TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

東京のテキサス人

1957年、東京映画、関沢新一脚本、小田基義監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

アメリカ、西部の荒野。

インディアンたちが襲撃して来る。

一人で石油採掘をしていたカウボーイ、ウエスタン・デーン(E・H・エリック)は、二丁拳銃で応戦するが、多勢に無勢、すぐに捕まってしまう。

その夜、インディアンの土地に連れて行かれたデーンは、酋長チェロニモ(柳亭痴楽)夫婦が見守る中、大きな壺の中に水と共に入れられ、焚き火で煮られていた。

しかし、周囲のインディアンが壺の中を見ると、手ぬぐいを頭に乗せたデーンが、気持ち良さそうに湯に浸かっているだけ。

これは、煮ても焼いても食えない奴と分かり、縛られると、外に放置されてしまう。

そんなデーンに「食い物をくれ」と言いながら近づいて来たインディアンの子供(空飛小助)が、どうした訳か、彼に「飲むと強くなる薬」と言うものを瓶ごと渡す。

やがて、大勢のインディアンがデーンの元に集まって来て、会議の結果、悪魔の子は殺さねばならないから、お前は家に帰れと言い出すが、デーンが行く所はないと答えると、それならと、神武以来の景気に湧く日本と言う国のパンフレットを取り出してデーンに見せた酋長が、ここへ行けと勧めるのだった。

しかし、デーンに飛行機に乗るような金があるはずもなく、彼は筏に乗って、大平洋を渡るのだった…

タイトル

日本のボクシング会場では、デシンボーと、三足拳闘クラブ所属の道っちゃんこと平道盛(南道郎)の仕合が行われており、客席で子分から、デシンボーが倒れる事になっていると耳打ちされた二足拳闘クラブの社長で高利貸しの日下駄の九六(宮田洋容)は、配当が入ると喜んでいた。

ところが、リング上で、その事を耳打ちされたた道盛は、八百長は嫌だと言い、デシンボーが倒れると同時に、自分も倒れ、収集が付かなくなったので、両者、起こされるが、道盛りの方は、空振りしたまま、リング下に落ちてしまい、タイムアウトで負けてしまう。

ゴーイン商会と二足拳闘クラブ兼用の事務所に戻って来た道盛は、言う事を聞かなかったと、すぐに社長から首を言い渡される。

その頃、日本の東京湾に到着したデーンは、岸に繋いだ筏に、薪として格安で売ると看板を付けて上陸していた。

東京の下町に彷徨って来たデーンは、「ドライ軒」と言う食堂の前に来ると、見本を観て、空腹を覚えたので、仕方なく、持っていた「力の出る薬」を飲んでごまかす事にする。

そのドライ軒にふらり入って来たのが、馴染みの道盛。

店の親父(沢村いき雄)とその娘のお花ちゃん(磯村みどり)に、拳闘クラブを首になったと報告する。

自分は、八百長なんて大嫌いなんだと道盛が主張していると、一人いた先客が怒って帰ってしまう。

お花ちゃんいわく、あの人は八百屋の長さん、つまり「八百長」だったので、気分を害したのだろうと言う事。

そこへ、デーンが入って来たので、道盛が何とか英語を理解しようとするが、互いにチンプンカンプン。

どうやらそのジェスチャーから空腹のようで、マカロニスープ、つまりウドンを注文しているらしい事が分かる。

何杯もウドンを食べ終わったデーンは、金を持っていないと打ち明ける。

それを聞いて怒った道盛が、デーンを殴ろうとすると、あっさり相手から突き飛ばされてしまう。

そのあまりにすごいパンチ力を知った道盛は、彼をボクサーとして育てる決意をし、自分のアパートに連れて帰ると、「東雲ボクシングジム」の看板を部屋の前にかかげるのだった。

その看板を興味深そうに観ていたのは、靴磨きをしている15才の健坊(小畑やすし)、老いた母親と、同じアパートで二人暮しをしていたのだが、一人いた姉は、今は行方知れずであった。

道盛が朝の食事の支度を部屋の中でしている最中、デーンは廊下を通りかかった美人に目を止め挨拶をする。

歌手のお菊ちゃん(花村菊江)だった。

道盛は、そんな美人に近付けさせまいと、ちょうどバケツを重そうに下げて来た健坊の母親おマキ婆さん(武智豊子)を紹介すると、デーンに手伝わせる。

その頃、二足拳闘クラブの女性社員おでん(河上敬子)が電話をしていると、後ろから、九六が抱きついて来たので、嫌がって電話を切ってしまう。

その後も、しつこく九六がデートに誘うので、今日はダメだけど、2月31日なら空いてますと返事して、煙にまくのだった。

そこへセカンドの三吉(木下華声)がやって来て、道盛がボクシングクラブをはじめたようで、うちに楯突く気かも知れないと九六に報告する。

その道盛とデーンは、朝のランニングから帰って来ると、外に設えた手製のパンチングボールで見本を見せようとするが、思うように使いこなせない。

それを見かねた近所の魚屋の青年が、黙ってパンチングボールの前に出ると見事なフォームを見せる。

それを観ていた近所の野次馬たちは、17才で東洋ライト級チャンピオンになった沢田二郎じゃないかと驚く。

アパートの大家である小言幸兵衛(三遊亭金馬)は、当初、道盛がまだ、日下駄の九六の手下だと思っていたので、小言を言いに来るが、もう手下じゃないと聞くと現金なもので急に応援し出し、その足でドライ軒に来ると、親父とお花ちゃんに「あいつは町内のダニだ」などと、さんざん九六の悪口を言い出す。

