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トイレット部長

1961年、東宝、藤島茂原作、松木ひろし脚本、筧正典監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

原始人の時代、人は、どこへでも自由に排せつしていた。

次に、川に下半身を付け流す方法が始まるが、冬になると、しもやけになるものが多かったので、川の上に囲いを作って、そこで用を足す事を覚えた。「厠(かわや」の語源は、ここから来ているとも言われる。

もう一つの方法は、穴を掘って、そこに用を足し、地面に染み込ますと言う方式。

汲取り式は、今に続く方法であるが、戦国時代などは、衣装の関係で、ある程度広さが必要だった事から、裕福な層のものだったようだ。

武田信玄の屋敷の厠などは、六畳敷だったと言われている。

かように、トイレの話は人類の歴史には切っても切れぬ関係であり、今でも興味を抱かずには置かないのは、そこが、人間の滑稽さと哀しさがある場所だからだろう。

タイトル

笠島昇は、毎朝、トイレに新聞を持って入るのでいつも長いと、5才8ヶ月になる息子の稔(島津雅彦)が指摘する。

朝食の準備をしている妻の友子(淡路恵子)も、表情を曇らせる。

朝食の席に付いた笠島は、渋谷駅前のトイレが汚いと言う苦情が多いらしいとの新聞記事を披露し、友子から、食事中なのにと、注意される。

服を着替える時も、毎日、同じネクタイを締める笠島に、稔が何でもパパの真似をするので、少しは生活態度を変えて欲しいと友子は苦言を呈する。

友子は、国鉄の営繕課長と言う肩書きの夫の仕事が、実質的には、トイレの掃除係りのようなものでしかないと思っている為、恥ずかしくてたまらないのだった。

案の定、稔は、父親を真似、漫画を持ってトイレに入ろうとしている所だった。

家を出ると、隣の主人が新車を購入したらしく、同じ方向だから乗って行かないかと勧められたので、つい便乗すると、免許取り立てらしく、都心に出ると、ノロノロ運転になってしまい、結局、日本国有鉄道本社に付いた時には遅刻していた。

さっそく笠島は、届けられた機械の確認をする。

部下たちが、何の機械かと興味を持って集まって来たので、笠島は、大場(藤木悠)に足元の踏み板を踏んでみろと命ずる。

大葉が、板を踏んでみると、機械のメーターが上がる。

つまり、これは、トイレに設置して、使用者たちの平均使用時間を計る機械で、そのデータがあれば、今後の改善費用等の予測があらかじめ付くと言う代物だと笠島が説明すると、部下たちは一斉に感心するが、ただ一人、新人の三上(久保明)だけは興味が全くなさそうだった。

昼休み、屋上で、相変わらず興味がなさそうな三上に、何かと仕事の楽しさを教え込もうとしていた大場がいる所に来た笠島は、三上が、こっちに来てまだ一ヶ月半であり、学生時代は水泳部にいたなどと言う話を聞きながら、それとなく悩みの相談相手になろうと試みたが、あっさり三上は去ってしまう。

トイレの使用時間測定器で、データを取っていた笠島と大場は、男性の平均値は30秒、女性の場合はばらつきがあり、1分30秒〜50秒、中には3分以上と言うものまであると言う結果を得ていた。

その夜、大場と二人でおでん屋に飲みに行った笠島は、妻が妊娠中で最近ちょっと倦怠気味だと言う大葉に、夫婦と言うのは互いにサービスしあう間柄なんだと、結婚生活の先輩としてのアドバイスをするが、帰宅してみると、せっかく夕食の準備をして待っていたのに、外食する連絡もしなかったと小言を言われたばかりでなく、流しが詰まったので、明日朝、直してくれと、友子から一方的に命ぜられる。

トイレのつまりを直すよりは、まだ流しのつまりの方が綺麗でしょう?などと、皮肉を言われたのを聞いた笠島は、仕事に理解を示そうとしない妻に対し、さすがにむっとしてしまう。

夜、久々に誘ってみても、友子は相手にもしてくれない。

笠島夫婦の方が、重度の倦怠期状態だったのだ。

笠島は、大阪に勤務していた頃、夢を持って仕事をしていた時分を思い出す。

戦後間もない頃は、列車の中にトイレがなかった為、近所の公衆便所も兼ねていた駅のトイレは、いつもごったがえしの状態、木造だったトイレの外壁は剥がされ薪代わりにされるし、泥棒たちが盗品を捨てたりするので、しょっちゅう、トイレが詰まってしまっていた。

