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海賊船

1951年、東宝、小国英雄脚本、稲垣浩監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

時は現在

九州西方海上に、伝説にでもあるような海賊船が出没すると言う。

その海賊船は「千里丸」と言い、最高速のエンジンと、優秀な武器、そして部下がそろっていると言う。

彼らが狙うのは密輸船。

密輸品を盗むのは盗みではないと言う理屈らしく、船長の名は「支那海の虎」(三船敏郎)

船員は、虎の右腕とも言うべき二の字(大谷友右衛門)、機銃係の飛車(田崎潤)、通信係の下駄(富田仲次郎)、おしゃべりなチャック(森繁久彌)、見張り役の五右衛門(大久保正信)、海坊主(福原秀雄)、忍路(おしょろ-谷晃)、牛皮(高原駿雄)、金時(松尾文人)、業平(大泉滉)、コックの獨活(うど-上田吉二郎)らであった。

酒を飲んで甲板の椅子で寝ていた虎は「お客さんが見えたぞー!」と言う五右衛門の声で目を覚ます。

千里丸は、出陣の印である「虎」の旗を掲げる。

一方、虎の出現に気づいた密輸船は、あろう事か、海上保安庁に通信を入れる。

密輸業者にとって厄介者の「虎」が捕まるのだったら、本船の一隻や二隻犠牲になっても構わないと言う捨て身の戦法に出た訳である。

しかし、その通信を傍受した虎は、かえってスルリがあるじゃねえかとおもしろがる。

どうやら「スリル」の事らしい。

北緯33度、統計128度会場で、「虎」が出現したと言う知らせを受けた海上保安庁はすぐさま高速船を出発させる。

密輸船側は、機銃を準備し、千里丸が近づくのを待ち受けていたが、すぐに千里丸の乗組員たちが乗り込んで来て、たちどころに全員縛り上げられてしまう。

積み荷を千里丸に運び込んでいる最中、海上保安庁が姿を現す。

飛車は、海上保安庁の船に対して撃ちましょうと逸るが、密輸船にしか手を出さない事を忘れたかと虎が釘を刺し、荷物の積み込みを急がせる。

海上保安庁の高速船は、逃走を始めた千里丸を追うが、縛られたままの密輸船の船員たちは、船のエンジンが壊れた中、置いてきぼりであった。

海上保安庁の船を振り切った千里丸は、「虎」の字が書かれた旗を降ろす。

その夜、千里丸の乗組員は、とある港の酒場で祝い酒を味わっていた。

チャックがべらべらしゃべりながら、女と踊っている。

船の留守番は、臆病者の獨活(うど)だけだった。

そんな千里丸に、秘かに乗り込もうとしている者がいた。

薫(浅茅しのぶ)、一郎(山本豊三)、實(飯田健晋)、俊夫(三井正吉)の4人の子供たち、薫は15、6才くらい、一番年下の俊夫は6、7才だった。

彼らは、子供らだけで今日まで生き抜いて来たらしく、浮浪児のようにみすぼらしい格好をしていた。

何とか、目の前の船に忍び込んで、故郷の日本に帰ろうと考えていたのだった。

炊事室で彼らが船に忍び込んだ気配に気づいた獨活(うど)は、包丁を手にして出て行こうとするが、怖くて動けない。

暗闇の中でペットの猫に触って震え上がる有様だった。

その後、酔って帰って来たチャックなどは、その獨活(うど)から侵入者の話を聞くが、笑って相手にしない。

船倉に忍び込んだ子供たちは、この船を密輸船と思っていた。

一番年下の俊夫は、ここでもお姉ちゃんと言ったらダメなんだねと薫に念を押す。

これまでも、彼女が女である事を隠して逃げ延びて来たようだった。

その夜、寝る前の船内の見回りをしていた二の字は、酔いつぶれて甲板に横たわっている業平を見つけ抱き起こそうとする。

苦しいのかと聞かれた業平は、本当に苦しいってことを知っているか?俺は母親を叩き殺したんだ。一人息子の俺を裏切りやがって…とつぶやきながら泣いていた。

そんな業平を助け起こして寝床に連れて行った後、再び、見回りを始めた二の字は、船倉で寝ていた子供たちを発見する。

翌朝、子供たちは、機関銃の音で目が覚める。

千里丸が新たな密輸船を見つけ、襲っていたのfだ。

薫は、怯える子供たちに、聖書を読んで聞かせる。

やがて、銃声が止んだので、恐る恐る窓から外をのぞいた子供は、そこに甲板に立っていた虎の姿をかいま見る。

どうやら、別の密輸船をやっつけたとしか見えないので、子供たちは密輸船が密輸船をやっつけるのは変なので、この船は水上警察の船ではないかと思い込み始める。

密輸船の船首部分で怒鳴っていた男を、無慈悲に撃って海に落とした飛車を、虎がいさめる。

その夜、甲板では船員たちが浮かれていた。

その時、二の字が子供の事を虎に耳打ちする。

虎は、すぐに海に放り込めと言いかけるが、それじゃあ死んじまうかと考え直し、ボートに乗せて流しちまえと言うが、今は夜なので、流すと命がないから、明日、手島に近づいた辺りで流したらどうかと二の字は助言する。

