1973年、東映京都、凡天太郎原作、掛札昌裕脚本、鈴木則文脚本+監督作品。
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赤い鳥居のトンネルを、父親葛西徳造(殿山泰司)と一緒に通り抜けていた幼女は、持っていたマリが転がったので、それを拾いに父親から離れた所で、隠れていた暴漢が葛西を襲う。
葛西は、俺を本庁の刑事と知っての犯行か?と叫ぶが、ドスに突き刺されその場に崩れ落ちる。
マリを持って倒れた父親の元に戻って来た幼女は、周囲に散らばった花札の中から、猪鹿蝶の三枚を選びだし握りしめたまま息絶えた父の手元を目に焼きつける事になる。
タイトル
それから二十年の時が過ぎ、日清、日露の戦いに勝利した日本は、近代国家としての道を突き進んでいた。
明治38年、金沢セントラルホテル。
近く政権を握るのではないかと噂される誠心会総長黒川義一(河津清三郎)とその妻八重路(三原葉子)を迎えていた市長(中村錦司)は、ひたすら二人にすりよっておべんちゃらを言っていた。
そこに現れた万潮報記者と名乗る一人の青年が、いきなり黒川の腕を斬り付け逃走を計る。
警備の警官たちはmただりにこの暴漢を捕えんと追尾するが、途中で見失ってしまう。
逃げる途中だった青年を家の影に匿ったのは、うら若い一人の娘猪の鹿お蝶(池玲子)だった。
そこに駆け付けて来たのは、青年を柊家の若と呼ぶ執事の羊川(大泉滉)だった。
その執事と青年に匿った礼を言われ別れたお蝶だったが、その手には、今の青年の海中からすりとった懐中時計が握られていた。
お蝶の正体は、女博徒であると同時に掏摸でもあったのだ。
その懐中時計の蓋を開けてみると、中には、外国人女性の写真が収められていた。
その後、稲村組の賭場で様子を観ていたお蝶は、客の一人が、いんちきだと因縁をつけ、逆に組の者たちから、めった突きにされて倒れる現場を目撃する。
刺された男を介抱しようと抱き上げたお蝶に、血まみれの男は稲村に騙されたと悔しそうに言いながら、懐から預金通帳を取り出すと、500円で女郎として東京に売られ、今は浅草十二階下に住んでいると言う、細谷ゆきと言う娘にこれを渡してくれと、お蝶に手渡した後、息絶えてしまう。
そうした様子を稲村(遠藤辰雄)が襖の陰からそっと覗いていた。
その後、お蝶が、稲村組の風呂に入っていると、二人の刺客が覗いて来たので、お蝶は花札を投げ付けて相手を怯ませた隙に、すばやく風呂桶から飛び出す。
そのお蝶に襲いかかって来た稲村組の若い衆相手に、お蝶は素っ裸のままドスを抜いて向いうつ。
庭先では雪が舞っていたが、裸のお蝶は、座敷から外へ飛び出し、白い雪はたちまち、お蝶に斬られた子分たちの鮮血で赤く染まっていく。
稲村組を後にしたお蝶は、列車で東京に戻る。
浅草に着いたお蝶は、元民友会のお尋ね者として、金沢で助けた柊修之助(成瀬正孝)の似顔絵が貼られているのを見かけるが、何と、その柊本人が目の前にいるではないか!
お蝶は、あの時すりとってしまった懐中時計を、謝りながら返す事にする。
その直後、お蝶は、女学生姿で大胆にも掏摸を働こうとしている娘を見つけ、思わず捕まえてしまうが、その時、警官が近づいて来たので、修之助は逃げ去ってしまう。
お蝶に近づいて来たのは、掏摸仲間たちだった。
何と、今捕まえた女学生は、新人なのだと言う。
その後、お蝶は、東京で世話になっている仕立て屋お銀(根岸明美)の家に腰を落ち着ける。
お銀は、お蝶の父だった葛西徳造に、生前随分世話になった恩返しのつもりだった。
先程お蝶が見かけた新人の時子と言うのは、目黒の女学院に通っていると言う。
そこへ、一校に通っている間貫一(岡八郎)と言う、おかしな居候が帰って来る。
お蝶に挨拶をした貫一は、奇妙なものをすってしまったと、お蝶とお銀に観た事もないゴム製品を差し出してみせる。
それは、ルーデサック(コンドーム)だと聞いても、何の事か分らない様子。
後で分かった所では、そのコンドームは、仲間である時子からすったものだと分かり、先輩たちはどっちもどっちと呆れてしまうのだった。
お蝶は、その後、ゆきを探してキズ源こと加納源太郎(内田勝正)と言う人物が任されている女郎屋に訪ねて行く。
女衒の平助と言う人物が、その店に連れて来たと言う話を聞いていたからだった。
