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華麗なる追跡

1975年、東映東京、掛札昌裕+金子武郎脚本、鈴木則文監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

鈴鹿サーキットのカーレースで優勝したのは、矢代忍(志穂美悦子)だった。

真っ赤なスポーツカーで都心を走っていた忍に、レースの優勝を祝う連絡を入れて来たのは、TESO(東南アジア特別調査機関)の所長前島勇人(渡辺文雄)だった。

前島は、さらに、忍が長年追い掛けている男の新情報が入った事を伝える。

本部に急行した忍は、ヘンリー中谷(山本昌平)なる人物が、南米などを回って日本に戻って来たと教えられる。

実は、忍の父親正之(浜田寅彦)は、外国船の船長をしていたのだが、麻薬の運搬を手伝ったとの疑いをかけられ、無実のまま獄中で死亡したのだが、その秘密を知るのが、当時、父親が死亡した大宮刑務所の刑務官の一人だったこのヘンリー中谷だったのだが、今、彼は整形手術をして顔を変えたようだった。

忍は、「芥子の花は」「赤い色」と言う、秘密賭博場に入る合い言葉を教えてもらうと、すぐさま、ヘンリー中谷が出入りしていると言う赤坂の秘密賭博場に向う。

スパンコールも艶やかなドレスに身を包んだ忍は、ルーレットで勝ち続けていた。

一方、その場にいたヘンリー中谷の方は負け続けており、掛け金を全て失うと、自分の名刺を取り出し、そこに¥300000と書き込んで、それを掛け金代わりにしようとしたので、ディーラーが困ると断わると、俺を誰だと思っているんだと凄み出す。

その時、忍がさり気なく、その名刺を私が買いましょうかと言葉をかける。

中谷は、忍の事を気に入ったようだが、そこにボディガードたちがやって来て、中谷を連れ出そうとしたので、忍が相手になり、大乱闘が始まる。

しかし、その最中、ガードマンの一人、首藤(安岡力也)がさっさと中谷を外に連れ去ってしまう。

翌日、矢代忍のマンションの一階にある「矢代ファンクラブ」と書かれた花屋で店番をしていた青木凪子(大森不二香)の元に、兄の青木新平(菅野直行)仕入から帰って来て声をかける。

そこへ、「ファンクラブ」に入会したいと言う女性が訪ねて来る。

彼女は、忍の高校時代の友人正田有希子(田中久子)だと自己紹介するが、そこにちょうど帰って来た忍が彼女を見ると、懐かしそうに抱き合うのだった。

二人は、ゴールデンカップの東京大会で優勝した仲間だった。

二人は、おじさまに勧められたと言う店に向う。

有希子は、忍の亡くなった母親の事を思い出したかのように、おばさまにも見せたかったと呟く。

父親の冤罪事件が、母親の寿命を縮めたのだった。

忍は、5年前の事件を思い出していた。

光洋丸と言う船の船長だった父親は、刑務所内で看守たちから暴行を受けていたのだった。

その後、父親は自殺と言う事で、忍ぶと母親綾子(伊藤慶子)が会いに出向いたが、あきらかに暴行の末の不審死であった。

その父親の死体を前にした母親は気絶してしまう。

忍はその時から、麻薬の冤罪を父親に押し付けた真犯人を、地の果てまで命を賭けて追跡すると心に誓ったのだった。

ある夜、昔、大宮刑務所で看守をやっていた本屋敷が経営するナイトクラブでは、女子プロレスラーのマッハ文朱が、仮面をつけて一曲唄った後、デモンストレーション試合を客たちの前で披露していた。

そこに、サングラス姿のダンディな紳士がやって来る。

そのナイトクラブの一室では、頭で石を割る者やトランプを武器のように投げる男が用心棒として待機していたが、その投げたトランプにナイフを突き刺した男がいた。

外科医崩れのドク白崎(郷えい治)と言う無気味な用心棒だった。

別の部屋では、ボスの顔に泥を塗りやがってと拷問を受けているヘンリー中谷の姿があった。

その様子を、部屋の影で観察していたのは、先ほどのダンディな紳士。

その場には、本屋敷(沼田曜一)の姿もあったが、中谷は、忍の父親を殺すよう命じたのは、目の前にいる刑務所長尾野沢(石橋雅史)だとばらしていた。

ヘンリーは、身体に電線を押し付けられ感電させられていたが、いきなり部屋の電気が消えると、次の瞬間、電気がつくと、椅子に縛られていたはずの中谷の姿がいなくなっていた。

