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ファンキーハットの快男児

1961年、ニュー東映、渡辺虎男+池田雄一脚本、深作欣二監督作品。

この作品はミステリであり、後半、謎解きがありますが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、御注意下さい。コメントはページ下です。

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オープンカーに乗った若者二人が、ださい学生帽を放り投げ、ファンキーハットを被って、早速ガールハントを始めるが、なかなか付き合ってくれそうな相手に巡り合えない。

彼ら二人は、天下探偵事務所の所長天下清助(花澤徳衛)の息子で、今は車のセールスの仕事をしていている一郎(千葉真一)と、その友人近藤茂(岡本四郎)だったが、大きな玩具のサングラスをかけた、とぼけた近藤がいてはガールハントはできそうにもないと判断した一郎は、相手を後ろ席に寝かせて目立たないようにした後、目の前を通りかかった一人の少女に「ジャズでも一緒に聞かないか?」と声をかけると、何と一発でOKをもらう事に成功する。

二人で、ジャズ喫茶に入って行く姿を見送った近藤は、しゃくになって、自分一人で車で走り去って行く。

茶店で向かい合った少女の名は高山みどり(中原ひとみ)と言い、一郎の方も名乗ると、略して天下一などと呼び、あれこれ有名な省略名をあげてみせるので、まるで株の会社名だと呆れると、本当に彼女の趣味は株なのだと言う。

しかも、その日は50万すってしまってむしゃくしゃしている所に、いかれたあんちゃんから声をかけられたので、気分転換に乗ってみる事にしたとあっけらかんと言うではないか。

一方、独り車を走らせていた近藤は、サングラスをして粋な女性を見かけたので声をかけてみるが、全く無視された上、電話ボックスに逃げられてしまう。

近藤が通り過ぎて行った後、公衆電話ボックスの中にいたその女は、一枚の写真を取り出すと、そこに写っている子供の顔を確認した後、目の前にある「白藤幼稚園」から今正に帰りの送迎バスに乗り込もうとしている園児たちの様子を観察しはじめる。

一番最後に乗り込んだ子供が、目的の小暮靖幸(くさかべ雅人)のようだった。

送迎バスが出発すると、すぐに腕時計で、現在の時刻、午後2時を確認した女は、小暮家に電話を入れ、お手伝いのルメ(新井茂子)を呼出すと、今、故郷から弟さんが上京して来て駅で待っているが、道が分からないと言うので、自分が代わりに電話をしてやっていると伝えた後、自分は車で、送迎バスの後を付けはじめる。