子供たちは、炊事室から流れて来た料理の臭いに気づく。

俊夫は、ボクお腹空かないよといたいけなことを言うが、それを聞いた實は、嘘付いてるんだと言い返し、薫にたしなめられる。

そこに二の字が入って来て、お前たち何か唄を歌えるか?と声をかける。

甲板に連れて来られた子供たちは、好奇心で見つめる船員たちを前で歌い始める。

最初は拍子を取って、その歌に乗っていた船員たちだったが、その歌がまじめな賛美歌だと気づくと、徐々にしらけ始める。

兼平などは、神が何だ!と叫び、虎から殴られる始末。

船室に連れて行かれた業平を見ながら、酒癖が悪い。根はいい奴なんだが…と虎は嘆く。

虎は、獨活(うど)を呼ぶと、子供たちに何か食わせてやれ、良いもんなんか出す必要はないぞ。猫の餌で十分だと憎まれ口を叩く。

心優しい獨活(うど)は、子供たちに、思いっきりごちそうを作ってやる。

翌日、手島の近くを通るのは昼頃なので、11時頃、子供たちに引導を渡すか…と一人決断をする二の字。

しかし、その日は終日雨だったので、子供たちは無事だった。

その夜、寝るために船倉に戻って来た二の字に会った薫は、いつ日本に着くのかと聞くが、二の字は適当にごまかすしかなかった。

この船の事を水上警察だと思い込んだ薫は、本当の密輸船に乗り込まなくて良かったなどと二の字に告げる。

二の字は、寝ろと毛布を薫に手渡すと、自分はズボンを脱いで寝仕度を始めるが、それを見た薫は急に恥ずかしがるり、自分もそこで一緒に寝るのか?と聞く。

大陸で浮浪者として生きて来たくせに、今さら床で寝れないと言うのか?と言う二の字の言葉に薫は従うしかなく、もじもじしながら一枚しかない毛布で寝ている二の字の横に横たわるのだった。

二の字は薫が震えているのに気づくと、寒いのか?と聞き、もっとこっちへ来いと誘って、そのまま寝入ってしまう。

翌日は晴れ、船員たちは銃器の手入れなどしていた。

虎は二の字に、昼までに子供たちを始末しろと指示する。

そんな事とは知らない子供たちは賛美歌を歌っていた。

今日は日曜日だったのだ。

通信室でその歌声を耳にした下駄などは、うっとり聞き惚れていた。

その賛美歌を打ち消すように機銃掃射の音が響き渡る。

撃っていたのは業平だった。

虎は二の字に、あいつは射手になりたがっている。奴はおふくろに頼り切っていた男だったが、その母親が別の男にくっついたんだと教えるのだった。

獨活(うど)は、船で流される子供たちのために、弁当にごちそうを詰めてやっていた。

下駄も、後4時間でお別れか…と寂しがっていた。

虎は、子供たちが自分たちの事を海上保安庁と間違えているとの話を二の字から聞かされると愉快そうに笑う。

そこにやって来た薫ら子供たちが、社会のために悪い奴らを退治して下さいと頭を下げて通り過ぎたので、虎はますます愉快になる。

その後、会う船員たちに「お仕事ご苦労様です」と頭を下げて歩く子供たちに、言われた船員の方はきょとんとなる。

業平に機銃を磨かせていた飛車にも、同じように挨拶した子供たちだったが、飛車は「うるさい!」と一喝して追い返してしまう。

炊事室に来た子供たちは、手島が見えて来たので獨活(うど)に尋ねる。

住み良い島らしいよと獨活(うど)が、これから流される子供の事を気にしながら答えると、でも日本の方が住み良いんでしょうと無邪気に聞く子供たち。

11時になったので、虎に二の字が、そろそろ子供たちに引導を渡しに行くと言っていたが、その時下駄がやって来て、暗号を傍受したが…とメモを読みながら、密輸船が手島の影に集結しているらしいと言う。