ところが、傷元では、そんな女は知らないとごまかそうとする。
その直後、店に戻って来た女郎屋の主人、岩倉建設の社長(名和宏)が、キズ源に、東京湾築港は内が受ける事になったと報告すると、キズ源の方は、今、ゆきの事を聞きに来た来た女がいると教える。
そこへお蝶が入って来て、兄から頼まれた見受け金500円あるので、おゆきを渡してくれと申込むと、その指先に「博打タコ」があるのを見て取った岩倉は、博打で決めようと言い出す。
お蝶が勝てば、ゆきを返すが、負けたら、自分が二人とも抱かせてもらうと言うのである。
博打の相手は、ギネスと言う新橋に住む外国人の家にいる西洋の女博打人だと言う。
その勝負を受けたお蝶が、ギネス(マーク・ダーリン)の館に行くと、そこでは舞踏会が開かれており、黒川義一も出席していた。
お蝶は、クリスチーナ(クリスチナ・リンドバーグ)と言うイギリス人と、別室でトランプ勝負をする事になる。
ところが、その勝負の途中で、黒川を出せ!と叫びながら、民友会の一派が屋敷内になされ込んで来る。
クリスチーナも、太腿に隠し持っていた銃で応戦するが、何故か、柊修之助だけは撃てなかった。
その後、民友会は引き上げ、トランプ勝負が再開されるが、クリスチーナがキングのフォアカードだったのに対し、お蝶が出したカードはエースのフォアカードだった。
その結果を観ていた岩倉は、明日12時にゆきを返すと、お蝶に約束するのだった。
帰るお蝶は、何時の間にか、クリスチーナの拳銃をすりとっていた。
その夜、岩倉は、ゆきを呼び寄せ、媚薬を塗ると、強引に抱いていた。
岩倉の背中には、鹿の刺青が掘ってあった。
翌日、おゆきを受け取りに店にやって来たお蝶は、ゆきの憔悴した様子を観て、すぐに岩倉に犯されたと直感する。
お蝶は、鹿の刺青を観たと言うおゆきの話から、自分が親の仇として長年探して来た猪鹿蝶の花札が指し示す一人が岩倉だった事を悟るのだった。
一方、自室で、修之助の写真を観ていたのはクリスチーナだった。
しかし、そこにいきなりギネスが入って来てペンダントの写真に気付くと、我々の任務は、この国を戦争の舞台にする事だとクリスチーナを叱る。
二人は、イギリスの諜報部員だったのだ。
ギネスは、スパイは人間ではなく機械だ、お前をスパイに仕立ててあげてやると言いながら、クリスチーナの洋服を脱がすと、ベッドに押し倒すのだった。
その頃、岩倉は、黒川邸に来ていた。
ピアノを弾いていた妻、八重路が言うには、夫は今、入浴中だと言う。
そんな八重路に、岩倉は迫っていく。
黒川と岩倉は20年前からの付き合いだった。
そして、八重路は、警察の女房になったのが間違いだったのだと囁きながら、岩倉は八重路の身体を抱こうとする。
修之助の父親を疑獄事件ではめたのは、黒川と岩倉だったのだ。
その頃、修之助たち民友会が集合していた家を、警察の密偵が監視していた。
その黒川邸には、警視総監も訪れて、随時、民友会の動きを報告を受けていた。
やがて、民友会の集合場所に警察が踏み込み、修之助がからくも逃亡する。
小屋に逃げ込んだ修之助は、自分の父親が売られた証拠書類を見ながら、悔し涙を流していた。
その調査をしている最中、暗殺されたのが、お蝶の父親葛西徳造だったのだ。
その頃、仕立て屋お銀の家にキズ源率いる加納一家がやって来て、修之助を匿っているのではないかと女スリたちを拉致してしまう。
捕まった女スリたちは、見世物小屋の中で縛られ鞭打たれていた。
そこに、銃を持ったお蝶がやって来て、自分が身替わりになるので、他の女たちは助けてくれと言う。
そこに岩倉が姿を現す。
岩倉に抱かれる事になったお蝶は、女のたしなみとして、身体に香水を塗らせてくれと頼むと、用意しておいたドイツ製の毒薬を身体に塗る。
そんな事は知らない岩倉は、お蝶の身体を嘗めまくり、毒を飲んでしまう。
もがき苦しむ岩倉を観ながら、お蝶は、20年前、お前が殺した葛西が待っているよと言いながら、共犯者は黒川ともう一人は誰だと問いつめるが、岩倉は、そのうちに分かる。楽しみにな…と言い残して息絶える。
お蝶は、その死体の上に鹿の花札を置くのだった。
その頃、ギネスは、日本はアメリカと接近しようとしているので、一刻の猶予も出来ない。お前は、その身体を使って、黒川邸に入り込み、重要書類を手にいれろとクリスチーナに命じていた。
