TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

へそくり社員とワンマン社長
ワンマン社長純情す

1956年、東宝、北町一郎原作、長谷川公之+新井一脚本、小田基義監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

朝の出勤時、渡辺交易株式会社の同じ経理課に勤め、恋人同士の小野田(舟橋元)と木村雅子(中田康子)は仲良く一緒に通勤していたが、さすがに会社の近くになると人目をはばかり、離れて歩く事にする。

別れ際、雅子から今日のタバコ代をもらい、近くに来ていた同僚の若月(小泉博)と合流すると、結婚しても今の一人分の給料じゃとても暮して行けないとぼやいていた小野田は、車でやって来た織田秀康(平田昭彦)が今別れたばかりの雅子を乗せて走り去ったので、呆然と見送る事になる。

先に会社に到着した秀康は、雅子を降ろした後、入口付近で渡辺社長婦人の峯子(清川玉枝)とばったり出会ったので、鷹揚に挨拶をする。

秀康は、この会社の大取引先である織田産業のバカ息子なのだが、父親命令で、今、この三流会社渡辺交易で働かされている身分だった。

社長室に入って行った峯子は、下着姿でバーベルを持ち上げている亭主、渡辺(柳家金語楼)の姿を目撃し呆れるが、今日はこれから二人で結婚式に出席する予定なので、急いでモーニングに着替えさせる。

渡辺が着替えている最中、峯子は、うちの社員で結婚する人はいないかと言い出す。

仲人と言うものを一度やってみたいと言うのだ。

その場にいた経理課長の吉村(三木のり平)も、仲人をやると若返るのだそうだと蘊蓄を傾ける。

しかし、渡辺社長は、会社内恋愛は御法度と言う硬い考えの持主で、これまでも断固として認めて来なかった。

そこへ若月が入って来ると、一目見た峯子は、この人なんかちょうど良いのじゃないかと気に入る。

渡辺社長は、妻に言われるがまま従来の主張を変更し、社内結婚したカップルには仲人料を出すと言い出す。

その頃、社内では、郵便物係の女子社員(小桜京子)が、営業課長の浮島(森川信)に水沢清子と言う差出人が書かれた手紙を渡していた。

手紙には香水が書けられており、戸惑いながらも、浮島は嬉しそうに受取る。

同じように、花園愛子なる差出人が書かれた手紙が吉村に、さらに、ちょうど出張中の小野田にまで、女名義の香水がかかった手紙が届けられたので、隣の席でヤキモチを焼いた雅子は、その手紙を自分が取り上げてしまう。

その頃、浮島は、トイレでこっそり手紙を開封し、中を読みはじめるが、同じようにやって来た吉村とかち合い、そそくさと出て行ってしまう。

吉村も、こっそり手紙を読みはじめるが、その中には、「プアール」にいた愛子よ…と親しげな口調で、甘い内容が書かれてあった。その内容が、そっくり、浮島の手紙の中味と同じである事など、知るはずもなく、名前に覚えはないものの、すっかり吉村は浮かれてしまうのだった。

そんな社内に、何も知らずに帰って来たのが小野田。

小野田は、飲む避妊薬なる新商品を持って帰って来たのだが、すぐに、雅子に屋上へ呼出される。

何事かと付いて行った小野田だったが、雅子から、これは何だと手紙を渡され、この場で読んでみろと迫られる。

全く訳が分からなかった小野田だったが、中味を読み出すと、私は今、銀座会館に勤めています…などと色っぽい書き方だったので、彼女の手前、読むのをためらってしまい、かえって疑惑を深める事になってしまう。

怒った雅子は、そのまま洗面所に駆け込み泣き出すが、それを目撃した池田三千代(北川町子)は、昼食時、その事を恋人の若月に教えるが、若月の方は、どうやら自分達は結婚できるかも知れないと、先程、社長から提案された仲人料の事を打ち明ける。

一方、会社にいた雅子は、喫茶富士にいる秀康から電話が入りデートに誘われているのを、隣の席で見ていた小野田に、三千代は「頑張れ!」と書いた紙を投げて励ますのだった。