それを聞いた虎は、それは避けた方が良さそうだなと言い部屋を出て行ったので、またまた子供たちの命は長らえる事になる。

下駄から、そっと二の字に手渡された暗号の解読メモには「嘘も方便」と書かれてあった。

子供たちは、この船がいかに密輸船に強いかと言う自慢話をするチャックのおしゃべりを聞いていたが、正義のために戦っていると信じている子供たちが、無邪気に、勲章をもらうんでしょう?と聞くので、チャックは返事に窮する。

一人の子は、椅子で寝ていた虎の帽子が床に落ちていたので、それを拾って渡すタイミングを計っていた。

目覚めた虎が、子供に気づいて礼を言うと、子供は、ボク、千兆三のように正しく強くなりたいですと言い出す。

一方、船室の前を通っていた飛車は、胸にさらしを巻いている薫の姿を窓から垣間み、彼女が女だった事に気づくと、すぐに部屋に入って来て抱きついて来る。

そこに二の字が入って来て止めたので、飛車はいつかはお前とやらねばならないと思っていたと捨て台詞を残して部屋を出る。

二の字も、薫の正体を知ると、どうも薄気味悪い男だと思っていたが…と納得すると、それを虎に教えに行く。

それを聞いた下駄などは、あの時、島の近くを通れば良かったのに…などと、とぼける。

虎は、女に手を出すなと船員たちに釘を刺す。

船員たちは、子供たちと無邪気に遊ぶようになる。

炊事室に酒を取りに行った虎は、獨活(うど)が子供と酒の栓を使った「オセロ」に興じている所に出くわす。

獨活(うど)は、背後に立った相手を船長とは気づかずに、今大変な所なんだと返事をしてしまう。

獨活(うど)に酒を取りに行かせた後、戯れにそのゲームの前に座った虎は、何が大変なんだ?と子供に聞くと、負けたら、馬になって僕を乗せ、甲板を往復する約束になっているんだと言う。

虎は、そのゲームを見るのは始めてらしかったが、興味を持った様子。

薫は、チャックに、他の人の名前の由来は大体分かるけど、「二の字」の意味だけが分からないと聞く。

あれは、背中に二本、惨い引き攣り痕があり、それが「二の字」に見えるからなんだと説明するが、その傷が出来た訳については話せねえと何とかごまかす。

「毎日、毎日、オーシャンウィスキー」と愚痴りながら、ウィスキーの箱を抱えて来た獨活(うど)は、馬になって子供を乗せて甲板を歩いている虎の姿を見る。

その直後、二隻のお客さんが現れる。

虎は、危なかねえか?と躊躇するが、二の字が大丈夫でしょうと声をかける。

しかし、機銃掃射を買って出た業平が撃たれて死んでしまう。

虎の旗に包まれた業平の死体を前にした薫は、最後に私の顔を見てお母さんと笑いかけたと泣く。

業平の死体は、海に落とされ水葬される。

チャックと海坊主が花札をしていると、子供たちが札を覗き、あれこれ絵柄をばらしてしまうので、諦めた二人は止めてしまう。

一方、虎の元に走って来た獨活(うど)が、二の字と飛車が喧嘩をしていると知らせに来る。

二の字はシャツが破け、その背中には噂通り、二本の引き連れ痕が残っているのを薫は見て息を飲む。

そこへやって来た虎が、両方の言い分を聞いてやると言うと、二の字は大した事はない。親分に面倒はかけないと言う。

女に関するもめ事だとだと気づいた虎は、女に手を出すなと言っておいたはずだと飛車を睨む。

しかし、飛車は、俺を仕置きにしたら、誰が機関銃を撃つんだ?金時だけじゃ無理だろうと虎を睨みつけると、いつまで真人間ごっこして遊んでいるつもりだと反撃する。

そして、薫に向かって、女!この船はな…と言いかけた飛車を、虎は海に投げ落としてしまう。

そして、すぐさま浮き輪を投げ込んでやる。

ある日、又雨だったので、薫はチャックとおしゃべりをしていた。

自分のせいで機銃係が金時だけになったので、大丈夫かと薫は心配していた。

そんな薫に、チャックは、二の字の傷の話を蒸し返し始める。

兄貴がこの船に流れ着いた時、これは臭いと怪しんだ船長が、焼け火箸を背中に二回押し当てたのだと言う。

船長はあの時の事を今でも悔やんでいると言うので、不思議に思った薫が、臭いって、何と間違えたの?と聞くと、そては保安隊の…と言いかけ、慌てて自分の口にチャックをする。

