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ミリオンズ

2004年、イギリス+アメリカ、ダニー・ボイル監督作品。

この作品は、比較的最近の作品ですが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、御注意下さい。コメントはページ下です。

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ヨーロッパの各国が通貨をユーロに切り替える中、イギリスでも、来るクリスマスからユーロに切り替わる事になった。

そんな中、兄アンソニー(ルイス・マクギボン)と弟ダミアン(アレックス・エテル)は、父親ロニー(ジェームズ・ネスビット)と共に、線路に程近い新興住宅地に引っ越しする事になる。

母親が亡くなったからだ。

兄弟は、まだ建設中だった新しい家を時々観に来ていた。

引っ越しの日、母親の想い出を忘れがたいダミアンは、前の家の鍵をこっそり持って来てしまう。

アンソニーは金や投資の事ばかり話す現実的な少年だったが、弟のダミアンは全くそんな話には興味がなく、神様の話ばかりしたがる夢見がちな少年だった。

新しい小学校へ転入した日も、教師から尊敬する人を聞かれ、生徒たちがめいめい答える授業で、いきなり聖人の話をとくとくとし始めるダミアン。

その授業の事を知ったアンソニーは、気持ちの悪い発言を学校でするなと注意すると同時に、ママが死んだって人に言うと、大抵、同情されて、ただでもらえたりすると悪知恵を教える。

その夜、近所の集まりがあり、地域の警官から、クリスマスシーズンには泥棒が多いので注意するようにとの通達がある。

その集会に父親と一緒に出席していたダミアンは、兄から聞いた悪知恵をさっそく使ってみる事にし、主催者の主人からチョコをせしめるのだった。

その夜、ダミアンは、寂しさの為、父親のベッドに潜り込むのだった。

ダミアンは、線路脇の草むらに、段ボール箱を組み合わせた秘密の隠れ家を作っており、その中で、聖人と会話する夢想に耽っていた。

その時、どこからともなく、大きなバッグが降って来て、秘密の隠れ家にぶつかり、破壊してしまう。

ダミアンが、そのバッグを開けてみると、大量の札束がぎっしり詰まっていた。

自宅に持ち帰ったダミアンが、子供部屋でそれを兄に見せると、アンソニーは大人に知られると、40%も税金に取られてしまうので、この事はパパには内緒だと言う。

札束を勘定してみた所、22万9320ポンドもある事が分かる。

しかし、そのアンソニー、友人を呼んで来て、その大金を見せては、口止めをするのだった。

翌日、ダミアンとアンソニーは、バッグをベッドの下に隠して学校に出かける。

帰宅後、ダミアンは、病人の身体を洗ってやったと言う聖フランチェスコを観、飼っていた鳩を逃してやる事にする。

さらに、友人二人をピザ屋に連れて行き、どんどんおごりはじめたので、その内、大勢仲間がやって来てしまい、168ポンドも支払う事になる。

その事を知ったアンソニーは、これだけ金があれば、家が二軒買えるんだと説教するが、その後も、ダミアンの施し癖は変らず、近所の宗教家を見かけると貧しいのかと聞き、無理矢理、持っていた金を渡すのだった。

その時も、ダミアンは聖ニコラウスを観ていた。

その頃、アンソニーの方はサングラスをかけ、金で集めた仲間たちと組んで出かけると、色んな家の写真を撮って廻っていた。すっかり、金持ちの御曹司気取りになっていた。

ダミアンは修理した秘密の隠れ家に又居着くようになり、聖ウガンダと会っていた。

雨乞いの詩を唄う黒人達の姿が見え、100ポンドあれば井戸が掘れると聞かされる。

そんな秘密の隠れ家に、何かを探している様子の見知らぬ男が近づいて来る。

ダミアンは、その男に、あなたは貧乏人かと尋ねるが、アンソニーに見つかり、渡されていたトランシーバー越しに、知らない人とは口を聞くなと叱られるが、もう金を持っていると言ってしまったと白状する。

