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ファンキーハットの快男児
二千万円の腕

1961年、ニュー東映、渡辺虎男+池田雄一脚本、深作欣二監督作品。

この作品はミステリであり、後半、謎解きがありますが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、御注意下さい。コメントはページ下です。

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甲子園では、今正に、全国高校野球選手権が行われており、中でも東海代表若葉高校の川原投手は話題を集め、プロ野球のチームからも南鉄ピンクソックスの山田、西日本サスペンスの野口、大東京タワーズなどスカウトが観に来ていた。

そのテレビ中継を夢中になって観ていたのが、天下探偵事務所の所長天下清助(花澤徳衛)の独り息子一郎(千葉真一)と、その友人近藤(岡本四郎)だった。

近藤は、今話題の川原投手は、自分の後輩で、実家も二軒隣の奴だと自慢しながらボールを部屋の外に放るが、たまたま出先から帰って来たのが清助に当ってしまう。

だらだらしている二人を叱りつける清助だったが、川原投手の契約金は、三振を取る度に100万円上がり、今や2000万になったと一郎が説明すると、すっかり感心してしまい、その一郎からせびられた2000円の小遣いをうっかり渡してしまう。

予想通り若葉高校は優勝し、各球団は川原獲得へ動きだしたと、新聞が一斉に報道する。

帝都ホテルに黒谷(神田隆)と言う人物とやって来た川原は、これからは君の身は自分達が預かると伝えられる。

その頃、ジャズ喫茶「エンジン」に一郎と来ていた近藤は、周囲の女の子たちに、自分は川原の先輩で、これから会うんだと自慢していた。

そこに可愛い女の子が来て手を振ったので、てっきり自分に愛想を振りまいてくれたのかと手を振り返した一郎だったが、相手の女子が向ったのは、父親らしき中年男(十朱久雄)の席だった。

女性の名はスポーツ記者の武智美矢子(中原ひとみ)、呼出した相手は実の父親で、これまでも何度か勧めて来た見合い話を又持って来たのだった。

今度の相手は西沢と言う整形外科のインターンで、品行方正な好青年だと、身辺調査を依頼した天下探偵事務所の報告を見せながら伝えた父親は、今回の見合いの場所はコンサート会場で、相手はお前の席の隣の「への13番」に来るはずだと、気の進まない娘に半ば強制的にチケットを渡す。

一方、何時まで経っても、来るはずの川原投手が来ないので、滞在先の帝都ホテルに電話を入れてみた近藤は、すでに川原は夕べのうちに引き上げたと聞かされ首をかしげるのだった。

「百万人の世界民謡展」が行われているゴールデンホールにやって来た美矢子をこっそり尾行して来たのは一郎だった。

勝手に会場内に入り込み、美矢子を探していた一郎を不審に思い近づいて来たのは案内嬢。

しかし、一郎は、とっさに美矢子の隣の空席「への13番」が自分の席と言いながら、ついでに食堂に二人分の食事の用意をしておいてくれと頼むのだった。

その頃、とある川べりにパトカーが接近していた。

水死体が上がったのだ。

死体を調べていた刑事たちは、死亡推定時刻は昨夜の0時から1時頃、死人に外傷はなく、泥酔していたらしく、服にまでウイスキーが染み込んでいたとの報告を検死官から受けていた。

身分を示すようなものは何も持っていなかったが、唯一、胸ポケットの中にゴールデンホールのチケットが入っていた。そのチケットには「への13番」と印してあった。

その「への13番」席に勝手に座り、退屈なコンサートにあくびを連発して美矢子に呆れられていた一郎は、半ば強引に彼女を食堂に誘うのだった。

すでに用意してあったステーキにかぶりつく下品を、てっきり、見合い相手のインターンだと思い込み呆れていた美矢子だったが、そこにやって来た刑事に二人とも連行される事になる。直前まで「への13番」の席に座っていたからだった。

警察で、事情を打ち明け、美矢子とも、殺された玉腰整形外科のインターン西沢健一とも一面識もない、ただのナンパ男と分かった一郎は、刑事からこってり説教されるが、娘を連れにやって来た美矢子の父親は、こんな事件に巻き込まれるような男を品行方正等と報告して来た天下探偵事務所は嘘をついたと、その場から電話で抗議をしだす。