それを聞いた薫は、自分たちが大変な思い違いをしているのではないかと疑いだす。

やがて、千里丸は新たな密輸船を見つけるが、その装備を遠目で確認した二の字は、あれは(機銃を)三挺持っているので、金時はやられると判断する。

その判断を聞いた虎は、挙げかけた旗を降ろすと、金時に向かって、今日は親父の命日なんだ。今日だけは付き合ってくれと謝る。

しかし、攻撃をかけない理由を自分のせいだと知っている金時は、思わず悔し涙を流すのだった。

虎自身も、千里丸が密輸船を見送ったのは、これが始めてだとつぶやく。

その後、別の獲物を見つけた千里丸は攻撃を仕掛けるが、2丁拳銃で応戦していたチャックがやられてしまう。

船室に運び込まれたチャックは、虫の息で、俺がうっかりみんなの素性を話してしまったと二の字に謝る。

二の字は、いつかはバレる事だと慰めるが、チャックは、長い間、お耳を患わせました。ちょうどここらで…と、自らの口にチャックを閉める仕草をした後息絶える。

それを哀しげに見つめる虎。

その後、千里丸は嵐に翻弄されていた。

船倉では子供たちが恐怖に震えていたが、こんな立派なお仕事をしている船を神様がお沈めになるはずがない。みんな良い人ばかりだからなと自ら言い聞かせていた。

しかし、それを聞きながら、一人薫は考え込んでいた。

その後、思い切って、大雨で揺れ動く甲板に出た薫は、叱りに来た二の字に、この船は沈むかもしれない。その前にあなたに聞かねばならない事があります。あなたが海賊なら、私はこの場で死にます!と叫ぶ。

そこに、身体に綱を巻いた虎が駆けつけ、何とか薫を救出するのだった。

翌日、天気は回復するが、油がなくなったので動けなくなった千里丸は、給油先を検討し始める。

手島は密輸船が集まっているので危ないか…と考えあぐねていた虎だったが、危険を承知で北に向かう事にする。

手島には、子供たちが乗り、日本に向かう船もあるだろうと言う考えだった。

そんな中、獨活(うど)が悩んでいる姿を目にした薫は訳を聞くが、獨活(うど)はこれが悩まずにいられますかと言うだけ。

虎は、小さな三人の子供たちと無邪気にじゃれ合いながら、父さんや母さんに会いたいかと聞く。

子供たちは会いたいけど、もっとこの船にも乗っていたいと漏らす。

虎は、おじさんの子供の頃には活弁と言うのがあってな…と、その弁士の口調や「天国と地獄」の曲を披露し始める。

そんな虎に、金時が、妙な船が付けて来ると報告する。

気がつくと、他にも近づいて来る何隻もの船がある事に気づく。

そうやら密輸船に取り囲まれつつあるようだった。

船員たちを集めた虎は。今この船には二つの命が乗っている。

俺たちと子供たちだ。

俺たちはどっちの命を守る?このままじゃ、かないっこないと船員たちの意見を聞く。

船員たちの表情を見ていた虎は、子供たちを守るために降参しようと言い出す。

しかし、それを聞いていた薫が異議を唱える。

あなたたちの素性が子供たちに知れ、子供たちが傷つきます。子供の時、人を信じる心を失わせては、あんまり可哀想ですと言うのだ。

それを聞いた忍路(おしょろ)は、俺はこんなに稼業が恥ずかしいと思った事はないと嘆く。

それじゃあ、一つしか手はないと虎が言い出す。

この前密輸船がやったように、保安隊を呼ぶんだ!下駄、名文で頼むぞ!と言われた下駄は、急いで「北緯33 統計127度付近で10数隻の密輸船に取り囲まれた。当方には、そちらにお引き渡ししたい無辜の人命あり」と打電する。

虎は「千里の虎狩りだ!保安隊がこいつらを逃がさないように突っ込め!」と、船員たちに檄を飛ばす。

打電を受けた海上保安庁は、ただちに出航する。

機銃を手にした虎をはじめ、船員たち総出で応戦を始めるが、なかなか保安庁の船は到着しない。

次々に担ぎ込まれる負傷者を、必死に手当てする薫。

船倉に入れられていた子供たちは、穴があいた壁から水が侵入している中怯えきっていた。

夢中で撃ちまくっていた虎は二の字に、敵船への激突を命じる。

敵密輸船の土手っ腹に追突する千里丸の上で、虎は高笑いをしていた。

その時、保安庁が来たぞ!と叫んだ五右衛門は、敵弾に倒れて海に落ちる。

全員逮捕された千里丸の船員たちは、女性らしい私服に着替えた薫が見守る中、警察署で山本部長(龍岡晋)の取り調べを受けていた。

証人として、虎を極悪非道の殺人者として告発していたのは飛車だった。

自分を海に突き落とし、ろくな救命器具も与えなかったと言うのだ。

そこに新たな証言者と呼ばれて入って来たのは、あろう事か、片腕を包帯で吊っていたが、二の字だった。

二の字は保安隊の制服を着ており、警務課所属山本かずおと呼ばれているではないか!