その後、雅子は、洗面所で出会った三千代に、小野田とは倦怠期かも知れない。面白いボンボンをからかうのも面白いと強がってみせるのだった。

その日、就業後、秀康は雅子を連れて帰り、三千代も一人で帰ってしまったので、取り残された小野田と若月は、今夜は飲もうと誘い合うのだった。

キャバレー銀座会館にやって来て飲みはじめた秀康と雅子を他所に、小野田と若月は、ツケがきく店を飲み回ったあげく、最後は寿司屋にやって来たが、そこはあいにく満席で、主人(中村是好)が恐縮する中、手伝いの清子(八島恵子)は、帳場で良ければと二人を奥に招き入れる。

その場に腰を落ち着けた若月だったが、香水の匂いに気付き、側の机を見ると、見慣れた手紙の束が大量にあるではないか!

清子に訳を聞くと、兄のキャバレーの宣伝にと自分が考案して書いているのだと言う。

それを聞いた小野田は頭を抱え込んでしまう。

その頃、渡辺交易の社長室では、「飲む避妊薬」を採用するかどうかで遅くまで会議を続けていた部課長会議がようやく終わっていた。

一緒に外に出た浮島と吉村は、今日の予定を互いに聞きあうが、両名とも予定があるのだと言い、その場で別れる。

ところが、二人とも、例の香水つき手紙を持って、キャバレー「銀座会館」に向っていたので、その入口で、又ばったり再会してしまう。

寿司屋の帳場では、あんな手紙の為に、雅子が毒牙に落ち掛かっていると小野田が泣きそうになっていたが、それを聞いていた清子は、取り返せば良いんだ!と喝を入れる。

それを聞いた若月も賛成し、二人に力付けられた小野田は、雅子を奪還しに行く事にするが、どこにいるのか分からない事に気付く。

銀座会館では、秀康が、今夜は楽しく夜明かしだ、君も計算違いだったろう?と、 雅子の胸の内を見透かしたような言葉を吐いていた。

そんな二人がいる事も知らず、何時の間にか、浮島と吉村も、別々のテーブルに付いて、手紙の差出人を探していたが、そんな名前の女性はいないと言われてしまう。

その吉村、ボーイがあちら様からですとメモを持って来たので何事かと中を読むと、「助けて!誘拐されそう」と書かれており、差出人を探すと、ちょうど、店を出ようとしていた秀康と雅子ではないか。

吉村は、良く事情が分からないながら、取りあえず、すぐ勘定をすませて店を後にする。

一方、二人は車で旅館に乗り付けた秀康は、売春禁止法に御協力下さいと書かれたポスターや、ベッドのある部屋に連れ込まれ戸惑う雅子の様子を面白そうに眺めたあげく、いきなり襲いかかるのだった。

すると、その時、部屋の畳の中央が持ち上がり、床下から出て来たのは、吉村課長ではないか!

吉村は、部屋の中からドアの鍵を開け、呆然とする秀康の前から、雅子を逃すと、自分もとぼけながら出て行ってしまう。

翌朝、会社で落ち込んでいる小野田から、事情を聞いた若月は、遅れて出社して来た秀康を屋上に呼出し、雅子は小野田の恋人なのに、何故手を出したと詰め寄る。

しかし、秀康はしれっと、恋愛は自由でしょうなどと答えて来たので、ついカッとなった若月は、秀康を殴りつけ、二人は取っ組み合いの喧嘩を始める。

それをこっそり見ていた雅子は、洗面所に駆け込み独り泣くのだが、それを見た三千代が訳を聞いて来る。

雅子から話を聞いた三千代は、すぐに喫茶富士に行くよう小野田に伝える。

その直後、顔に傷を付けた秀康が血相を変えて社長室に飛び込んで行くと、渡辺社長に向って、自分に暴力を奮った若月を、すぐに解雇してくれと訴えるのだった。

驚いた吉村と浮島も、社長室にやって来るが、興奮した秀康は、あいつを辞めさせないんだったら、僕が辞める。その代わり、もう親父の会社は、付き合いしないよと言い残して部屋を出るのだった。

