識別できる人は少ない。

ストーリーそのものはたあいないものだが、片言英語を喋りまくる南道郎と日本語ベラベラのE・H・エリックとの掛け合い漫才みたいな芝居を見る事ができるだけでも貴重な作品と言えるだろう。