その後、ようやく本社勤務になったのだが、全国に4500以上もある駅には、最低一つはトイレを設置しなければいけない義務があった為、ますます大変な日々が始まるようになった。

そんな仕事の苦労を、何故、妻が理解してくれないのか、笠島は悔しい思いにかられていた。

翌日は、早起きして流しのつまりを直した為、寝不足気味で、仕事場ではあくびの連発となった笠島。

そこへ、大場が、最近トイレに落書きが多いと言う話をしだす。

同僚の富田(宮田羊容)も、マジックインキで書かれるケースが増えて来たと現場を報告。

大葉は、黒板を設置してみたらどうだろうかなどと、又、珍妙な名案を思い付く始末。

その頃、笠島家には、朝島の姉で女医のさわ子(沢村貞子)が、静岡から訪ねて来ていた。

そのさわ子が言うには、18になったばかりの下の娘の純子が、地元の大学生と結婚したいなどと言い出したので、それを止めさせる為にも、前々から行きたいと言っていた東京に来させたいので、こちらで預かってくらないかと言い出す。

友子は、明らかに迷惑顔だったが、笠島に電話して相談すると、純子に会ったのは、もう10年前になるのに、あの子は良い子だから別に良いじゃないかと無責任な返事。

結局、上京して来た純子(浜三枝)は、良い子どころか、稔と一緒に家中をあばれまわるじゃじゃ馬だった。

ある日、営繕課に、金的を取った不思議な便器の見本が届く。

どっちに向いて座っても良いので、使用時間の短縮になるのではないかと言う考えで、笠島が作らせたものだったが、しかしそれを観た大葉は、どっちが前か分からないので、目標が絞りにくいと疑問を出して来る。

笠島家では、友子が純子に、静岡の恋人との親交具合を尋ねていた。

純子は、まだセックスはしていないと、あっけらかんと答えた後、おじさんって、どんな仕事をしているの?と逆に聞いて来たので、友子は返事に窮してしまう。

純子は、東京で美容師の勉強がしたいので、一流の学校に入りたいと夢を語る。

そんな純子に、友子は、先日、近くの路地で、娘が襲われた話をしながら、東京には狼がたくさんいるので気をつけるように注意するが、純子は、国で彼から空手を教わったので大丈夫と平気な様子。

営繕課では、まだ、新しい便器に付いての議論が続いていた。

トイレに入ると、普通どちらを向いてしゃがむかと言う議論であった。

ドアを入ると、そのままドアを背にしてしゃがむのが普通ではないかと主張する笠島に対し、自分は、デルときのことを考えて、ドアに向ってしゃがむと反論する大葉。

そんな議論にも、いっこうに感心がなさそうな三上は笠島に、話があるので、今夜、家にお邪魔して良いかと聞いて来る。

山崎美容学校の受付で入学願書を提出した純子を観ていた西川(桂小金治)と言う男の入学希望者は、その美貌に一目惚れし、自分も今の子と同じクラスに入れてくれと願書を書く。

夕方、家に戻って来る途中の純子は、何か家を探しているらしき不審者に声をかけられたので、思わず、不良と勘違いし、空手チョップをくらわすと、家に駆け込んで来る。

それを観た友子と笠島が驚いていると、その直後、首筋をさすりながら三上が尋ねて来たので、その顔を観た純子は驚く!ついさっき、自分が空手チョップをくらわした相手だったからだ。