ところがそこに、当の九六と三吉が姿を見せたので、急に幸兵衛もバツが悪くなって黙ってしまう。

その騒ぎに気付いて入って来たのが、道盛とデーンで、お花ちゃんからおだてられ、道盛は、元仲間だった二人におっかなびっくり文句を言うが、三吉がデーンを突き飛ばすと簡単に飛んで行ってしまう。

その後、道盛のアパートで寝込んでいたデーンは、実は自分の力は薬のためだと三平に打ち明けると、その場で一錠飲んでみせると、起き上がって柱を殴ってみる。

すると、柱はボコボコに凹むし、アパート中が地震のように揺れ、別の部屋で休んでいたおマキ婆さんは何事かと飛び起きると、横で寝ていた健坊に「原爆かい?」と怯えて聞くのだった。

やがて、ボクシングの新人登竜門が始まり、出場したデーンは、薬の力で、対戦相手の二足拳闘クラブ所属のボナンザ藤田をあっさりノックアウトしてしまう。

その後も、薬の力は凄まじく、10連勝、18連勝と勝利を重ね、とうとう新人王になってしまい、二足拳闘クラブのズドン大山(吉原功)と決勝戦を迎える事になる。

事務所で九六と話していた三吉は、デーンは普段は弱いのが妙だと指摘する。

一方、デーンの方は、瓶の中にもう薬が三錠しか残っていない事に気付き、ちょっと不安になっていた。

そんなデーンを元気づけようと、道盛は料亭「浪花」に連れて行くと、日本の茶道を伝授しようとするが、自分も良く知らないので、妙なポーズをとってしまう。

次に、お菊ちゃんが唄っている民謡酒場に出かけた二人は、彼女から、大家さんもアパート中で応援すると言っていると聞かされると、すっかり嬉しくなり飲み過ぎてしまう。

偶然、同じ店で飲んでいた九六と三吉は、酔った勢いで二人が、力が出る薬の話をしているのを小耳に挟み、一緒に来ていたおでんに何か耳打ちするのだった。

彼らに気付かないまま店を出た三平とデーンは、すっかり良い気分になってしまい、千鳥足で帰りながら、決勝戦の懸賞金は50万円だ等と言い合っていた。

そこにさり気なく近づいて来た三吉は、デーンの服のポケットから、薬瓶をくすねて行ってしまう。

その直後、薬瓶がない事に気付いたデーンは慌てるが、どこでなくしたのかも分からないまま、二人はアパートで寝込み、翌朝、二人とも、二日酔いの状態で目覚めるのだった。

薬をなくした事を責められたデーンは、急に日本語で啖呵を切り出す。

何と、彼の父親は日本人なんだそうである。

デーンが怒って、部屋を飛び出して行った後、お花ちゃんがやって来て、今、店の方に、九六が借金の取り立てに来ているので助けに来て欲しいと言われるが、道盛は、二日酔いと言う事もあって弱気になり、臆病風を蒸かせるが、お花ちゃんにハッパをかけられ、仕方なく出かける事にする。

一方、岸に繋いでいた筏の所で一人ぼんやりしていたデーンの元にやって来たのはおでんだった。

デーンが、友だちをなくしたとしょげていると、相手が良い人なら仲直りしなくちゃとアドバイスする。

二人でアパートに戻って来ると、玄関先で健坊が慌てている。

訳を聞くと、母親が熱を出し寝込んでいると言うではないか。

デーンと一緒に、おマキ婆さんの部屋に上がったおでんは、寝込んでいるおマキ婆さんの顔を観て驚く。

無理して起き上がろうとしていたおマキ婆さんの方も、目の前にいるおでんの顔を観て唖然とする。

彼女こそ、数年前から行方知れずだった娘だったからである。

その頃、ドライ軒にやって来た道盛は、居座っていた九六に向い、仕合に勝てば、その懸賞金で借金を払っても、お釣が来るだろうと啖呵を切っていた。

すると、用心棒役として一緒に来ていたズドン大山が、食堂のフライパンを取り上げ、ぐにゃりと曲げてみせる横で、九六が、もし仕合に負けたら、その時がお前の命日だぜとあざ笑うのだった。