久々に弟と再会できると喜んだルメは、テレビのメロドラマに夢中の小暮夫人に無断で外出して駅に向っていたが、その姿を見つけた近藤が、車に乗らないかと声をかける。

ルメは、ちゃっかり車で駅まで送ってもらう事にするが、いくら探しても弟の姿を見つける事が出来ず、又、近藤の車で家まで送り帰してもらう事にする。

一方、家の近くでバスを降り、独り歩いていた靖幸に近づいた女は、ママとルメは二人とも私の所にいるので、一緒に行きましょうと声をかける。

バイオリンの稽古はしなくて良いのかと言うので、今日は休みだと言うと、靖幸は大喜びで女の車に乗り込んで来る。

その後、屋敷にいた小暮夫人に電話が入り、靖幸を預かったので、明後日まで500万用意しておけとの女の声を聞く。

その直後、屋敷の表まで戻って来たルネと近藤は、慌てて飛び出して来て、靖幸が誘拐されたと狼狽している小暮夫人に出会って、驚くのだった。

その頃、ジャズ喫茶にいた一郎の方は、みどりが株式市況を読み上げるラジオばかりを聞いていて、少しも自分に興味を示しそうにないので、すっかりふくれていた。

そんな一郎にみどりは、今、産業会館が新築される予定があり、その工事をどこが請け負うかで、その会社の株価が違って来るのだと説明する。

その仕事の依頼決定権を握っているのは、国産省の小暮局長だとも。

その小暮(加藤嘉)は、日の丸建築の社長宇賀神(神田隆)と共にゴルフコースを回っている最中だった。

途中、サングラスをレストルームに忘れて来た事に気付いた小暮は、部下の白石(波島進)に取って来させに行く。

宇賀神が接待ゴルフに小暮を誘ったのは、もちろん、産業会館の仕事を受ける目的のためだった。

その夜、小暮は、ライバル会社、大下組の社長(須藤健)からも料亭で接待を受けていた。

その様子を、窓の外からコンパクトカメラで盗み撮りしていたのはみどりだった。

その時、座敷に飛び込んで来たのは白石で、小暮に靖幸の事を知らせる。

翌日、小暮は天下一探偵事務所に、誘拐事件の調査を依頼していた。

そんな事は知らない一郎とみどりは、盗み撮りした写真を持って、大下を会社に訪ねると、産業会館建設の受注の感触を確かめようとするが、ゆすりと勘違いした相手から金を包まれ追い返されてしまう。

しかし、逆に、こんな事で簡単に金が手に入る事を知った二人は、その後、今度は証拠写真もないのに、日の丸建設の宇賀神に会いに行くが、海千山千の相手にけんもほろろに追い返されてしまう。

さらに、国際省の小暮に直接会いに行ってみた二人だったが、応対した白石から、今日は局長は休みだと聞かされる。

その頃、小暮の自宅では、小暮夫妻が、天下探偵社が録音テープを仕掛けた電話の前で、誘拐犯からの連絡を待っていたが、そこに電話して来たのがみどりだった。

誘拐の事等何も知らないみどりは、小暮に直接、今日の3時、帝都ホテルに来てくれと伝言した後、一郎と一緒に帝国ホテルに向う。

一方、誘拐犯との接触だと思い込んだ天下清助とその部下たちは、帝国ホテルに乗り込み、一般客を装って、ロビーで待機する事にする。

そこにやってきたのが、ロビーの入口に一郎を待たせて一人で乗り込んで来たみどりで、彼女は、待っていた小暮に近づいた所で、清助らに捕まってしまう。

その様子に気付いた一郎だったが、父親がいる手前、出るに出れない。

結局、天下探偵事務所に連行されて来たみどりは清助から尋問される事になるが、自分は全く誘拐等とは関係ないし、昨日の2時から3時頃と言えば、一平とジャズ喫茶「エンジン」でずっと一緒だったとアリバイを主張する。

その時、所員の一人が、今、小暮の自宅に真犯人から電話があり、日比谷音楽堂に来いとの連絡があったと知らせる。

すぐさま、清助はじめ所員たちは変装して現場に向うと、音楽堂に現金を持って待っているルメを観察しながら、犯人の接触を待ち受ける事にする。

一郎と近藤も、オープンカーに乗って近くで様子をうかがっていた。

そんな中、チャイナドレスの怪しげな女がルメに近づいたので、全員緊張するが、その女は男と待合せをしていただけの無関係な人物だった。

1時が過ぎても、犯人は現れず、その後、ルメに近づいて来たのは一人の警官だった。

警官に話し掛けられたルメは、動揺して、持っていた現金の束を落としてしまい、それを観た警官は彼女を拘束してしまう。

かくして、秘密にしていたはずの誘拐事件がマスコミにまで知れ渡る事になってしまう。

その後、天下探偵事務所にいた一郎にみどりから電話があり、これから自宅まで遊びに来て欲しいと言う。

喜んで出かけた一郎だったが、みどりが彼を呼出したのには理由があった。

又、株を買うための資金をもらおうとして、父親(十朱久雄)から断わられたためだった。

みどりの自宅に到着した一郎は、庭にあった鉄棒で大車輪を披露すると、みどりと共にプールで遊びはじめる。

やがて、番犬が飛びかかって来たので、一郎が庭を逃げ回っている間に、父親はみどりを呼びつけ説教するが、株に手を出すなと言われたから男と付き合っているだけだと、みどりは平然と言い返す。

さらに、あの男はたちが良くないから、きっと手切れ金を要求すると思うと言い出し、ちゃっかり20万円父親からせしめてしまうのだった。

その金を持って、高津証券に出向いたみどりは、又いつものように株券を買おうとするが、その横で、日の丸建設の株を二万株も購入している女がいたので、怪んで後を追跡してみる事にする。