アンソニーは、その後、再びやって来た男をごまかす為、自分達が溜めていた小銭の貯金を渡すのだった。

アンソニーは、ネット上で水中スクーターなどのカタログを楽しそうに眺めていたが、時々、下着の女の写真なども見つけ、その胸元を凝視したりするのだった。

翌日、ダミアンの学校に、ロボット型の集金装置を携えたチャリティーワーカーのドロシー(デイジー・ドノヴァン)がやって来て、新年から67ペンスがユーロになるという通貨統合の話を聞かせた後、みんなのポケットの金を少しづつでも寄附してくれたら、貧しい人たちの暮らしが楽になるとチャリティのお願いをし出す。

子供達が、めいめい、動き回るロボット型集金装置の中に小銭を入れる中、ダミアンだけは持っていた大量の札束を投入してしまう。

そんな事は知らないアンソニーは、ユーロに通貨が変る際、従来のポンドを廃棄する作業が、今正に全国レベルで進められている事を仲間たちに話していた。

警官をやっているおじさんから聞き込んだ話なのだと言う。

その廃棄処分にされるポンドを乗せた列車が、とある強盗団に奪われ、警官たちの懸命の捜査にもかかわらず、一袋の札束を持ったを持った一人だけ列車で逃げおおせた。

その犯人は、列車がカーブでスピードを落とす時を狙って、札束を詰めたバッグを外に放り投げ、後から回収するため戻ってみたが、もう、そのバッグは見つからなかったのだ。

その後、ダミアンの父親ロニーは校長から呼出されれ、ダミアンがチャリティロボットに、大量の札束を入れた事実を打ち明けられる。もちろんドロシーが報告したからである。

一緒に呼出され、金の出所を聞かれたたアンソニーは、モルモン教徒の人からもらったと嘘をつき、ママが死んだので…と、いつもの手を使って泣き出す。

それを聞いたロニーは、母親を喜ばせろと説教する。

学校から帰る時、ロニーは、一緒に学校から出て来たドロシーが募金活動をしている事を聞く。

後日、モルモン教との家に警官が事情聴取に訪れるが、モルモン教徒の方も面喰らうばかり。

その日、家に戻ったダミアンは、聖ペテロに出会い、前の家の鍵の技術を誉められていた。

テレビでは、盛んに、通貨交換の日の宣伝を流していた。

アンソニーは、このまま大金を家に隠しておけないと考え、金を預ける為、銀行に行って口座を作ろうとするが、子供なので相手にしてもらえない。

仕方なく、TV電話のついた最新型のケイタイを購入し、一台をダミアンに渡す。

その後、ロニーに誘われたドロシーが、家にやって来るようになる。

それを、ダミアンは素直に喜ぶが、アンソニーの方は、金を狙っているのかも知れないと警戒する。

ダミアンは、通学鞄の中に札束を詰め替えていた。

クリスマスの日、ダミアンは、学校で行われるイエスの降臨祭の芝居に出演していた。

そんなダミアンの姿を、舞台裏から監視していた男がいた。

いつか、秘密の隠れ家の近くに現れたあの男だった。

その男は、ダミアンの荷物を探していたが金の入ったバッグは見つからない。

男の姿に気付いたダミアンは、芝居に使う馬の人形と一緒に外へ逃げ出していた。

そして、そのまま家に戻ると隠し二階に登り隠れるが、その直後、男が家に入って来る足音が聞こえて来る。

その男が、隠し二階に近づいた時、ダミアンがアンソニーから持たされていたケイタイの着信音が鳴り出す。

隠し部屋に入って来たのは、あの男ではなく、父親のロニーだった。

ロニーは、ズタ袋に入っていた大量の札束を発見する。ダミアンは、ズタ袋に札束を詰め替え、馬の人形の中にずっと隠し持っていたのだった。

ロニーは、その後、子供達とドロシーを伴い警察に届けに行くが、帰宅してみると家の中が荒されていた。

あれほど、地域会合で注意されていたクリスマスの日の泥棒に入られたのだ。

ドロシーは警察に通報しようとするが、それを止めたロニーは、ズタ袋を持って来て、これをもらう事にしたと言い出す。

その言葉を聞いたダミアンは、間違っていると言い、ベッドに潜り込んでしまう。そんな事をしたら、天国にいけなくなると思ったからだった。

しかし、ロニーは、ドロシーとアンソニーに、家を守るのは自分達の役目だと前置きをし、明日、全員でこの金を銀行に持って行き、両替えして使ってしまおうと提案する。

その頃、屋根の上に潜んでいた例の男が、ダミアンの部屋に侵入していた。

翌日、ドロシーとダミアン、アンソニーとロニーは各々コンビを組んで、別々の銀行を廻る事にする。

少しづつ、両替えしないと怪しまれるからだった。

ところが、銀行に行ってみると、両替え担当の前には、ものすごい列ができており、なかなか思うように両替えが進まない。

ようやく順番が来たドロシーだったが、受付係が規定金額以上の両替えは出来ないと難癖を付けて来たので、ダミアンと目で合図をしあい、子供がおシッコをしたがっている、急いでくれと言って、両替えに成功する。

