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ブレイブストーリー

2006年、「ブレイブストーリー」製作委員会、宮部みゆき原作、大河内一楼脚本、千明孝一監督作品。

この作品は比較的新しい作品ですが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、御注意下さい。コメントはページ下です。

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小学5年生の水谷亘(ワタル:声-松たか子)は、クラスメイトのかっちゃんと一緒に、無人の大山ビル解体工事現場に入り込んでいた。

2組の新入りが、ここで幽霊を観たと言う話を聞いたかっちゃんの言葉に誘われて、肝試し気分で付いて来たのだが。そこでワタルは、蒼いガラス玉のようなものを踏み付け、思わず転んでしまう。

そこに「アヤ?本当にアヤなのか?」と言う声と共に、一人の美しい少年が現れ、蒼い弾を取って行くと姿を消してしまう。

その後を追ったワタルは、長い階段の上に大きな扉を見つける。

そこに、かっちゃんが、猫を見つけたとやって来たので、上の天井の話をしてもう一度見上げるが、階段の上には、建築途中のビルしかなかった。

翌日、昨日の不思議な出来事が気になって眠れなかったせいか、朝寝坊したワタルは、母親(声-田中好子)と父親(声-高橋克実)に送られて、家を出ると、かっちゃんと一緒に学校へ急ぐが、その学校で昨日の美しい少年を見かける。

かっちゃんが言うには、あれが隣組の新入りなのだそうだ。

2組のその子に話をしようと出向いたワタルとかっちゃんは、やたらと女の子たちに人気があるその美少年の様子に驚く。

そこへ、いきなり、6年生の石岡(声-石田彰)と言う男の子がやって来て、最近、三丁目の幽霊ビルに出入りしているそうだが、あそこは、おれたち6年幽霊探検隊しか入れない所だと、美少年にいちゃもんを付ける。

美少年は、そんな石岡に動ずる風もなく、幽霊なんかまだ信じているのかと小馬鹿にしたような返事を返す。

その言葉に逆上して飛びかかろうとした石岡だったが、駆け付けて来た先生に制止され、その場はすごすごと帰る事になる。

その日、帰宅したワタルは、アパートの入口に立っている父親に出会うが、暗い表情の父親は、今日から、お父さんは家を出て、別の女の人と暮す事になったと告げ立ち去って行く。

アパートの中では、母親が離婚届を見つめていた。

一旦、家に入り、母親に、今聞いた父親の言葉を告げるが、母親は冗談よと相手にしてくれない。

それでも、ただならぬものを感じたワタルは、父親の後を追い掛けるが、見失ってしまう。

その頃、建築中の幽霊ビルでは、美少年が石岡と悪童二人に捕まり、縛られた上、暴力を振るわれていた。

そこにやって来たワタルは、それを止めようとするが、石岡は構わず、美少年がいつも大切に持っていた篩のートを取り上げると、その場でびりびりに破ってしまう。

すると、縛られて床に転がされていた美少年が、何やら聞き慣れぬ呪文のようなものを唱え出す。

突然、不思議な生き物が出現し、石岡を飲み込んでしまう。

それを観た他の二人も腰を抜かしてしまう。

気が付いてみると、石岡と二人の悪童は、三人とも気絶して、床に倒れていた。

ワタルと美少年は、暗くなった公園のベンチに座って、一緒に缶ジュースを飲んでいた。

芦川美鶴(ミツル)と言う、その美少年は、しょっちゅう、あのビルに自分が出かけている所を観た誰かが、あのビルを幽霊ビルと噂するようになっただけだとワタルに教える。

昨日言っていたアヤとは誰の事なのかと、聞こうとしたワタルだったが、君のような幸せな子供には分かってもらえないと言う。

自分は決して幸せじゃないと、両親が離婚した話をしても、同情してくれるどころか、たかが離婚くらいでと嘲笑して、ミツルは何時の間にか姿を消してしまう。

運命が変わる。扉の向こうに行けば願いが叶う。失敗したら、二度と戻れない、これでお別れだな、三谷…と言葉を残し…。

その後、ワタルがアパートに戻ると、ガスの匂いがして、夕食を準備中の母親が床に倒れているではないか!