一方、その抗議電話を受けた清助は、報告書が正しかった事を証明するため、西沢の身元調査の再確認を始めるよう所員たちにハッパをかける。

その頃、一郎がいた警察署の交通課に、カミカゼ与三郎(潮健児)と言うタクシー運転手が、そうも夕べ、人を轢いてしまったようだと届けに来ていたが、該当報告がないので勘違いだろうと追い出されていた。

偶然、警察署から帰る所だった与三郎のタクシーに乗ってしまったのが、釈放された一郎で、カミカゼ運転をする与三郎から、自分が轢いたのは若い男だったし、連れも二三人いて、酔っぱらっていたようだと、夕べの事故を警察に相手にしてもらえなかった不満話を聞かされる。

天下探偵事務所に戻って来た一郎は、まだ、父親から「我々は、嘘は申しません」などと会社のモットーを言わされている所員たちの姿を目撃する。

その時、電話がかかって来たので、一郎が出てみると相手は南鉄ピンクソックスで、金はいくらでも出すから、川原投手の行方を探してくれと言う仕事の依頼だった。

父親も所員たちも誰もその電話に出ようとしないので、一郎の独断で自分が受ける事にする。

まず、川原が宿泊していたはずの帝都ホテルに近藤と向った一郎は、川原の後援会長だと言う岩崎(須藤健)が、ロビーで、川原の父親元吉(打越正八)を伴って記者会見している現場に出くわす。

岩崎は、自分達が川原投手から契約を一切取り仕切るよう任されており、今日もこれから、南鉄の後は西日本サスペンスのスカウト野口などと会う予定になっていると発表していた。

その会見を近藤が聞いている間、一郎は一人で、川原投手が泊まっていたはずの部屋を調べに上がっていた。

記者会見が終わりそうになったので、時間稼ぎの必要に迫られた近藤は、旧知の元吉に声をかけ、川原投手は今どこにいるのかと聞くが、横から岩崎が割り込み、ある所に静養していると答えるだけだった。

その直後、さらに質問をしようとする近藤を、岩崎の仲間と思しき連中が外に連れ出そうとする。

部屋を調べ終わり、ロビーに降りて来てその様子を観た一郎は、すぐ後を追い掛け、近藤を奪い返すため、男らと喧嘩を始める。

ホテルから、その乱闘騒ぎを目撃していた人物が二人いた。

一郎の活躍を愉快そうに見物していたのは、記者会見の現場にいた武智美矢子、逆に苦々しそうに観ていたのは、西日本サスペンスのスカウト野口(波島進)だった。

探偵事務所に逃げ帰って来た一郎と近藤は、父親清助から、インターン他殺事件の被害者西沢が働いていた整形外科病院の玉腰院長が失踪した事を教えられる。

それを聞いた一郎は、消えた人物の話をもう一つ思い出す。

カミカゼ与三郎が話していた事故の事だった。

近藤と二人で何とか与三郎のタクシーを見つけた一郎は、人を轢いたと言う場所へ連れて行ってもらう。

東銀座のその場所は、何と、失踪した玉腰院長が経営する整形外科の病院のすぐ近くだった。

その頃、岩崎と共にナイターを観戦していた川原元吉の様子を監視していた美矢子は、元吉が全く野球に興味がない様子を観て取る。

一体、岩崎は何の為に元吉を連れて来たのか?…、それはマスコミの目をごまかすためとしか考えられなかった。

同じ結論に達していた一郎と近藤は、川原の地元、浜野海岸に向っていた。

彼らが途中立ち寄ったガソリンスタンドで、偶然にも先に給油を終えていた美矢子は、こんな所に来ている一郎たちの事を見つけると、他社の新聞記者ではないかと疑う。

一郎の方も美矢子に対し、川原の事は諦めた方が良いと牽制するのだった。

その後、近藤に教えられた川原の実家だと言うタバコ屋へ向った一郎は、先に到着し、川原の姉が留守番をしているだけと教え、さっさと帰る美矢子とすれ違う。

それでも一応、川原の姉(加藤鞆子)に会い、川原は進学したがっていたのではないかと近藤が聞くと、黒谷から金を借りたが、急に一カ月前から催促を迫られるようになり、彼が、若葉高校を牛耳っている地元の有力者と言う事もあり、弟は進学を諦めたのだと教えられる。