すっかり、自分は利用されているだけと気付いた一郎が、みどりに文句を言いに来るが、みどりはさっさとタクシーを拾い、女の車を追うのだった。

とあるマンションの一室「桜井とも子」と表札が出ている部屋に女が入って行ったので、そこまで付いて来たみどりだったが、その部屋の前で何者かに捕まってしまう。

一方、小暮家の前には、マスコミの取材陣が多数待機していたが、そんな中、一人の幼稚園児が帰って来る。

誘拐されていた靖幸だったので、それに気付いたマスコミジンは大騒ぎになる。

自宅に戻って来た靖幸の服装に、何か犯人に結びつくものはないかと警察は調べていただが、その際、ゴルフクラブのバッジを見つけた小暮は、自分のバッジを何時の間に持っていたのかとごまかすが、その顔色は明らかに青ざめていた。

事件が中途半端な形で集結してしまい、天下探偵事務所では、犯人は結局、失敗したと見る向きが多かったが、新聞の株式欄を読んでいた一郎は、いや、犯人は別の方法で成功したんだと言い出す。

産業会館の受注は日の丸建設が受ける事が決定する。

その日の丸建設の社長宇賀神こそ、誘拐犯の女から金を奪われていた人間だった。

横浜駅構内に呼出されていた宇賀神は、ホームに「つばめ」が到着したところで、近づいて来たサングラスの女から用意した金を奪い取られ、すぐさま相手は、出発しはじめた「つばめ」に乗り込んで逃走してしまったのである。

その話を聞かされた小暮局長は、その女には男が付いており、それも、我々の事を良く知っている人物だと指摘する。

その男とは、白石であった。

サングラスの女、桜井とも子(八代万智子)の部屋に来ていた彼は、いつも自分の事をこき使って来た小暮が本来もらう予定だった日の丸建設からのマージンを、自分がまんまと横取りした今回の作戦が成功した事を喜んでいた。

しかし、その部屋には、先日捕まえたみどりが縛られて眠っていた。

とも子から、みどりの始末をどうするのか聞かれた白石は、自分が何とかすると返事する。

その頃、娘が失踪してしまったと、みどりの父親が天下探偵事務所に訴えに来ていた。

一郎は、今日の新聞の株式欄を探し、二万株でちょうど500万円になる日の丸建設の名を発見する。

そして、証券会社に行ってみると、ちょうど、その日の丸建設の株を二万株受取っている男がいるではないか。

一郎は、その男、白石の乗ったタクシーを追跡しはじめる。

町中でタクシーを降りた白石の様子をうかがうため、一郎も車を降り、近くで様子を観ていると、顔に傷のあるヤクザ風の男が白石に近づいて来た話し掛けて来る。

男は、保釈の虎(潮健児)と言い、現在保釈中の身分らしい。

白石は、その男に金をつかませるとアパートの地図を渡す。

虎が車で出発すると、一郎もその後を車で追跡し、わざと追い抜いたりして相手の気を引こうとする。

訳も分からず、何とか目的の昭和アパートの前に付いた虎だったが、その停めた車に、一郎がわざとぶつかって来る。

虎が、背広の内側から銃を取り出して凄んでみせると、一郎はさっさと、近くの西下宮交番に駆け込んでしまったので、すっかり通報されたと勘違いした虎はスタコラ逃亡を計る。