その後、社長室にやって来た若月が提出した進退伺いを受取った渡辺社長だったが、可愛い社員を首には出来ないと、吉村らに困惑顔を見せるのだった。

その頃、喫茶富士では、自分の軽はずみな行動を反省した雅子が泣いていたが、それを小野田が優しく慰めていた。

翌日、渡辺社長と吉村は、織田社長に詫びを言いに行く為、滞在先の伊東に電車で向っていた。

しかし、その事情を聞かされておらず、社長室に出向いて来た妻の峯子は、社長にも来ていた例の手紙を発見し、女に会いに行ったと勘違いしてしまう。

その場にいた浮島は誤解だと必死に説明しようとしていたが、もう興奮しきった峯子は、すぐさま、亭主の後を追って伊東に向うのだった。

以東の旅館で、渡辺と吉村から頭を下げられた織田社長(藤原釜足)は、自分は一銭でも安く仕入れてくれる君の会社と縁を切る事などないと、きっぱり言い切るのだった。

安心した渡辺社長は、用意しておいた演芸の準備を始める。

そこにやって来たのが、峯子で、彼女は、障子に写った見慣れた亭主の影が芸者の着物を触っているのを見て、ますます逆上してしまう。

いきなり、障子を開け放つと、芸者はどこに行ったと亭主に息巻くが、驚いた渡辺社長は、今の芸者姿は、吉村だと言い、本人を呼び寄せるのだった。

芸者姿に変装した吉村は、ようやく、誤解だった事を悟った峯子や、織田社長の前で、得意の宴会芸を披露するのだった。

その後、久々に夫婦水入らずで温泉に浸かった渡辺社長は、今度は小野田を仲人してやろうと言い出す。

後日、小野田と木村雅子の結婚式場。

受付に座っているのは、若月と三千代だった。

そんな若月に電報が届き、転職の世話を頼んでいた先輩から、採用されたと知らせて来た内容だったが、三千代には、転職は辞めた。分かってくれるだろう?と告げるのだった。

そこに、式が終わった小野田と雅子を交えた渡辺社長たちが出て来る。

用意した車に乗り込んだ小野田は、嬉しそうに見送る社長に、あの薬は役に立たなかったと呟く。

はじめは、何の話か見当が付かない社長だったが、すぐに「飲む避妊薬」の事だと気付き、すでに雅子が妊娠している事を知る。

そんな二人を乗せた車は、式場を後にして走り去って行くのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「へそくり社員とワンマン社長 へそくり社員敢闘す」(1956)の続編に当る、上映時間46分の中編作品。

社内恋愛が禁止されている会社内で付き合っている二組のカップルが、ひょんな事から雨降って地固まるごとく、最後には目出たく結ばれると言う他愛もないストーリーだが、悪役を演じている平田昭彦と、思わぬヒーローになってしまう三木のり平の役柄が珍しい。

今回のメインは、どちらかと言うと、三木のリ平ではなく、小泉博と、小太りの舟橋元の二人ではないか。

特に、意気地がないダメ男を演じている舟橋元が印象に残る。

対して、社長役の柳家金語楼はあまり目立つ感じではない。

その分、彼の女房役の峯子の出番が増えている印象。

相変わらず、三木のり平の宴会芸が珍妙で面白く、今回は、日本舞踊の踊りからいきなりラインダンスに変化して行く様を演じている。

その様子を見ている織田社長役の藤原釜足は、終始、後ろ姿しか写ってないのだが、その肩の揺れ方は、本当に笑っているように見える。

このシリーズで女性社員を演じている中田康子と北川町子は、共に、妙に色っぽい女優である。

ちなみに、文中では北川町子の役名をキネ旬データを元に池田三千代と書いているが、前編も含め、本編では一切彼女の名前は登場しない。