救急車で城東病院へ運ばれた母親の姿に耐えられなくなったワタルは、幽霊ビルへ向い、階段を登ると、何時か観た不思議な扉の前に立つ。

「こんな運命なんか、間違っている!」とワタルが叫ぶと、大きなその扉、要御扉(かなめのみとびら)は開くのだった。

扉の向こうは、緑色の混沌とした霧の中のようだった。

うろたえるワタルに、どこからともなく「ワタル、落ち着いて!」と呼び掛ける少女の声が聞こえる。

お試しの森の洞窟へ行かなければいけないと、少女の声は続ける。

小さな鳥たちに運ばれ、闇の中に連れて行かれたワタルは、神殿風の建物の中に四体の巨神像を見つける。

その巨神像たちが、「喜びを望むか?」「知恵を望むか?」「勇気を望むか?」「元気を望むか?」と各々問いかけて来たので、ワタルは思わず、全部下さい!と答える。

すると、「我より逃げ切って、森に帰ってみせよ!」と巨大な魔像が襲いかかって来る。

ワタルは、その神殿から逃げ出そうと、出口らしき扉を次々に開けてみるが、どこも外には通じていない。

パニック状態に陥ったワタルだったが、カエルの像を見つけると、「帰る道と言うのは、カエルの事なんだと気付き、思いきって、その像に飛びつくと、カエルの口が開き、ワタルの身体はその中に飲み込まれてしまう。

気が付くと、ワタルは、森に戻っていた。

そんなワタルの目の前に、不思議な老人が空中から降り立ち、4分55秒かかったが、ミツルよりだいぶん遅かったと言う。

そうやら、ミツルも同じ試験を受けたらしい。

ラウ導師(声-伊東四朗)と名乗ったその老人は、ワタルの評価を下し、見習い勇姿としての装備を与えてくれる。

そして、現世(うつしよ)からビジョンに来た者は、運命の女神から、一つだけ願いごとを叶えてもらえると教えられる。

その運命の女神とは、与えられた勇者の剣の柄の部分に開いた五つの穴全てに、宝玉をはめ込んだ時、女神とあえると言いながら、まずプレゼントとして、ラウ導師はワタルに赤い宝玉を一つ与えるのだった。

次の瞬間、ワタルの身体は空中に放り出され、広大な砂漠の真ん中に落ちる。

起き上がったワタルは、近づいて来た子犬のような動物に気付き、可愛いので、抱いて連れて行こうとすると、突如、何匹もの犬のような大軍に追い掛けられる事になる。

それを救ってくれたのは、馬車に乗った龍の化物だった。

襲って来た犬のような動物はネジマキ狼、馬車を引いている牛のような動物はタルババ、自分はキ・キーマ(声-大泉洋)だと自己紹介したその龍男は、ワタルの様子を観察し、旅人と知るや大喜びしはじめる。

何でも、彼らスージー族にとって、旅人は幸運の印なのだと言う。

そんなキ
・キーマの馬車に乗って、ガサラと言う賑やかな交易の街にやって来たワタルは、キ・キーマの馴染みらしきユナ婆(声-柴田理恵)と言う老婆の料理屋で、大量のごちそうをおごってもらう事になる。

キ・キーマが、ちょっと仕事で席を外した時、ワタルは、表を歩いている群集の中に、ミツルの姿を見つけ、慌てて追い掛けようとするが、出された料理を全部食べるまで帰さないと言うユナ婆に止められ、仕方なく、全部の料理平らげて、店を飛び出した時には、もう、ミツルの姿は見失っていた。