中谷を連れて廊下を逃げていた紳士に、中谷は、頭に被っていたかつらの下から取り出した鍵を渡そうとするが、その時、追って来た用心棒の一人が放った吹き矢に中谷に刺さってしまい、彼が倒れると同時に、店の用心棒たちが追い付いて来る。

紳士は、近くの部屋に飛び込むが、そこはマッハ文朱の控え室で、時ならぬ侵入者である紳士とマッハは闘いはじめる。

勝負は互角に思えたが、天井に飛び移った紳士は、やって来たドク白崎がナイフを投付けた瞬間、天井を突き破って逃走してしまう。

その後、本屋敷は、中谷が落としてしまった鍵を持って、とあるコインロッカーにやって来るが、その様子を、忍は近くからしっかり観察していた。

後日、尾野沢の経営するパシフィック興行ビルの求人広告にやって来たのは、妙な老婆だった。

耳の遠いすこしおかしな老婆だったが、応対した方もチンピラたちだったので、単なるお茶汲みと言う仕事柄、難なく採用される。

そのビルの一室、会長代理として待っていた尾野沢の元に宝石箱を持ってやって来たのが、真っ赤なドレス姿の菅野真弓(円山理映子)。

宝石箱の中には、中谷が隠し持っていた刑務所での隠し撮り写真のスライドが入っていた。

そこにお茶を運んで来た老婆は、粗相して、テーブルの上に置かれた宝石箱に茶をひっくり返してしまう。

慌てて、宝石箱を拭いていた婆さんは、尾野沢たちに追い出されるが、その後、宝石箱を開けてみると、中はもぬけの殻だった。

真弓は、その後、シスター姿のバーバラ(ジル・ブライソン)を連れて来る。

その頃、トイレに逃げ込んだ婆さんは、たまたまそこにいたOLの衣装を奪い取ると、その姿に変装し、廊下を探し回るやくざたちの目の前を堂々と脱出するのだった。

何と、婆さんは、忍の変装した姿だったのだ。

自宅マンションに戻って来た忍は、奪って来たスライドを、新平や凪子らと共に映写して確認していた。

そこには、父、正之を刑務所内で拷問する看守たちの姿がはっきり映し出されていた。

麻薬を運んでした真犯人は、その昔、一等航海士の尾野沢だったのだ。

彼は、正之に罪をかぶせ、刑務所長になった自分の刑務所の中で、口封じのために正之を殺害したと分かる。

子供の頃、拾われて育ててもらった恩人正之の末路を見た新平と凪子兄妹も、忍の復讐を手伝う決心をする。

そのスライドには、見知らぬ謎の人物の姿も映し出されていたが、残念ながら後ろ姿であったため、顔を確認する事が出来ない。

とある洋館の中、ヒトラーの肖像画がかけられた広い部屋の中で、熊の着ぐるみを着た人物が裸の女を愛撫していた。

裸の女は正田有希子、そして、着ぐるみの首を取って顔を見せた男は会長と呼ばれる政府与党の国会議員、猪俣赴夫(天津敏)だった。

猪俣は、有希子に、忍を殺す事にしたと囁く。

その後、庭で、尾野沢と本屋敷と面会した猪俣は、矢代正之の娘が出て来たと打ち明けていた。

そこにやって来たバーバラが、時価十億円文のヘロインが届くと猪俣に報告する。

猪俣は、その資金を元に、5年後には猪俣内閣ができると上機嫌だった。

その目的達成のためにも、邪魔になる忍を絶対消すように本屋敷と尾野沢に命じる。

そんなある日、新平に連れられて、元プロレスラーマッハ文吉(由利徹)がやっている大衆酒場に来ていた忍は、帰宅して来た文吉の娘マッハ文朱と出会う。

マッハは、新平から紹介された忍の顔を見て、どこかで会ったような気がすると頭をかしげるが、思い出せない。

実は、「ブルーファイヤー」で彼女と闘ったダンディな紳士は、忍の変そうだったのだが、それに気付くはずもなかった。