純子のそそっかしさを話の種に、その夜は、一家が和気あいあいとなる。

その後、笠島と二人きりになった三上は、もう話をする気がなくなったと言い出す。

その様子を観た笠島は、自分は今の仕事に向いてないと言いたかったのだろうと言い当ててみせる。

15年前の自分も同じ考え方だったからだ。

しかし、営繕課の仕事に最初から向いている人間なんていない、考える暇もなく、次々と汚い仕事をこなして行く内に、慣れて来るのだと言い聞かすのだった。

台所では、そんな三上が感じの良い青年だと友子が水を向けると、純子は、まあまあねと答えていた。

稔と同じ部屋に寝る事になった純子は、稔が朝7時に起きると言うので、自分は9時まで寝るから、静かに起きるようにと注意しながら、母親への手紙を書くのだった。

その夜も、寝室での友子は、男の子は父親の影響が大きく、学校で稔の友達たちは、あなたの事を駅便課長と呼んでいるらしいと教える。

便所掃除のような仕事をいつまでもしているなんて…と、又しても愚痴をこぼす妻に、笠島は気分を害するのだった。

翌日、トイレの所要時間の衆軽作業に手間取り、外部に依託したアンケートをもらいに行けそうにないと言う大葉の言葉を聞いた三上は、珍しくやる気をだし、自分から率先して行って来ると出かける。

アンケートを頼んでいた学校長(十朱久雄)から120名分の名簿をもらい、帰りかけていた三上は、廊下でばったり純子と出会う。

そこは、純子が通いだした美容学校だったのである。

純子は、トイレに入る時、どちら向きに座るかと言う妙なアンケートを持っている三上に気付き、それを頼んだのはあなた?と聞くが、三上は恥ずかしさに耐えられず、言葉を濁すと、逃げ帰ってしまう。

そんな純子に、親切にも講義の席を取っておいたと誘いに来たのが西川。

講師(塩沢とき)の授業が始まっても、しきりに隣の純子にデートを誘い掛ける西川だったが、純子は全く相手にしなかった。

とある駅の駅長(丘寵児)を訪ねた笠島は、トイレに赤ん坊が捨てられていたと抱いて来た駅員を観て驚く。

さらに、その直後、赤ん坊を忘れて来たと取りに来た母親(桜京美)にはもっと驚く。

美容学校からのアンケートを集計した結果、ドアを背に向ける派が61%、ドアに向う派が39%と言う事になり、ドアを向く派だった大葉はちょっと納得が行かない様子。

その日、帰宅した純子は、今日学校のアンケートを取りに来た三上に会った話をし、おじさまの仕事が分かったと言う。

友子は恥ずかしがるが、純子はむしろ、そう言う仕事に一心に打ち込んでいるおじさまは立派だ、見直したと誉めはじめる。

そんな純子に三上から電話があり、今度の日曜日、銀座のみゆき通り「あざみ」と言う喫茶店で会わないかとの誘いだったので、純子はすぐに承諾する。

その日、やって来た三上は、君と会う事を課長に話して来たと打ち明ける。

それを聞いた純子は、不良っぽくない人はミリキないと笑う。

一方、そんな二人の事を噂しながらのんびりした休日を楽しんでいた笠島と友子は、今日は、これから久しぶりにピクニックでも出かけようかと言い出す。

その準備中、保険の外交員がやって来て、セールストークのつもりでか、国鉄の悪口を言い出したので、聞き捨てならないと感じた笠島が顔をだし、出直してくれと言いかけるが、その顔を観た外交員は「笠島昇さんじゃない?」と声をかけて来る。

驚いて、良く相手の顔を見ると、小石川時代、隣に住んでいた克代(森光子)だと言う。

結局、幼馴染みだと言う彼女を家に上げてしまったので、友子はピクニックにいけなくなっただけではなく、見知らぬ女と親しそうに談笑している夫の態度が面白くないので、リンゴにたっぷり塩をかけて笠島に喰わせる事にする。

10年振りの再会となる克代は、夫に5年前に死に別れたと言う。

その頃、三上と純子は、隅田川の水上バスに乗っていた。

三上は、純子が静岡に大学生の恋人がいる事を笠島から聞いたらしく、しきりにその男との関係を聞いて来る。

どうしてそんなに詮索するのかと聞く純子に、三上は、好きな女の子の事を何でも知りたいのは当然だと答え、純子を喜ばせるのだった。

友子の機嫌が悪そうな気配を感じた克代は、そそくさと帰る事にするが、その時、笠島に、会社に電話して良いかとそっと耳打ちして来る。

結局、友子は最後まで克代の見送りに出て来ず、探していると、何喰わぬ顔でトイレから出て来る。

純子の方は、相変わらず、静岡の恋人の事にヤキモチを焼くような質問を繰り返す三上と、ちょっと言い争いになってしまう。

笠島家でも、克代の事を巡り、笠島と友子の言い争いが起こっていた。

最近、夜の相手をしてくれなくなったと笠島が文句を言うと、トイレの仕事をしているだけに、どんどん下品になって行くと皮肉を言い返すと、純子に結婚なんてしないように忠告するとまで言い出す始末。