それでも、見当を付けて、ミツルが向った方角に歩いて行ったワタルは、何時の間にか、スペクタクルマシン団と言うサーカス小屋の中にいた。

そこでは、ミーナ(声-斎藤千和)と言う猫のような少女が空中ショーを行っていた。

その後、ミツルの姿を求め、サーカス小屋の中をあちこち覗いていたワタルは、小さな竜の子のような動物を檻から出して持ち出そうとしていた二人の怪しげな人影を見つけ誰何するが、そこへ先程空中ショーをしていた少女と、サーカス団の団長がやって来て、ワタルに何をしているのかと問いつめる。

その時、ワタルの手には、あの怪しげな二人組から奪い取った竜の子を持っており、その二人組は姿を消していただけでなく、あろう事か、ミーナと言う少女が、そんな二人組はみなかったと証言したものだから、ワタルに泥棒の疑いがかけられ、カッツ(声-常盤貴子)と言うハイランダ−一族のリーダーの所に連れて行かれるはめになる。

結局、ワタルは牢に入れられてしまうが、サーカス団に戻ったミーナも何故か元気がなかった。

牢の中のワタルは、必死に脱出しようと試みるが巧くいかない。

そんなワタルの前に、病室で力尽きた母親の姿が浮かび、「見捨てられた教会へ行きなさい。あなたが旅を諦めなければ又会える」と言う、あの少女の声が又聞こえて来る。

矢も盾もたまらなくなり、見張りが中に入って来た隙を付いて、牢から逃げ出す。

しかし、川の所まで逃げて来たワタルを捕まえたカッツは、意外な事を言い出す。

夕べ、又、あのファイヤードラゴンの子が盗まれてしまったので、一晩中牢に入っていたお前は無罪と分かったので釈放すると。

しかし、共犯の疑いは消えていないので、この街から出す訳には行かぬと言うカッツに、ワタルは、自分は一刻も早く、五つの宝玉を集めなければいけないのだと説明する。

カッツは、犯人の目星は付いていると言う。

結局、再会したキ・キーマと、カッツが付けてくれた案内役が向った犯人の塒とは「見捨てられた教会」だった。

そこに出現した洞窟に入ったキ・キーマンは、水の匂いがすると、水竜族の血が騒ぎだしたのか、はしゃぎ出す。

洞窟の中には湖があり、そこに、目指す犯人二人組がキャンプを張っていた。

案の定、彼らが、ファイアードラドンの子供を捕まえていた。

そこん、お父さんに会わせるからと言うのは嘘だったのね!と声がする。

ワタルたちの後を秘かに付けて来たミーナだった。

ただペットにしたいからと騙されて、二人組にファイア−ドラゴンの子を盗むのを手伝わされていたことに気付いた様子。

その時、突如、湖から巨大なモンスターが出現し、ワタルとミーナを湖にくわえこんでしまう。

すぐに、湖に飛び込んだキ・キーマンに救われた二人だったが、 ワタルは、水の中で勇者の剣を落とした言い、又、潜って行く。

そして、勇者の剣を見つけると、その力でモンスターを倒してしまう。

後には、緑色の玉が浮上して来る。二番目の宝玉だった。

街に戻ったワタルを、カッツは大いに気に入り、正義を行うものにだけ授けると言う「ハイランダ−の腕輪」をワタルの左手にはめてくれる。

その腕輪を、カッツの腕輪と二度ぶつけると、その時からワタルは、ハイライダーの一人として認められる事になる。

ワタルは、キ・キーマの馬車に乗り、再び旅を続ける事になる。

その馬車には、ワタルが助けたファイア−ドラドンの子供ジョゾと、ミーナも乗っていた。

ミーナも、子供の時に分かれた父親を探していたのだった。

彼らは、ギリスと言う水の都にたどり着くが、そこで、ワタルは、他の仲間とはぐれてしまう。

そんなワタルに声をかけて来たのは、この街を治めるダイモン(声-石田太郎)と言う司教だった。

宮殿に招かれ、贅沢なごちそうを振舞われたワタルだったが、何故か、手を付けないのを観たダイモンは、デザートとして、バウワウワの実を出したかったのだが、マキーバの山火事で木が全滅してしまったと話し出す。