その後、近くの海岸に出向いた一郎は、馬を貸している場所があるので珍しがると、軍艦島と言う引き潮の一時だけ陸続きになる島が近くにあるので、そこまでの散歩用に貸しているのだと聞かされる。

一方、黒谷の自宅の取材に訪れ、川原の居場所を聞き出そうとして果たせなかった美矢子が帰りかけた時、野球タイムスの記者として通されて来たのが一郎。

もちろん、黒谷に会うための方便だったのだが、美矢子はやっぱり同業者だったのかと確信してしまう。

川原の事は、一切岩崎に任せていると答える黒谷に、本当は、川原の父親の方を任せているのであって、本人はこの屋敷の中にいるのではないかと一郎は追求するが、黒谷は、だったら探してみろと動ずる気配を見せない。

その頃、一緒に屋敷に侵入していた近藤の方は、川原がどこかに軟禁されているのではないかと、裏手を探し回っていたが、黒谷の子分たちに見つかり、ライフルを突き付けられた上、縛られてしまう。

一旦、門から帰る振りをして、屋敷の様子を観察していた一郎は、車で出かける黒谷の様子を目撃した直後、ライフルの音を聞いて裏手に忍び込むと、近藤が捕まっているではないか。

後ろからこっそり近づき、ライフルを持った男から銃を奪った一郎は、近藤を縛った綱を解かせると、スタコラ逃げようとするが、転んだはずみにライフルを発射してしまい、撃たれたと思った子分たちも一斉に地面に臥せるのだった。

そんな中、ある場所に監禁されていたのが川原投手と整形外科医の玉腰(斉藤紫香)に会いに来たのが黒谷だった。

二三日内に迎えに来ると玉腰に言い付け帰った黒谷は、屋敷に徒歩で戻って来る。

その様子を、生け垣の影で目撃した一郎と近藤は、何故、車で出かけたのに、帰りは徒歩なのかと考える。

子分の一人がカンテラを下げていた事から、帰りは船で戻って来たに違いないと推理した一郎は、川原は満ち潮になったら道が閉ざされる軍艦島にいるのだと気付く。

その推理を裏付けるように、引き潮になった時刻に車が戻って来る。

翌日、浜野駅を張っていた美也子は、西日本サスペンスのスカウト野口の姿を確認する。

黒谷が、再び車で屋敷を出たのを追跡して来た一郎は、浜野観光ホテルに到着する。

そこに、少し遅れて、野口の乗った車と、それを尾行して来た美矢子の車も到着する。

ホテルの一室に潜入した一郎と近藤は、花瓶の中に録音テープを仕掛けると、ボーイの一人から制服を借りると、黒谷と野口が会っている部屋に置きに行く。

ところが、そのすぐ後、こちらも同じようにテープを仕掛けた花瓶を持った美矢子が、又、制服に着替えて交換に来る。

黒谷たちが帰った後、部屋に花瓶を取りに言った近藤が、自分達が仕掛けたのとは違う花瓶を持ち帰って来たので不思議がる一郎だったが、中にはやはりテープが入っており、再生してみると、黒谷と野口が川原の契約を、明日10時、ここで…と合意した会話が聞こえて来た。