その時、おどけない花売り娘(遠藤薫)が花束を届けに来る。

しかし、その花束から時計の音が聞こえて来る事に気付いた新平が、急いで裏口から外へ放り投げると、花束に仕掛けられていた時限爆弾が大爆発を起こす。

そこへ、子分たちを率いた本屋敷が乗り込んで来たので、忍とマッハは一緒に闘いはじめる。

その戦い振りを観ていたマッハは、ようやく、あの時の紳士が忍であった事に気付き、子分たちを叩きのめした後、改めて仲直りする。

その後、逃げようとした本屋敷を捕まえ、ボスの正体を聞き出そうとした忍だったが、真弓が車に乗って近づいて来て、本屋敷を射殺すると走り去ってしまう。

手がかりを失ったと思われた忍だったが、本屋敷の死体の側に「セントジョルジュ」と書かれた十字架が落ちているのに気付く。

一方、真弓は、その後、忍のマンションにいた凪子を拉致していた。

凪子がいなくなった事を知った忍と新平は、おそらく十字架に印してあったセントジョルジュ教会に連れて行かれたに違いないと見込み、二人で向う。

教会の中では、シスターに囲まれた猪俣が、部屋の中央に置かれた柩を開けさせると、その中には裸の女の死体が入っていた。

猪俣がその女の死体の腹をナイフで裂くと、中には、マフィアから送られて来たヘロインの袋がぎっしり詰まっていた。

その時、猪俣は、バーバラから耳打ちをされる。

改めて、部屋の中にいるシスターの数を数えると、10人のはずが11人いるではないか。

スパイが紛れ込んでいると見抜いた猪俣は、バーバラにシスターたちの確認を命じるが、その時、変装して紛れ込んでいた忍が、突然、暴れだし、部屋を逃げ出してしまう。

車の所に戻って来た忍は、見張りとして残していた新平の姿がない事に気付く。

その新平は、捕まって教会内の一室に鎖で繋がれていた。

目の前では、妹の凪子が裸にされ、熊の着ぐるみを着た男から犯されていた。

その着ぐるみ男は、新平に、妹を助けたければ忍を連れて来いと命じていた。

再び、教会に忍び込んだ忍は、とある部屋の中で、麻薬を欲しがっている有希子の姿を発見する。

さらに、別の部屋では、斬殺された新平の姿も発見してしまう。

真弓が教会内の甲冑の顔の部分にバナナを近づけ、中にいる何者かに食べさせようとしている様子も目撃した忍は、真弓が去った後、その甲冑の仮面を外してみると、中に入れられていたのは、すでに正気を失った全裸の凪子だった。

その凪子を甲冑から出し、一緒に連れ出そうとしていた忍の前の扉が突然開くと、待ち受けていた猪俣の子分たちが、銛を発射し、それが突き刺さった凪子はその場で息耐えてしまう。

拳銃を突き付けられた忍も捕まってしまい、地下室で鞭打たれる事になる。

その様子を観ていた猪俣は、矢代の父、正之は、俺の組織の事に気付きかけていたので、冤罪にして殺したのだと打ち明ける。

忍にも、家畜となってこの屋敷の中で生きろと言い残し去って行く。

その後、一人縛られていた忍の元にやって来たのは有希子だった。

彼女は、あなたの友達の有希子はもういないと言いながら、忍を助けようとするが、そこに現れた真弓が放った含み針によって目を射ぬかれてしまう。

忍は、その真弓を蹴り、真弓は、ぶつかって外れたパイプから吹き出して来た高熱のスチームを、まともに顔に浴びるのだった。

教会の外に逃げ出した忍を待ち構えていたのはドク白崎だった。

彼は前島の名前を出し、自分もTESO機関の人間だと打ち明けると、忍と打ち合わせ、追って来る猪俣の子分たちの目の前の高架橋の上で、白崎がメスで斬り付けたジェスチャーを合図に、忍は下の落ちて行くのだった。