この作戦が巧くいったので、すぐさま他の銀行でも同じ手口を使う事にする。

通貨がユーロに切り替わるのは、その日の夜12時だった。

一方、両替えが思うように進まないロニーは焦るが、アンソニーは、ユーロではなく、ドルに替えようと言い出す。

案の定、ドルに替える窓口は、どの銀行もがらがらだった。

そんな中、ダミアンは、ドロシーが一人で両替えに行っている間、待たされていた化粧品店を観て歩いていた。そこは、ママが以前働いていた店だったのだ。

そこに、両替えを終えたドロシーが嬉しそうに戻って来る。

その夜、ダミアンはアンソニーから、ドロシーを仲間に入れた事を怒られていた。

そこへケイタイの着信音が鳴り、出てみると、あの男からだった。

10分後に金を持って、玄関に出て来いというのだった。

父親の部屋を覗くと、ロニーはドロシーと一緒にベッドに入っているではないか。

子供に観られてしまい慌てる二人を他所に、玄関のチャイムが鳴るので、ロニーが出てみると、そこには募金を求める団体員が訪れていた。

訳が分からず、表の様子をうかがうと、募金をもらおうとする人間達が列を作っているではないか。

あまりの騒動に、警官までやって来る始末。

そんな混乱の最中、ダミアンは、金の入ったバッグを持って窓から外に逃げるが、アンソニーは隠れていた男から捕まってしまう。

線路までやって来たダミアンは、線路の真ん中に札束を積み上げると、それに火をつける。

その後、警官が、男の姿を見つける。

線路では、火のついた札束が舞い上がっていた。

ダミアンはその時、目の前に現れたままの姿を観る。

いつも持っていた、母親当ての手紙を渡すと、ママは5分間だけ話せると言う。

アンソニーは、いなくなったダミアンを探しに来ていたが、線路の所で、一瞬、ダミアンと話しているママの姿を観たように思った。

しかし、列車が通り過ぎた瞬間、線路の向こう側にいたのはダミアンだけだった。

近づいて来たアンソニーに、ママ観た?と聞くダミアンは、ママは、いつも見守ってくれているよと続けるのだった。

翌日、ドロシーが、昨日両替えした1310ユーロを見せると、ロニーの方は、1万1400ドル見せる。

合計4780ユーロ残った事になる。

アンソニーは、プレステ3が欲しいと言い出す。

その後、秘密の隠れ家を作った段ボールが空へ舞い上がる。

ロニーとドロシー、アンソニーとダミアンの4人は、何時しか、アフリカに来ていた。

そこでは、水不足に苦しむ村人たちが、嬉しそうに、できたばかりの井戸を囲んでいた。

4人が寄附した金でできた井戸だった。

その村人たちの群れに、4人も加わるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

イギリスが、ユーロへの通貨統合に参加した事を想定した寓話。

急に大金を手にする事になった個性の異なる二人の兄弟を中心に話は展開して行く。

特に、金よりも、亡き母親を慕い、聖人に憧れ、いつまでも無垢で敬虔な心を持ち続けるダミアンに訪れた、クリスマスの夜の奇跡が、観る者を暖かい気持ちにさせてくれる。

派手な見せ場など全くない地味な内容だが、さり気ないCG表現による、ちょっと独特なファンタジック世界と、子供の無邪気な行動は、観る者を飽きさせない。

金など、いつかはチョコレートのように消えてしまうんだと言う、ちょっと大人びたダミアンの言葉は、そのまま作者の気持ちなのだろう。

世の中には、金よりも大切なものがあると言う、一見、きれいごとのように聞こえるメッセージを、押し付けがましくなく表現した手腕は見事。

後味も悪くない秀作である。