二の字こと山本は、虎は、自己防衛以外に人命を奪った事はないと証言し、海に飛車を放り込んだときも、ちゃんと浮き輪も一緒に投げたと虎を弁護する。

しかし、君の背中の傷は、虎の残虐な心の現れではないかね?それを見た兄さんは泣いたそうじゃないかと聞く山本部長。

山本は、こう言う行為は残虐な心だけから出て来るとは限らず、激しい気性からも出ますと反論する。

彼らは犯罪者には違いないが、その行為は愚かさから生まれたもの。彼らは一人残らず、自分が人間以下の人間になっている事に気づかないほど馬鹿なのでありますと説明する。

それを大人しく聞いていた虎は、上手い事言うぜ。同感!と思わず叫ぶ。

その後、廊下に連行されて行くかつての仲間たちの前に現れた山本は、すまねえ、親分と、だまし続けていた虎に謝る。

しかし、虎も仲間たちも、二の字こと山本の温情に感謝する。

その後、山本は、警務課の同僚たちにズボンを貸してくれと頼みに行く。

子供たちが、父母たちと共に、虎たちに会いたがって毎日来ていたのだ。

薫が子供たちを連れて来ると、そこには、警務課のズボンをはいた千里丸の船員たちが立っていた。

その前にやって来た子供たちは、船長さんたち、何していたの?僕たち、毎日来てるんだよ。おじさんたち、どのくらい上陸できるの?と尋ねる。

答えに窮する虎たちを見た薫は、おじさんたちは優秀なので、またすぐ経たなきゃ行けないのよと子供たちに言い聞かせる。

そんなのないや…と、だだをこねる俊夫。

そんな子供たちに、おじさんたちのお仕事の邪魔をしないと、最初から約束したでしょう?と優しく諭すのだった。

薫に促され、さよならと立ち去りかけた子供たちの後ろ姿を見ていた下駄は、思いあまって前に進み出ると、俊夫に一度だけ抱っこさせてくれないかと頼む。

虎も下駄のおじさんの言う事を聞いてくれよと頼み、俊夫を抱きしめた下駄は、俊夫ちゃんいい子だなとつぶやく。

それを見ていた薫はもらい泣きをする。

やがて、俊夫を放し、さよならとつぶやく下駄は、子供たちの姿が見えなくなると、とうとう抱いた!と泣き笑いする。

そんな下駄の肩を優しく叩く虎。

護送トラックに乗り込む虎たちの前にやって来た父母たちは、死んだあの子たちを生き返らせてくれたあなた方は恩人ですと感謝の言葉をかける。

代表して進み出た俊夫の祖母(英百合子)は、あなた方は他の人から見たら罪人に見えるかもしれませんが、私たちには、神様がお寄越しになった天のお使いとしか見えませんと虎に伝える。

トラックに乗せられた船員たちは、天のお使いって、こんなにいびきをかくのかね?と、もう座席で高いびきで寝ている虎の顔を見て笑い合うのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

悪人が子供たちに出会う事により良心に目覚めると言う、昔、人気があった人情物語の典型のようなストーリー。

そこに、囮捜査の要素も絡んで、最後にさわやかなどんでん返しが用意されている。

ド派手なハリウッドスペクタクルなどを見慣れた今の感覚で観ると、さすがに古めかしいと言うか、地味な印象になっているが、当時としては、老若男女、どの世代にも楽しめる海洋ロマンだったのではないだろうか。

純真な子供や薫の気持ちに触れ、思わず船員たちがうきうきする様などは、宮崎アニメの「天空の城ラピュタ」でのドーラと息子たちが重なる。

おしゃべりなチャックを演じている森繁や、屈折した美少年を演じている大泉滉の若き姿も貴重。

ロケとセット、後半には、円谷英二の手によるミニチュア特撮も挿入されており、結構手間ひまかけて撮られている印象がある。

円谷特撮は、白黒と言う事もあり、観ていてほとんど違和感がない。

セットでの撮影だと思われるが、嵐のシーンなどは今観ても大掛かりで、なかなか見応えがある。

子供たちとじゃれ合う三船の姿も好ましいし、可憐な美少女を演じている浅茅しのぶの存在も印象的な作品である。