その後、とある島で、猪俣や尾野沢は、世界各国から集まって来たバイヤーたち相手に、麻薬を売る場を設けていた。

予定していたカンボジアからの使者が来ないと猪俣が心配していると、そこにカンボジア代表だと言う奇妙な白髪の老婆が到着する。

バイヤーが全員揃ったので、猪俣が挨拶をし、商談を始めようとするとカンボジア代表の老婆が笑い出す。

怪んだ猪俣らが何者だと誰何すると、その老婆は、お前たちを三途の川へ導く案内人だと言う。

立ち上がった老婆は続ける。

ある時は、さすらいの女ギャンブラー、ある時はダンディな紳士、ある時はお茶汲みの老婆、ある時は黒衣の修道女、そして白髪のせ○し女…、しかしその真実の姿は…と言いながら、変装を取ると赤いヌンチャクを持った矢代忍が立っていた。

しかし、鞭で襲って来たバーバラからヌンチャクを奪い取られてしまう。

さらに鞭で忍に襲いかかるバーバラにナイフを投付けたのは、駆け付けた白崎勲だった。

忍は、逃げ出した猪俣の後を追う。

造成地のような所に逃げ込んだ猪俣や尾野沢を追って来た忍は、そこに仕掛けられていた爆薬攻撃を受ける。

何とか、その爆発をかわした忍は、空手を使うらしい尾野沢と対決するが、蹴り倒した相手は、自ら爆薬のスイッチの上に落ち爆死してしまう。

猪俣の方は、ロープウェイに乗り込んだので、追って来た忍は、動き出したロープウェイのゴンドラの下に捕まる。

山上に登って行くゴンドラの扉を、外から開け、何とか中に乗り込もうとする忍に気付いた猪俣は、必死に落とそうと、足で蹴りつけてくる。

必死に、その攻撃を避けな柄、一瞬の隙をつき、足をつかんだ忍は、ゴンドラの中に上がり込むと、なおも執拗に攻撃して来る猪俣の身体を巴なげの形で、外へ放り投げてしまう。

猪俣の身体は、遥か下の地面に吸い込まれて行く。

復讐を終えた忍は、東京の街を、又赤いスポーツカーでひた走っていた。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

エログロナンセンスを織りまぜた、いかにも70年代らしい荒唐無稽東映アクション。

冤罪を受け死んだ父親の復讐をするヒロインに扮しているのが志穂美悦子と言うのはまだしも、彼女はプロのカーレーサーであり、しかも格闘技も自在にこなす秘密組織の一員であると言うハチャメチャな設定が、バカバカしくも楽しい。

しかも、数々の変装をして敵の陣地に乗り込んでいき、最後には浪々と決まり文句を言いながら正体を明かす…と言うのは、明らかに「多羅尾伴内」のアイデアをそのまま頂いたもの。

敵のボディガードたちの得意技も、昔の日活無国籍アクション風と言うか、子供向けコミックを観ているようなアイデアで、とても大人向け作品とは思えない作りだが、そのチープさも又、多羅尾伴内の頃から続く東映アクションらしい。

特に、老婆に化け、鼻をすすり上げたり、自らの尻をかいたりする志穂美悦子のサービス振りは見物。

後半、いきなり造成地のような所が登場するので、変身ヒーローものみたいに爆発があるのでは?と想像していると、その想像通りに展開するのも愉快。

何と言っても、この作品で一番印象に残るのは、天津敏が熊の着ぐるみを着て裸の女を抱くシーン。

おそらく、天津敏演ずる猪俣という人物は、特殊な性癖を持つ変態と言う事を描きたかったのだろうが、あれでは、毛皮に抱かれているような女性の方は、普通に暖かくて気持ち良いかも知れないが、着ぐるみの中に入っている男の方は、何の生の感触も伝わらず、暑苦しいだけで、自ら拷問を受けているようなものではないかと思うのだが…?

当初、清純そうな妹凪子役で登場する女優も、結局、陵辱されるエロティックシーンのためだけに登場しているような印象。

大袈裟な九州弁をしゃべるキャラとしてゲスト出演しているマッハ文朱も、今となっては、ちょっと痛々しい。

そのマッハと忍が、共同して闘うシーン。チンピラが叩き付けられる壁に、さりげなく、当時、ライバルだった東宝の山口百恵主演「潮騒」のポスターが貼られており、それがアップになるのも監督らしいシャレなのだろう。

あくまでも、頭を空っぽにして、気楽に楽しむタイプのB級活劇だと思う。