何でも、旅人が、山を焼き払ってしまったのだと言う。

その為に、多くの動物や人間も犠牲になってしまったと聞いたワタルは、その旅人とはミツルの事ではないかと尋ねるが、詳しい話は、山火事によるけが人たちが収容されているドリアンカ病院に行けば良いと教えられる。

若い司教(声-インパルス/板倉俊之)に案内され、その病院に向っていたワタルは、又、どこからともなく、その建物に入ってはいけない、お供の司教は敵だとの、女の声を聞く。

その声に従い、建物から遠ざかろうとするワタルを観た司教は、あなたが探している魔導師も、火傷をして、あの病院内にいるのだが…と残念がる。

それを聞いてしまうと、さすがにいても立ってもいられなくなったワタルは、病院に駆け込んでしまうが、そこにいたのは、意外な事に、自分の父親だった。

父親は、辛い思いをして仕事をしていたのに、誰も優しくしてくれなかったと、不満を述べ、もう、大人も、父親も全部止めてやると興奮したような声をあげると、かけていた眼鏡を思わず落としてしまう。

その時、「ブレイク!」の声が聞こえ、父親の姿は、木の葉の集合体に変化してしまう。

空中に、ミツルが出現すると、自分のかけた魔法で、やけどすると思うかい?と、ワタルに話し掛けて来る。

どうやら、牧場に魔法陣を書いた若い司教が未熟な事を知っているらしく、あっさり魔法で退けてしまう。

ミツルは、五つ目の宝玉を手にする為に、イルーダ帝国にこれから向うと告げると、ワタルの前から姿を消してしまう。

その頃、ギリスの街で牢に入れられていたキ・キーマとミーナの前に、謎の人物が現れていた。

そんなギリスの街に戻って来て、宮殿に近づいたワタルとジョゾだったが、落し穴に落ちてしまう。

そこには、ダイモンと手下たちが待ち受けていた。

しかし、キ・キーマとミーナを助けたカッツたち、ハイランダ−も現れ、ダイモンと戦いはじめるが、ダイモンの魔力は強く、その杖から出る光でカッツは倒されてしまう。

ワタルにも、その光が浴びせかけられるが、勇者の剣で跳ね返すと、その光は元の杖に戻り、魔法が暴走を始めたのか、持っていたダイモンまで、杖の魔力に吸い寄せられてしまい消滅してしまう。

後には、蒼い宝玉だけが残っていた。

そんな彼らに、イルーダ国と魔導師が手を組んで、戦争が始まると言う情報が飛び込んで来る。

ワタルは、その魔導師とは、ミツルの事ではないかと直感する。

そのミツルは、イルーダ国の皇女ゾフィ(声-矢島晶子)と親しく踊っていた。

ゾフィが、自分に気がある事を知ったミツルは、闇の宝玉の事を聞き出そうとする。

するとゾフィは、辛そうに、この城は、その闇の宝玉を守る為に作られており、闇の宝玉を取ると、封印していた魔族が一斉に目覚め大変な事になるのだと言う。

さらに、闇の宝玉の傍らには、その宝玉を取ろうとする人物画一番苦しむものが映し出されるとも。

その頃、ワタルは一人で悩んでいた。

ミツルの強引な行動を観てしまうと、自分の望みを叶える為なら、何をやっても良いのかな?と言う、素朴な疑問であった。

そんなワタルの横にやって来たミーナは、持って来た毛布に一緒にくるまって、ワタルは何を、運命の女神に望むのかと尋ねて来る。

家族を取り戻したいのだとワタルが答えると、母親を小さな時に亡くした自分も、父親に会いたいのだけど、その為に、ジョゾを盗ませる手伝いなどしてしまった事を今は反省していると言う。

