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かくて神風は吹く

まさに大平洋戦争のまっただ中、1944年に作られた大映作品で、海軍省、陸軍省が後援した、完全な「国威高揚(プロパガンダ)映画」です。
16mm版の上映で、スタッフやキャストロールもほとんど付いていないため、ネット検索で調べた所、やはり、特撮は円谷英二率いる東宝特殊技術部が担当していたとの事。
まだまだ知らない作品が埋もれているんですね〜。
内容はそのものズバリ「元冦」です。
四国、伊予の国の武士、河野通有に阪妻(バンツマ)。
その河野家と対立している惣那家の兄、重義に嵐寛寿郎(アラカン) 。
北條時宗に片岡千恵蔵。
日蓮上人に市川歌太衛門…と、正に戦前のオールスターキャスト。
全員とにかく、力みまくった演技をしています。
元の船団は、かなり大き目に作られたミニチュアがメインで、他に絵合成や実物大の船も登場しています。
嵐の中、粉砕する船の描写は、白黒という事もあり、ほとんどアラが見えず、迫力満点の仕上がりになっています。「水もの」は昔からうまいですね〜。
鎌倉の時宗の元に集結した武士達や、九州、太宰府に集結した武士達のシーンは、本当に数百人くらいのエキストラが参加しており、こちらも迫力満点。
無数の元の船団が迫り、数百人の武士達が集結する様は、「スターウォ−ズ」を観ているようです。
大仰な文句が書かれた字幕がたびたび挿入され、憎っくき元相手に、日本全国一丸となって戦うぞ〜!!…という「行け行け!ドンドン!」の姿勢がはっきり観客に伝わるような作り方になっているので、迫力でそれなりに最後まで観てしまえますが、単調といえば単調な展開ですし、肝心の敵、元の悪としての描写がほとんどないため、爽快感もほとんどありません。
元からの使者たちを、時宗の一存で、全員斬首してしまうシーンなど、観ているこちらが「オイオイ、いいのか?」…とヒヤヒヤしてしまうくらい。(汗)
物語途中まで、国難を前にしても、周囲に協調しない頑固者…と、一見「悪役」のような描かれ方をしているアラカンの存在が、本編中、唯一の「サスペンス要素」なのですが、博多の海岸に元の船団が迫り、防戦一方でピンチを迎えていたバンツマたちの元へ、船で四国から駆けつけ、突然両者和解したかと思うと、即日、元の船に夜討ちをかけ、敵を斬って斬って斬りまくるバンツマに続き、船のへさきに積んだ燃える藁もろとも、元の大船に「特攻」してしまう…という、実は「美味しい(?)」役所…。(唖然…)
本作の2年前に作られた、東宝の「ハワイ・マレー沖海戦」などと比べても、当時の時局を反映しているためか、全体的にドラマとしての余裕がなく、「悲壮感」というか、「ヒステリックな感じ」さえ感じられます。