ギネスは、その後、黒川と会うと、互いに書類を交換して、アヘンとクリスチーナを渡していた。
黒川はその夜、しのぶ(碧川ジュン)と言う世話女を紹介すると、自室でクリスチーナと互いにレズ行為をするように命ずる。
その部屋の様子を覗いていた修之助は、黒川の背中に猪の刺青があるのを発見する。
その時、八重路がやって来て、岩倉が殺されたと黒川に伝える。
二人が去った後、クリスチーナの前に現れたのは修之助だった。
イギリスに留学していた修之助と、当時、踊子だったクリスチーナは恋に落ちた関係だったのだ。
修之助が日本に帰った後、妊娠した事に気付いたクリスチーナは、もう踊子の仕事には戻れず、今回、彼を探すために来日した…と打ち明けたクリスチーナは、いつも身につけていた修之助の写真を見せると、明日12時、黒川は大阪行きの列車に乗る予定になっていると教える。
隠れていた小屋に戻った修之助は、お蝶に、黒川の背中の刺青の事を教える。
お蝶は、自分の本名は、葛西きょう子、つまり、葛西徳造の娘である事を打ち明ける。
二人の仇は、奇しくも同じ人物だった事が分かる。
翌日、大阪行きの列車に乗り込んだ修之助と男に化けたお蝶。
修之助は、クリスチーナの言う通り、乗っていた黒川を襲撃しようとするが、警護していた密偵たちから逆に捕まりかかり、列車の外に落ちてしまう。
お蝶も銃を取り出すが、二発撃った所で弾がなくなり、そこへナイフを持った修道女が襲いかかって来る。
クリスチーナの言葉は罠だったのだ。
まんまと捕まってしまったお蝶は、黒川邸の地下室に縛られ、黒川が見守る中、鞭打たれる事になる。
その後、一人になったお蝶の元にやって来たのは、八重路で、お蝶が縛られている綱を切りながら、自分がお蝶の母親である事を告白する。
しかし、再び現れた黒川が、八重路に着物を脱げと命じる。
そして、黒川がその素肌に水をかけると、八重路の背中に、蝶の刺青が浮き出て来る。
八重路はお蝶に、許してくれ、あの男に騙されたのだと謝る。
黒川は、そんな八重路の首を絞め殺してしまう。
その頃、クリスチーナは線路を歩いていた。
そこに修之助も来る。彼は生き延びていたのだ。
お銀の所にいたら、手紙を受取ったと言う。
その時、物陰に隠れていたギネスが、秘密を知ったものは死んでもらうと言いながら発砲して来る。
刀を振り上げ立ち向かって行った修之助だったが、ギネスの弾丸に倒れてしまう。
クリスチーナも撃たれるが、最後の力を振り絞って、修之助の刀を取ると、それでギネスを斬り殺す。
倒れたクリスチーナと、虫の息の修之助は、互いに愛の言葉を吐きながらにじり寄り、手を握った所で息絶えるのだった。
一方、お蝶は、花札に仕込んでいたかみそりで、縛られた綱を切っていた。
間もなく、警察が黒川邸に踏み込んで来る。
そこに突然、天井から花札が振って来て、飛んで来たナイフが猪の札に突き刺さる。
片肌を脱いだお蝶が現れ、襲って来たキズ源らヤクザを斬りはじめる。
お蝶も又、手傷を追うが、地下室のキリストの絵の前に逃げた黒川を追い詰める。
黒川は銃を突き付けて来るが、お蝶の投げた刀が心臓に突き刺さる。
倒れた黒川に、その後、何度も刀を突き刺したお蝶は、背中の猪の刺青の目の部分に、拳銃を発射して、とどめを刺すのだった。
屋敷の外に出たお蝶は、積もっていた雪を一握りつかむと、自らの血で染まった刺青を拭う。
舞い落ちていた雪も、お蝶が踏み締めて行く積もった雪も、いつしか花札に変化していた。
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池玲子主演のエロティックアクションもの。
雪の庭先での全裸の剣劇など、ちょっと「キル・ビル」を連想させるような様式美も随所に登場する。
当時流行っていた、強いヒロインによる復讐ものの一種で、梶芽衣子主演の明治もの「修羅雪姫」(1973)などにも、どこか似た所がある。
吉本新喜劇の人気者岡八郎などのゲスト出演が、今観ると懐かしい。
スウェーデン女優クリスチナ・リンドバーグの日本進出第一作目でもあるようだ。
全裸での剣劇シーンは、さすがに今観てもインパクトあるものの、他のエロティックシーンは、どうと言う事もないシーンになっているだけに、ストーリーの面白さにポイントが置かれるが、エロティックものにしてはそれなりの工夫も感じられ、出来はまずまず…と言った所ではないだろうか。