そのジョゾが、口に何かをくわえてワタルに近づいて来る。

見ると、ジョゾの角が取れたもののようだった。

ミーナが言うには、ファイア−ドラゴンは、ある時期になると、角が生え変わるのだと良い、その角を吹いてみろと言うので、言われるままに吹くが、何の音もしない。

しかし、その直後、上空に巨大な影が出現する。

ジョゾの親のファイア−ドラゴンだった。

ワタルたち一行は、そのファイア−ドラゴンに跨がると、イルーダ国に飛ぶ。

その頃、ペンタゴンの形をしたイルーダの中心にある王宮クリスタルパレスには、制止しようとする衛兵を倒したミツルが強引に侵入していた。

それを目撃したゾフィは、どうして?と問いかけていた。

空中にある回廊に到着したミツルは、回転している鏡の中に封じ込められた闇の宝玉を見つける。

そこへ、ゾフィーと、少し遅れてワタルも駆け付けて来る。

ワタルは、闇の宝玉を奪おうとするミツルに、ビジョンがどうなっても良いのかと問いかける。

しかし、ミツルは、願いを叶える為、ここまで来たのであり、願いが叶わないのなら、ビジョンに来た意味がないと、魔力で攻撃して来る。

それに対抗したのは、ジョゾの炎だった。

回転する鏡には、妻の浮気相手を殺した後、妻と娘のアヤを道連れに無理心中をしたミツルの父親の事件が映し出されてした。

その日、最愛の妹、アヤに見送られ、サッカーをしに行ったミツルが帰宅した時に観た、救急車が家の前に停まっている光景だった。

自分にとって、一番辛い、一番観たくない映像を映し出す鏡を砕いたミツルは、氷の壁を魔法で作ると、その中に閉じ籠ってしまう。

そして、ミツルは、辛い想い出を振払うように、闇の宝玉をとると、自分の剣の柄にはめ込む。

すると、封印されていた魔物たちが一斉に解き放たれ、イルーダの街を襲いはじめる。

その様子を、遠くの森の中から感じたラウ導師は、とうとう、闇の宝玉に手を出してしまったか…と、嘆息していた。

ワタルは、ゾフィから青い宝玉を一つもらう。

ワタルが、運命の塔に向う気だと知ったカッツは、ここは自分達が守ってみせると約束する。

ミーナも、ワタルの頬にキスをして送りだすのだった。

街の上空では、ファイヤードラゴンたちと無数の魔族のモンスターたちが戦いを繰り広げていた。

逃げまどう国民の前に進み出たゾフィは、生きている限り、希望を捨ててはなりませんと勇気づけるのだった。

運命の塔に近づいたワタルは、自分に攻撃を仕掛けて来る影を発見する。

その影は、どう観ても自分自身だった。

もう一人のワタルは、勇者の剣を、ボード状の形に変型させると、それに乗って飛んで来る。

ワタルも、同じように空飛ぶボードに乗り、もう一人の自分の囁きを避けながら、塔を登って行く。

急がないと、ミツルに先に願いを叶えられるぞ、自分さえ良ければいいんだ!と、ワタルに話し掛けて来るもう一人の自分は、ワタルの悪い心の実体なのだった。

そのミツルも又、もう一人の自分と戦っていた。

ワタルは、自分に襲いかかって来ようとする、もう一人のワタルを殺そうとするのを止め、苦しかったり、怒ったり、人のせいにしちゃったりするのは、全部、自分の心なんだ。

でも、自分でできる事はある。心の中から悪を消すんだと自分自身に言い聞かせると、何時の間にか、もう一人の自分は消え失せていた。

しかし、ミツルの方は、湖全体を氷らせ、その自分の中の悪と最後まで戦い、とうとう、もう一人の自分を突き殺してしまう。

すると、その途端、自分自身も胸を突かれたように倒れるのだった。

駆け寄って抱き起こしたワタルに、どうしてそんな事をするんだと問いかけるミツル。

ワタルが、友達だからと答えると、お前は勝ったんだ、それなのに何故泣くんだ、本当にお前って、お人好しだな…と、ミツルは虫の息で言う。

そして、自分は運命を帰る事が出来なかったと言いながら、闇の宝玉をワタルに渡すと、手の光のナカノ小さなピンクの光を感じ、それが妹アヤの魂だと知ると、嬉しそうにその想い出と共に天に向って消えて行く。