一郎は、単に、警官からタバコの火を借りただけだったが、虎が逃げたのを見るとすぐに追跡を始める。

デパートのトイレに入り、水洗便所に鉄砲を捨てたので一安心し、小便をはじめた虎だったが、何時の間にか横に一郎が来ている事を知り、又逃げ出す。

空き地に逃げて来た虎は、もう逃げ切れないと悟ると、ドスを抜き、追って来た一郎に突きかかって行くが、一郎との格闘の末、あっさりやられてしまう。

サングラスをかけた一郎が桜井とも子の部屋を訪ねると、てっきり白石が依頼した虎と勘違いしたとも子は、あっさりみどりを渡してくれた上に、手数料まで渡してくれた。

その後、一郎は父親に、誘拐犯の片割れ桜井とも子の居場所をすぐに連絡する。

その頃、小暮は、宇賀神が礼としたいとゴルフに誘ってくれたと白石に伝えていた。

白石は、その話に違和感を感じながらも、半ば強制的に、小暮と宇賀神の乗った車に同乗させられる事になる。

車の中で、小暮は白石に、ゴルフクラブのバッジをなくさなかったと、靖幸が持ち帰って来たバッジを出してみせる。

それまで狸寝入りをしていた宇賀神も目を開け、自分はちゃんとバッジを持っているからねと白石に笑いかける。

彼らが乗った車の後ろからは、宇賀神の子分たちが乗った車も接近していた。

国産省に出向いた一郎とみどりは、女子職員から、小暮と白石は都下ゴルフ場に出かけたと教えられる。

それを聞いたみどりは、おそらく二人は、その近くにある日の丸建設の鷹野台浄水場建設現場に言ったのではないかと推理する。

周囲に人気のない浄水場建設現場に着いた小暮は、車を降りた白石に金を帰してもらおうと迫っていた。

白石が持っていた封筒の中から、日の丸建設の株券を発見した宇賀神は、うちの株主さんだったのかと笑う。

その後、白石は、宇賀神の子分たちから徹底的に痛めつけられる。

宇賀神は、誰にもばれないように始末すると小暮に言い、子分たちは、白石の体を抱えると、近くのセメントミキサーの方に連れて行こうとする。

その時、車のクラクションが聞こえ、一郎が登場する。

一郎は、かかって来た子分たちと格闘を始める。

その隙に、一郎のオープンカーを奪って逃げ出そうとする白石に気付いた一郎は、すぐに車に飛び乗り、白石を殴って気絶させると、又、子分たちと闘いはじめる。

小屋の中に逃げ込んだ右賀神は、そこに用意していた火炎瓶を持ち出すと、子分たちに投げさせる。

次々と爆発炎上する中、必死に一郎は身をかわし、不発の火炎瓶を拾い上げると、逆に宇賀神たちに向って投げ返す。

その時、パトカーが接近して来て、その先頭車からみどりも降り立って来る。

宇賀神一味と小暮は、到着した警察官たちに連行されてしまう。

かくして事件は一件落着。

翌日、天下探偵社がこの誘拐事件を見事に解決したと記事が載り、それを読んだ清助は、上機嫌で切りぬくと、その記事を貼っておくように部下に命ずる。

その記事が宣伝になったのか、天下探偵社には客が殺到していた。

その頃、一郎とみどりは、又、オープンカーでドライブしていた。

一郎は、車をみどりが買ってくれるまで付き合うと言うと、みどりの方は、天下一さんは株が上がりそうだから付き合うと返事をし、一郎を喜ばせるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

上映時間53分の中編ながら、デビュー作「風来坊探偵 赤い谷の惨劇」(1961)「風来坊探偵 岬を渡る黒い風」(1961)に次ぐ、若き深作欣二監督と千葉真一のコンビ映画でもある。

内容は、学校を卒業し、まだ社会人に成り立てで、遊び盛りの坊っちゃんと言った感じのキャラに扮した千葉真一と、こちらも金持ちの活発なお嬢さんと言ったキャラの中原ひとみコンビが、とんでもない事件に巻き込まれたあげく、探偵社を経営している父親顔負けの活躍を見せ、ちゃっかり解決までしてしまうと言う「明朗青春ミステリ」と言った感じになっている。

事件もなかなかしっかりした構成になっており、ミステリとしては、何故、誘拐事件を民間の探偵時事務所等の知らせるのかとか、警察が誘拐事件を知るや、何故、すぐにマスコミに筒抜けになってしまったのかとか、色々、おかしな部分もあるのだが、そういう御都合主義も含めて十分楽しむ事ができる。

体育大学出の千葉ちゃんが、鉄棒で見事な大車輪を披露してくれたり、後半、身軽なアクションを披露してくれる。

まだ、あどけなさが残る千葉ちゃんも可愛いが、この頃の中原ひとみは、まるで少女雑誌のイラストがそのまま現実に抜け出て来たようなキュートさである。

又、仮面ライダーの地獄大使こと潮健児が、ユーモラスなヤクザ役として登場して、後半、ドタバタ劇を見せてくれるのも楽しい。

全体的にテンポも良く、気軽に楽しめる娯楽映画の見本のような作品と言ってよいだろう。