その純子は、翌日、アイロンパーマのかけかたの授業中もポーッとしていて、隣の席の西川をやきもきさせるのだった。

営繕課では、笠島も三上もそろって機嫌が悪いので、大場たち、他の社員は頭を捻っていた。

そんな笠島に、大葉は又、名案を思い付いたと言い、トイレットペーパーに、広告を印刷すれば、しゃがんだ時に退屈しないで済むと言うが、黄色だけは使わないでくれとの、気のない返事をもらっただけだった。

そんな笠島に、約束通り、克代から電話が入り一緒に飲もうと誘われたので、すぐさま友子には、今夜は会議があるので遅くなると嘘の電話を入れる。

一方、ふて腐れていた三上にも純子から電話が入り、今忙しいとわざと乱暴に応対すると、純子も怒って、すぐさま電話を切ってしまうのだった。

面白くない三上は、大葉が今夜は付き合えと誘って来たので、すぐさま承知する事にする。

その頃、帰宅した純子は、友子におじさまを愛しているのかといきなり聞くが、できるだけ接近しないようにしている事が愛情を長引かせる秘訣だとの醒めた答えが帰って来る。

恋愛は、距離の自乗に反比例するのねと、純子も分かったように頷く。

その頃、バーで落ち合った笠島の方は、克代相手に、最近、友子との間には、もう新しい刺激がなくなってしまったと、倦怠期を愚痴っていた。

しかし、克代は落ち着き払って、イザと言う時には頼って来るわよと慰める。

笠島が、夫婦とは、気心の知れないベッドの相手と、さらに醒めた事を言い出したので、克代は、今度、自分のアパートに電話をくれと、マッチ箱に電話番号を書いて笠島に渡すのだった。

そんな店に偶然来ていた大場は部長を見つけると、不躾にも一緒に飲もうと、三上も引っ張って同席して来る。

すっかり泥酔した笠島を店の外に連れ出したのは、三上と克代だった。

もっと飲もうと誘う克代をきっぱり拒否した三上は、タクシーを止めると、一緒に乗り込んで自宅まで送り届ける事にする。

珍しく泥酔した笠島を迎えた友子と純子は驚くが、三上がつい、親戚の女性と飲んでいたと、余計な事を言ってしまった為、友子はふくれ、乱暴に笠島を寝かし付けてしまう。

一方、送ってやったら?と友子に言われた純子が玄関に来ると、そこに、いつかのデートの日に、三上が付けていたネクタイピンが刺さっていたので、それを取って、表で待ち受けていた三上のネクタイに刺してやると、旧に抱き締められ、キスをされてしまう。

寝室では、笠島の洋服を畳んでいた友子が、キスマークの残ったシャツや、電話番号が書かれたマッチ箱を見つけ、怒り心頭に達していた。

駅まで三上を送って行っていた純子は、又、キスをされそうになったので、トモコの言葉を思い出し、距離を置こうと、鼻と鼻の間にこぶしを入れてキスに応じるが、すぐに、おばさまやアルキメデス言う事は間違っているわと言いながら、自分から抱きしめてキスをするのだった。

夜中、目覚めた笠島が、酔いに任せて、又、友子を誘おうとすると、友子は、稔と純子が寝ていた子供部屋に、自分の布団も持ち込んで、私も今日からここで寝ると宣言する。

翌日、いつものように、大場が、神田駅のトイレに棚を付けてみたが、良く頭をぶつけると苦情が出るので、設置する高さに注意なければいけませんななどと話し掛けていたが、笠島の方は不機嫌そのものだった。

美容学校で純子は、今日はママが来ると浮き浮きしていた。

タクシーで、母親を出迎えた純子は、式場が開いていたので、その日に三上と結婚する事にしたと、いきなり打ち明ける。

あまりに急な話に驚く母親に、おじさま夫婦に仲人をやってもらってくれとまで言う。

その母親を喫茶店で待っていた三上は、一人でセリフの練習をしていたが、その場に純子が母親を連れて来たので、緊張して直立不動の姿勢で出迎えたまま、純子をくれと申し出る。