いよいよ、仕合当日、二足拳闘クラブの事務所では、ズドンに薬を飲ませようかと三吉が提案していたが、あの薬ならここに終っておけば大丈夫だろうと机の引き出しを示し、二人は、おでんに留守番を頼んで出かけて行く。

その直後、机の引き出しを開けて、薬瓶を取り出そうとしていたおでんは、戻って来た九六にその現場を観られてしまう。

九六も、おでんを疑っていたのだ。

九六は、仕合が終わるまでおでんを見張っていろと、三吉を部屋に残すと、事務所のドアに鍵をかけて独り仕合会場へ出かけて行く。

仕合会場の控え室で待機していたデーンと道盛は、前の仕合で負けて血まみれになった船首が運ばれて来たのを観て、ますます怖じ気付くのだった。

いよいよ、仕合が始まる。

ミドル級一位ズドン大山とデーン、そしてレフリーのスターロバーツ(ユスフ・トルコ)が紹介される。

二足拳闘クラブ事務所では、三吉がおでんにわざと聞かせようと、仕合の様子を放送しているラジオをつけていた。

仕合は、ウインナワルツをはじめ、色々な音楽に合わせて両者が動きはじめる。

そんな中、偶然、二足拳闘クラブのビルの下を通りかかった健坊は、上から紙切れが落ちて来たのに気付き拾い上げてみると、二階に監禁されている。助けてと書かれてあったので、押っ取り刀で二階に登ってみる。

事務所の入口に来た健坊は、財布がここに落ちていると中に声をかけると、三吉が喜んで鍵を開け、外に顔を覗かせたので、近くに置いてあった消化器で殴りつけて気絶させるのだった。

その隙に、机の引き出しから薬瓶を取り出したおでんは、健坊を連れてタクシーに乗り込み仕合会場へと急ぐが、運河悪い事に、途中でタクシーがエンストを起こしてしまう。

一方、仕合開始前までにおでんが薬を持って来る約束になっていた道盛は、あまりに到着が遅いので、たまらず仕合会場の外に出て待ち受けていたが、そこにようやくおでんと健坊が駆け付けて来る。

三人で仕合会場へ入ろうとするが、興奮した観客や二足拳闘クラブの連中に阻まれ、リングに近付けないままもみくちゃにされてしまう。

デーンは、セコンドに沢田二郎が付いてくれた事もあり、毎回ダウンを奪われながらも、その度に何とか起き上がり、仕合は奇跡的に最終ラウンドまでもつれこんでいたが、もう限界に近づきつつあった。

最終ラウンド、又しても、デーンはダウンし、もう立ち上がる力も残っていなかったが、気が付くと、目の前に一錠薬が落ちているではないか。

道盛たちが群集からもみくちゃにされたはずみで、薬が瓶から飛び出してしまい、偶然にも、その一錠がリングマットの上に落ちていたのだった。

迷わず、それを飲み込んだデーンは、すっくと立ち上がると、あっという間にズドン大山をノックアウトしてしまう。

客席からその様子を観ていた九六は唖然とするが、さらに、その九六の背後から近づいた刑事たちから逮捕状を見せられ愕然とするのだった。

数日後、道盛やおマキ婆さん、健坊やアパートの住民らに見送られ、羽田から飛行機に乗り込み、アメリカに度旅立つデーンとおでんの姿があった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

一時期、漫才コンビだった南道郎とE・H・エリックコンビ主演による「東京よいとこ」 (1957)に次ぐ、上映時間59分の中編作品。

いきなり、アメリカ映画のインディアンのシーンの流用から始まり、西部のカウボーイが、何故か、筏で、神武景気に沸く現代の日本にやって来てしまうと言うナンセンス喜劇になっている。

さらに、飲むと力が出ると言う不思議な薬が登場する辺り、何やら、ディズニーの「春の珍事」(1951)を連想させたりするファンタジックな内容になっている。

前作同様、南道郎のおかしな英語と早口の漫才口調がおかしかったりするが、ストーリー自体はかなり大雑把な作りになっており、矛盾点も多い。

特に、行方不明になっているおでんがアパートに戻って来た時、母親は驚くが、弟の健坊の方は、いつも部屋に飾っておった写真を観ているはずなのに、全く無反応だったり、軟禁された姉を助け出す時も、喜ぶ描写等が全くなく奇妙な感じを受ける。

さらに、薬を飲まなければただの人のはずのデーンが、ミドル級一位の対戦相手と互角に最終ラウンドまで闘ってしまうと言った辺り、いくらナンセンスだからといって、やはり不自然さは否めない。

前作同様、この作品でも、当時の有名人、人気者が出ているようだが、さすがに今では分からない人がほとんど。

仕合を応援している外国人も、何度かアップシーンが抜かれているので、当時の有名なボクサーか誰かなのだろうが、さすがに見覚えがない。

武智豊子が、揺れるアパートで「原爆かい?」と怯えたりする辺り、時代を感じさせる。