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奇巌城の冒険

1966年、三船プロ+東宝、馬淵薫脚本、谷口千吉監督作品。


東宝の痛快作「大盗賊」(1963)の続編とされており、大いに期待も膨らんでいたのですが…。

「大盗賊」とほとんど同じキャスト、イランに本格的ロケを敢行し、広大な都のセット(初代ウルトラマンにも「バラ−ジの都」として登場)、音楽は重厚、伊福部昭!後ろ髪を髷に結び、異国風の衣装を身につけ、本物の砂漠で突如襲い来る大竜巻(特撮)の中、黒盗賊役、佐藤允相手にチャンバラを演じる三船の姿は、どう見ても若きオビワン!…あぁ、それなのに…。
どうした谷口千吉監督!

タイトルト通り「冒険」風なのは、宗の円済(中丸忠雄)と大角(三船敏郎)が人間不信に凝り固まってしまった王の支配するペシルの都に到達する辺りまで。
後はほとんど、太宰治の「走れメロス」そのまんまです。(実はこの映画、これが原作)
「走れメロス」自体が、冒険ものでも何でもなく、どこか偽善的な友情物語(四国かどこかの宿に、金もないのに長逗留していたピカレスク太宰が料金を催促され、それではと、友人壇一雄を自分の身替わりに宿へ呼び寄せ、自分は金を工面して来ると出ていったっきり二度と帰って来なかった不始末を、後日壇になじられた太宰が、わびのつもりで書いたとされる作品ながら、皮肉な事に名作といわれるようになった)。

「大盗賊」での水野久美さん演じた町娘役を、前回王女役だった浜美枝が演じ、田崎潤らも再登場しているのに、両者ともこの作品では全く見せ場なし。
鼻ピアスが今風の地獄谷のおばば役、天本英世と、相変わらずとぼけた仙人役、有島一郎によるお馴染みの妖術合戦も、特撮が全体的にしょぼしょぼで…(涙…これ、東宝特撮班の仕事ではなかったのかな〜?)

大角(おおすみ)の弟、ヨシオ役で、黒沢年男、王妃、白川由美のお付き役でフジ隊員(桜井浩子)、武官長役でハヤタ(黒部進)などが、チラリと登場しているのが珍しいくらいでしょうか。(のっぺりとした風貌の王様役、一瞬誰だか分かりにくいのですが、どうやら三橋達也)

三船プロダクションの作品ですから、三船をよりいっそう引き立てて…との企画だったでしょうが、全般的にサスペンス要素が希薄、大作のせいか演出も冗漫で、その肝心の三船が、この作品では一向に魅力的に見えないのが残念!
伊福部さんの勇壮な音楽だけが、一人空回りしているような印象。

やはり、独立プロダクションという所に、何か限界があったのかも…?