その実直な姿勢に感心した母親さわ子は、その後、笠島の家で相談するが、結婚なんて味気ないものよと、友子が白けたように言い出してしまう。

しかし、もうすっかり舞い上がっている純子は、仏滅の日が一組開いたんだから、それを逃すと、次に開くのは何時になるか分からないと発言、さわ子を唖然とさせる。

その夜、仲人を引き受けるべきかどうか聞いて来た笠島に、仲人って、模範となるような夫婦でなければだめだから、その点、私たちなら見事ねと皮肉を返す。

純子の花嫁衣装の着付けは、美容学校でやってもらう事にする。

その際、新郎役を勤めたのは、西川だったが、夢破れた皮肉な役柄だけに、新婦姿の純子が教室を後にすると泣き出してしまう。

結婚式場で、挨拶をする前の笠島は上がっていた。

しかし、いざ、本番になると、夫婦の愛情と言うのは、やがて飽きて来る、否、絶対に鼻に付いて来ると前置きした後、夫婦の愛情と言うのは、もうダメだと思う所に行き当たる。しかし、それでロマンスが終わったのではなく、一生続くロマンスが始まるのだ…と言う、オスカー・ワイルドの言葉を引用すると、聞いていた友子も、にっこり微笑むのだった。

やがて、純子と三上を新婚旅行へ送りだす駅での事、笠島は、そこに新婚姿の克代の姿を見つけ驚く。

駆け寄って来て打ち明けるには、500万の保険に入ってくれた相手と再婚する事にしたのだと言う。

帰宅して、今日のスピーチはお義理で喋ったんじゃないよ、今日は、自分達にとっても、人生の再出発の日だなと説明する笠島に、友子を素直に頷くのだった。

その夜、稔の寝相を見に行った友子は、その場に自分用に敷いていた布団を畳みはじめる。

翌朝、笠島は、いつものように新聞を持ってトイレに行きかかるが、友子の方をちらり盗み見ると、新聞を置いていくのだった。

さらに、ネクタイも新しいものに変えていた。

そこへ、稔が電報だと言って玄関から持って来たので、何事かと読むと、それは無事着いたと知らせる純子と三上からのものだった。

笠島を送りだす友子は、今日からあなたの事を、トイレット部長に昇格させてあげると伝え、それを聞いた笠島も気に入る。

表で車で待っていた隣の主人には、今日は急ぎますからと先に断わり、笠島は徒歩で駅まで歩く事にする。

車に乗った隣の主人は妙な顔をするが、案の定、車はなかなかエンジンがかからない様子。

家に残った友子は、夫を理解する事も大切ねと言いながら、新聞を持ってトイレに入る。

空を飛ぶ飛行機を見上げた笠原は、やがて宇宙時代が来るだろうが、できる事なら、宇宙ステーションのトイレの設計も、自分でしてみたいものだと考えるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

実際に、国鉄にいた営繕課の名物部長の事を書いた原作をベースに、コミカルに描いたホームコメディ。

タイトルがタイトルだけに、キワモノ臭い内容かと思いきや、浜美枝と久保明の若者同士の恋物語と、中年夫婦の倦怠期をダブらせながら、下品に落とさず、ギリギリの所で軽妙なドラマに仕立て上げている。

同時に、当時の国鉄(現在のJR)の駅トイレの状況も良く分かり、勉強にもなった。

藤木悠のとぼけたキャラや、手慣れた桂小金治、淡路恵子の時として見せる意外なコメディエンヌ振りはお馴染みだが、真面目な二枚目の印象が強い池部良が、泥酔して妻に乱暴に寝かされるシーンなど、二枚目とのギャップがあって、逆に奇妙なおかしさが湧いて来る。

同じように、出番は少ないながら、一見真面目な印象の松村達夫のおとぼけ振りも愉快。

18才と言う設定の浜美枝の生き生きとした演技が魅力的。

彼女の伸びやかなキャラクターが、全体のムードを明るくしていると言っても良い。

浮気を仕掛けて来る森光子と言うのも、今となっては見物だろう。