とうとう、最後の闇の宝玉を手にしたワタルに、運命を変えたいんでしょう?と、聞き覚えのある少女の声が近くから聞こえて来る。

そこには、何時の間にか美しい少女が姿を現していた。

少女は、イルーダを助けたり、メ族の少女を助けたり、色んな願いを全て叶える方法がある。

それは、この世から女神がいなくなって、ワタル自身が、このビジョンの神になれば良いのだから、女神よ、滅びろ!と願えば良いのだと教える。

その頃、イルーダの街では、家の中に避難していたミーナが、自分の名を呼び父親の声を聞き、外に飛び出すと、魔族のモンスターに連れ去られようとしていた。

それを、キ・キーマンが、必死に助けようと追い掛ける。

運命の塔では、少女が、お母さんを助けたいんでしょう?と甘い言葉を囁きながら、ワタルに抱きついて来ていた。

しかし、なかなか返事をしないワタルの様子に焦れたように、少女は、身体を変型し出すと、やがて、巨大なカエルの姿になり、ワタルを飲み込んでしまう。

巨大カエルは、本当は自分が運命の女神になるはずだったと言うのだ。

やがて、その巨大カエルの中で勇者の剣が巨大化し、巨大は破裂してしまう。

同時に、運命の塔周辺を覆っていた氷が解け、美しいビジョンの風景が姿を現す。

イルーダの街も遠くに見えていた。ワタルは、ミーナが、あなたは何をお願いするの?と聞いていた姿を思い出していた。

運命の塔が変型して女神の姿になると、私の手を取って、あなたの願いを渡しなさいと告げる。」

ワタルは、ビジョンから魔族をなくして下さいと願う。

運命には、喜びも哀しみもあるけれど、運命は変えられないものだと知ったとワタルは呟く。

その言葉を聞き届けた女神は、今、地上へと帰しますと答える。

空を覆っていた魔族のモンスターたちは、全て、桜の花びらに変化して、ビジョンに春が訪れる。

それを観たラウ導師は、ワタル、これがお前の旅か…と頷くのだった。

ミーナは、帰って来ぬワタルの名を呼んでいた。

傷付いたカッツは、見せてもらったよ、あんたの正義を!と感心していた。

キ・キーマンは、幸運なんていらないから、戻って来いとワタルに呼び掛けていた。

大松ビル解体工事現場‥、現世(つつしよ)に戻っていた。

一人で朝ご飯の準備をしていたワタルは、仕事に向う母親を送りだすと、自分もかっちゃんと一緒に、学校に向う。

かっちゃんは、ミツルの事を覚えていないようだった。

でも、今日、新入りが来るらしいと言う。

学校にやって来たワタルは、どこかで見覚えのある少女の姿と、「アヤ」と、その少女に呼び掛ける見覚えのある少年に出会うのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

原作は未読だが、なかなか巧くまとまった感動的な作品になっていると思う。

おそらく、両親たちの現実的なドラマ部分などが省かれているのだろうと想像され、その辺がやや説明不足の観もなくはないが、ファミリー向けの娯楽アニメとしては、妥当な判断だったのではないかと思う。

冒険旅行の途中も、かなりはしょられている印象はあるが、特に物足りなさを覚える程ではない。

テンポも良いし、イマジネーションも、メチャクチャ斬新と言う程ではないにしろ、それなりに面白く、退屈はしない。

現実世界に登場する両親のキャラクターがやや没個性かな?とも感じるが、その辺は、観る人の好みもあるだろう。

3Dの使い方も巧く馴染んでいるし、クライマックス部分は感動的である。

素直に泣けるのは、やはり、根底になっている原作の考え方が大人だからだと思う。

この大人っぽい考え方が、観ている子供達にすんなり伝わるかどうかは別にして、大人が観ても十二分に面白い秀作だと思う。