会話では、契約金2000万の内、1000万は川原に、残りの1000万は黒谷が受取るように言っている。

そして、川原は当地にいるとも。

一方、警察に電話をし、今、ホテルの26号室で男から襲われそうになっていると連絡した後、一郎らの部屋に入って来たのが美矢子。

彼女が、自分が仕掛けたテープを取り戻した所で、パトカーの音が近づいて来る。

唖然とする一郎たちに、スクープ合戦は私の勝ちよと言いながら、部屋に入って来た警官たちに一郎たちを逮捕させるのだった。

一郎らが警察に連行された後、美矢子は本社に、川原は西日本サスペンスに入団が決まったと報告を入れていた。

痴漢容疑で地元署に連行された一郎は、担当刑事(加藤嘉)に、東京の父親に電報を打ってくれと頼む。

その電報を受取った清助は、一郎のハレンチ行為に激怒すると、勘当だと叫びながら、身元引き受けの為現地に向う事にする。

一方、東京からの終電車がこちらに着くのは何時頃かと聞く一郎に、のんきに将棋を差しながら、刑事は明朝9時頃だと答える。

一郎は、その相手をさせられながら、医者が独り殺されるかも知れないと呟いていた賀、刑事は全く相手にしてもくれない。

その頃、黒谷は船で軍艦島に向っていたが、その船のシートの下には、美矢子がこっそり潜んでいた。

軍艦島に到着し、黒谷らの後を付けていた美矢子だったが、川原らが閉じ込められている部屋であっさり捕まってしまう。

その部屋では、玉腰が川原の顔の包帯を外していた。

東京の東銀座で、カミカゼタクシーの与三郎が轢いたのは川原投手だったのだ。

顔と右手を負傷したが、たまたま近くにあった玉腰整形外科にかつぎこまれ、何とか、球団と無事契約を済ませる間では、怪我をごまかすように手術を頼むが、インターンの西沢が警察に通報すると言い出したため、口封じの為、殺した後、川原と玉腰を当地に連れて来たのだった。

翌朝、黒谷が軍艦島から観光ホテルに調印に出かけていた頃、浜野駅に一郎の父、清助が降り立っていた。

警察署に到着した父親の姿を観た一郎は、喜んで何事かを耳打ちする。

軍艦島では、玉腰が無理矢理ウイスキーを飲ませようとされていた。

西口と同じ手口で始末するつもりなのだ。

美矢子も又、子分たちに襲われそうになっていた。

そんな中、島と陸続きになった道を馬でひた走る一郎と近藤の姿があった。

途中で、近藤は馬を転げ落ちてしまう。

美弥子の貞操が奪われそうになったその時、駆け付けて来た一郎が助け出す。

外に出た一郎は、玉腰と美矢子を近藤に託すと、自分は、黒谷の子分たちの背後に回り込みながら、相手が持っていた拳銃を次々に奪い取りはじめる。

やがて、警察が船で到着し、一味は一網打尽となる。

その頃、川原を同行して観光ホテルの部屋に到着していた黒谷は、西日本サスペンスの石田監督と九十九代表として紹介された二人の男に対面するが、相手が出して来た調印書と思われる書面には、逮捕状と印されてあった。

監督と代表と言うのは、刑事と清助だったのだ。

清助は、川原に、君の腕が完治するまでにはまだ時間がかかりそうだが、今度こそ、自分の意思で決めなさいと言い聞かすのだった。

事件が解決した一郎、近藤、美矢子たちは島から馬で戻って来る所だったが、美矢子の、いかすボーイフレンドが見つかったとの言葉に、一郎は有頂天になるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

上映時間52分で、「ファンキーハットの快男児」の続篇に当る中編作品だが、大半のキャストが前作と同じ中、役柄も同じなのは、天下探偵事務所関連のメンバーだけ。

中原ひとみ、十朱久雄、神田隆、波島進らの役柄は全く変っている。

前作同様、今回も潮健児がコミカルな役で重要な役柄を勤めている。

軍艦島としてロケをしているのは、横須賀の沖合いに実在する「猿島」。良くアクション映画等に使われる有名な場所である。

帝都ホテルのセット等は、前作の使い回しと思われる。

前作同様、千葉真一と共に共演している波島進は、テレビヒーローもの「七色仮面」(1959〜1960)の初代を演じた役者であり、二代目を演じた千葉真一とは新旧ヒーロー共演と言う事になる。

今回の事件も、近藤の後輩が、偶然にも甲子園のヒーローでなどと、御都合主義とも思える設定になっているが、一郎が可愛い女の子の見合い場所に紛れ込み、結果、事件の容疑者として巻き込まれてしまう等と言った導入部は面白い。

この当時からの、プロ野球の青田狩り合戦の様子がうかがえ、今観ても興味深い内容になっている。